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2014年4月20日 (日)

あずきの研究7 -日本ではメジャー,海外ではマイナーな小豆-

○あずきの疑問
 「日本が圧倒的な小豆消費国となっているのはなぜか」

(照葉樹林帯)
 小豆の原産地は東アジアで,その種子が日本でも縄文時代以降の遺跡から発見されているそうです。小豆は,日本,台湾,華南,ブータン,ヒマラヤに広がる植生「照葉樹林帯」に分布しています。この一帯は,稲作そしてその水田や水路から得られる川魚から作られる魚醤を基本とした食文化が形成され,やがて仏教の影響もあり,豆や穀物を主原料とし,麹を用いた醤(ジャン)が作られ,後に味噌や醤油となっていきます。米と魚を用いた「(熟れ)鮨」や納豆など発酵させた食べ物に富んでいるのも特徴です。

 小豆はこの照葉樹林帯で主に食されていますが,その土地で容易に手に入る食材を用いて食文化は形成されるわけですから,小豆が日本で好まれるのはあるべくしてそうなったと考えるのが,まず第一に考えられる自然な理由です。

(日本で小豆が好まれる理由)
 では,なぜほかの照葉樹林帯の国よりも突出した小豆の消費国となっているのでしょうか。私は次の3点にまとめられると思います。

 1 日本人は,小豆の赤い色に特別な意味を見出すこと。

 2 油脂をあまり用いることのなかった日本人は,もち米と同様,小豆の「粘り」を食感として好むこと。

 3 煮崩れすることから,料理に用いることが難しいが,日本では菓子の主要食材として小豆を採用し,和菓子という独自の菓子体系を築いたこと。

 それぞれ少し補足します。

 1は,日本では,赤は喜びや祝い事(ハレの日)に用いられる色であり,特別なありがたみをもつ色となっています。小豆でみると,日本人は特に赤い小豆を好む傾向があり,海外で作られた赤い小豆はほとんど日本への輸出されているそうです。

 2は,古代以来,日本はタンパク質と脂肪の少ない食事が長く続いたため,粘り気のある食べ物に重厚さを求め,日本人のテクスチャ(食感)の嗜好が「粘り」となったことです。食べ物の美味しさは35%の味と65%のテクスチャによって決まるという説もあるほどなので,この理由も少なからず影響していると思います。「もっちり」や「もちもち」といった,粘りをアピールする表現は,食品業界でもよく用いられています。

 そして3の和菓子の確立ですが,私はこのことが日本と海外での消費量の差を決定付ける大きな要因になっていると思います。中国や南蛮から渡来した菓子は砂糖に小麦粉,油,鶏卵などで構成されていますが,それを日本では,砂糖と小豆でつくる「あん」をメインに,身近な食材である米(米粉,もち米)や小麦粉などで構成する和菓子の体系を作り上げています。油脂を用いず,水で煮炊きして調理するという世界でも珍しい和食と共に育った日本人は,菓子についても,あっさりとした甘みを好んだのでしょう。砂糖が一部の特権階級の薬や食べ物から,庶民に広まっていく際,小豆あんの果たした役割は非常に大きかったはずです。和菓子の大部分をあんに頼ることになった以上,日本が小豆の世界一の消費国になったのは必然的なことに思えます。

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