あずきの研究8 -お祝い事に赤色が好まれる理由-
○あずきの疑問
「赤飯や紅白饅頭などお祝い事に赤色が好まれるのはなぜか。」
(赤色の文化のルーツ)
赤色の文化のルーツは中国であり,祝いの際には,赤を中心にして,「福」や「喜」などの金文字や金の龍という強烈な色の組み合わせが使われます。その文化を受け入れた日本でも,祝い事(ハレの日)や,神社の鳥居には赤(朱)が用いられ,「血気盛ん」という言葉もあるように,赤は邪気を払う,情熱,生命力の色とされてきました。
(赤飯の赤色が持つ意味)
赤飯のルーツは,古代に赤米で炊いていたご飯であり,神へのお供え物として用いられるとともに,食用にもしていたようです。その後,稲作技術の発展により,味がよく収量も多い白米(ジャポニカ種)がメインとなりますが,赤米の伝統を受け継ぎ,江戸時代にもち米に小豆を入れて炊いたものが赤飯として定着し,今に続いています。(地方によっては,凶事に悪霊を追い払う目的で赤飯を,吉事に白強飯を食べた事例もあります。)。
(赤飯)
赤色は,喜びと祝いの色とされ,赤く色付けされたおこわ(赤飯)を神に捧げ,食べることは,人間と神が1つになるという意味をもっています。赤色に特別な思いを抱き,同様に神道の稲作信仰により米に特別な思いを抱く日本の食文化として,今でも赤飯は伝承され,好んで食べられているのです。
(赤い食べ物が好まれる理由)
赤飯と同じ理由で,赤い小豆で作られた菓子や料理が好まれていると説明することもできるでしょう。お祝い事で用いられる紅白饅頭や紅白の餅などは,わざわざ赤色に着色するという工程を経て作られており,日本人の赤色に対する特別な思いを表した食文化の一例と言えます。
(紅白上用饅頭)
(餅まきでの紅白餅)
そもそも赤い食べ物は,野菜や果物では,完熟して食べごろになったことを示すことが多く,肉や魚では,筋繊維の色であり,貴重なタンパク質となることから,視覚から「食べごろでおいしいもの」と判断されることが最も多い色でもあります。大人に比べ食の知識に乏しい子供の場合は特に,「安全な食べ物かどうか」の判断材料の1つとして,甘い物や赤色の食べ物を好む傾向が顕著に表れます。赤い食べ物が多い「お子様ランチ」がよい例です。子供に限らず,食品には赤を中心とした暖色系のパッケージやデザインが多いのも,こうした理由があってのことでしょう。
視覚的に安全,食べごろ,おいしいものと判断され,加えて,お祝いや邪気を払う意味を持つ赤色は,日本の食文化にとても大きな役割を果たしています。その一翼を担っているのが,赤い小豆だと言えるでしょう。
(赤にまつわる豆知識)
○日本語の赤は「明るい」からきているという説がある。
○赤を「ベンガラ」とも言うのは,インドのベンガル地方から日本にもたらされた赤い顔料だからだとされている。
○「赤子」というのは,「けがれなき子」という意味がある。
○お手玉を子供に持たせるのは,魔除けの意味合いもある。
○古代人は小豆の赤に呪力を感じ,小豆を生のまま噛んで傷口に塗ると解毒作用があるとされていた。
○茶摘みの衣装である「あかねだすき」(茜のたすき)の赤は,茶摘みの際,茶葉で手をケガした時の止血剤として用いられる意味もある。
○江戸時代,疱瘡が流行すると患者の衣服や身の回りのものを赤にしたり,疫病の退散・予防のため,赤飯をムラの入口に置く習慣もあった。
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