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2014年6月22日 (日)

鯨の食文化1 -捕鯨の基礎知識と食文化の事例-

 以前,下関で購入し,冷凍しておいた鯨を食べました。
 鯨の盛合せで,皮ベーコン(ミンク鯨,南氷洋),さらし鯨(ミンク鯨,北西太平洋)そして味付須の子ベーコン(イワシ鯨,北西太平洋)の3種類です。

 皮ベーコンは,鯨の本皮をベーコン加工したもの,さらし鯨は,同じく鯨の本皮を加熱した後,水でさらしたもの,味付須の子は,須の子(鯨全体から数%しか取れない胸ビレの付け根部分)を味噌・醤油で味付けしたベーコンとなっています。

(鯨3種盛合せ 左手前:味付須の子,中央上:皮ベーコン,右手前:さらし鯨)
Photo

 皮ベーコンとさらし鯨は,見た目以上に脂が乗っており,酢味噌やポン酢につけて食べると絶品でした。薄くスライスされた味付須の子も,鯨肉独特の風味を楽しむことができました。

 下関へ行くと,今や貴重な食べ物となっていることもあって,無性に鯨が食べたくなり,食堂に鯨カツ定食を食べに行ったり,冷凍鯨を土産に買って帰ったりしています。

 鯨を抵抗なく,むしろ,美味しいので,たまには食べたいと思っている私にとって,最近の捕鯨をめぐる動きは看過できない状況となっています。せっかくの機会ですので,捕鯨と鯨の食文化について,少しまとめてみたいと思います。

(捕鯨に関する基礎知識)
 鯨については,反捕鯨の動きも強く,ハーグ国際司法裁判所が日本の調査捕鯨(南極海と北西太平洋のうち,南極海のみ対象)について「現在のやり方では認められない」とする判決が出されたこともあり,鯨の食文化の存続が危ぶまれています。

 捕鯨については,様々な見解がありますが,次のような話は基礎知識として理解しておく必要があるでしょう。

○ペリーが日本に開国を迫ったのは,鯨油を得ることを目的とした捕鯨船の物資補給のためであったように,過去,欧米の国々は盛んに捕鯨をしていたこと。
○欧米の国々での捕鯨は,鯨油を得ることのみが目的だったため,これらの国々の人々は,現在に至るまで,鯨を食べ物とはみなしていないこと。
○一方で,日本やノルウェー,アイスランドなどは鯨肉を貴重なタンパク源として食用としており,独自の食文化が確立していること。
○鯨の資源保護の観点から言えば,ミンク鯨などは捕鯨しても十分な頭数がいることが確認されており,捕鯨せずに保護していることで,今度はその鯨が大量に魚を食べて,他の魚の生態系にまで影響を及ぼしていること。

 捕鯨推進派と捕鯨反対派の論争のように,異文化間の対立は,自分たちの価値観のみで優劣を付け,上位にあるものを「文化」とし,下位にあるものは「野蛮」とする「自己集団中心主義(エスノセントリズム)」で語られる傾向になりがちだということも理解しておく必要があるでしょう。

(鯨の食文化 -日本-)
 日本では,縄文時代から鯨を食べ,骨(工芸品や肥料など),ひげ(工芸品や文楽の人形を操る道具など)までも捨てずに利用してきました。いただいた鯨の命に感謝し,慰めるため,全国各地に鯨の墓や供養塔も建てられています。
 戦後,GHQが日本の食糧事情を改善するため,大量かつ容易に確保が可能なタンパク源として鯨を挙げ,推進したこともあり,昭和の中頃まで食卓や学校給食などでよく食べられるようになりました。しかし,牛肉や豚肉の代用肉としてのイメージも強く,商業捕鯨の中止もあって消費量は激減し,現在では,むしろ高級な食材となっています。

(鯨の食文化 -インドネシア-)
 NHKスペシャル「人間は何を食べてきたか 第5巻」に「第1集 灼熱の海にクジラを追う ~インドネシア・ロンバタ島~」で,巨大なマッコウ鯨をモリ1本で追う漁師の映像があります。捕獲した鯨は,皮下脂肪,内臓から血の一滴に至るまで,全く無駄にせず,村人すべてに分配され,食べられています。鯨を乱獲することはなく,自分たちが生きていくのに必要な数だけを計画的に捕獲しています(この地域は,鯨のほかに主だった食料を確保することが難しいことから,国連機関からも「生存捕鯨」として,捕鯨を認められています)。タンパク源を鯨に頼るしかない食生活,その鯨を命がけで捕獲する漁師の勇ましい姿が描かれた作品で,鯨の食文化の一端に触れることができます。

(まとめ)
 私は当初,鯨の食文化を守り続けなければいけないという考え一辺倒でした。
 それは,捕鯨反対派の圧力が原因で,美味しい鯨を食べられなくなり,鯨を食べるという日本の貴重な食文化まで奪われてしまうとなれば,とても残念な事だと思ったからです。

 しかし,この文章をまとめるために,情報収集していくうち,私のこうした考えにも偏りがあるのではないかと思うようになりました。

 前述の「人間は何を食べてきたか」の収録後の対談で,「今やありとあらゆるものを食べている日本人は,鯨にこだわる必要はないのではないか。」とか,「取材していて,(鯨は独特のにおいがし,肉も固いので,)本当に鯨以外何も食べるものがない人が食べるものかなと思った。」といった,私にとっては予想外の話題がありました。
 鯨については,同じ日本人でも世代,好み,価値観などで受け入れ方が異なっており,鯨を食べない(食べなくてもよい)とする意見は,捕鯨反対派の圧力だけで語られるものではないようです。

 その時代の価値観や置かれた状況によって食文化も変化していきます。
 鯨の食文化についても,必要とする人としない人,容易に得られるか否かなど,様々な要因によって,これからも変化していくことでしょう。

 過度な「こだわり」を持たず,今置かれた状況や資源を上手に取り入れた食生活を送るという姿勢も大切です。変にこだわりを持てば,それだけ,必要以上に労力やお金を費やすことにもつながるからです。

 と,まとめつつ,個人的には,これからもたまには美味しい鯨料理を食べられたらいいなと思っています。

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