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2014年8月13日 (水)

ミラクルフルーツと味覚の研究 -どのように酸味が甘味に変化するのか-

○ミラクルフルーツの疑問
 「そもそもミラクルフルーツはどんな味なのか,また,どのように酸味が甘味に変化するのか」

(ミラクルフルーツとは何か)
 西アフリカ原産の果物で,ミラクルフルーツの実自体は甘くありませんが,実を食べると,ミラクリンと呼ばれる特殊な糖タンパク質が舌に作用し,後で食べた苦味や酸味のある食べ物を甘く感じさせる効果のある食べ物とされています。糖尿病やダイエット中で,糖分を控える必要がある人に効果的だとも紹介されています。

 NHKの地球ドラマチック「不思議!味覚の世界(『THE TRUTH ABOUT TASTE』イギリスBBC2013年)」では,「脳をだます!?魔法の物質」としてミラクルベリー(ミラクルフルーツ)が登場し,肥満に悩むアメリカにおいて,シカゴのレストランのシェフがミラクルベリーのパウダーを作り,デザートを出す前に,お客さんにこのパウダーを食べてもらい,その後に砂糖を極力控えたデザートを提供していましたが,お客さんは皆,甘く感じられて美味しいとの感想でした。

 今回は,インターネット通販で乾燥ミラクルフルーツを購入しました。
Photo


 乾燥ミラクルフルーツは,長さ約2cmのアーモンドに似た形をした濃い赤色果実です。
Photo_2


 縦に割ってみると,中心に細長い種があります。
Photo_3


 ミラクルフルーツを実際に口に含んでみると,強いて言えば酸味のあるベリーの味ですが,特に味がある実ではありませんでした。1~2分間口に含み,十分エキスを口の中に行き渡らせた後,いよいよ実験開始です。

(酸味のある食品・飲み物の変化)
○レモン
(予想)何とか食べられるようになる。
(結果)刺激のある酸味が刺激のある甘味に変化し,甘い柑橘に変化する。いくらでも食べられそうな感じ。

○レモンジュース(100%レモン果汁)
(予想)何とか飲める程度に変化する。
(結果)砂糖か蜂蜜を加えたかのような甘さになる。これなら酸味を気にせず,ぐいぐい飲めそう。

○クレープフルーツ
(予想)甘いオレンジのような味わいに変化する。
(結果)予想以上に甘い,完熟したグレープフルーツに変化する。

○トマト
(予想)完熟した桃のような味わいになる。
(結果)においや食感はトマトのままだが,甘い超完熟トマトになる。

○米酢
(予想)普通に飲めるソフトドリンクになる。
(結果)酸味に代わり,甘味のある果実酢ドリンクのような感じになる。

○梅干し
(予想)蜂蜜漬けの梅干しになる。
(結果)酸味は甘味に変化するが,塩味は残った,若干食べやすい梅干しになる。

○炭酸水(レモン風味)
(予想)レモン風味の甘い炭酸飲料になる。
(結果)レモンの香料が使われているだけだったので,予想に反して全く変化なし。

(甘味のある食品・飲み物の変化)
○チョコレート(95%カカオ)
(予想)普通の甘さのチョコレートになる。
(結果)苦味は苦味のままで,予想に反して全く変化なし。

○水飴
(予想)更に甘味が増す。
(結果)味覚が変化するのは酸味だけであり,甘味に全く変化なし。

○希少糖コーラ
(予想)更に甘味が増す。
(結果)味覚が変化するのは酸味だけであり,甘味に全く変化なし。

(試食のまとめ)
 酸味が強ければ強いほど,強い甘味に変化します。レモンなど,酸味が強いと,舌にチリチリとした刺激を感じますが,そのチリチリとした刺激が,全てチリチリとした甘味として感じられるように味覚が変化するのです。
 なお,ミラクリンが作用するのは,酸味だけで,ほかの苦味や塩味などは全く変化なく舌に味が伝わることもわかりました。

(「ミラクルフルーツの楽しみ方」)
Photo_4

 半信半疑で食べただけに,今回の酸味が甘味に変わる体験は,とても驚きました。この作用を上手に活用すれば,生物が求めてやまない「甘味」を砂糖などの糖分に頼ることなく味わうことができるメリットがあります。自然になる果実から得られるので,その分,安心感もあります。

(味覚がもつそれぞれの役割)
 今回,このミラクルフルーツでの体験を通じて,人間のもつ本来の味覚の役割ついて改めて考えました。
 食べ物の色や味にはそれなりの理由があります。赤色は,安全,食べごろ,おいしいものという判断材料になるお話(「あずきの研究8 -お祝い事に赤色が好まれる理由-」参照)をしたように,味にもそれぞれ役割があるのです。

(「基本味」の役割)
 甘味…エネルギー源として糖の存在を示す信号
 うま味…グルタミン酸等,生命活動に必要なアミノ酸などの存在を示す信号
 塩味…体内のナトリウムの濃度を一定に保つために必要な塩化ナトリウムを示す信号
 酸味…代謝を促進する有機酸の信号であるとともに,腐敗した食品を示す信号
 苦味…身体に有害な物質を警告する信号

 舌の味蕾がこれらの味の信号に反応し,味覚神経を通じて,脳に伝えられることで,味覚として認識しています。自分が美味しいと感じるのは,生きるために自分がその物質を求めているからとも言えるでしょう。

(酸味について)
 私が今回少し気になったのは,腐敗した食品の酸味まで甘味として感じるのではないかということです。もちろん,腐敗しているか否かの判断は,味覚によるものだけではなく,臭覚や視覚なども含めて総合的に判断されるものですが,味覚が大きな役割を果たすことは間違いありません。腐敗している場合に感じる酸味は,生命を維持するために感じる味覚だと言えます。そして,この酸味を認識する味覚が,甘味を認識する味覚に全て変わってしまうとすれば,これは大きな問題でしょう。

 その点,ミラクルフルーツは,味覚に変化が起こるものの,その持続時間は1時間程度であり,一時的な味覚の変化に過ぎません。つまり,味覚が一時的に変化球を受けただけで,味覚本来の機能を損ねるものではないのです。一時的に味覚の変化を楽しめること,これこそがミラクルフルーツの大きな利点だと思います。

(ダイエットの難しさ)
 ダイエット志向で,糖分や脂肪分などを控えめにした低カロリー飲食料品は多いですが,これらの味覚を美味しいと感じ,栄養やカロリーとして体内に取り入れようとするのは,生命を維持させるために備わった本能です。だからこそ,ダイエットは難しいとも言えるのですが,この本能に真っ向から逆らう必要はありませんし,そんなことをすれば,後でリバウンドが起こる可能性が高くなると思います。

(まとめ)
 確かに,酸味が甘味に変わるのは,ミラクルな体験でした。そして,この体験を通じて,これまで,あまり意識してなかった味覚というものが,生命維持にとって,いかによくできた感覚であるのかを知り,ありがたみを感じる機会となりました。

 生命の存在,その生命に備わった様々な機能…これこそが本当のミラクル(奇跡)だと思います。

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