フィリピン料理の特徴と主な料理5 -ハロハロ・食文化と人のつながり-
ハロハロ
フィリピン料理店でデザートをどれにしようか迷っていると,隣のテーブルのお客さんから,「デザートを食べるなら,ハロハロがいいよ。イカの刺身みたいなのも入ってるし(笑)。」とアドバイスをいただきました。実際にそのお客さん達(フィリピン出身の方を含む)もハロハロを注文されていたので,フィリピンでも人気があるのでしょう。
「ハロハロ」
かき氷入りのパフェです。
上から順に,紫色は,ウベと呼ばれる紫芋のアイスクリームです。黄色はレチェブランと呼ばれるフィリピンのカスタードプリンとバニラアイスです。ナタデココものせられています。白色はかき氷と練乳で,かき氷は水ではなく,ココナッツミルクを凍らせて削ったものだそうです。底部分には,煮豆やコーンフレークが入っており,シロップが煮豆の色で赤茶色になっています。
きれいに盛られていたので,混ぜるのが少しもったいないような気がして,まずはそのままでいただこうとしたのですが…お店の方に親切に混ぜていただき,完全に混ざった状態でいただきました。
お店の方から,「ハロハロ」とは,タガログ語のハロ(混ぜる)を重ねた言葉で,混ぜ合わせるといった意味になると教えていただきました。
完全に混ぜると,全体がウベの紫色に染まり,見た目の美しさは損なわれます。しかし,その見た目に反して,確かに美味しくなりました。ウベ特有のねっとり感,ココナッツミルクのシャリシャリ感,練乳とシロップの強い甘み,プリンのつるんとした食感,コーンフレークのサクサク感,煮豆のしっとり感,それに例の「イカの刺身みたいな」ナタデココのコリコリ感と,実に多様な食感と味が混然一体となって1つのデザートを作り上げていました。甘いものに甘いものを混ぜるので,甘味が強くなるのも特徴だと思います。
食文化と人のつながり
今回訪問したお店では,フィリピン出身の女性の方1人が,調理からサービス,後片付けまで全てこなされていました。これはとても大変なことなので,今回はのんびり料理を待って,店での時間を楽しむこととしました。カウンターから厨房を眺めていると,彼女が実に段取り良く料理をしていることがわかりました。そして何より,楽しみながら作っておられたのです。「料理を作ることがお好きなんだな」と思い,(今考えると邪魔をしていたように思いますが,)カウンター越しに,色々と会話を楽しみました。
私:「段取り良く,楽しみながら作っておられますね。料理がお好きなんですね。」
お店の方:「はい。料理することは好きです。」
私:「(日本の地方都市において)様々なフィリピン料理を提供されているのはすごいことだと思います。」
お店の方:「様々な料理を作ることにより,祖国フィリピンの故郷に住む家族の顔が目に浮かぶのです。以前,私はコーヒーはあまり好きではなかったのですが,日本に来て,朝,コーヒーを淹れて飲むようになりました。故郷に住む父の習慣なのですが,同じように作り,飲むことで,そばに居てくれるような気がするのです。」
このお話を伺って,食を通じて文化を共有し,文化を共有することで,連帯感を深めることに,国境などないことに改めて気付き,国や民族は違えど,人間として共感できる部分があることを,とても嬉しく思いました。
私も,彼女の作った料理を食べることで,わずかでもフィリピンの文化を共有することが出来たように思います。
食事を終える頃には,店の方やお客さんたちともすっかり仲良くなり,本当に楽しいひとときでした。
「サラマット(ありがとう)!」
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