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2016年1月14日 (木)

群馬の食文化の特徴を探る(2) -桐生市「子供洋食」からわかる群馬の食文化-

 今回の群馬旅行で,一番気になっていたのが「子供洋食」という郷土料理です。

 桐生の観光向け広告(「群馬の食文化の特徴を探る(1) -群馬県桐生市のソースかつ丼・ひもかわ-」参照)にも,「(「子供洋食」は)実際に見たら予想を裏切られます。」と紹介されています。

 ネーミングからすると,チキンライスやハンバーグなど「お子様ランチ」のような食べ物を想像しますが,予想を裏切るからには,こうした食べ物ではないことは確かでしょう。

 その真相を探るべく,大の大人がわくわくしながら,「子供洋食」をいただくため,群馬県桐生市にある「武正米店」を訪問しました。


武正米店の「子供洋食」


(武正米店)
Photo

 年末で閉店時刻が近かったこともあり,営業されているか少し不安もありましたが,入口に明かりが点いていたので,心底良かったと思いました。

 お米の販売とクリーニング,そして飲食店を兼業されている珍しいお店です。

 お店の方は既に奥の部屋でくつろいでおられたので,少し申し訳ない気持ちで「子供洋食」(300円)を1人前注文しました。

 私が広島から来たことを告げると,御家族の皆さんで温かく歓迎していただきました。
 初めて訪問したにもかかわらず,実家に帰ったような気持ちになりました。

 店内に「KIRYU」と書かれた篠原涼子さんのポスター(写真中央上部)が貼ってあり,「篠原涼子さんはここ桐生の出身なんですよ」と教えていただきました。
 私が「桐生だけにきりゅう(きれい)な人が多いですねー」などと言って盛り上がっていると,お待ちかねの「子供洋食」が運ばれてきました。

(子供洋食)
Photo_2

 茹でたじゃがいもと刻んだねぎ,干し海老をソースで炒め,仕上げに青のりをかけて,紅生姜を添えた料理です。

 深い丸皿いっぱいに盛られており,ボリューム感満点です。

 ほくほくのじゃがいもやねぎにソースがうまく絡み,干し海老のうま味も合わさって,焼きそば風味のじゃがいも料理に仕上がっています。

 子供はもちろん,大人も喜ぶおいしさです。

 出来立て,あつあつの「子供洋食」をいただきながら,お店の方に子供洋食にまつわる様々なお話を伺いました。


「子供洋食」のレシピ

 作り方を教わりましたので,御紹介します。

 まず鉄板でねぎを炒め,ねぎの水分が出たところで干し海老を加えてうま味を出します。そこにあらかじめ茹でておいたじゃがいもとソースを加え,ある程度水分が飛んだら,皿に盛り,青のりをふって,紅生姜を添えて完成です。


「子供洋食」の歴史と名前の由来

 元々は長時間働く機織女工さんのお腹を満たすためのおやつだったようです。

 醤油で味付けをしていましたが,子供にも受けるよう,ソースを使うようになり,これが人気を得たため,子供にも受けるソース(洋食)入りおやつとして「子供洋食」となったようです。

 昭和初期からの食べ物で,昔は台車で売り歩き,注文があると,保温のため木の皮に包んで渡されていたとのことです。

 「武正米店」をはじめ,桐生市周辺では「ポテト入り焼きそば」という焼きそばが有名なのですが,そのルーツは「子供洋食」にあるというお話も,言われてみればもっともなお話だと思いました。


「子供洋食」からわかる群馬の食文化

 今回,お店の方から伺った貴重なお話をもとに,「子供洋食」から群馬の食文化を分析してみたいと思います。

 「子供洋食」に用いる食材を1つずつ検証してみましょう。

(じゃがいも・ねぎ・生姜)
 群馬県の土壌は,浅間山や赤城山など火山の影響を受けた「関東ローム層」により,水はけがよく,二毛作(秋蒔き冬小麦の栽培)・畑作が農業の中心となっています。
 そのため,小麦,芋類(じゃがいも,こんにゃく芋など),ねぎ,きゃべつなど畑で採れる作物で作られる料理が多く存在することとなっています。

 また,桐生市周辺地域で言えば,桐生市に流れる渡良瀬川の上流にあった足尾銅山の影響で,水質汚濁が発生し,水田での稲作ができず,畑作中心とならざるを得なかった状況もあるようです。

(ソース)
 群馬県は,古くから「養蚕・製糸・織物」業が盛んな地域で,明治以降は「富岡製糸場」も創設され,日本の近代化を先導してきた地域とも言えます。
 食での近代化としての洋食も取り入れ,そのシンボルがソースだったのではないでしょうか。

(干し海老・青のり)
 群馬県は内陸にあり,海から離れているため,海産物の中でも,保存性の高い干物・乾物を料理に利用することに長けているのではないかと思います。


群馬の食文化の特徴と食品産業

 このように概観すると,群馬の食文化を理解する上で鍵となるのは,「関東ローム層と畑作」,「内陸型産業と明治の近代化」にあると言えそうです。

 例えば,「うどん」,「ひもかわ」,「焼きそば」が有名なのは,畑作で小麦の生産量が多いからであり,企業では,「日清製粉」(館林市にあった「館林製粉」が前身),「サッポロ一番」で有名な「サンヨー食品」(前橋市が発祥),「ペヤングソースやきそば」で有名な「まるか食品」(伊勢崎市)などが挙げられます。

 畑作で言えば,芋類も多いことを御紹介しましたが,こんにゃく芋生産高日本一の群馬には,「こんにゃくパーク」をオープンした「ヨコオデイリーフーズ」(甘楽町),「蒟蒻畑」で有名な「マンナンライフ」(富岡市),蒟蒻ゼリーをはじめとした健康食品メーカー「オリヒロ」(高崎市)などが挙げられます。

 群馬県の豚肉生産量が全国トップクラスなのも,赤城山などの地形や水系,土壌(関東ローム層),明治の近代化とそれに伴う豚肉の需要増加がもたらした結果と説明することができるでしょう。

 豚肉を多く生産し,一方では小麦がたくさんあって,それらを使った明治の近代化に伴う洋食の代表と言えば「とんかつ」であり,忙しい職人さん達が手軽に食べられるよう,そのとんかつをご飯にのせ,洋風のソースをかけると群馬名物「ソースカツ丼」の出来上がりです。


食が文化である理由


 こうして分析してみると,「住んでいる土地の気候風土により,栽培可能な作物,飼育可能な家畜,採取可能な食材が決まり,更にはその土地の産業とも結びついて,その土地の食や嗜好に深い影響を与える」ことがよく理解できると思います。

 そう考えれば,食が地域によって異なるのは当たり前のことで,各地域で特色・嗜好があるからこそ「食は文化である」と定義することができるのです。


 「子供洋食」とそれにまつわる様々なお話をしていただき,群馬の食文化を理解するためのたくさんのヒントをいただいた武正米店の皆様に,この場をお借りして深くお礼申し上げます。

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コメント

なるほど~っと関心しながら読ませていただきましたが、
考えたら、私は群馬に行ったこと無いってことに気づきました。
飛行機が苦手なので、海外にも行ったことがないのですが、
まずは、国内でしょ。
っと言いながら、静岡県在住でありながら、
今や全国的に有名になっているB級グルメ
『富士宮やきそば』すら食べたことが無いんですよね。
カップ麵でとか、3食いくらで売ってるのを自分で作って食べたことはありますが・・・
まずは、富士宮やきそばを食べるっを今年の目標にしたいと思います。
近くの食文化に触れるとこから始めましょう。
後、『しぞーか(静岡)おでん』も食べたこと無いな~
あれ?私は本当に食いしん坊なのか?(笑)

食いしん坊倶楽部・海さま

コメントいただき,ありがとうございます。

まさにお話いただいたことと同じことを私も考えています。

遠くまで足を運んで,これが良かった,あれが旨かったというのも
1つのやり方ですが,地元のローカルな話題をブログ等で掲載する
方法も,大きな意味があると思います。

例えば,食の世界にしても,地元では当たり前の食べ物でも,ほかの
地域の人にとっては,とても珍しく,興味を持たれる食べ物はたくさん
あるはずです。

いろんな地域に住む人がそうした地元の食べ物をインターネットの世界
を通じて紹介するようになれば,自分が行かずとも,いろんな食文化を
知ることができますもんね!

なので,私も,地元広島の食文化の記事にも力を入れなければと思って
いるところです。

ただ,そうするためには,私なりの課題もあるのです…。

以前,広島の繁華街で観光客から,「広島風つけ麺」の美味しい店を
教えてくださいと言われ,回答に困りました。

なぜなら,広島ならでは,という店は,近所で食べるお好み焼の店ぐらいしか
知らないからです(笑)←よく大きな顔して,食文化のブログ書けるなぁー。

お互い,食べるだけでなく,いろんなことに興味を持つ「食いしん坊」として,
楽しい記事を紹介できたらいいですね。

そういう意味では,熱心に写真を撮り,記事を作成されている,食いしん坊
倶楽部・海さんの方が,私よりずっと食に対して「食いしん坊」だと思います
よ(笑)

コウジ菌


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