「ワルのりスナック」から広島弁を学ぶ
広島の味付け海苔
広島はかつて養殖海苔の一大産地として知られていました。
戦後の工業化などにより,海苔の養殖は減少していきましたが,味付け海苔を中心とした海苔加工会社は現在でも数多く広島にあり,全国に出荷されています。
(のりすきの様子)
広島市水産まつり「のりすき体験」
広島の味付け海苔は,かきエキス,かき醤油,海老など魚介の旨味を生かした独自の味付けとなっており,お土産などにも好評です。
インパクトの大きい「ワルのりスナック」の包装紙
そんな海苔加工業者が多い広島で,見た目のインパクトが大きい海苔のスナックを見つけました。
こわもての男が,ドスをきかせて「おどりゃ,なにしょおるんならぁ!(お前,何してるんだ!)」と「声に出して読みたくない」広島弁を丸出しにしているパッケージなのです。
(ワルのりスナック(包装紙あり))
白と黒が基調のデザイン,にらみをきかせた男の顔,筆書きの広島弁。まさに広島は怖い所だという誤解を全国に助長するような商品です。
味は今回御紹介する白い包装紙の「お好み焼き味」と,黄色い包装紙の「瀬戸内レモン味」の2種類があります。
いずれの商品も包装紙に「このガンボタレ,これ買おてくれんのんか?(この悪ガキ,これ買ってくれないのか?)」とか,「おそれじゃのぉ,そがぁにすいいこたぁないじゃろーがぁ!(弱虫だなぁ,そんなに酸っぱいことはないだろうが!)」など,広島で生まれ育った私でも使うことがはばかられるような広島弁が書かれています。
この包装紙の裏側には,広島以外の人でもわかるように標準語訳も書いてあります。
(標準語訳)
これは「おどりゃ,なにしょおるんならぁ!」の標準語訳として説明された文章です。
「How do you do?」。これでは,さわやかな会話にも聞こえます。
個人的には,冒頭に御説明した,「お前,何してるんだ!」の方がニュアンスをより適格にとらえているような気がするのですが,標準語訳だとなおさら日本語で表現したくないという理由があるのかも知れません(笑)。
包装紙を取り外す
この白い紙の包装紙の裏側に「広島ってコワい!と思ったら,この紙をはがしてください。」と小さな字で書かれています。
広島弁は汚いな(笑)と思いつつ,包装紙を外してみました。
(ワルのりスナック(包装紙取り外し))
何と表情は一変。瞳を輝かせて笑っているではありませんか。
「ホントはやさしい広島の味」とやさしい字で書かれてもいます。
海苔のスナックで調子にのりにのりまくってます(笑)。
さらに裏面には,「広島って,ワル?」と題して,広島はコワイと誤解されやすいが,本当はとってもやさしいことが強調されています。
(「広島って,ワル?」)
ちなみに「われ」,「わりゃ」,「おどりゃ」はいずれも「お前」という意味ですが,後の言葉になる程,きつい言い方になります。
また,この「ワルのりスナック」は実はヘルシーとありますが,確かに1袋12g入りで,一度に全部食べても50キロカロリーと,スナックにしてはかなり低カロリーで,ヘルシーな食べ物となっています。
ワルのりスナックの中身
長い道のりでしたが,ようやくここで袋を開封しました。
味付けのりと同じ透明で薄いトレーの中に,海苔スナックが入っていました。
(ワルのりスナックの標準的な形)
細長い長方形をしており,1つの大きさは幅約1.5cm,長さ3~5cmとちょうど一口大になっています。
(ワルのりスナック)
とても軽い食感で,パリパリしています。
そして口の中で海苔が溶け,磯の香りを楽しむことができます。
このパリパリした軽い食感こそが特長なので,開封したらなるべく早く食べ切る必要があります。
広島のオタフクお好みソースなどを使用した「お好み焼き味」となっていますが,お好みソースの味が強く主張している訳ではなく,海苔の香りとお好み焼きの味がお互いうまく調和しています。
お好み焼きにソースと青のり(あおさ)をかけて食べることを考えれば,お好み焼きと海苔の組み合わせは,実は慣れ親しんだ味だと言うこともできます。
くどくなく,あっさりした味付けにされているため,一度食べ始めると止まらなくなるスナックでした。
広島のドキドキするお土産として
これまで御覧いただいたように,インパクトの大きいデザインの商品なので,広島のお土産としても最適だと思います。
実は私も,出張先へのお土産の1つとして,この「ワルのりスナック」を持参することにしました。
ただ,お渡しするからには,自分も内容や中身を確かめておく必要があると思い,同じものを2個買って,そのうちの1個を開封し,今回御紹介しました。
中身は間違いなく相手に薦められる一品なのですが,包装紙のワルのりした言葉をどう受け止められるのか,今から少しドキドキしています。
一番ワルのりしたいのは私自身であり,そういう意味でも,私はやはり広島の人間ですね(笑)。
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コメント
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実に面白い
ノリのスナックだし~沢山食べても太らない感じ~(笑)
袋が・・・(笑) 言葉も~そうですね~こわいイメージがね(笑)
投稿: ヒナタ | 2016年9月 7日 (水) 17時06分
ヒナタ 様
実際に相手先に広島土産としてお渡ししました。
果たして,どう思われたことか(笑)。
かなりあっさりした味で,1袋全部食べても50キロカロリーしかないスナックは珍しいですよね。
海苔会社が考案したスナックなので,本来の海苔の風味や食感を生かしたスナックに仕上げられているのでしょう。
ヒナタさんが,広島は怖いところだと誤解を持たれることのないよう,私も気を付けないと…(笑)。
投稿: コウジ菌 | 2016年9月 9日 (金) 00時54分
大丈夫です・・今のところは・・・(笑)
怖くないですよ。
投稿: ヒナタ | 2016年9月 9日 (金) 16時59分
ヒナタ 様
(標準的な言い方)
今のところは大丈夫でも,だんだんと「広島のコウジ菌は言うことが汚いし,怖いよね」と言われるかも知れませんね。まあそれでも私はいいですが(笑)。
(広島弁での言い方)
「たちまち今んとかーよーても,ちいーとずつ『広島のコウジ菌はゆうことがきたねーし,怖いよのう』とゆうちゃってかも知れんねぇ。まーそれでもわしゃええんじゃけど(笑)。」
イメージが崩れるでしょうから,これぐらいに留めておきます(笑)。
投稿: コウジ菌 | 2016年9月10日 (土) 01時41分
(笑)・・・(笑)・・・
これ、目の前で言われたら・・ぽか~ん∑ヾ( ̄0 ̄;ノかもです。
それで、早口でしょ~(笑)
絶対、何言われてるか分からないでしょうね(笑)
なんか、方言って面白いですね。
ヒナタも福島だからなまってるかも・・
でも、山梨で仕事行ったとき、なまってないね~って(笑)
分からない。は、わかんね~べ~とか、わかんね~しっ。とか言ってるね(笑)
投稿: ヒナタ | 2016年9月10日 (土) 17時16分
ヒナタ 様
「わかんね~べ~」,「わかんね~しっ」実にカワイイですね。
目の前で言われてみたい。
広島弁が早口だという話,よく御存知ですね。
だから広島の人からの電話は,たいてい「早口で怒っているように聞こえる」という感想をもたれるんです。
それなら,広島の女性もひどい言葉でしゃべってるんだなと思われるでしょうが,実際はとてもやわらかく,愛らしい言い方になっているので不思議です。
「私」のことを,広島の男性は「わし」,女性は「うち」と言います。
広島弁の雰囲気は,少し古いですが,武田鉄矢主演の「刑事物語」の主題歌 吉田拓郎の「唇をかみしめて」を聞いていただくと,おわかりいただけるかと思います。
投稿: コウジ菌 | 2016年9月11日 (日) 00時35分
うち(私)は何故か?うちの娘達が小学校から
使ってます。何故だろうと未だに思いますが~
アニメかな??東北でも(うちね~)と
使ってる子がいます(笑)
投稿: ヒナタ | 2016年9月12日 (月) 14時32分
ヒナタ 様
女性が使う「うち」は広島に限った話ではないような気がしてきました。
まぁ,男性の「わし」だって広島に限らず,全国で使われてるでしょうし。
ただ,広島では,子供でも若者でも「わし」と言う男が多いので,それは独特だと思います。
それどころか,女性でも「わし」と言う強者もいますよ(笑)。
それに比べれば,東北はカワイイです。
投稿: コウジ菌 | 2016年9月13日 (火) 00時05分