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2016年11月 7日 (月)

昆虫食の研究1 -岐阜県恵那市「くしはらヘボまつり」ヘボの巣コンテスト-

毎年11月3日は「くしはらヘボまつり」の日

 毎年11月3日(文化の日)に,岐阜県恵那市串原で「くしはらヘボまつり」(ヘボの巣コンテスト)が開催されます。

 「ヘボ」とは,クロスズメバチ,シダクロスズメバチのことです。

 恵那市串原では,昔からヘボを採り,育て,貴重なタンパク源として食用にしてきた文化があります。

 「くしはらヘボまつり」当日は,ヘボの巣の出来具合を競うコンテストのほかにも,「ヘボ飯」や「ヘボ五平餅」などヘボ料理も売り出されます。

 昆虫や昆虫食はむしろ苦手な私ですが,こうした珍しい地域の食文化を学べる絶好の機会だと思い,意を決して広島から訪問することとしました。

 恵那市串原の会場は,山奥にあり,バスの便数も限られているため,自動車で来場される方がほとんどでしたが,広島市在住の私は公共交通機関を使って訪問することとしました。

 開始時刻が早いため,前夜に広島から夜行高速バスに乗って名古屋へ行き,名古屋駅から「快速ナイスホリデー木曽路」に乗って恵那駅へ,恵那駅から明智鉄道で終点明智駅まで行き,明智駅からは「恵那市自主運行バス」に乗って,やっとの思いで会場の串原にたどり着きました。

(明智鉄道明智駅)
Photo

 駅近くに「明智光秀公ゆかりの地」と書かれた石碑があります。
 また,明智駅を出てしばらく歩くと,「日本大正村」があります

(関連リンク)
 「くしはらヘボまつり」(「え~な恵那」恵那市観光協会)
 「くしはらヘボまつり(ヘボの巣コンテスト)」(「ぎふの旅ガイド」岐阜県観光連盟)


くしはらヘボまつり会場

 恵那市自主運行バスを降りた途端,目についたのが注意看板です。

(恵那市自主運行バスと注意看板(応急処置))
Photo_2

 「蜂に刺された場合 応急処置などはいたしますが ご入場は自己責任にてお願いします」

 蜂に刺される覚悟と,医療機関等での処置は自己責任で対応する必要があることを物語っています。

 さらに,

(注意看板(蜂アレルギー))
Photo_3

 「蜂アレルギーの方は会場に近づかないようお願いいたします。」と書かれた注意看板もありました。

 これは相当の覚悟が必要なようですが,街中で育ち,事の重大さを知らない私はあまり気にすることもなく,会場入りしました。(それよりも,奥の看板にある「内閣ぞうり大臣」の方が気になります。)

 同じバスに乗ってこられた元名古屋市職員で長年スズメバチを研究されている山内博美さんと出会い,会場を案内していただけることとなりました。


ヘボについて

 「ヘボ」はクロスズメバチ,シダクロスズメバチの東濃地方での呼び名です。

 頭の上の触覚が長く,「への字」形になっているのがオス,触覚が短いのがメスです。

(「ヘボ」説明文)
Photo_4

 攻撃性・威嚇性は強くありませんが,実際に人間を刺すのはメスだけです。

 幼虫やさなぎを食用にする習慣が,東濃地方をはじめ日本各地に残っています。


ヘボと串原

 ヘボは串原地方の貴重なタンパク源,珍味として食べられてきました。

 ヘボの巣を探し当てたり,飼育する技法が受け継がれてきたのですが,近年は環境の変化に伴い,個体数が減少傾向にあるようです。

 そのため,「くしはらヘボ愛好会」を設立し,同会で,ヘボの保護・増殖活動,飼育技術の研究,ヘボ料理の開発・普及に努めておられます。

 今回のイベントもその一環となっており,回を重ねるごとに串原を訪れるヘボ愛好者も増えてきているようです。

(地蜂(ヘボ)友好の碑)
Photo_5

 「くしはらヘボ愛好会」発足12周年記念に建てられた石碑「地蜂(ヘボ)友好の碑」です。


ヘボの巣コンテスト

(日程表)
Photo_6

 掲げられていた日程表によると,8時半から出品・販売用の巣の搬入の受付開始,その後計量審査を経て巣の販売,成績発表,串原ヘボ愛好会顧問で立教大学教授の野中健一氏による講評,優勝者体験発表というスケジュールになっています。

 写真左上の黒いテントが張られた場所が,蜂に刺された時に応急処置をしてもらえる救護所です。すでに刺された人が応急処置を受けておられます。


(ヘボの巣コンテスト会場の様子)
Photo_7

 白い横長のテントの中でヘボの巣の搬入や販売が行われました。


(車でヘボの巣が搬入される様子)
Photo_8

 軽トラックがずらりと並び,ヘボの巣がどんどん運ばれてきます。


(車でヘボの巣が搬入される様子(ビニールハウス内)1)
1

 車からヘボの巣を取り出し,ビニール袋に詰める作業はネットが張られたビニールハウスの中で,防護服を着た人達によって行われていました。


(車でヘボの巣が搬入される様子(ビニールハウス内)2)
2

 ビニールハウスにはヘボがたくさん飛び回っていました。


(ヘボの巣の計量審査・袋詰め)
Photo_9

 ヘボの巣の計量審査・袋詰め作業の様子です。

 こうした作業を経て,ヘボの巣が隣の展示会場に展示・販売されます。


(ヘボの巣の展示・販売)
Photo_10

 ヘボの巣は全て販売される訳ではなく,コンテストに出展・展示されるだけの巣もあります。

 販売可能な巣については,1kgあたり9,000円で販売されていました。


(ヘボの巣)
Photo_11

 ヘボの巣について,山内さんからお話を伺いました。

 ヘボの巣は,最初に山で小さい巣を見つけたり,地元の人から譲ってもらうなどで入手し,その巣が大きくなるよう時間をかけて育てられるそうです。

 巣は層状になっており,下層にいくほど新しい巣となります。

 ヘボの巣は重そうに見えるのですが,意外と軽く,巣の重量のほとんどは幼虫やさなぎなど食用になるとのことでした。

 それにしても,次から次へとヘボの巣が販売され,それが飛ぶように売れて,多額の代金が支払われる様子を初めて見た私は,少しカルチャーショックを受けました。


(ヘボの巣購入の様子)
Photo_12

 ヘボの巣を購入した人には,ビニール袋から巣を取り出す際,中で飛び交うヘボを除くための煙幕「はちとり」も配付されていました。

(煙幕「はちとり」)
Photo_13

 「生きているスズメバチがたくさん入っている巣を新幹線で広島まで持って帰ることはできないな」と思いながら,取引きの様子を見守りました。

 販売終了後,計量審査の発表が行われました。

 ヘボの巣の最大重量は5,620gとのことでした。優勝者はこれまでの苦労が喜びに変わったことでしょう。

 とても貴重な体験となりました。

 次回は「くしはらヘボまつり」で味わったヘボ料理について御紹介したいと思います。
(「昆虫食の研究2 -岐阜県恵那市「くしはらヘボまつり」ヘボ五平餅とヘボ飯-」)


<参考文献>
 山内博美『都市のスズメバチ』中日出版社

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食文化事例研究」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
貴重な体験ですよね。ヘボ料理も満喫されたみたいだし、良かったですね。
刺されたのは別ですか(笑)

忘れてた。明智鉄道、魅力的(^^)明智光秀には特に思い入れはないけど、
明智という地名、人名にはなぜか惹かれてしまいます。
歴史(特にと言われると戦国と幕末(陳腐な答えだ))も好きなので、
斎藤道三から信長へと続く時代、愛知や岐阜など回ってみたいですねー。

すご~い!長野で蜂の子とか食べるのは知ってましたが・・・
こんなに、物々しい感じで、しかも、高値で取引されてるなんて~
恐るべしです。
でも、見ただけで・・遠慮します(笑)
虫は虫でもイナゴは食べれるし、好きです(笑)

じもん様

思い切って串原を訪問したことで,いろんな体験・思い出ができました。
刺された話は別の機会にできればと思っています。

明智鉄道の明智駅ですが,同じ岐阜県内にもう1つ名鉄の明智駅もあるようで,
近くにあるから同じ名前の駅なのか,全然関係のない駅なのか,行ってみるまで
よくわかりませんでした。

当日は,「明智鉄道全線フリーきっぷ」というきっぷを利用したのですが,
今となっては珍しい硬券で,フリーきっぷだったので,今も記念に持っています。

関西から中京にかけては,歴史の舞台となったところが多いので,まわってみられる
と面白いと思います。

ヒナタ様

現地での緊張感が伝わったようで,嬉しいです。
ヘボの巣が高値でどんどん取引きされる様子を見学すると,「ここまで駆り立てられるヘボの巣の魅力は何なのだろう」と思ってしまいました。

でも,そもそも蜂の巣を大きく成長させることは,多大な手間暇がかかり,なおかつ危険も伴うという大変な作業。
高値になるのも当然と言えば当然のことだろうなとも思いました。

昆虫食は見た目でギブアップという人が多い中,ヒナタさんはイナゴなら大丈夫なのですね。
出来る限り好き嫌いがない方が,生きるためには有利ですもんね(笑)。

こんにちは。
昆虫食はなじみがない人が多いですからね。
ヘボはなんともないですが、以前テレビで見たオオスズメバチの串焼き(^^;あれは
難易度が高そうだ(^^;
そういえば、子供の頃、コオロギを捕まえて「美味そうだな」と思った事があります(^^;
でも、コオロギ食べるって聞いた事ないから自制しました(笑)でも、あの腹の部分は
美味そうに思いました。その頃から食いしん坊だったのかなー。
ヒナタ様:イナゴ、しばらく食べてませんが、前に山形に行った時に沢山売られていて
      びっくりした記憶があります。なんかバリバリとした食感だけ覚えています。

また忘れた。駄目ですねー。
何年前か忘れましたが、由利高原鉄道は硬券でした。って遠すぎですね。
あと、まだひたちなか海浜鉄道は硬券だったと思います。週末の1日フリーは違ったかな?
なにせ1日フリーだと往復より安いので、フリーしか使った事ありません。
ひたちなか海浜鉄道には珍しい車両が残ってますよ。
キハ205、222、2000。222と2000は運転は終了で那珂湊駅に止まっています。

じもん様

オオスズメバチまで食べるのですか。
まさに危険と隣り合わせですね。
コオロギをおいしそうだなんて…。でもイナゴは食べてコオロギはダメということはないでしょうから,気になります。

由利高原鉄道,秋田の鉄道なんですね。恥ずかしながら,初めて知りました。

今回私が乗車した明智鉄道は,始発と終点の往復でしたので,フリー切符がいいよと駅員にすすめられ,使用後は記念に持って帰りました。

ひたちなか海浜鉄道,全国のいろんな列車を使ってるんですね。
広島電鉄(路面電車)みたいです。
写真撮りに行きたいです。

こんにちは。
鉄道。東の方は結構乗っているんですけどね。西の方がまだまだ。
広島の路面電車は乗った事ありますよ。
路面電車のある街は好きだなー。広島、小倉、熊本、鹿児島、ぐらいしか知らないけど。

じもん様

広島までお越しになったことがあるんですね。
だから,もみじ饅頭とか広島弁のことをよく御存知なのですね(笑)。

路面電車は街の風景と溶け込んで,絵になりますよね。
また機会があれば,路面電車乗りに広島にお越しください。
全国いろんな都市で走っていた路面電車が現役で走ってますので。

こんにちは。
一応、北は稚内(何故か根室には行かなかった。列車の都合もあったけど)、南は枕崎まで
行ってます。穴が空いているのは山陰方面(鳥取まで、因美線―津山線で岡山へ)、四国。
なかなか全部は回れないですね。
もみじ饅頭は全国区だと思いますよ。
広島はいい街だったし、鰯も美味かったし、もう一度訪ねたい街ですね。
広島弁はギャグネタで出てきませんか:-)

じもん様

へぇー,鉄道でほぼ日本全国を制覇されてるんですね。
羨ましいです!

広島,機会があればまたお越しください。

そう言えば,小鰯を御存知で,感心させられたことを思い出しました。

次回は広島人が好きな魚,塩じゃけーを食べに来てほしいんじゃけー(笑)。

こんにちは。
まだまだなんですけどね。
今はもう出来ない(夜行がなくなったため)北海道一周宿に止まらない旅。
北斗星→利尻→オホーツク→ミッドナイト→はくつる
ってのは楽しかった。
今も売ってるかは分かりませんが、稀本なんですけど「全国駅前銭湯図鑑」なんて本があって、
お風呂情報はそこでゲット。
広島、行きたいなあ。ほんとにしおじゃけーが好きなんですか(笑)

子供の頃のスズメバチ(多分、オオスズメバチ)の記憶は、カブトムシを取りに行ったときに、同じ蜜のところに集っていて邪魔な蜂という記憶しかありません。特に時々、怒らせて追いかけられ、目をつぶり地面に伏せて蜂が行き過ぎるのをじっと我慢していた苦い記憶しかありません(子供たちの間では、目を閉じてうつ伏せにじっとしていると、背中の上に蜂が止まっても、刺さずに帰っていくと信じていました)。
その記憶もあり、生きた蜂の入った袋を、やはり持ちたくはないですね。
昔は貴重なたんぱく質で、また文化としても残っていって欲しいとは思いますが。

Khaaw 様

コメントありがとうございます。
コメントを拝読し,スズメバチの習性をよく御存知だなと思いました。

私の場合は,痛い目にあってからわかったことですが,スズメバチが近寄ってきた時は,姿勢を低くして飛び去るのを待つのが一番のようですね。
目を閉じてというお話も,スズメバチが黒色(黒い瞳)に対して攻撃する習性を踏まえての行動ですよね。

このイベントに参加する前はそんな知識は全くなかったのですが,今ならよくわかります。
痛い目にあった時のことについては,次回の記事で御報告したいと思いますので,もしよろしければ,次回の記事も御覧ください。

貴重なタンパク質として,またハレの日のごちそうとしてヘボが食べられ,現在に至ってるのだと思います。このことを肌で触れたくて行ってきました。

生きたスズメバチがたくさん入った巣を持ち帰りたいなら…,自宅から軽トラで行くしかなさそうですね(笑)。

こんにちは。
怖いもの勝負するつもりではないですが(笑)
以前、オオスズメバチのカチカチ音を聞いたことがあります。たまたま巣の近くに
行ってしまったんでしょうね。生きた心地しませんでした。
うずくまった姿勢で可及的速やかに脱出に成功しました。
場所は、京浜急行の浦賀駅から観音崎への遊歩道、からなんだかの碑があるってんで
奥へ入った所。うーん、やっぱ怖いわー。

じもん様

こんにちは。
スズメバチのカチカチ音って,警戒や威嚇のシグナルで,刺すぞと言ってるようなもんらしいですね。
話を伺うだけでも恐ろしいですが,何事もなく逃げ出せてよかったですね。
浦賀は行ったことないので,行ってみたい場所ですが,オオスズメバチには出会いたくないです。
次の記事には,間抜けな私がヘボに刺されたことをまとめましたので,御覧いただければ幸いです。

こんにちは。
マジ怖かったですよ。カチカチ音の事は知っていましたが、聞いたのは初めて。
二度と聞きたくないですねー。

じもん様

本当にカチカチ音を鳴らすのですね。
確かに耳に残りますよね。
怖かった様子が伝わってきます。
聞きたくないなぁー。

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