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2017年3月25日 (土)

あずきの研究12 -なぜ冬に水ようかんを食べる地方があるのか-

福島県会津若松市の水ようかんと湯の花羊羹

 石川県輪島市の水ようかん(「石川の冬・正月を代表するお菓子 -水ようかん・福梅-」を参照)をお読みいただいた読者の方から,「地元(福島)にも大きな水ようかんがある」との情報をいただき,興味を持って取り寄せてみました。

 私はこれまで,福井や石川など北陸地方の水ようかんや,三重県伊賀上野市の「丁稚ようかん」と呼ばれる水ようかんをいただいたことがあるのですが,福島で水ようかんが食べられているという話は初耳で,京都や金沢など和菓子で有名な都市からも離れた場所にあるということにも興味を持ちました。

 今回取り寄せたのは,福島県会津若松市の東山温泉にある「松本家」の「水ようかん」と「湯の花羊羹」です。

【「松本家」の「水ようかん」】

 注文の品が届けられたので,早速「水ようかん」から箱を開けてみました。

(松本家「水ようかん」(箱))
Photo

 やはり1本1本が大きいです。

 輪島の水ようかんよりも大きいように感じました。

 写真の水ようかんは,5本入のものですが,このほかにも7本入,10本入が販売されているので,さらに大きな水ようかんが売られていることとなります。

(松本家「水ようかん」(1本))
Photo_2

 1本の水ようかんの形です。

 大きさを測ってみると,長さ約15.5cm,幅と高さはいずれも約2.5cmありました。

(松本家「水ようかん」(計測))
Photo_4
 
 輪島の水ようかん1本の長さが約13cmですから,やはり一回り大きいものとなっています。

 水ようかんはさらりとした食感を味わえるこしあんのものが多いのですが,この水ようかんは,こしあんをベースに,粒あんも入っています。

 したがって,こしあんのさらりとした食感と粒あんの持つ小豆本来の味・食感の両方を味わうことができます。

【「松本家」の「湯の花羊羹」】

 続いて,水ようかんと一緒に取り寄せた「湯の花羊羹」です。

 地元では丸ようかんとも呼ばれているようで,電話でお店の方に「『丸ようかん』と言うようかんはありますか。」と尋ねると,「ああ,『湯の花羊羹』ですね。」と教えてくださいました。

(松本家「湯の花羊羹」(箱))
Photo_5

 練りようかんが竹の皮で筒状に包装されています。

 「東山名物」,「少年白虎」などと記されており,昔から会津地方,東山温泉の名物だったことが読み取れます。

(松本家「湯の花羊羹」(1本))
Photo_6

 水ようかんと比べると小さいように感じますが,長さは約12cmあります。

 こちらは小豆粒がない本煉ようかんで,しっかりとした甘味とコクがあります。

 ようかんの煉り具合や甘さが絶妙で,ファンが多いのも納得の一品でした。


水ようかんが田舎羊羹や丁稚ようかんと呼ばれる理由

 水ようかんは,別名「田舎ようかん」とか「丁稚(でっち)ようかん」とも呼ばれています。

 「田舎ようかん」と呼ばれる理由については,

 (1)寒天を使い,本練ようかんに比べてかさを増して作られていること
 (2)粒あん(小豆粒)で作られ,素朴な味わいが残されていること

 などが挙げられます。

 また,「丁稚ようかん」と呼ばれる理由については,

 (1)甘さが控えめ(贅沢な砂糖の使用量が控えめ)なこと
 (2)京や大坂の商家に住み込みの丁稚が盆や正月の里帰りの際のお土産として買える値段のようかんだったこと
 (3)煉りようかんを作った後に残ったようかんを水に混ぜて作ったこと
 (4)丁稚でも簡単に作れるようかんだったこと

 など諸説あるようです。


冬に水ようかんを食べる地方がある理由

 では,なぜ冬に水ようかんを食べる地方があるのでしょうか。
 私なりに考察してみました。


1 本煉ようかんは贈答用,水ようかんは自家用

 水ようかんは,本煉ようかんに比べて,同じ小豆あんの量だと,より多くの量を作ることができます。

 ということは,その分,菓子店は多くの量のようかんを安価に提供することが可能ですし,消費者も自家用として購入しやすいのです。

 また,本煉ようかんとは異なり,水ようかんは家庭でも比較的容易に作ることができるので,自家用に適した菓子だとも言えるでしょう。


2 水ようかんは和菓子文化が栄えた都市周辺に多い

 古くから宮廷文化や武家文化とともにお茶や和菓子文化が栄えた都市(京都,金沢,松江など)では,茶道のお茶菓子や贈答用として本煉ようかんが使われたことでしょう。

 一方で,お茶や和菓子文化が栄えた都市周辺では,人々の交流によって本煉ようかんの存在や技法は知られていたとしても,それは高嶺の花だったに違いありません。

 そこで,本煉ようかんに近く,より気軽に食べられるようかんとして水ようかんが好まれるようになったのではないでしょうか。

 今回御紹介した会津若松の水ようかんも,京都や金沢から伝えられたものと思います。


3 水ようかんは夏場に日持ちしない

 水ようかんと呼ばれるぐらいなので,本煉ようかんと比べ,水ようかんの方が水分を多く含んでいる訳ですが,水分を多く含むということは,それだけ日持ちしないことも意味します。

 これが夏場であれば,なおさらです。

 お茶や和菓子文化が栄えた都市なら,夏場に涼を呼ぶ菓子として,菓子職人がその日に作った水ようかんを客に提供できる菓子店は多く存在したことでしょう。

 しかし,冷蔵庫もない時代に,このような提供は一般的な話ではないのです。

 水ようかんの保存まで考えると,暑い夏よりは寒い冬に用意し,食べる方が理に適っているのです。


 以上のような理由から,お茶や和菓子文化が栄えた都市周辺の地方で,年末年始など家族が集まった時に,赤い小豆を用いためでたい水ようかんをみんなで食べることが定着し,今日に至っていると考えられます。

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食文化事例研究」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
詳細は覚えてませんが、この写真の羊羹は食べた事ありますね。
独自の文化なんでしょうが、寒い時に冷たいものって面白い。
炬燵でアイスは美味しい。人間(日本人?)の味覚って不思議。
さすがに津軽辺りではたべないのかなー。
繰り返し。雪は暖かいです(笑)

こんばんはぁ

お部屋を暖かくして~食べるのがいいね(*^-^)
松本の水ようかんね~スーパーで売ってた~(笑)
冬でも(今は春か~)食べれる事に気付いたよ~
日持ちしないもんね~
そうかぁ~なるほど・・・お茶請けね。
京都や金沢から~興味深い(笑)

じもん 様

こんばんは。
今回御紹介したようかんを召し上がった事があるんですね。
以前お住まいだった金沢ではよく御覧になったことでしょう。

寒い冬に温かいこたつに入って冷たいアイスや水ようかん。
暑い夏に冷房ガンガンに効かせて熱いコーヒー。

このプチ贅沢感が美味しくさせるのかも知れませんね(笑)

雪が暖かい。
理屈では納得できるのですが,実際雪を見ると,雪に慣れてない私は,なかなかそうとは思えませんよ(笑)。

ヒナタ 様

こんばんは。

この度は,興味深い情報を教えていただき,ありがとうございました!
小豆のお菓子が好きなので,お取り寄せしました(笑)
ヒナタさんのところでは,スーパーでも売られてるんですね。羨ましいです。

水ようかんが日持ちしないというお話は,松本家の店員さんからヒントを教えていただきました。
注文する際,会津若松のお店に電話してインタビューしたのです(笑)

水ようかんも丸ようかんもどちらも美味しかったですが,私は特に丸ようかんが美味しいと思いました。

ヒナタさんのおっしゃったとおり,石川の水ようかんより大きくて,開けたらびっくりしました(笑)。

水ようかんは近畿・北陸地方の和菓子だと思っていただけに,会津の水ようかんの情報は,私にとってとても興味深いお話でした。

心からお礼申し上げます。

なんか~うれしいですヽ(´▽`)/
丸羊羹美味しいよね~良かったです(笑)
ちゃんと、聞いたんだね・・スゴイ。。。(* ̄ー ̄*)

ヒナタ 様

おかげ様で美味しいものにめぐり会えました。

ネットだけで注文できるのに,わざわざ松本家さんに電話するところが私らしい(笑)

特に電話の終盤が,会津の方の人間味が感じられて良かったです。

私:「いろいろ教えていただきありがとうございました。」

松本家店員:「この度は遠くからご注文いただきありがとうございました。って,どこからかわかりませんが…。」

私:「広島からです…(笑)」

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