フランス料理の特徴と主な料理8 -パンデピス-
パンデピスは中国からアラブ世界を経由して,ヨーロッパに伝わったとされるパンの一種です。
フランスでは,ブルゴーニュ地域,シャンパーニュ地域,そしてフランドル地域のものが有名です。
フランス語でパンデピスは「Pain d'épices」と表記され,これを直訳すると「香辛料入りのパン」となります。また,ジンジャーブレッドと訳されることもあります。
中世のフランスをはじめとするヨーロッパでは,香辛料や砂糖,果物などは,東洋の異国情緒漂う憧れの食材でした。
ヨーロッパの人々にこうした食材が知られるようになったのは,十字軍(聖地エルサレムをイスラーム教徒から奪還するために結成されたキリスト教の騎士による遠征軍)によるアラブ世界との交流によるところが大きかったと言えます。
十字軍によってもたらされた貴重な香辛料(シナモン,ナツメグ,クローブ,アニスなど)と,砂糖など甘味料が希少だった時代に蜂蜜をたっぷり使って作られたのがパンデピスで,当時としてはとても贅沢なパンでした。
このパンデピスを味わってみることができないものかと,地元広島のパン屋さんを探してみると,何軒かで販売されていることがわかりました。
今回,そのうちの1軒でパンデピスを購入してみました。
(パンデピス)
広島のハード系のパンで有名な「ドリアン」のパンデピスです。
小麦とライ麦で作られたパンです。
卵,牛乳,バター,ベーキングパウダーは使用しておらず,甘味は蜂蜜と黒糖のみ,ブルターニュ地域(ロワール地方)・ナントのパンデピスを再現しているとのことです。
パウンドケーキ型に焼かれたコンパクトなパンですが,ホールで2,200円,ハーフで1,100円と結構いい値段がします。
しかしながら,この価格設定はこの店に限った話ではなく,ほかの店でもだいたい同じ価格帯となっています。
大きさの割に高価になる理由は,香辛料と,たっぷり贅沢に使われている蜂蜜にあるのでしょう。
実際にいただいてみました。
材料にライ麦が使われていることもあり,ロシアの黒パン(ライ麦パン)と同様,しっとりと固く詰まったパン生地に仕上げられています。
そして,蜂蜜と黒糖による甘味を強く感じました。
私は,普通にパンを食べる感覚で,約1cmの厚みに切っていただいたのですが,甘味が強いので,これでは少し厚みがあり過ぎるようにも感じました。
香辛料は明記されていませんでしたが,シナモンなどのスパイスが,強く主張し過ぎない程度に入れられているように思いました。
食事と一緒に食べるパンではなく,菓子パンかケーキに近いパンと言えるでしょう。
<参考文献>
池上俊一『お菓子でたどるフランス史』岩波ジュニア新書
日仏料理協会『仏和・和仏料理フランス語辞典』白水社
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