群馬の食文化の特徴を探る(4) -「子供洋食」と「ミックス ポテト入り焼きそば」-
再び群馬県桐生市の武正米店へ
群馬県桐生市の武正米店を訪問しました。
今回で2回目の訪問です。
前回初めて訪問した際に,御主人が「広島から来てくれたか!」ととても喜んでくださり,閉店間際の夕食時だったにもかかわらず,御家族まで一緒になって,桐生や広島の話で盛り上がりました。
こうした家族ぐるみの温かいおもてなしを受けたことが忘れられず,広島に戻ってすぐに御主人と一緒に撮った記念写真付きのはがきをお送りし,感謝とお礼の意をお伝えしました。
その後も,広島から桐生は遠く離れていますが,機会があればまたいつか訪問したいと思っていました。
そんな折,2017年5月4日から5日にかけて,広島空港と成田空港間に就航しているLCCを利用して関東方面に行くことにしました。
その際,もし群馬の武正米店がその日に営業されているようなら,訪問してみようと思いました。
武正米店にお電話すると,当日営業されているとのお話だったので,これは良いチャンスだと思い,事前にお店へ伺いたい旨をお伝えしました。
当日は,広島市内の自宅から自転車,JR山陽本線,空港連絡バス,広島空港から成田空港まで飛行機,成田空港から京成電鉄成田スカイアクセス線,JR武蔵野線,東武鉄道伊勢崎線,わたらせ渓谷鐡道と乗り継ぎ,桐生駅に到着しました。
桐生駅から徒歩で武正米店に着いた頃にはすでに夕方になっていました。
店内でお礼のはがきを発見
桐生駅から記憶を頼りにたどり着いた武正米店。
(武正米店外観)
約1年半前に訪れた時と比べ,のぼりなどが新しくなっていました。
(武正米店入口のぼり)
子供洋食やポテト入り焼きそばが,「桐生らしさ買えます。桐生の一押し商品」というコピーで紹介されています。
はやる気持ちを抑えて入店すると,奥様がやさしく迎えてくださいました。
そして一言,「あ,写真の人だ!」と。
奥様が指差された先を見ると,何と私が送ったお礼のはがきを掲示していただいていたのです。
(店内の様子)
それもテレビなどで活躍されている有名人のサイン色紙などと一緒に。
それを見た私は,「広島から送ったお礼の気持ちを,遠く離れた桐生の武正米店の皆さんに受け止めていただいたんだ」と感じ,目頭が熱くなりました。
今回,広島から訪問することを決めて本当に良かったと思った瞬間でした。
ちなみに,御主人さんと一緒の写真,実は御主人さんの方から「広島から来てくれた人と一緒に記念写真を!」とお声掛けいただいて撮ったものです。
お店の方から写真を撮ってほしいとお願いされたのは初めてで,大変驚いたとともに,とても嬉しかったことを覚えています。
「子供洋食」
今回は「子供洋食」と「ミックス ポテト入り焼きそば」を注文しました。
まずは「子供洋食」です。
(「子供洋食」)
※「子供洋食」の詳細については,「群馬の食文化の特徴を探る(2) -桐生市「子供洋食」からわかる群馬の食文化-」を御参照ください。
「再びこの味に出会えたな」と心の中でつぶやきました。
実際,ゴールデンウィーク期間中だったので,桐生へ帰省された方も数多くお店に来られ,「子供洋食」や「ポテト入り焼きそば」を持ち帰りで注文されていました。
ホクホクしたじゃがいもとソースによる,どこか懐かしくホッとする味です。
ゆっくりと「子供洋食」を味わっていると,配達を終えた御主人さんが戻ってこられました。
またもや感動の再会です。
御主人は一息つく間もなくエプロンをつけ,私が一緒に注文した「ミックス ポテト入り焼きそば」を作ってくださいました。
「ミックス ポテト入り焼きそば」
ポテト入り焼きそばは,焼きそばに茹でたじゃがいもを入れ,ソースを絡めたボリューム満点の焼きそばです。
この焼きそばを基本に,好みに応じてトッピングで「肉(豚肉)入り」,「玉子入り」,「野菜(キャベツ)」,「コーン入り」を選ぶことができます。
私はせっかくなので,デラックス版の「ミックス ポテト入り焼きそば」をお願いしました。
(「ミックス ポテト入り焼きそば」)
焼きそばに,茹でたじゃがいも,豚肉,厚みのある玉子焼き,もやし,コーンが入り,青のりがかけられたこの上ないボリュームの焼きそばです。
焼きそばの麺は白くてコシのあるストレート麺で,広島ではあまり見かけない美味しい麺でした。
子供洋食と焼きそばを堪能しながら,御夫婦そして子供洋食を買いに来られた御近所の方々も一緒に,5人で1つのテーブルを囲んで,またもや会話に花が咲きました。
全国から子供洋食を求めて来店されること,子供洋食がお子様ランチと同じだと思い大人でも食べられるか問い合わせもあること,北海道の男爵いもだと煮崩れしてしまうこと,上州の女性が養蚕・製糸・織物などで活躍した流れをくんで「かかあ天下」が日本遺産に登録されていることなど。
桐生川はきれいな川で,染物にも適しているというお話も出たので,私はうん,そうでしょうと深くうなずき,こうお返事しました。
「つまり桐生川はきりゅうな川なんですね。」
二度言って気付いていただけました(笑)。
長時間お世話になり,最後に気持ちばかりの広島のお土産をお渡しして失礼しました。
その日は桐生市内のホテルに宿泊しましたが,しばらく感動の余韻が続きました。
ほんの一瞬の出会い,でもその出会いが人の心を大きく動かす原動力ともなり得ることが理解できたように思います。
武正米店の皆様,この度も大変お世話になりました。深くお礼申し上げます。
お礼のはがきの内容紹介
最後に,武正米店さんで掲示いただいているお礼のはがきの文章を御紹介してしめくくりたいと思います。
今回の記事は個人的な話が多かったので,反省することしきりですが,良き思い出話ということで御容赦ください。
最後までお読みいただき,ありがとうございました。
武正米店 様
ありがとうございました
先日は,おいしい「子供洋食」を御馳走いただき,ありがとうございました。
今回の群馬旅行で一番食べたかった郷土料理を,温かいおもてなしと共にいただくことができ,とても嬉しかったです。
「子供洋食」にまつわるお話を伺えたことで,桐生の食文化を私なりに理解することができました。
関東ローム層,二毛作,足尾銅山などの環境による畑作中心の作物(じゃが芋,ねぎ),海から離れている地での乾物(干し海老,青のり),養蚕・織物工業を中心に,明治以降の近代化と関わりのある西洋食(ソース)が一体となり,織工さんや子供達の手軽な食事・おやつとして生まれ,親しまれてきたのが「子供洋食」ではないでしょうか。
まるで我が家に帰ったかのような温かい人情に触れ,併せて群馬の食文化を知る機会ともなり,とても楽しい思い出になりました。
皆様の御健康と御多幸を心からお祈り申し上げます。
広島から応援しております。
(2016年1月)
<関連記事>
「群馬の食文化の特徴を探る(1) -群馬県桐生市のソースカツ丼・ひもかわ-」
「群馬の食文化の特徴を探る(2) -桐生市「子供洋食」からわかる群馬の食文化-」
「群馬の食文化の特徴を探る(3) -スバル最中,コロリンシュウマイ,花ぱん,アイスまんじゅう,食文化を通じた地域の研究-」
« 群馬の食文化の特徴を探る(3) -スバル最中,コロリンシュウマイ,花ぱん,アイスまんじゅう,食文化を通じた地域の研究- | トップページ | とち介の耳かき -栃木県栃木市- »
「日本各地の食文化」カテゴリの記事
- 広島のいなり寿司 -「尾道いなり」と「棒いなり」(ばあちゃんの駅弁・いなりとチキン)-(2024.08.18)
- 沖縄の食文化探訪6 -沖縄のいなり寿司の特徴・なぜ沖縄で「いなりとチキン」が人気なのか-(2024.08.11)
- 沖縄の食文化探訪5-沖縄の大衆食堂で「ランチ」を味わう(トンカツ・天ぷら・海老フライ・揚げかまぼこ・ポークと玉子焼き・沖縄そば)-(2024.07.28)
- 沖縄の食文化探訪4-城まんじゅう、くんじゃんナントゥ、いもぽき、ポーポー、こんぺん・くんぺん-(2024.07.14)
- 沖縄の食文化探訪7 沖縄の「ぜんざい」-富士家ぜんざい・黒糖ぜんざい 「沖縄ぜんざい」と「かき氷」の違いについて-(2024.09.01)
コメント
« 群馬の食文化の特徴を探る(3) -スバル最中,コロリンシュウマイ,花ぱん,アイスまんじゅう,食文化を通じた地域の研究- | トップページ | とち介の耳かき -栃木県栃木市- »
やっぱり~何か不思議な焼きそばですね。
たまたまですが=テレビで電車で桐生市まで行く
番組やってて~へぇ~のどかな風景が広がってる。
とコウジ菌さんのブログ思い出しながら~
見てたのです。なんか、行った気持ちになりながらね~(笑)
投稿: ヒナタ | 2017年5月11日 (木) 19時06分
ヒナタ 様
コメントいただき,ありがとうございます。
そうですね。桐生はJR,東武鉄道,わたらせ渓谷鉄道,上毛電気鉄道といろんな鉄道がありますから,電車で行く旅番組でも人気のエリアでしょうね。
北部は赤城山などの大きな山々が連ね,南部は関東平野が延々と続き,畑が広がっています。
こんな風景は広島にはなく,電車の車窓から移りゆく景色を眺めるだけでも楽しく,心が癒されます。
私のつたない文章で,旅行気分まで味わっていただけたなら,こんなに嬉しいことはありません。
正直なところ,記事を作成するのはかなりしんどいのですが(笑),そんな苦労が報われたような気持ちになります。
買い食いばかりの旅行記ですが(笑),今後ともよろしくお願い申し上げます。
投稿: コウジ菌 | 2017年5月11日 (木) 19時48分
そうなんですか?作成するの大変だったんですね~
じっくり、読みますよ~(*^-^)
楽しみに読んでますから~ご丁寧にありがとうございます^^
こちらこそ、よろしくです(笑)
投稿: ヒナタ | 2017年5月12日 (金) 15時10分
ヒナタ 様
ありがとうございます。
写真の選定にはじまり,文章の内容,構成,表現,校正に至るまでパソコンに向かって一人孤独に(笑)取り組んでおります。
ヒナタさんをはじめ,皆様からこうしてコメントをいただくと,とても嬉しく,作って良かったなぁと思います。
お忙しい中,また,つまらない記事もある中(いや,多い中かな(笑)),いつもコメントいただき,そのお気持ちにいつも感謝しております。
楽しんでいただけるよう,頑張ります!
投稿: コウジ菌 | 2017年5月12日 (金) 19時27分
前回に続き、また珍しい食文化を紹介いただき有難うございます。
いままで、あまりおいしい食べ物のイメージがなかった北関東ですが、こうした隠れた美味しいものがあるのですね。
ぜひ、いつか訪ねてみたいです。
投稿: Khaaw | 2017年5月13日 (土) 12時37分
Khaaw 様
コメントいただき,ありがとうございます。
北関東にあまり美味しい食べ物のイメージがないというお話。
確かに巷で言う美食グルメからはほど遠い料理・お菓子中心だと思います。
「洗練された」,「豪華な」イメージではなく,「質素な」,「素朴な」,「昔ながらの」イメージですね。
でも,その食文化を守り,売りにしておられることは素晴らしい事ですし,オンリーワンとしての強みがあると思うのです。
それと,今回私が一番伝えたかった温かい人情があること。
これは都会ではなかなか味わえない大きな魅力だと思います。
懐かしさや温かい人情に触れたいと思われた時,今回御紹介したようなお店に行かれると良いかと思います。
きっと良い御旅行になると思いますよ!
投稿: コウジ菌 | 2017年5月13日 (土) 16時54分
きりゅうな川。。。。( ´艸`)プププ
こうして素敵な出会いと味と一緒になって、記憶が積み重なってゆくのですね♪
私方向音痴なので、1年半も前の記憶を辿って同じ場所に行けるか自信がありません。コウジ菌さんすごいです。
投稿: ここは | 2017年5月16日 (火) 17時44分
前回も,「桐生にはきりゅうな人が多いですね」とお話ししました(笑)。
でも,そんな冗談をもう一度言いたくなるぐらい,再度訪問した時に嬉しかったんです。
人との出会いって,本当に不思議で,素敵なことだと思います。
今回で言えば,その橋渡し役(キューピット)が子供洋食であり,その味とともに楽しかった出来事が良き思い出となり,人生の糧となりました。
今後も子供洋食の話題になると,訪問したお店やお店の人々の記憶がよみがえってくることでしょう。
このことは,今こうしてここはさんをはじめ皆さんとお話出来ていることだって同じで,不思議で,素敵なことだなと思っています。
そんな素敵な出会いを大切にし,記憶を積み重ねていけるような魅力的な人になれたらいいなと思います!
私も方向音痴ですよ(笑)。
私は旅行の際,地図や時刻表を持ち歩いており,カーナビやスマホには極力頼らないようにしています。
地図を片手に,多少迷いながらでも目的地へ行く方が,その地域の地理に詳しくなると思うからです。だから2回目には行けた,というだけです(笑)。
投稿: コウジ菌 | 2017年5月16日 (火) 19時43分