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2017年7月22日 (土)

オーストリア料理の特徴と主な料理 -カイザーゼンメル,グーラッシュ,キプフェル,ウィンナーシュニッツェル-

オーストリア料理の主な特徴

 オーストリアは,ウィーンを中心にハプスブルク家をはじめとする宮廷文化が栄えた国です。

 そのため,食の世界においても宮廷料理・菓子を中心とした食文化が形成され,「オーストリア料理」として確立しました。

 また,様々な言語・文化を持つ人々で構成される多民族国家であったため,全ての道は帝都ウイーンに通じるという意味から「ウィーン料理」とも称されます。

 オーストリア料理の主な特徴としては,

(1)イタリア,ドイツ,フランス,ハンガリーなどの影響を受けながら,洗練された貴族料理を形成している。
(2)海がなく山に囲まれ,冬の寒さが厳しい気候風土のなかで,食材の持ち味がよく生かされている。
(3)牛肉をはじめとする煮込み料理が多く,野鳥や野菜も多用される。
(4)ウィンナーコーヒー,ウィンナーソーセージ,ウィンナーロール,ウィンナーシュニッツェルなど「ウィンナー(ウィーン風)」と名付けられ,日本でも親しみのある料理が多い。
(5)ザッハ・トルテやアプフェル・シュトゥルーデルなど,「ウィーン菓子」とも称される伝統的な菓子が多い。

 ことが挙げられます。


オーストリア料理の代表的な名称

 オーストリア料理には,次のような名称がよく用いられていますので,覚えておくと便利です。

(料理)
 シュパイゼ…料理,食事
 クラプフェン…揚げパン
 クヌーデル…団子
 グーラッシュ…牛肉,パプリカ,玉ねぎなどの煮込み料理
 シュニッツェル…薄切り肉のカツレツ
 カイザー…皇帝の
 ズッペ…スープ

(菓子)
 クーヘン…ケーキ菓子
 トルテ…円形のケーキ
 シュトゥルーデル…渦巻き
 マンデル…アーモンド
 コッホ…ビスケットやゼンメルパンなどを砕いて加えたお菓子


カイザーゼンメル

 それでは,実際にいくつかオーストリア料理を御紹介したいと思います。

 まずはパンを御紹介します。
 
 カイザーゼンメルは小型の丸いロールパンで,パンの表面に王冠のような独特の模様が描かれているのが特徴です。

(カイザーゼンメルと前菜)
Photo

 写真左上のパンがカイザーゼンメルです。

 カイザーは「皇帝の」,ゼンメルは「(小型の)パン」という意味になります。

 シンプルなロールパンなので,どんな食事にも合うように思いました。

 なお,手前の前菜(フォアシュパイゼ)は,上から時計回りに,ウィーン風ポテトサラダ(じゃがいも,玉ねぎなどの材料で,マヨネーズを使わず酢などで調味されるポテトサラダ),グリーンサラダ,サーモンのマリネ・サワークリーム添え,パテのベリーソース添えです。


グーラッシュ

 ハンガリー発祥の牛肉・玉ねぎ・パプリカなどを煮込んだ料理で,「ハンガリー風牛肉煮込み料理」とも呼ばれるウイーンの代表的な料理です。

 ハンガリーでは「グヤーシュ」と呼ばれています。

(グーラッシュスープ)
Photo_2

 かつてハプスブルク帝国は,ハンガリーの独立運動を抑制しつつハプスブルク家による支配を存続させるため,両国に政府と議会を置きながらも,オーストリア皇帝がハンガリー王を兼ねるという「オーストリア=ハンガリー二重帝国」を成立させました。

 こうした歴史の中で,オーストリアとハンガリーの食文化の交流も図られ,グーラッシュも広まっていったと考えられます。

 この料理で重要なのは何と言ってもパプリカ,そして牛肉です。

 パプリカは,オスマン帝国のトルコ人によってハンガリーに持ち込まれた食材とされ,「パプリカなくしてハンガリー料理は存在しない」と言われるほど,ハンガリー料理には必要不可欠な食材となっています。

 また,「グヤーシュ」はもともと「牛飼い」・「牛の群れ」という意味で,ハンガリー人の祖先が騎馬民族だった頃の煮込み料理だったことから,牛肉も重要な食材となっています。

 今回御紹介しているグーラッシュスープは,パプリカで牛肉をコトコト煮込むことにより,ビーフシチューのような深い味わいのスープとなっており,パンと一緒に美味しくいただけました。


キプフェル

 キプフェルは三日月形のパンです。

(キプフェル)
Photo_5

 三日月形のパンは,ハンガリーに攻め込んできたオスマン帝国の旗印(三日月はイスラム教の象徴)をかたどったもので,ハンガリーを発祥とする説が有力です。

 それがウィーンに伝わり,後にオーストリア(ウィーン)が本場のパンとなりました。

 その後さらにフランスに渡り,クロワッサンとして広く親しまれるようになりました。

 そのため,フランスでは,クロワッサンはブリオッシュとともに「ヴィエノワズリ(ウィーン趣味)」のパンと呼ばれています。

 今回のキプフェルは,「塩パン」のようなシンプルでやわらかいパンで,香り付けのキャラウェイシードにより,さわやかな感じの仕上がりとなっていました。


ウィンナーシュニッツェル

 オーストリア(ウィーン)を代表する料理と言えばウィンナーシュニッツェルでしょう。

 ウィンナーシュニッツェルは,ウィーン風薄切り肉のカツレツという意味となります。

 仔牛などの肉を叩いて薄くのばし,パン粉をつけてバターなどの油で揚げ焼きしたカツレツです。

(ウィンナーシュニッツェル)
Photo_4

 このウィンナーシュニッツェルは,仔牛のカツレツの上に揚げたパセリがのせられ,キャラウェイシードを振ったじゃがいもが添えられています。

 皿に添えられたレモンをかけ,甘いベリーソースをつけながらいただきました。

 カツレツにレモン汁はまだしも,甘いベリーソースをつけるのはいかがなものかと思いながらいただきましたが,ベリーソースをつけることでカツレツの持つ揚げ物のしつこさが消え,甘酸っぱい味がアクセントとなって不思議とよく合い,食が進みました。

 お店の方からも,「オーストリア人は様々な料理にこの甘いベリーソースをつけて食べるのが好き」だと伺いましたが,実際いただいてみて理解できるようになりました。

 なお,このウィーン風カツレツは,イタリア・ミラノの料理「ミラノ風カツレツ」(仔牛肉を薄くのばし,チーズ入りのパン粉をつけて揚げ焼きしたカツレツ)がルーツとされています。

 ヨハン・シュトラウス1世作曲の有名な「ラデツキー行進曲」は,北イタリアの独立運動制圧のためにミラノへ遠征したオーストリア軍のラデツキー将軍の功績をたたえて作られた曲ですが,このラデツキー将軍がミラノから「ミラノ風カツレツ」をウィーンに持ち帰り,カツレツが広まったと言われています。

 さらに,こうしたウィーン風カツレツやミラノ風カツレツをもとに,日本では明治以降「カツレツ」が作られるようになり,昭和のはじめになると「とんかつ」が誕生することとなります。

 「ラデツキー行進曲」とカツレツの関係。ちょっとした話のネタにすれば,「ラデツキー行進曲」の演奏会のように,周りから自然と拍手が沸き起こるかも知れません(笑)。


オーストリアの歴史を物語る数々の料理

 いくつか料理を御紹介してきましたが,こうした料理はオーストリアの歴史そのものを物語っているとも言えます。

 オーストリアは中央ヨーロッパに位置しており,かつては,神聖ローマ帝国の誕生やハプスブルク家の活躍もあって,「陽の沈まない帝国」の中心地としてヨーロッパに強い影響力を持っていた国です。

 その結果として,独自の宮廷文化が栄えることとなりましたが,一方で言語や文化の異なる多民族国家をまとめる必要が生じ,近隣諸国との衝突も数多く経験することとなりました。

 こうした歴史的背景のもとに,現在に継承されるオーストリアの食文化が形成されることとなったわけです。

 今回御紹介した料理も,「カイザー」(皇帝の)と名の付く宮廷ゆかりの「カイザーゼンメル」,オスマン帝国(トルコ)やハンガリーの影響を受けた「キプフェル(三日月パン)」や「グーラッシュ」,ミラノなど北イタリアをオーストリアに奪還した際にラデツキー将軍が持ち帰ったとされる「ウィンナーシュニッツェル」という具合に,それぞれの料理がオーストリアの歴史を物語っているのです。

 このようなお話を踏まえた上で,オーストリア料理の特徴をまとめるなら,「ハプスブルク家を中心とした宮廷文化に育まれ,近隣諸国の異なる食文化をうまく融合させながら発展してきた料理」だと定義できるでしょう。


<参考文献>
 岡田 哲「世界の味探究事典」東京堂出版
 関田淳子「ハプスブルク家の食卓」新人物文庫
 菊池良生「図解雑学 ハプスブルク家」ナツメ社
 21世紀研究会編「食の世界地図」文春新書

<参考サイト>
 「オーストリア政府観光局公式サイト

<店舗情報>
 「カフェ ラントマン」(東京都港区北青山3-11-7 AOビル4F)

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コメント

こんにちは。

もう20年以上前のことですが、新婚旅行でウィーンに行って、
向こうでウィンナーシュニッツェルをいただきました。
当時を懐かしく思い出しながら、拝見させていただきました。
 # 出来れば、また食べにいきたいです。
有り難うございます。cat

たま駅長 様

こんにちは。
コメントいただき,ありがとうございます。

新婚旅行でウィーンとはロマンチックですね。
ウィンナーシュニッツエルはたま駅長さんの思い出の料理なのですね。

当初,パンやスコーンにつけるような甘いベリーソースを揚げ物につけて食べることに,いささか抵抗があったのですが,食べてみると一転,これもありだなと思うようになりました。

「ラデツキー行進曲」を聴きながらウィンナーシュニッツエルの記事を書くとテンション上がりました。
たま駅長さんと同様,「孤独のグルメ」のテーマ曲を聴きながら食事する店に向かうと,もっとテンション上がるでしょうね(笑)。

おはようございます。
オーストリア料理の専門店?っていうのがあるんですねえ。
さすが東京、ないものはない(笑)
食べたことはないけど、名前だけは何となく知ってる…そんな感じです。
スウェーデンでもミートボールにジャム(リンゴンベリージャム)をつけるらしいし、
欧州では肉料理にベリー系のソースやジャムって普通なのかもしれないですね。

chibiaya 様

おはようございます。
コメントいただき,ありがとうございます。

今回訪問した「カフェラントマン」はザッハトルテで有名なお店です。
蒲田のギリシャ料理店も気になるところですが(笑)

スウェーデンではミートボールにリンゴンベリージャムというジャムを付けて食べるのですか!
初めて知りました。こけもものジャムなんですね。

アメリカのローストターキーにクランベリーソースもそうですが,欧米ではラズベリーやクランベリーなどのベリーが豊富に採れるから,お菓子だけじゃなく料理にも普通に使われてきたのでしょうね。

揚げ物にさらに甘いジャムを付けて食べる。カロリーや糖分,違和感という日本人が躊躇してしまう一線を越えたところに,新たな味との出会いと感動が待っている訳です(笑)。

その地域で採れる食材で,その地域の食文化が成り立っていることがよくわかる事例ですね。

こんにちはぁ

オーストリア料理って日本人の口に合いそうな感じですね。
食べたことないけど・・・(笑)
写真見てるだけで、おいしさが伝わります(*^-^)

ヒナタ 様

こんにちは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます。

写真を御覧いただいておいしそうに見えるとおっしゃっていただくのが一番嬉しいです。
おいしそうに見える写真って,意外と難しいんですよ~。時間もかかりますし…。

グーラッシュはビーフシチューのような牛肉煮込みスープですし,ウィンナーシュニッツエルもとんかつのような料理なので,日本人の口に合う料理だと思います。(甘いベリーソースをつけることには意見が分かれるでしょうが(笑))

ヒナタさんにオーストリア料理に興味を持っていただいただけでも,文章を作って良かったなぁと思います。

これからもおいしそうな写真だと言っていただけるよう,頑張ります!

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