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2017年8月27日 (日)

ギリシャ料理の特徴と主な料理 -サガナキ・ホリアティキ・スブラキ・ムサカ・マスティクア-

ギリシャ料理の主な特徴

 エーゲ海のおよそ3,000もの島によって構成されるギリシャは,地中海文明の中心地として,ヨーロッパ,アフリカ,アジアの文化や歴史に大きな影響を与えてきました。

 ギリシャの食文化の中心をなす食材はトマトとオリーブで,1人あたりの消費量がともに世界トップクラスとなっています。

 ギリシャ料理の主な特徴としては,

(1)トマトやオリーブ油がよく使われる。
(2)トマトで煮込んだり,味付けの濃い料理が多いが,香辛料はあまり好まれない。
(3)仔牛肉,仔羊肉,鶏肉,タコ,イカ,ジャガイモ,ナス,キュウリ,ピーマン,きのこをよく用いる。
(4)海洋国であり,魚介類が豊富でよく食べられる。

 ことなどが挙げられます。

 今回は,ギリシャの代表的な料理をいくつか御紹介したいと思います。


サガナキ

 サガナキは,ハルミチーズの鉄板焼きです。

 「ハルミチーズ」は,山羊乳と羊乳から作られるセミハードタイプのチーズで,キプロスが原産とされています。

 とても弾力があるので,少々焼いたぐらいでは溶けることはありません。

 また塩味が効いていることもあり,焼いて食べるのが最も適した珍しいチーズです。

(サガナキ)
Photo_8

 今回のサガナキは,鉄板で焼いたハルミチーズにオレガノがかけられたもので,添えられたレモンを絞っていただきました。

 シコシコ,モギュモギュとした鶏のささみのような独特の食感で,比較的あっさりした塩味のチーズなので,チーズが苦手な方でも食べやすいと思います。


ホリアティキ

 「ホリアティキ」はギリシャ風サラダのことで,直訳すると「田舎風・自家製サラダ」という意味です。

 「フェタチーズ」と呼ばれる山羊乳や羊乳を使ったギリシャの代表的なチーズや,オリーブの実が使われることに特徴があります。

(ホリアティキ)
Photo_2

 賽の目に切ったフェタチーズ,カラマタ産のオリーブ,レタス,キュウリ,赤玉ねぎ,トマト,パプリカで構成されるサラダに,オリーブ油と酢がベースのシンプルなドレッシングがたっぷりかけられ,仕上げにオレガノがかけられています。

 フェタチーズは,先程御紹介したハルミチーズとは対照的に,粉チーズを押し固めたかのような,フォークでつつけばポロポロ崩れていく繊細なチーズです。

 このチーズは塩味がよく効いているので,塊を崩しながらサラダに絡めて食べるとちょうど良い味付けとなりました。

 これは基本的なホリアティキですが,今回訪問したお店では,夏限定で角切りのスイカ入りホリアティキも用意されていて,ギリシャではスイカ入りも好まれているとのお話でした。


スブラキ

 スブラキは肉の串焼きのことです。

 あらかじめスパイスに寝かせ,マリネした肉を鉄串(スブラ)に刺し,オーブンでじっくり焼いて,仕上げにレモンオイル,胡椒,パプリカの粉末,オレガノなどの調味料を振りかけて作られます。

(スブラキ)
Photo_3

 写真のスブラキは羊肉の串焼きです。

 添えられたレモンをかけたり,写真中央上部の「ジャジキ」と呼ばれるタルタルソースのような白いディップをつけていただきます。

 「ジャジキ」は,ヨーグルトにすりおろしたにんにくや細かく刻んだキュウリを混ぜ,塩,オリーブ油,酢などで味を調えたディップで,ギリシャ料理には欠かせない付合せです。

 このほか,フライドポテトや生野菜も添えられていました。

 いただいてみると,スパイスで十分マリネされているので,串焼きだけでも十分美味しかったですが,レモンをかけたり,シャキシャキのキュウリが入ったジャジキにつけていただくことで,一層味わい深いスブラキを楽しむことができました。

 お店のメニューを見ると,羊肉のほかにも豚肉や牛肉のスブラキも用意されていました。

 実はこのスブラキ,通常は2本で1セットなのですが,1人でいろんな料理を注文しまくる私の様子を御覧になったお店の方の配慮で,半分の1本にしていただきました(笑)。


ムサカ

 ムサカはナス,ポテト,ミートソース,ベシャメルソースの重ね焼きで,ギリシャの代表的な料理です。

(ムサカ)
Photo_9

 メニューを見ると,丸いココット皿で作られたムサカの写真があったので,大して量はないだろうと思い注文したのですが,ココット皿が想像より一回り大きくて深く,立派なメイン料理でした。

 ラザニアとよく似ており,ラザニアに入っているパスタ(ラザニア)の層を野菜に替えた料理を想像していただけると近いかと思います。

(ムサカ(中身))
Photo_5

 今回のムサカの中身を御紹介しますと,まず皿の底に輪切りのジャガイモを敷き,その上にミートソースをかけます。

 さらにその上に輪切りの米ナスを敷き,ミートソースをかけ,その上に輪切りのナスを敷き…という具合に具とミートソースを交互に層状に積み上げていくのです。

 そして最後に全体に行き渡るようにベシャメルソースをかけ,チーズをのせてオーブンで焼かれた料理となっていました。

 ミートソースのグラタンなのでボリュームがあるのですが,輪切りのナスも多いので「これなら何とか食べられそう」と食べ進めていました。
 が,最後に厚みのあるジャガイモの輪切りが登場し,そのボリュームに圧倒されました。

 食べ終えるのに少し時間はかかりましたが,きれいに完食しました。


マスティクア


 お店のメニューに「マスティクア(MASTIQUA)」というスパークリングウォーターが用意されていました。

 メニューの説明には,「ギリシャのヒオス島だけにある「マスティハの樹液」の持つ健康美肌効果は現代科学で次々に証明され,世界中の機関が認めるところとなりました。そのマスティハを使った炭酸水がこのマスティクアです。」とありました。

 ギリシャのヒオス島だけにある…ダメです。私はこういう言葉に弱いのです(笑)。

 マスティハの樹液が入った(炭酸)「水」(アクア)なので「マスティクア」と呼ばれているのでしょう。

 食事中のドリンクとしてこのマスティクアを注文しました。

(マスティクア)
Photo_6

 コップにボトルのマスティクアを注ぎ,ミントを浮かべていただきました。

 甘味も酸味もないスパークリングウォーターなのですが,かすかに薬草のような風味を感じました。

 どこかで飲んだようなことがあるとしばらく考え,思い出したのがお酒のジンです。

 ジンは「ねずの実(ジュニパーベリー)」などの香草が添加された独特の香りがする蒸留酒ですが,その香りに似ているように思いました。

 「ノンアルコールのジン風味の炭酸水」と例えられるかと思いますが,さっぱりとしていてギリシャ料理との相性が良かったです。

 ヒオス島のマスティハのありがたみをジーンと味わいながら,数々のギリシャ料理を堪能しました。


 サントリーニ島を思わせる白と青のインテリアが特徴的なギリシャ料理店「スピローズ」。
 人呼んで「蒲田のサントリーニ島」と呼ばれる楽しいお店で,しばしギリシャ気分を味わうことが出来ました。

 また機会があれば訪問したいお店です。


ギリシャ料理とトルコ料理はよく似ている

 今回ギリシャ料理を味わってみて,気付いたことがあります。

 「ギリシャ料理はトルコ料理とよく似ている」ということです。

 いくつか例を挙げてみますと…

(1)「サガナキ」で登場した独特な食感が特徴の「ハルミチーズ」は,トルコの「ヘリムチーズ」と同じ味・食感。

(2)ギリシャの「スブラキ」は,トルコでは串焼き料理「シシュケバブ」となる。

(3)中東を中心によく食べられている「ピタ(パン)」はギリシャ料理店・トルコ料理店いずれの店にも用意されている。

(4)ギリシャ料理の「ケフテデス」(肉団子)とトルコ料理の「キョフテ」(トルコ風ハンバーグ)は語源も含めてよく似ている。

(5)ギリシャもトルコも米を炒めたピラフ(ギリシャでは「ピラフィ」,トルコでは「ピラウ」と呼ばれる)がよく食べられる。

(6)「バクラバ」と呼ばれる,パイ生地に甘いシロップを浸して作られるとても甘いお菓子は,ギリシャ・トルコに共通するお菓子。

(7)粉状にしたコーヒー豆を煮立たせ,上澄みを飲むコーヒーは地域によって「ギリシャコーヒー」,「トルココーヒー」などと呼ばれるが,要はどちらも同じ飲み物。

 などの共通点が見い出せるのです。

 この理由は,地理にお詳しい方はピンときた方もおられるでしょうが,地図で確かめるとすぐに理解出来ます。

(ギリシャ周辺の地図)
Photo_7
(国土地理院の電子地形図(タイル)に国名・地名等を追記して掲載)
※地図をクリックすると拡大します。

 ギリシャとトルコは隣同士で,ハルミチーズやヘリムチーズの原産地とされるキプロスも両国の近くにあります。

 また,歴史的背景から考えても,かつてトルコが東ローマ帝国の支配下にあった時代や,逆にギリシャがオスマン帝国の支配下にあった時代を経験していることなどから,両国間で食文化の深い交流があり,お互い似たような料理が作られるようになったのでしょう


まとめ

 英語の文章で「It's Greek to me」という慣用句があります。

 直訳すると「私にとってはギリシャ語のようだ」となり,それが転じて「(難解なギリシャ語のように)ちんぷんかんぷんだ」という意味で使われます。

 ギリシャは,ギリシャ語をはじめ,理解することが難しいこともあるとは思いますが,だからこそ誰もが舌で明瞭に理解することのできる食の分野からギリシャを理解するというアプローチも実用的なのではないかと思います。

 ギリシャではカジュアルなレストランやパブのことを「タベルナ」と言いますが,食を通じてその国の文化や歴史を理解したいと思う私なら,真っ先に「タベルナ」へ行き,ギリシャ料理を思う存分食べるなぁ(笑)。


<参考文献>
 岡田 哲「世界の味探究事典」東京堂出版
 「大使館の食卓 おうちで簡単レシピ集」産経新聞出版

<店舗情報>
 「SPYRO’S(スピローズ)」(東京都大田区蒲田5-7-6)

<関連記事>
 「トルコ料理の特徴と主な料理1
 「トルコ料理の特徴と主な料理2 -神戸・「ケナン」のトルコ料理(前編)-
 「トルコ料理の特徴と主な料理3 -神戸・「ケナン」のトルコ料理(後編)-

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コメント

私が食べたランチはムサカとサラダでした。
メニューの写真を見たときはこれだけでお腹いっぱいになるの?と思ったけど、なりました(笑)
あのにコウジ菌さん、他にもいろいろ食べてるから、それは店主に心配されるはずです(笑)
マスティクア、飲んでみたいーーーー。スブラキも食べてみたいーーーー。
サガナキは、パッと見た瞬間、どうしてもナガサキに見えてしまって名前が覚えられませんsweat01

chibiaya 様

コメントいただき,ありがとうございます!

そうですね。メニューの写真を見ただけだったら,ムサカが実は結構大きくてボリュームがあるものだとは思わないですよね。
私はすぐに行ける所ではないので,お腹一杯になるかどうかのレベルではなく,どうにか食べ切れる量かどうかの限界レベルまで注文しようと思う訳です(笑)。だからお店の方から心配されるのです。

マスティクア,確かに珍しいドリンクですので,次回お食事に行かれる事があれば挑戦してみてください。
「ノンアルコールジントニック」ですから(笑)。

スブラキ,肉がしっかりマリネされて下味がついてますから,そのままでも美味しいのですが,レモンを絞り,ギリシャ特有の「ジャジキ」につけて食べるとギリシャ料理という実感がわいて,良いと思います。

サガナキかナガサキか,群馬のコロリンシュウマイかロリコンシュウマイか…。
お話がある度,私はますます記憶に残ります(笑)。
ただ…次回お店で注文する際に間違えないように注意しないと…(^^ゞ

アットホームでワイワイ賑やかな店内で,私は1人でしたが,時間があればもっと長居してもいいなと思えるようなお店でした。

おかげ様で蒲田で楽しいひとときを過ごせました。
お店の情報,ありがとうございました!

ギリシャはギリシャ神話で馴染みがあるくらいで、
その地の食には遠いとぉ~いつなサウスです。
食からそのはるか遠地を知るアプローチは大事ですね。
料理名の響きが良いです。
サガナキ!アナグラムみたいですね長崎って単語の。
溶けないチーズ!ファンタスティックです~☆

サウスジャンプ 様

サウスさん,コメントいただきありがとうございます。

私はギリシャ神話についてはほとんど知らないので,それを御存知のサウスさんを尊敬します。

おっしゃるとおり,食を通じてその国や地域を理解するというアプローチもあって,その方法も楽しいなと思います。

その国や地域の料理・食材から,その土地の気候や歴史,住んでいる人の生活習慣や文化などを明らかにしていくというのは,研究テーマにするだけの価値があり,取り組んでみるととても面白いと思います。

そしてこういう分析は,おそらく,深めれば深める程,「なーんだ,当たり前の事の積み重ねか」という結論になろうかと思います。
それを知っていただくのが私のブログのテーマでもあります。

アナグラムを御存知とは,さすがサウスさん!
ギリシャ語が,それこそ日本では馴染みが薄い言語だけに,余計に別の馴染みのある単語を思い浮かべるのかも知れませんね。
サガナキ県スブラキ市ムサカ四丁目とか日本の地名でありそう(笑)。

溶けないチーズ,これもよく考えると「とろけるチーズ」の反対のようで面白いですね(笑)。

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