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2017年12月

2017年12月31日 (日)

宇宙食の世界1 -スペースブレッド- スペースワールド グランドフィナーレを迎えて

 福岡県北九州市八幡東区にある宇宙のテーマパーク「スペースワールド」。

 いよいよ今日(2017年12月31日)がグランドフィナーレです。

 私も広島から何度か遊びに行き,楽しませてもらいました。

 スペースワールドは私にとって憧れの遊園地でした。


スペースワールド訪問

 今年(2017年)9月,最後にもう一度訪れておきたいと思い,スペースワールドへ行ってきました。

 これまで自動車で行った(連れて行ってもらった)ことしかありませんでしたが,今回は初めて電車で訪問しました。

(スペースワールド駅と813系電車)
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 スペースワールド駅のホームとJR九州のコーポレートカラーである赤色を配した813系電車です。
 JR九州はカラフルでカッコイイ電車が多いです。

 開園当初は枝光駅がスペースワールドの最寄駅でしたが,その後1999年にスペースワールド駅が開業し,この駅が最寄駅となりました。

 スペースワールド閉園後も駅名は変更されないようです。

 「いよいよ閉園か…」と少し複雑な気持ちでスペースワールド駅からスペースワールドへ向かいました。

(スペースワールド・エントランス)
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 エントランスには「SPACEWORLD THE FINAL 2017 27年間ありがとう」と掲げられていました。

 本当に閉園するんだなと実感しつつ,入園券を買って入園しました。

 あまり時間がなかったので,園内の様子を見て回るだけにしました。

 スペースワールドのシンボル,スペースシャトル模型です。

(スペースシャトル「ディスカバリー号」模型)
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 車中からこのスペースシャトルと大きなジェットコースターが見えると,ワクワクしたものです。

 ひととおり園内を散策した後,スペースワールドのショップへ行き,スペースワールドならではのお土産「宇宙食」を買って帰りました。


「SPACE BREAD(スペースブレッド)」

 缶詰に入った宇宙食のパン「SPACE BREAD(スペースブレッド)」のチョコレート味を購入しました。

(「SPACE BREAD(スペースブレッド)」説明文)
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 説明文には,
「宇宙の朝食はやわらかい。NASAの安全確認検査に合格し,スペースシャトルに搭載された”宇宙のパン”がご家庭でも楽しめます。特許製法で作り上げられた『SPACE BREAD』は,まるで焼きたてのようなやわらかさ。国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士と,ふっくらパンで爽やかな朝食を召し上がれ。」と説明されています。

(「SPACE BREAD(スペースブレッド)」缶詰)
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 缶詰の下部に小さく「この商品はスペースシャトルでも使用された商品です。」と記載されています。

 こういう文章があると,期待が高まります。

 早速ふたを開けてみましょう。

(「SPACE BREAD(スペースブレッド)」を開けた様子)
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 缶を開け,上から見た様子です。

 カニ缶のように,中身が白い紙で包まれています。

 中に円筒形のチョコレートパンが入っていました。

(「SPACE BREAD(スペースブレッド)」)
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 パンを取り出して,半分に切ってみました。

 中にチョコレートが練り込まれています。

 実際にいただいてみると,チョコレートデニッシュに近い味・食感でした。

 ただ,見た目でもおわかりのように,市販のデニッシュに比べ,もっとフワフワで軽い食感でした。

 想像していたより普通のデニッシュパンでしたが,こうしたごく普通のパンが宇宙でも食べられるようになったのは,食品加工技術が進歩したおかげだと言えるでしょう。


夢をのせて旅立つスペースワールド

 1990年4月22日の開園から27年。

 宇宙への夢と憧れを提供してくれたスペースワールド。

 スペースワールドのテーマソング「GO TO THE SPACE WORLD」を聴くと,今でも心躍ります。

 このテーマソングが入った動画を御紹介します。

 スペースワールドがグランドオープンした時の様子を紹介した映像で,1:34からテーマソングが流れます。

(「SPACE WORLD THE FINAL~27年間のあゆみ展・展示映像制作」 )

(YouTube「SOEITVアーカイブ」)

<「GO TO THE SPACE WORLD」(オリジナルバージョン)>
 旅立つのさ 夢をのせて はるかな時を超え
 無限の星 光の海 めぐり会える SPACE WORLD
 輝く星が 導くのさ君を 未来は今ひろがるよ
 Go to the space Go to the SPACE WORLD
 Go to the space Go to the SPACE WORLD
 銀河の果てまで
 Go to the space

 見上げていた かなたの星 今なら夢じゃない
 雲をやぶり 大気を抜け 飛び立つのさ space ship
 誰も知らない 未来が君を待つ さあ始まる 未知の旅
 Go to the space Go to the SPACE WORLD
 Go to the space Go to the SPACE WORLD
 ときめく宇宙へ
 Go to the space

 Go to the space Go to the SPACE WORLD
 Go to the space Go to the SPACE WORLD


 夢をのせて旅立つスペースワールド
 27年間ありがとう!

2017年12月30日 (土)

小江戸川越の耳かき -埼玉県川越市-

埼玉県内の観光地を調べた結果,川越にお土産がたくさんありそうだったので,池袋から東武東上線に乗り,ご当地耳かきを探しに出掛けました。

「小江戸川越」と呼ばれるだけあって,小江戸の雰囲気のある通り沿いにお土産屋さんはたくさんあるのですが,ご当地耳かきだけは探せど探せどなかなか見つかりませんでした。

お土産屋さん,雑貨店,菓子屋横丁などの店という店を探し回って,やっとあったのが今回御紹介する耳かきです。
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一番街「鍛冶小町堂」で売られていました。
木製の携帯用耳かき入れで,紐をゆるめてふたを開けると,中に竹製のミニ耳かき1本と綿棒2本が入っています。
耳かき派も綿棒派も愛用できる耳かき入れです。
入れ物には「小江戸川越」と地名も記載されているので,お土産にも向いていますね。
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お店の方に「川越の耳かきはありますか」と尋ねたところ,この耳かきを教えていただきました。
帰り際,お店の方が「こんな耳かきしかなくてすみません」とおっしゃったので,私は「こんなに素晴らしい耳かきがあるなんて感動モノですよ!」と素直な感想をお伝えし,ほっと胸をなでおろして川越を後にしました。

2017年12月28日 (木)

チャイナ服の男女の耳かき -神奈川県横浜市-

横浜中華街で見つけたチャイナ服姿の男女の耳かきです。

「スタンド」と呼ばれる飾り用の耳かきです。

スタンド耳かきは珍しいので,売られているのを見つけた時はとても嬉しかったです。

お店の方にも,「耳かきを集めているので,こういう耳かきに出会えて嬉しいです。」と私の気持ちをお伝えしました。

ただ,値段もそれなりなので,1つ(男性)だけ買おうとレジへ持っていくと,「耳かきをコレクションされているなら,女の子とペアがおすすめですよ。」とすすめられ,私も「それもそうだな」とすぐに思い直し(笑),ペアで購入しました。

耳に突っこんでいる耳かき,もし等身大にしたら,耳かきは物干し竿ぐらいの大きさがあるでしょうね(笑)。

こういう中華雑貨を見て回るのも,横浜中華街の魅力の1つです。
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2017年12月24日 (日)

クリスマスディナー -日本でクリスマスが年中行事となった理由-

クリスマスディナー

 今年も海辺のレストランで生演奏を聴きながらクリスマスディナーをいただくことが出来ました。

 音楽はフルートとキーボードを使っての生演奏でした。

 曲目は,「神の御子は今宵しも」,「さやかに星はきらめき」,「アヴェマリア」,「そりすべり」,スコットランド民謡の「The water is wide」など有名なクリスマスソングを中心とした構成でした。

 毎年,このレストランで生演奏を聴きながら食事すると,1年頑張った御褒美をいただいてるような気がし,この日を迎えられて良かったとしみじみ思ってしまいます。

 生演奏を聴きながらいただいた料理とデザートを御紹介します。

(前菜)
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 前菜は写真右上から時計回りに,殻付牡蠣のアヒージョ,鴨のスモーク,牛肉のブルスケッタ,スモークサーモンの野菜マリネ,海老のフリット,キッシュ,そしてエスカベッシュです。

(漁師風魚介のスープ)
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 「漁師風」という名称は,イタリア料理やフランス料理でよく登場しますが,要するに魚介が中心の料理という意味です。

 このスープも魚や海老,イカなど魚介がたっぷり入った濃厚なスープに仕上げられていました。

(牡蠣のトマトパスタ)
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 大粒の牡蠣がのせられたトマトパスタです。

 牡蠣の火の通し加減が絶妙で,トマトソースとの相性も良いことがわかりました。

(真鯛のソテー)
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 皮はパリッと香ばしく,身はジューシーな真鯛のソテーです。
 焼いたズワイガニやゴボウのチップスも添えられています。

 真鯛のソテーはホタテのムースがはさまれ,ミルフィーユ仕立てとなっていました。
 雲丹とズワイガニのソースでいただきました。

(ローストビーフと豚ヒレパイ包み)
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 厚めにカットされたローストビーフと豚ヒレ肉のパイ包みです。
 赤ワインソースでいただきました。
 いずれも焼き加減が丁度良く,ボリュームも満点でした。

(クリスマスデザート)
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 グラスに入ったティラミスとイチゴがのせられたロールケーキ,そしてコーヒーのデザートです。

 クリスマスらしい豪華な料理を堪能しました。

(生演奏の様子)
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 そのうちに演奏もラストとなり,大きな拍手とともに終了しました。

 その瞬間,私は「言っていいのかな」と思いつつ,勇気を振り絞って大勢のお客さんがおられる前で声を出しました。

 「アンコール!!」

 周りのお客さんもそれに気付いてくださり,「アンコール!アンコール!」と次第に声と手拍子が大きくなりました。

 すると演奏者から「嬉しい~!」とお返事をいただき,アンコールの曲が演奏されました。

 「蛍の光」でした。

 この曲で今回のディナー,そして今年1年の締めくくりとすることが出来ました。

 今年も美味しい料理と楽しい音楽で幸せな時間を過ごすことが出来ました。


日本でクリスマスが年中行事として定着した理由

 音楽はクリスマスの曲が中心だったのですが,演奏者から「日本でキリスト教の行事であるクリスマスがここまで受け入れられているのはスゴイことですよね。」とお話がありました。

 確かによく考えてみると,神道や仏教が中心の日本にあって,ここまで定番の年中行事として受け入れられているのはスゴイことだと思います。

 いろんな理由があってのことと思いますが,私はクリスマスが日本人の思想や,ほかの日本の年中行事とうまく融合出来ていることが1つの大きな理由だと思います。

 日本人には,神道の「お祓い(おはらい)」にみられるように,これまでのことは一度リセットし,新たな気持ちで次の段階を迎えたいという思いがあります。

 季節的にみれば寒く,ややもすれば気持ちまで沈みがちですが,日本人には何かしら1年の積り積もったものを発散・清算して,改めて清々しい新年を迎えたいと思う気持ちが高まるシーズンでもあります。

 年末に忘年会をするのも,1つの区切りをつけ,新たな気持ちで新年を迎えたいという思いがあるからです。

 そもそもキリスト教が,寒さが厳しく,1年を通じて最も日の短い冬至に近い日をイエス・キリストの誕生日に設定したことは,その後に人々に夢や希望を与えるという意味でも大きなメリットがあったからでしょう。

 その欧米の宗教行事を宗教色を薄め,日本の年中行事として組み入れることで,日本人にとっても,明るく楽しい時期に変化させることが出来ます。

 消費から考えても,サラリーマンの場合はボーナスなどの臨時収入もある時期で,クリスマスを行事に取り込むことで,食品業界だけでなく幅広い業界の需要を喚起させることが期待出来ます。

 こうして年末に,社会的な行事としての忘年会と個人的な行事としてのクリスマスが日本人の共通認識と合致する行事として,お歳暮などと同様に年末の一大イベントに成長したのだと思います。
 (もちろん,社会的な行事としてのクリスマス,個人的な行事としての忘年会という形態もありますが。)

 日本人は外国の文化を日本人に合うように工夫し,自分達のものとすることにとても長けています。

 クリスマスもそのような感じで受け入れられ,日本の年中行事の1つとして定着しているのでしょう。


<関連記事>
 「クリスマスディナー -フルート・ピアノ・チューバの生演奏とアメイジング・グレイスの意味-

2017年12月17日 (日)

日本料理の特徴と主な料理2 -料理人 平野寿将さんから熟成魚の魅力を学ぶ-

「引き算の料理」

 日本料理は「引き算の文化」です。

 「引き算の文化」とは,必要以上に手を加えないこと,本当に必要なものだけを用いること,そして素材そのものの味を引き出すことを良しとする文化のことです。

 引き算しても美味しい料理に仕上げるためには,産地や仕入先を厳選し,食材を新鮮な状態で入手し,その食材の最高の部位を用い,食材の味を引き立てる水・だし・調味料などにこだわり,瞬時に料理することが求められます。

 今回は,こうしたことを実践され,自らの料理を「引き算の料理」とおっしゃる和の料理人 平野寿将(ひらのひさま)さんの世界を御紹介したいと思います。


「馳走啐啄一十」での平野寿将さんとの出会い

 今回,知人の紹介で広島の日本料理店へ行く機会がありました。

 「馳走啐啄一十」(ちそうそったくいと)という,料理人 平野寿将さんが手がけておられるお店です。

 日本に住んでいながら,日本料理は高級で敷居が高いというイメージがあり,なかなか味わえる機会がなかっただけに,今回はあらゆることを勉強させていただこうと思いつつ,お店を訪問しました。

(「馳走啐啄一十」玄関)
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 「馳走啐啄一十」は一流の日本料理店なので,私が訪問すると知った瞬間,周囲の人達からは,「品良く」,「気の利いた話を」,「恥ずかしくない服装で」…など,親切に「御指導」いただきました(笑)。

 あまりに言われると,普段の私はその逆なのかと思ったりもしましたが,食事の際のマナーは自分のためではなく,店内のほかのお客さん達,お店の人々,そして同伴の人に対する敬意と気遣いだと心得ていますので,それなりの服装で訪問しました。

 お店の入口に,ワインセラーのような昆布の貯蔵庫「昆布セラー」が設置されていました。

(「昆布セラー」)
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 福井県敦賀市「奥井海生堂」の蔵囲(くらがこい)昆布です。

 1年以上蔵で寝かされた昆布で,ワインと同様,「ビンテージもの」として取り扱われています。

 昆布の旨味成分であるグルタミン酸の白い粉が浮いているのがわかります。

 これは期待できます。

 開店時刻少し前の店内に入ると平野さんが厨房で調理の準備をされていました。

 「あ,あの有名な平野さんだ」と思ったのもそこそこに,開口一番,私が平野さんにお話ししたのは,「あのーすみません,トイレに行かせてください。」でした。

 「品良く」,「気の利いた話を」…あの周りからのアドバイスは一体何だったのでしょう(笑)。

 最初に手を洗い,落ち着いてじっくり味わうのが私の流儀なのです。

 でも,これで場は一気に打ち解け,私は平野さんの調理台の真正面のカウンター席に案内していただきました。

 あの有名な平野さんと1対1でお話しが出来るとは何と言う幸運!
 緊張よりも嬉しさで一杯になりました。

 誘ってもらった隣席の知人に心から感謝しました。

 平野さんはとても気さくな方で,平野さんからいろいろ話しかけてくださったこともあり,会話が弾みました。

 冒頭,私は平野さんに「今回フランスの美食ガイドブック『ゴ・エ・ミヨ(Gault & Millau)』の日本版第2号にお店が紹介されることとなり,心からお祝い申し上げます。」とお話ししました。

 この話を皮切りに,広島の軟水とだしの話,広島の牡蠣養殖の話,生の刺身と熟成魚の違い,仕入れ先への並々ならぬこだわりの話など,いろんな興味深いお話を伺うことができ,とても勉強になりました。

 お菓子にも使われるほど甘味のある加賀蓮根の料理が出された際,私は金沢の料亭「大友楼」で味わった郷土料理の治部煮が頭に浮かびました。

 そこで,治部煮などに用いられる加賀野菜「金時草(きんじそう)」のお話をしました。

 すると平野さんの料理される手が一瞬止まり,常連の知人に向かって「(連れてきた彼は)詳しいねえ。」と言っていただけました。

 一流の和の料理人からそう言っていただけたことがとても嬉しかったです。

 その後,隣の知人からは「彼は食の知識はあるけど,それを発揮できる場がないから(笑)」と余計な事まで言われましたが…(笑)。

 終始和やかな雰囲気で接してくださった平野さんも料理を作る姿は真剣勝負そのものでした。

 料理が一品一品出されるたびに,一瞬ピーンと張りつめた緊張感を感じるのです。

 いただく私も全身全霊を料理に傾け,平野さんの料理に込めた思いを少しでも感じ取れるよう努力しました。


平野寿将さんの料理の世界

 今回味わった料理を御紹介します。

(加賀蓮根のすり身)
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 先程御紹介した加賀蓮根のすり身です。

 加賀蓮根はお菓子に使われているぐらい甘味の強い蓮根で,蓮根そのものの味を自慢のだしと一緒に堪能しました。

(香箱ガニの甲羅盛り)
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 香箱ガニは,北陸地方でとれる雌のズワイガニのことで,小ぶりながらカニの身,卵,カニ味噌がぎっしり詰まっていることが特徴です。

 写真左上が厚岸の雲丹,その下側には「内子(うちこ)」と呼ばれるカニ味噌,中心に白いカニの身,右上が「外子(そとこ)」と呼ばれるカニの卵で,カニ酢に合うよう彩り豊かなキュウリや食用菊も添えられています。

 カニの身や卵はそのままで飲めるほどすっきりした極上ポン酢をかけていただきました。

 雲丹は昆布や海藻を餌とするため,良質な昆布が採れる海には良質な雲丹がいることになります。

 広島に居ながら,その極上の昆布(だし)も雲丹もいただけるのですから,贅沢の極みですね。

(蕪のすり流し椀)
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 お店での正式名称は「広島の竹原市の湧水蔵囲い26年度収穫の船泊浜産天然利尻昆布がベースの蕪のすり流し椀」と長い名前となっています。

 お吸い物にすりおろした京都の蕪(かぶ)が入ったいわゆる「おろし汁」で,とてもシンプルな料理なだけに,水やだしの真価が問われることとなります。

 極められた昆布だしの旨味を直球勝負で味わえる一品でした。

(焼き白子と瀬戸内蛸の煮物)
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 備長炭で焼いた佐渡の鱈の白子と瀬戸内海で採れた蛸の煮物です。

 蛸がとてもやわらかかったのですが,これは香川県寄りの瀬戸大橋近くの海に生息する蛸だからこその食感だと教えていただきました。

 これとは別に,白子ポン酢で生の白子もいただきました。

 そしていよいよ,お店自慢の熟成魚の刺身です。

 熟成魚とは,釣った魚を「脳殺」→「放血」→「神経締め」→「氷結」といった手順で手当てした後,低温で寝かせ,釣ったばかりの魚の刺身よりも,一層香りと旨味を引き立たせた魚のことです。

(カワハギと鯛)
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 最初に72時間熟成のカワハギと58時間熟成の鯛の刺身が出されました。

 小皿には,刺身の調味料として27年継ぎ足している極上ポン酢,醤油,粗削りの塩の3種類が用意されていました。

 余分な水分は抜け,透き通ってプリプリした身になっていました。

(シマアジ)
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 こちらは五島列島で採れた30日間熟成のシマアジです。
 これ一切れで1,000円するそうです。

(クエ)
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 平野さんから,「これはねぇ,ヤバいよぉ。」と威勢よく出していただいた,長崎で採れた幻の高級魚クエの刺身です。
 そう言われると落ち着いてクエません(笑)。

(イシガキダイ 生ハムのせ)
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 22日間熟成のイシガキダイです。イベリコ豚の生ハムがのせられています。

 不思議な組み合わせに見えましたが,いただいてみるとその理由がすぐに理解できました。

 熟成したイシガキダイの刺身がまるでチーズのようにねっとりとしていて,チーズに生ハムを合わせる感覚でいただくことができるのです。

 平野さんが,カウンター越しの私の真正面で,見事な包丁さばきで切られた刺身をその都度「はい,これ食べてみて!」と自信たっぷりに出していただけたので,料理人と客との一体感が感じられました。

 御紹介した刺身のほかにも,金目鯛,ヒラマサ,カンパチなどいろんな熟成魚の刺身を味わうことができました。

 お店の奥にある魚の熟成用冷蔵庫を見せていただきました。

(熟成用冷蔵庫)
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 庫内温度は3.8℃となっていました。
 魚にきちんとした処理を施し,温度管理を行うことで,生の魚でも驚くほど日持ちさせることができるのだなと感心しました。

(源助大根・里芋・水菜の煮物)
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 こちらは,加賀野菜の源助大根と里芋・水菜の煮物です。おぼろ昆布がのせられています。

 この煮物の決め手は,やはり「だし」です。
 少々お行儀が悪いですが,平野さんにお許しを得た上で,だし汁も飲み干しました。
 でもこれは私から平野さんへの最高の敬意でもありました。

(ローストビーフと椎茸旨煮)
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 意表を突いて刺身のようなローストビーフと椎茸旨煮が出されました。

 わさびと和からしでいただきます。

 椎茸は岡山県美作市「ムサシ農園」の天然水かけ流しで作られた肉厚の椎茸で,アワビのような食感でした。そして調味料なし,水で煮ただけなのが信じられないほど旨味を強じました。

 添え野菜は「ハマボウフウ(浜防風)」と呼ばれる海岸に面した砂地に自生している珍しい植物です。

 そしていよいよシメのご飯となりました。これがサプライズでした。

(トリュフといくらの炊き込み御飯)
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 何とご飯にたっぷりのいくらと刻まれたトリュフがのせられているのです。

 これはいくら何でも文句のつけようがありません。

 あらかじめ米の中にトリュフを入れておき,米にトリュフの香りを浸み込ませておいたり,包丁で微妙に角度を変えながら刻むなど,トリュフの風味を最大限引き出すための工夫が施されています。

 また黒の秋トリュフと冬トリュフが使われており,トリュフの味の違いも楽しめました。

 さらに,山梨・甲府産の溶いた生卵をかけ,刻んだトリュフの香りを卵で閉じ込めた卵かけご飯もいただきました。

(トリュフといくらの炊き込み御飯(卵かけ))
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 お客様に今日の食事が忘れられない思い出となり,感動を味わっていただきたいという平野さんの気持ちが込められた料理でもあるのです。

 その後,小豆アイスの上に抹茶ムースがのせられたデザートも堪能しました。

 平野さんとの楽しい会話とともに,素材と技を極めた数々の美味しい料理を堪能させていただき,思い出に残る食事となりました。

 広島にお越しになられた際には,「広島の水は世界一」・「日本料理は水の料理」とおっしゃる平野寿将さんの料理を味わい,広島の味を堪能していただくのもよろしいかと思います。


熟成魚の魅力

 日本料理は,鮮度が重視され,生食が好まれる傾向にあります。

 日本人に刺身が好まれることは,その最たる例でしょう。

 ならば,「わざわざ魚を熟成させることなく,新鮮なうちに刺身で食べるとよいのでは」という考えもあるでしょう。

 その考えは正しいですし,実際私たちが刺身として食べているのは,そのほとんどが新鮮なうちに食べる刺身です。

 では手間暇かけて熟成魚にすることのメリットは何なのでしょうか。

 その一番のメリットは熟成させることでうま味成分(イノシン酸)を増加させることにあります。

 日本料理は,発酵や熟成によって「うま味」を強め,肉に代わるうまさを追及してきた料理でもあるのです。

 取ってきた魚を活け締めにすることで,なるべく新鮮な状態を継続しつつ,熟成させる(寝かせる)ことによってうま味を増加させるのが熟成魚の目指すところです。

 したがって,熟成魚には,魚を活け締めにし,保存・熟成させ,鮮度と熟成度のバランスがとれた時期を見極められる高度な技術,知識,経験や勘が求められることになります。

 熟成肉に比べ,熟成魚を売りにする料理店が少ないのも,こうした半端ないレベルの高さが1つの理由なのでしょう。

 魚が持つ本来のうま味を極限まで引き出したものが熟成魚であり,その熟成魚の刺身こそ,日本料理の特徴である「引き算の文化」を象徴する料理の1つなのです。


<関連リンク>
 「馳走啐啄一十」(広島市中区富士見町5-1 随木ビル1階)
 「hisama.net」(平野寿将さんの公式ウェブサイト)
 「Gault & Millau」(「ゴ・エ・ミヨ」)

<関連記事>
 「日本料理の特徴と主な料理1 -日本料理は引き算の文化-

2017年12月10日 (日)

日本料理の特徴と主な料理1 -日本料理は引き算の文化-

日本料理の特徴

 日本料理というと,少しかしこまった表現ですが,日常の食事から料亭の料理まで,多種多用な料理があります。

 日本料理の特徴を列挙してみますと,

(1)季節感を大切にした目で楽しむ料理であり,全体的に淡泊で繊細な味付けが中心となっている。

(2)食材の鮮度を重視し,素材の持ち味を生かした料理が多い。

(3)海に囲まれており,長く肉食禁止とされていたため,米・野菜・魚中心の食文化が形成されてきた。

(4)世界でも稀な,乳製品や動物性脂肪に頼らない食生活を送ってきたため,それに代わる良い「水」,だしなどの「うま味」,(もち)米のような粘り気のある「もちもち感」が求められる。

(5)生の魚を切って盛り付ける刺身や,昆布・鰹節・いりこなどから一瞬にして作られる「だし」など,調理には時間よりも調理人の技が問われる。

(6)刺身,生卵,生野菜など生食を好む傾向がある。

(7)温暖湿潤な気候であることから,発酵食品(日本酒・味噌・食酢・醤油・納豆・鰹節・漬物など)が数多く作られ,食生活の基本となっている。

(8)長い歴史の中で主体性がなかったために,逆に世界中の食を受け入れて同化させている。(てんぷら・カレーライス・とんかつ・パン食など。)

 以上,いろいろと挙げてみましたが,世界の料理と比べて,日本料理はかなり特殊な料理であることは間違いありません。


日本料理は「引き算の文化」

 日本料理は,よく「引き算の文化」と表現されます。

 これに対し西洋料理,インド料理,中国料理などは,様々な食材を加え,スパイスやハーブを加え,乳製品や油脂を加え,熱を加え…と「足し算の文化」であると表現されます。

 日本料理の「引き算の文化」について刺身を例に御説明すると,魚に熱を加えず生のままで,血抜きをし,余分な部位を取り除き,形を揃え,そのたった何切れかを皿にのせ,盛り付けには皿の余白を重んじ,スパイスなどで味付けせず醤油や塩などシンプルな調味料のみで,素材そのものの味を楽しむ…というように常に「引く」ことが良しとされているのです。

(刺身と調味料)
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 写真の刺身は熟成させたカワハギと鯛の刺身です。
 調味料は左からポン酢,醤油,粗削りの塩で,とてもシンプルな構成です。

 煮物においても,昆布や鰹節,いりこなどからだしを引き,素材そのものの味をいかに引き出すかが問われます。

 日本酒も良い例です。

 特に純米大吟醸酒などは,原材料は米,米麹,水だけで,アルコールすら添加されません。
 酒米は雑味をなくすために丸い玉のようになるまで削られますし,米や水そのものの味や杜氏の技術力で日本酒の出来栄えが決まってしまいます。

 このように,日本料理には必要以上に手を加えないこと,本当に必要なものだけを用いること,そして素材そのものの味を引き出すことを良しとする「引き算の文化」があるのです。

 この文化は,日本においしい水が豊富にあるからこそ可能だったとも言えます。


まとめ

 現在,世界各国の様々な料理が流入している日本ですが,それらの料理によって日本人の食の価値観,嗜好,好まれる食感(テクスチャ)などまで大きく変化させられるわけではないと思います。

 それゆえに,こうした日本料理の基本的な特徴を理解しておけば,日本料理そのものだけでなく,日本の食に関係するあらゆる分野・業種で,研究やビジネスのヒントとなることでしょう。


<参考文献>
 石毛直道・鄭大聲 編「食文化入門」講談社
 岡田 哲「食の文化を知る事典」東京堂出版

2017年12月 8日 (金)

大阪のおばちゃんの耳かき -大阪府大阪市-

大阪はご当地耳かき・バラエティ耳かきの宝庫です。

お土産用耳かきは郊外の観光地や温泉街で売られていることが多いのですが,大阪は街中でもたくさんの耳かきが売られているのです。

今回は大阪のおばちゃんの耳かきを御紹介します。
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大阪のおばちゃんが「大阪のおばちゃん」と書かれたビニール袋(←ありえへん!)を手にぶらさげ,大声で笑っています。

包装の台紙に大阪のおばちゃんの特徴が書かれていました。

・髪はショートか軽いパンチパーマ
・髪の色は茶・紫・金
・小太り
・ヒョウ柄好き
・スパッツにサンダル
・目立ちたがり
・何でも値切る
・誰にでも声をかける
・しかも声がデカイ
・しゃべりながら叩く
・タダに目がない
・世話やき
・カバンにいつもあめちゃんが入っている
・人情味があふれている

いくら大阪とは言え,言い過ぎなのでは?と小心者の私はつい思ってしまうのですが,大阪には,むしろそれをネタにし,笑い飛ばせるだけの活力や雰囲気があるのでしょう。

そんな期待を裏切らない大阪がめっちゃ好きやねん(笑)。

2017年12月 3日 (日)

ベトナム料理の特徴と主な料理 -バインセオ・ブンチャー・バインベオ・バインフラン・フォー-

ベトナム料理の特徴

 東南アジア,インドシナ半島東部に位置するベトナムは,地理的に大国の中国やインドに近く,中国やフランスそしてアメリカに統治されてきた歴史も有しています。

 そのため,食文化についても,東南アジアの伝統的な料理(「ニョクマム」などの魚醤,パクチーをはじめとする各種ハーブ類,ココナッツミルクなどを用いた料理)を守りつつも,中国料理,フランス料理,アメリカ料理そしてインド料理(香辛料などを多用する料理)の影響も強く受けたものとなっています。

 中国や欧米の食文化の影響を受けていることもあり,食の制約(タブー)はゆるやかです。

 稲作が盛んなことから米食が中心で,米はご飯だけでなく,米粉を加工したライスヌードル(フォーなど)やライスペーパー(生春巻など)としてもよく食べられています。

 また,海岸線が長いので海の幸にも恵まれています。

 味で言えば,ベトナム料理は,タイ料理の特徴である5つの味覚(辛味,酸味,甘味,塩味,旨味)が複雑に絡み合った味と同じ傾向にあると言えるでしょう。

 ただ,タイ料理ほどそれぞれの味が強く主張していません。

 また,中国料理ほど油を多く使わず,フランス料理の洗練された調理法も取り入れられているため,比較的マイルドな味付けになっており,日本人にも食べやすい料理が多いと言えます。


バインセオ

 広島に本格的なベトナム料理店がオープンしたとの情報を得たので,訪問してみました。

 アラカルトでの注文だったので,ベトナムを代表する料理を選んでみました。

(バインセオとライスペーパー)
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 ベトナムの代表的な料理の1つ「バインセオ」です。

 もやし,豚肉,海老などを一緒に炒め,炒めた具をオムレツのように皮で包んだ料理です。

 皮は米粉・ココナッツミルク・ターメリックなどを混ぜた生地を薄く伸ばして焼いたものです。

 お店の方から,「ライスペーパーにバインセオをのせ,パクチーやレタスなどの野菜を添えて,それらを包み,つけダレをつけて召し上がってみてください。」と食べ方を教えていただきました。

(バインセオとヌクチャム)
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 つけダレはニョクマム,酢,ニンニク,レモンなどで作ったタレに人参や大根の千切りを加えたもので,「ヌクチャム」と呼ばれます。

 日本の「紅白なます」とよく似た味がしました。

 弾力のあるライスペーパー,パリパリの皮,シャキシャキのもやし,豚肉や海老の旨味,アクセントとなるパクチーを1つにまとめ,甘酸っぱいヌクチャムをつけていただくと,様々な味や食感を一度に楽しむことができました。

 バインセオは,クレープやお好み焼とよく似ていますが,この発想は,フランスのそば粉や小麦粉を使ったガレットやクレープにも相通じるところがあるように思いました。


ブンチャー

 数あるベトナム料理の中で,ぜひ一度味わってみたいと思っていた料理が「ブンチャー」です。

 ベトナムを旅行されたKhaawさんのブログ記事を読んで知りました。

 お店のメニューにブンチャーがあったのですが,平日のランチセットだけの料理となっていたため,訪問した日曜日のメニューにはありませんでした。

 でも,そこで簡単に諦めないのが私流(笑)。

 ブンチャーを味わってみたい旨をお店の方にお話しすると,こころよく応じてくださいました。

(ブンチャー)
Photo_3

 大皿にボリュームたっぷりのブンチャーが用意されました。

 「ブン」はそうめんのような細い米粉麺(ビーフン),「チャー」は豚肉という意味だそうです。

 どっさり盛られたそうめんのようなブン,その上には炭火焼きの豚バラ肉がのせられています。

 さらに挽き肉・人参・春雨などの具が入った揚げ春巻や,パクチー・レタスなどの野菜も皿に盛られていました。

 そしてよく見ると,つけダレの甘酸っぱいヌクチャムの中にも炭火焼きのつくねが3つも入っていました。

(ブンチャー(ヌクチャム))
Photo_4

 魚醤で味を調えた汁気の多い紅白なますのようなタレの中に,ビーフン,焼肉,つくね,野菜などを入れ,つけ麺としていただくイメージです。

 日本のそうめんのような食べ方ですが,肉があるので,もっと豪快でボリュームがあります。

 お店の方が,このブンチャーは,アメリカのオバマ前大統領がベトナムで召し上がったものと同じものだと自慢しておられました。

 韓国の「プデチゲ」やインドネシアの「ナシゴレン」・「ミーゴレン」など,少し前までマイナーな存在だった海外の料理が,日本で徐々に知られ,人気を得るようになった事例は多々ありますが,この「ブンチャー」も同様に今後日本で紹介され,ヒットする可能性は十分にあるように思いました。


バインベオ

 「バインベオ」は,米粉を蒸した餅料理・餅菓子のことで,ベトナム中央部に位置するフエの宮廷料理の1つです。

(バインベオ)
Photo_5

 米粉を水で溶いた生地を型に流し,蒸して餅のように固められています。

 上にのせられた黄色いものは,小豆に似た豆を蒸したものだそうです。

 仕上げに餅の周りにココナッツミルクがかけられています。

 もっちりと仕上がった米粉の餅には,ほんのりと甘味が感じられ,ココナッツミルクや豆と一緒にいただくと,より美味しくいただけました。

 今回のバインベオは甘いデザートとして用意されていましたが,海老や豚肉をのせて料理の前菜やおやつとして食べられることも多いようです。

 ココナッツミルクは東南アジアの代表的な食材ですが,米粉を使って「蒸す」という調理法は中国から受けた調理法だと思います。


バインフラン(ベトナム風プリン)

 デザートは一品だけで済ませる予定でしたが,お店の方からいろんなお話を伺ううちに,プリンが一押しだと伺ったので,追加でいただくことにしました。

 ベトナムではプリンのことを「バインフラン」と呼ばれているようです。

(バインフラン(ベトナム風プリン))
Photo_6

 卵の白身は使わず,黄身だけで作られたカスタードプリンなので,とても濃厚な,これぞカスタードプリンの王道と言えるような味がしました。

 残った白身は,まかないで出されているという涙ぐましいお話まで伺いました(笑)。

 併せて,ベトナムでプリンがよく食べられているのは,フランスがベトナムを統治していた時代に,フランスのお菓子としてもたらされたからだと教えていただきました。

 フランス料理には,卵や牛乳などの液体を型に入れて蒸し,プリンのように仕上げた「フラン」と呼ばれる料理・菓子があります。

 今回御紹介したベトナムのお菓子「バインフラン」の「フラン」も,このフランスの「フラン」と関連性があると思います。

 では頭に付く「バイン」はどういう意味でしょうか。

 次に,この「バイン」について少し整理しておきたいと思います。


ベトナム料理には「バイン」という名の料理・菓子が多い

 ベトナム料理には,今回御紹介した「バインセオ」,「バインベオ」,「バインフラン」をはじめ,「バインミー」(バゲット(フランスパン)のベトナム風サンド),「バインクオン」(ベトナム風水餃子),「バインスー」(シュークリーム)など,頭に「バイン」と付く料理やお菓子が数多く存在します。

 「バイン(bánh)~」はベトナム語で「餅,粉もの,お菓子」といった意味があり,漢字では「餅」と表現されます。

 これは中国の「餅(ビン)」という言葉に由来しているようです。

 中国では「麺(ミエン)」は穀物の粉の総称,「餅(ビン)」はその「麺」の中でも小麦粉食品を指す言葉として用いられています。

 その意味が派生して,ベトナムでは「餅,粉もの,お菓子」に「バイン」が使われるようになったのでしょう。

 ただ,ベトナムでの「粉もの」は小麦粉よりは米粉が中心となります。

 小麦粉ではなく米粉が中心となっているのは,ベトナムの米食中心の食事文化が反映されているからでしょう。

 こうして「バイン」という言葉は,ベトナムの米粉を中心とする様々な料理や菓子を表現する言葉として広く用いられるようになったのです。


食文化のオリジナリティとは

 中国での元来の意味からかけ離れてしまっている現象は興味深いですが,それは日本でもみられます。

 日本では「麺」と言えば(穀物の粉ではなく)粉ものを細長く加工したそばやうどん,ラーメンなどを言いますし,「餅」と言えば(小麦粉ではなく)もち米から作られるお餅を言うことが一般的ですよね。

 だから日本から見れば,逆に中国での意味の方が間違っているように思えるわけです(笑)。

 こうした現象がみられる一方で,当然ながら,中国での意味と同じ意味で用いられているベトナム料理もあります。

 その代表例が「フォー」(米粉の麺)です。

(フォー)
Photo_9

 中国では米粉の麺を「粉」と表現しますが,フォーは,この「粉」のベトナム語での発音「ファン」が変化して「フォー」と呼ばれるようになったという説が有力です。

 今回御紹介した「ブンチャー」の「ブン」も「ビーフン(米粉)」の「粉」からそう呼ばれるようになったのでしょう。


 他の地域や国の食材,調理法,言語,文化などを受け入れる際には,一旦その地域や国で都合がよいように組み換え・加工がなされた上で受け入れられ,オリジナリティを持たせていることがよくわかる事例だと思います。


<関連記事>
 「ベトナムのつけ麺 ブンチャー Bun cha; Vietnamese noodle with pork soup
 (Khaawさんのブログ「-彩雲たなびく天使の街/City of angel under cloud iridescence-」)

<関連リンク>
 「HANOI PHO(ハノイ・フォー)」(広島市中区白島北町3-1 河瀬ビル101)

<参考文献>
 石毛直道『世界の食べ物 食の文化地理』講談社学術文庫
 沼野恭子編『世界を食べよう!東京外国語大学の世界料理』東京外国語大学出版会

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