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2018年2月11日 (日)

ロシア革命と日本のバレンタインチョコレート -神戸・御影のバレンタイン広場訪問-

日本のバレンタインデーとチョコレート

 2月14日はバレンタインデーです。

 日本でも年中行事の1つとなり,チョコレートをはじめとする様々な商品が店に並びます。

 日本でバレンタインデーと言えば,「女性から男性へチョコレートを贈る」というイメージが強いですが,欧米では男女双方向で,プレゼントもチョコレートに限らず食事,花,カード,衣服などバラエティに富んでいることから,このイメージは日本独自の風習と言えそうです。

 では「日本のバレンタインデー=チョコレート」という図式が,いつどういう経緯で確立されたのでしょうか。

 このことについて,まとめてみたいと思います。


第一次世界大戦とロシア革命

 20世紀前半,経済成長を遂げるヨーロッパは,国同士で勢力争いをするようになります。

 それが顕著だったのが,海軍力増強に乗り出したドイツと,制海権を堅持したいイギリスとの対立です。

 ドイツはオーストリア,イタリアと手を組み(三国同盟),イギリスはフランス,ロシアと手を組み(三国協商),両陣営が対立することとなります。

 この対立は,やがて多民族が暮らすバルカン半島でのスラブ人(ロシアが支援)とゲルマン人(ドイツが支援)の民族運動にまで影響を及ぼしました。(「パン・スラブ主義」と「パン・ゲルマン主義」の対立)

 こうした状況下で,1914年,ボスニア・サラエボでオーストリアの皇太子がスラブ系のセルビア人に狙撃される「サラエボ事件」が起こります。

 そしてこの事件をきっかけに,全世界を巻き込んだ第一次世界大戦が勃発したのです。

 三国協商側の国とのつながりが強かった日本も参戦することとなった第一次世界大戦ですが,戦争が長期化するにつれ,当時経済基盤の弱かったロシアは危機的な状況に陥りました。

 ロシアではこの状況を打破すべく,「ソヴィエト(労働協議会)」が結成されて革命運動が広がり,1917年には社会主義を掲げるロシア革命が勃発しました。


ロシア革命とモロゾフ・ゴンチャロフ

 このロシア革命の混乱を避け,他国に亡命したロシア人も数多くいました。

 亡命の道を選んだロシア人の中には,日本の貿易港神戸に居住した人も多かったようです。

 そうしたロシア人の1人が,フョードル・D・モロゾフです。

 モロゾフは1931年,神戸に「モロゾフ製菓株式会社」を設立しました。

 「モロゾフ」のサイトによると,「翌1932年,モロゾフは日本で初めて”バレンタインデーにチョコレートを贈る”というスタイルを紹介」したと説明されています。

 日本でバレンタインデーにチョコレートを贈るという風習が定着した経緯については諸説ありますが,「モロゾフ」の販売が一大契機となったことは間違いありません。

 一方,同じ神戸の「ゴンチャロフ」を創業したマカロフ・ゴンチャロフも,フョードル・D・モロゾフと同様にロシア革命の影響でロシアを亡命し,来日したロシア人の1人でした。

 ロマノフ王朝の宮廷菓子職人であったマカロフ・ゴンチャロフは,1923年に神戸でチョコレート工房を開業しました。

 「ゴンチャロフ」のサイトによると,「ウィスキーボンボンはゴンチャロフが日本ではじめて作ったと言われています。」と紹介されています。

 ロシア革命の勃発が,めぐりめぐって日本にチョコレート文化が浸透するきっかけとなったとは,とても興味深い話です。


神戸・阪神御影駅前のバレンタイン広場

 こうした歴史的背景もあり,神戸市は日本のバレンタインの発祥の地(聖地)とされています。

 1986年からは,神戸市とイタリアのテルニ市(聖バレンタインの出身地)との交流も始まり,2013年5月には「モロゾフ」と関わりの深い御影に「バレンタイン広場」が完成しました。

 日本のバレンタインの聖地を求め,神戸市東灘区御影を訪問しました。

(阪神・御影駅と5700系電車)
5700

 バレンタイン広場は,阪神電車・御影駅前にあります。

(阪神・御影駅とバレンタイン広場)
Photo

 円形のバレンタイン広場中央には,陶板で作られたイタリア・テルニ市の地図があります。

(イタリア・テルニ市の地図)
Photo_2

 テルニ市はイタリアの首都ローマの北側に位置することがわかります。

 また,バレンタイン広場の一角には,聖バレンチノ教会のモニュメントも設置されています。

(聖バレンチノ教会のモニュメント)
Photo_3

 写真中央の2つの石碑が聖バレンチノ教会のモニュメントです。

 近づいて見てみましょう。

 モニュメントの御影駅側にはイタリア・テルニ市の紹介文があります。

(テルニ市の紹介文)
Photo_4

 「テルニ市は『愛の守護神』と呼ばれる『聖バレンチノ』の聖地でもあり,この街からバレンタインデーが世界に広まったと言われています。一方,神戸は日本におけるバレンタインデー発祥の地です。バレンタインデーが結びつけた両市の交流は1986年にスタートし,現在も続いています。」と紹介されています。

 一方,モニュメントのバレンタイン広場側には,テルニ市長メッセージと聖バレンチノ教会・ステンドグラスが紹介されています。

(テルニ市長メッセージ・聖バレンチノ教会・ステンドグラス)
Photo_5

 テルニ市長のメッセージには,「スイーツの街である神戸・御影にあるこの広場を訪問された方々がバレンタインデーの意義やテルニ市を想い,テルニ市と神戸市の友好交流がますます盛んになるよう期待しています。」とあります。

 写真左下が聖バレンチノ教会,写真右下が聖バレンチノ教会のステンドグラスです。

 次にバレンタイン広場に併設するバス停を見てみましょう。

(阪神御影南口(バレンタイン広場前)バス停)
Photo_6

 板チョコのデザインのバス停です。

 写真中央にある広告は,左側が聖バレンチノ教会のステンドグラス,右側はモロゾフのチョコレートの広告となっています。

(阪神御影南口(バレンタイン広場前)バス停標識)
Photo_7

 愛をイメージさせるかわいいハート形のバス停標識もあります。

 屋根部分にはテルニ市の紹介もあります。

 このように,阪神・御影駅前はバレンタインムード一色となっています。

 また阪神・御影駅から少し南に歩くと,灘の酒蔵めぐりを楽しむことができます。

 御影を訪問し,バレンタインと日本酒の世界を楽しむというのも,ハイセンスな神戸の楽しみ方だと思います。


 では,最後にゴンチャロフとモロゾフのお菓子を御紹介したいと思います。

ゴンチャロフのチーズスフレとコーヒー

 神戸・三宮にあるゴンチャロフの喫茶「ゴンチャロフ・さんプラザ店」へ行きました。

(ゴンチャロフ・さんプラザ店)
Photo_8

 メニューにイートイン限定のチーズスフレがあったので,コーヒーとともに注文しました。

(ゴンチャロフのチーズスフレとコーヒー)
Photo_9

 ハロウィンバージョンのチーズスフレでした。

 ふわふわのチーズスフレに生クリームやベリーソースを添えて,アイスクリームやコーヒーとともにゴンチャロフ自慢の味を楽しみました。


モロゾフのデザートプレートとコーヒー

 続いて,神戸から阪神電車に乗って,大阪・梅田にあるモロゾフの喫茶「カフェモロゾフ阪神百貨店梅田本店」へ行きました。

 メニュー表を見るなり,注文するメニューは一発で決まりました。

 こちらです。

(モロゾフのデザートプレートとコーヒー)
Photo_10

 モロゾフのプリン,デンマーククリームチーズケーキそしてモンブランが一度に味わえるデザートプレートとコーヒーです。

 私以外,周りは全て女性でしたが,私はスイーツ男子だからと自分に言い聞かせ,美味しくいただきました。

 今回御紹介したゴンチャロフとモロゾフのお菓子は,よく考えるといずれも本題のチョコレートがないというオチがあるのですが(笑),義理でお許しください。


<参考文献>
 浜本隆志「バレンタインデーの秘密 愛の宗教文化史」平凡社新書
 宮崎正勝「早わかり世界史」日本実業出版社

<参考サイト>
 「バレンタインとモロゾフについて」(モロゾフ株式会社)
 「ゴンチャロフのこだわり」(ゴンチャロフ製菓株式会社)

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コメント

こんばんは、コウジ菌さん。

御影、バレンタインと結びついていたんですね。
今日なんてもう^^チョコが溶けるくらい熱い聖地かも。

ゴンチャロフにモロゾフ~。
確かにチョコがないです^^いえいえ、
甘いほどは変わらないです、
良い感じです、うん、勝ってます♪

コーヒーをりんと引き立てるスィーツメニュー、
写真越しに美味しくいただきました^^ごちそうさまです☆

サウスジャンプ 様

コメントいただき,ありがとうございます。

当初のコメントを読ませていただいた瞬間,爆笑でした。
どうかお気遣いなく。

今日は,バレンタインデーにちなんで御影へ行かれた方もおられたでしょうね。
御影にバレンタインの聖地があることをもっと知っていただきたくて,記事をまとめてみました。

ゴンチャロフもモロゾフもチョコがないですね(笑)。
チョコよりもゴンチャロフ店舗限定のチーズスフレや,モロゾフが誇るプリンやチーズケーキ,そして私の大好物のモンブランの方がすごく魅力的だったんです(^^ゞ

まぁ,そもそも私はバレンタインデー当日でも,チョコがなくてもぜ~んぜん平気ですから。(←少し強がりかも(笑))

バレンタインデーに心温まるコメントをいただき,ありがとうございました。

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