宇宙食の世界3 -宇宙白飯とスペースカレー,宇宙食のナトリウム量制限とその実例-
スペースワールドで売られていた宇宙食のシリーズの最終回は,宇宙食の白ご飯とカレーを一度に使って,カレーライスにして味わってみたいと思います。
まずはご飯の用意からです。
宇宙白飯
宇宙で味わう日本のお米「宇宙白飯(SPACE RICE)」です。
(「宇宙白飯(SPACE RICE)」包装)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が認証した製法により,尾西食品株式会社(亀田製菓グループ)が製造した製品です。
お湯か水を注ぐだけでふんわりご飯が出来上がるようですが,念のため袋の裏の作り方を確認しておくこととしました。
(宇宙白飯の作り方)
袋を開けて,その中に直接熱湯か水を注ぎ込み,袋のチャックを閉めて,熱湯なら15分,水なら60分待てばご飯ができると説明されています。
水で作る方法は宇宙空間での調理を想定してかも知れませんね。
私はカレーライスにしたいので,熱湯を注ぐことにしました。
調理法を確かめた上で,袋を開封しました。
(宇宙白飯(開封時の様子))
開封し,上から眺めた様子です。
乾燥したご飯のほかに,プラスチックのスプーンと乾燥剤も入っています。
ご飯が干からびた感じです。
このご飯は,一度炊いたご飯を乾燥させて作る「干し飯(ほしいい)」(アルファ化米)そのものだと思いました。
昔からある非常食(兵糧食)の発想が,宇宙食に応用されているのですね。
袋の中に熱湯を注ぎ,15分待ちました。
出来上がったご飯がこちらです。
(宇宙白飯)
見事なご飯が出来上がりました。
一度水分を飛ばしているので,米粒は若干ボソボソした感じはありますが,ふっくらとなって,ご飯として十分美味しいレベルでした。
宇宙で白いご飯が食べられるのは,よく考えてみるととても贅沢なことではないでしょうか。
スペースカレー(宇宙日本食レトルトカレー)
続いて,カレーを用意します。
カレーはハウス食品が製造している「スペースカレー(宇宙日本食レトルトカレー)」です。
(スペースカレー(宇宙日本食レトルトカレー))
箱には「ウコン,カルシウムを多く含み,無重力の宇宙空間での生活をサポート 宇宙ステーション長期滞在用に特別に開発されたビーフカレー」と説明されており,カレーの写真のほかに,国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の写真も掲載されています。
箱の裏面には詳しい説明書きがありました。
(箱(裏面)説明書き)
その説明書きには,
(1)世界15カ国が協力して計画を進めている国際宇宙ステーション(ISS)に日本初の宇宙有人実験施設「きぼう」が取りつけられていること
(2)「スペースカレー」は,ハウス食品が宇宙航空研究開発機構(JAXA)とともに開発し,正式認証されていること
(3)ISSの中(無重力状態)で食べることを想定し,ウコン・カルシウムを多く含ませ,スパイシーで味を濃くしていること
が説明されています。
無重力状態では食べ物の重みだけでなく,舌で感じる味まで軽くなったように感じるのかも知れません。
スペースカレーの箱を開け,レトルトを鍋に入れて熱湯で温めました。
スペースカレーも完成です。
宇宙食で作ったカレーライス「スペースカレーライス」
宇宙白飯を皿に盛りつけ,スペースカレーをかけました。
これで宇宙食のみで作った「スペースカレーライス」の完成です。
(「スペースカレーライス」)
素晴らしいです。そして贅沢な組み合わせです。
しばし感動を覚えながら,実際に「スペースカレーライス」を味わってみました。
スペースカレーはビーフカレーなので,基本食材として牛肉が使われていますが,具材として一番多いのは「きのこ」類です。
舞茸,エリンギ,マッシュルームといろんな種類のきのこが入っており,「きのこビーフカレー」と表現するとぴったり当てはまると思いました。
味は洋風のカレーで,ハウス食品のお馴染みのレトルトカレーの味と大差はないように思いました。
ただ,説明書きにもあったように,若干味が濃くて,こしょう系のスパイスもやや強く感じられる味に仕上げられています。
この濃くてスパイシーなスペースカレーが宇宙白飯と一緒に食べるとちょうどよい味となり,途中からは宇宙食であることを忘れ,普通にカレーライスとして美味しくいただきました。
なかなか楽しい宇宙食体験でした。
宇宙食に求められるナトリウム量制限と実例
「宇宙日本食」は宇宙航空研究開発機構(JAXA)が認証した日本版の宇宙食のことで,和食に限らず日本で通常食べられているものが対象とされています。
ただ,宇宙食である以上,やはり厳しい条件を数多くクリアしなければならないようです。
例えば,「食品中のナトリウム量を1,000mg以下に抑える」という制限が設けられています。
宇宙食の場合,なぜナトリウム量を制限する必要があるのでしょうか。
宇宙空間は重力が微少となるため,骨からのカルシウム喪失が増加し,骨量が減少しやすくなります。
こうした環境にあって,宇宙飛行士がカルシウムの代謝を促進させるナトリウムを多く摂取すると,骨量が減少するリスクをさらに高めてしまうこととなるのです。
こうした事態を防ぐため,ナトリウム量に制限が設けられているという訳です。
裏を返せば,カルシウムを強化した食品が望ましいとも言えます。
今回の「スペースカレー(宇宙日本食レトルトカレー)」も,この骨量減少が考慮された食品となっています。
具体的には,ビタミンD(※)やイソフラボンが添加されることで,カルシウムの調整・強化・吸収の促進や骨密度の強化が図られているのです。
(※ビタミンD2,D3を含む食品として,魚肉,肝臓,鶏卵,きのこ,海藻類などがある。)
先にこのスペースカレーは「きのこビーフカレー」という表現が合うとお話ししましたが,これはビタミンDを強化するため,ひいては人間の骨密度を安定させるためにきのこ類が多く入れられているとも言えるのです。
この条件のほか,スペースカレーの場合は,宇宙放射線による細胞の酸化を考慮し,抗酸化作用のあるウコン(ターメリック)が強化(通常製品比 2倍強)されているなど,様々な工夫がなされています。
レトルトカレー1つとっても,美味しさだけでなく,地球とは異なる宇宙の環境で働く宇宙飛行士の健康までも考慮された食品でないと,宇宙食と成り得る条件をクリア出来ないのです。
宇宙飛行士の栄養確保・健康維持に必要不可欠な宇宙食。
宇宙では宇宙データ観測,科学実験,医学実験など様々な活動が行われていますが,こうした活動を行えるのも,美味しい宇宙食があってこそです。
宇宙食の確保・品質向上は,人間が宇宙で研究活動を行うための前提条件の1つと言えるでしょう。
<関連リンク>
「国際宇宙ステーション(ISS)」(宇宙航空研究開発機構(JAXA))
「宇宙日本食」(宇宙航空研究開発機構(JAXA))
「スペースカレー<ビーフ>」(ハウス食品株式会社)
「アルファ米を知る(宇宙日本食)」(尾西食品株式会社)
<関連記事>
「宇宙食の世界1 -スペースブレッド- スペースワールド グランドフィナーレを迎えて」
「宇宙食の世界2 -ライスケーキ(おもち)-」
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こんばんは!
「SPACE RICE」+「SPACE CURRY」=「SPACE CURRY RICE」
夢の足し算~っ^^
これは……じゅるる…食べてみたいです!
地球で味わう宇宙食体験にこれは贅沢な合わせ技ですっ
ふと、地上で食べ過ぎてしまったらどうなんでしょう、
無重力での体の影響が考えられてるのなら……、
と妙に心配な感が~^^
あ、食べ過ぎなければいいんだ!
今から睡眠に入るというのに……夢に出てくることでしょう。
夢なら「スペーストッピング」もいっぱいのせて食べれます!
投稿: サウスジャンプ | 2018年2月 5日 (月) 02時07分
そうです。憧れの宇宙食を組み合わせて作るオリジナル宇宙食。
夢のようでした。
本当に宇宙で作って食べてみたいなぁと思います(^o^)
宇宙食は,おっしゃるように無重力状態での飲食を前提としているため,地上食に比べてしっかりと食感を感じ,味も認識しやすいよう工夫されているのだと思います。
具体的には,とろみ(粘り)がつけられてたり,コクを出したり,濃い味に仕上げるなどの工夫になるのでしょうが,その分,地上食に比べてカロリーも高くなる傾向にあると言えるかも知れませんね。
宇宙飛行士の1日の摂取カロリーは年齢,性別,体重から厳密に計算されており,決められた中で食べられているので,宇宙での食事で食べ過ぎることはあまり想定されてないものと思います。
問題は同じ量を地球で食べる時。
カロリーオーバーになることもあるでしょうね(笑)。
ただその分,満腹感を感じるまでの時間も早いと思います。
重力と食事量,重力とダイエットの関係…面白い研究テーマだと思います。
昨夜はいい夢を御覧になれましたか。
いい睡眠をとり,いい夢を御覧になるのが疲れを回復させる一番の方法だと思います。
サウスさんがいい夢を見れますように!
投稿: コウジ菌 | 2018年2月 5日 (月) 23時09分