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2018年2月 8日 (木)

稲荷山経塚の簪(かんざし)の耳かき -京都府京都市-

 当ブログの読者の方から,耳かきの本があるとの情報をいただきました。

 これは興味深いと思い,ネットで中古本を購入してみました。

 上野玲「耳かきがしたい」(ジャイブ)という本です。

(上野玲「耳かきがしたい」(ジャイブ))
26092141

 耳かきをするのが大好きな人を「ミミカキスト」と定義し,ミミカキストのためのバイブルとして書かれた本です。

 耳かきの歴史,耳かきのコツ,耳かきの名店,中国の耳かき技術の現地取材,ニューヨークのティファニーでの耳かき探し旅,はたまた「耳かきをするとよい子に育つ説」まで…耳かきのごとく深く掘り下げた数々の話が紹介されています。

 巻頭にはカラー写真で「日本全国耳かきコレクション」の紹介もあり,私が持ってないご当地耳かきもたくさん紹介されていて,私の収集熱がより一層刺激されました。

 その一例を御紹介します。

(「日本全国耳かきコレクション」関東編)
26092142
 (上野玲「耳かきがしたい」ジャイブから引用)

(「日本全国耳かきコレクション」九州編)
26092143
 (上野玲「耳かきがしたい」ジャイブから引用)

 私が持っている耳かきもちらほら見受けられます。

 でも,持ってないのもあって,くやしいです(笑)。

 この本の中に,日本最古の現存する耳かきが紹介されています。

 明治44年に現在の京都市伏見区の「稲荷山経塚(いなりやまきょうづか)」から出土した金銅製の簪(かんざし)です。

(稲荷山経塚の簪)
2609214
 (国立博物館所蔵 上野玲「耳かきがしたい」ジャイブから引用)

 写真上部の端が耳かき状になっていることがわかります。

 平安末期から鎌倉初期のもののようです。

 女性たちが髪を結い,装飾品として簪を差すのがおしゃれだったようで,その簪の先に実用的な耳かきをつけ,耳をかいたり,頭の地肌をかくことに使われたようです。

 この話を知って,ふと思い出した耳かきがあります。

 日本刀の笄(こうがい)の耳かきです。(「日本刀の笄(こうがい)の耳かき -山口県山口市-」参照)

 日本刀の鐔(つば)の穴に差す笄は,男性の髪を手入れするだけでなく,耳かきとしても使われました。

 この話も含めると,日本の女性は簪を使い,男性は笄を使って耳かきをしていたと考えられます。

 これは日本耳かき史(文化史)の研究に値する重要な事実ではないかと思います。


<参考文献>
 上野玲「耳かきがしたい」ジャイブ

<関連リンク>
 「蜃気楼の向こう側」(今回の本を御紹介いただいた「サウスジャンプ(つなまよ)」さんのブログです。本・音楽・御本人のイラストなどを楽しく,興味深く紹介されています。)

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コメント

コウジ菌さん、こんにちは。

これが噂の耳かきすとさん必携の書ですね!

表紙のふわふわ付き耳かき^^
このふわふわが好きでした^^
ふわふわ付き耳かき、
あまり見かけなくなった気がするのですけど…
気のせいでしょうか?

本の中は図説が多そうですね、
かき集め心がくすぐられることでしょう^^

京都から出土した金銅製のかんざし、
これはとっても興味深いのです。便利なかんざしです。
(ふと、消しゴム付き鉛筆が思い浮かびました^^)
昔の人も耳をかいていたという、
なんでもないようでいて貴重な事実が…すごいです。

こうがい、その用途にありましたね。
それを思うと、今の人は携行しないような…。
耳かきは、耳のお手入れ、ということで、
人前だと恥ずかしいこと、つまり、外向きの行為ではなくて、
お家ごと、という向きに比重があるのかなぁ、なんて少し考えてみたり。

耳かき文化ばんざい!そのようなステキな書籍です^^

サウスジャンプ 様

こんにちは。
この度はステキな本を御紹介いただき,ありがとうございました。

これで私もまた一歩ミミカキストに近づけたような気がします(笑)

耳かきのふわふわは梵天(ぼんてん)と呼ばれるようですが,確かに私が持っている耳かきでもあまりありませんね。
(あ,梵天の部分にご当地キャラなどが付いてるパターンが多いから当然と言えば当然ですが…(笑))
私の上司が使い古して汚れた梵天付きの耳かきを使ってましてね。私が職場で集めた耳かきを披露する度に,「この耳かきと変えてやろうか?」って言われるんです。
絶対いらん(笑)。

本のうち,かなりのページが全国耳かきコレクションの紹介となっていまして,「うわっ,こんな耳かきもあるんだ!」としきりに思いました。

京都の金銅製のかんざし。実用的ですよね~。
おしゃれな装飾品という役割だけでなく,耳掃除,頭の地肌をかくという実用的な一面も兼ね備えてたとは,面白い事実です。
昔の女性はなかなか日本髪を洗うことができなかったことも理由の1つのようですよ。

おっしゃるとおり,昔のかんざしやこうがいのように,耳かきを携帯(常備)する人は少なくなっているように思います。
その現象は携帯・使い捨て可能な綿棒の普及と関連性があるように私は考えます。

とは言え,それでも人前で堂々と耳掃除できる人は限られますよね(笑)。
耳掃除などボディケアは内向きになりがちです。
私は耳掃除どころか,人前で鼻をかんだり,場合によってはモノを食べることすら抵抗を感じることがあります。
飲食店などでパシャパシャ料理写真撮ってるのに…矛盾してますよね(^^ゞ

こんな本があるとは‥‥‥
何も考えず眺められそうなので
いいね(((o(*゚∀゚*)o)))

ヒナタ 様

お誕生日おめでとうございます!!
お祝いの日にコメントいただけるなんて,私まで幸せな気持ちになります。

この本,写真が多く,文章もコンパクトにまとめられているので,とても読みやすかったです。

ただ…やっぱり自分が持ってない耳かきが気になり,私としては逆に色々と考えてしまうわけですよ(笑)。

困ったミミカキストですね(^^ゞ

持ってないから~悔しい(# ̄З ̄)
とか思っちゃうのかな(笑)

ヒナタ 様

正直に申し上げます。

ご当地耳かき,1本でも見た事ないのがあると,やっぱりくやしいです(笑)。

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