« 2018年1月 | トップページ | 2018年3月 »

2018年2月

2018年2月24日 (土)

台湾料理の特徴と主な料理 -燜齋鴨(素食北京ダック)と菜食主義(ベジタリアン)-

 台湾料理は,中国全土の料理が揃っていると言われています。

 海の幸や山の幸にも恵まれており,日本の料理の影響も受けているため,日本人にもなじみやすい料理が多いのも特徴です。

 中国料理がベースなので,当然ながら,肉(特に豚肉)料理や海鮮料理がメインとなります。

 しかし一方で,医食同源の思想や宗教上の理由から,菜食主義者(ベジタリアン)も多く,「素食(料理)」(菜食主義者向け(料理)という意味)と表記された食品・料理(店)も多く存在しています。

 今回は,そんな素食の1つ,「燜齋鴨」(素食北京ダック)の缶詰を御紹介します。

(「燜齋鴨」(漢字表記))
Photo

 「燜齋鴨」の「燜」がシチュー(煮込み),「齋」が菜食,「鴨」がアヒルという意味です。

 上側の「良友牌」という表記は,「コンパニオンフーズ」という会社名に由来する「コンパニオンブランド」という意味でしょう。

(「燜齋鴨」(英語表記))
Photo_2

 缶詰の下部に「Peking Vegetarian Roast Duck(Braised Gluten)」(ベジタリアン向け北京ローストダック(蒸し煮のグルテン))と表記されています。
 「燜齋鴨」はおそらく「ムンチャイア」と読むのでしょうが,自信がないので間違えていたらお許しください。

(「純素食」のマーク)
Photo_3

 缶詰の一部に「純素食」と書かれたマークがありました。

 英語で「100% Vegetarian」とあることからも,「完全なベジタリアン向け食品」と言った意味でしょう。

 その下に控え目な字で「imitation」(イミテーション,もどき)とも表記されていますね。

(「燜齋鴨」(食品表示))
Photo_4

 食品表示を見てみると,「素鴨(アヒルもどき,グルテン,遺伝子組み換えでない)」,「水」,「黄豆油(大豆油)」,「醤油」(天然発酵),「糖」,「盬(塩)」とあります。

 つまり,小麦粉のグルテンが持つ粘着性と弾性をうまく利用して,アヒルの肉のような食感を作り出し,その肉もどきを醤油や砂糖,塩などで味付けした食べ物なのです。

 缶詰の写真にある北京ダックほどではないでしょうが,どこまで北京ダックに似た食べ物が出てくるのか,興味深く缶詰の蓋を開けました。

(「燜齋鴨」)
Photo_5

 なるほど。見た目が鳥の肉や皮とそっくりです。

 ただ色合いについては,北京ダックというよりは鶏肉の醤油煮のような印象を持ちました。

 電子レンジで少し温めて,実際にいただいてみました。

 味付けは醤油と砂糖が中心で,甘辛い味に仕上げられています。

 そして,確かに淡泊な鶏肉のような弾力,歯応えがあります。

 この食感を可能にしているのは,薄く伸ばしたグルテンの板を何層にも重ねて肉の形に成形されているからなのでしょう。

(「燜齋鴨」(断面))
Photo_6

 この幾重にも重なるグルテンの層が肉のような食感を生み出しているのです。

 味は,北京ダックまでには至りませんが,鶏肉の醤油煮だと言われて出されると,まぁそうとも言えるかなというレベルです。

 ただ,この肉もどきをゴボウや里芋などの根野菜と一緒に煮て,筑前煮だと言われて出されたら,鶏肉だと信じてしまうような気がします。

 それにしても,グルテンを使って,ここまでの代用肉を作り上げる台湾の方々の執念には脱帽です。


東アジアとインドの菜食主義(ベジタリアン)の違い

 今回,北京ダックもどきの食品を御紹介しましたが,こうした「肉もどき」の食品・料理は主に中国やその影響を受けた台湾・日本など東アジアの国や地域で多くみられるものです。

 日本でも,豆腐や野菜で作られる精進料理の「がんもどき」が「肉もどき」食品として有名ですね。

 しかしながら,菜食主義(ベジタリアン)の本場と言われるインドでは「肉もどき」を作るという発想がありません。

 なぜなら,インドの菜食主義者の間では,肉が食べ物であるという考え自体がないからです。

 そもそも肉に執着心がない以上,肉に憧れることもなく,したがって「肉もどき」を作ってまで菜食主義を貫こうなどと思うこともないのです。

 普段の暮らしの中で肉や魚を食べる習慣があるかないかによって,菜食主義(ベジタリアン)でも発想の違いがあるのです。

 このことを踏まえると,日本を含め,肉や魚を食べる習慣がある国や地域で菜食主義(ベジタリアン)を貫き通すことがいかに難しく大変なことかを御理解いただけるかと思います。


<参考文献>
 森枝卓士(ジャーナリスト・食文化論)『食べてはいけない!』白水社

<関連リンク>
 「コンパニオンフーズ(良友牌)」(英語表記)
 菜食レストラン&カフェ「菜食健美」(広島市西区己斐上4丁目32-2,「燜齋鴨」販売店)

2018年2月18日 (日)

手まりの耳かき -群馬県渋川市-

伊香保温泉街の民芸品店で購入した手まりの耳かきです。

玉全体を白い糸で巻き,その上から模様となる赤や緑の糸を巻いて作られています。

木製の葉っぱに「伊香保」と記載されているので,伊香保温泉のお土産としても喜ばれそうです。
(これがあるからご当地耳かきコレクションとしての価値があるとも言えるのです。)

群馬でのご当地耳かき探し。

伊香保温泉ならあるだろうと意気込んで訪問したのですが,意外と観光地でよく見かけるような定番のお土産屋さんが少なかったので,この耳かきを見つけたときはとても嬉しかったです。
1002215

2018年2月11日 (日)

ロシア革命と日本のバレンタインチョコレート -神戸・御影のバレンタイン広場訪問-

日本のバレンタインデーとチョコレート

 2月14日はバレンタインデーです。

 日本でも年中行事の1つとなり,チョコレートをはじめとする様々な商品が店に並びます。

 日本でバレンタインデーと言えば,「女性から男性へチョコレートを贈る」というイメージが強いですが,欧米では男女双方向で,プレゼントもチョコレートに限らず食事,花,カード,衣服などバラエティに富んでいることから,このイメージは日本独自の風習と言えそうです。

 では「日本のバレンタインデー=チョコレート」という図式が,いつどういう経緯で確立されたのでしょうか。

 このことについて,まとめてみたいと思います。


第一次世界大戦とロシア革命

 20世紀前半,経済成長を遂げるヨーロッパは,国同士で勢力争いをするようになります。

 それが顕著だったのが,海軍力増強に乗り出したドイツと,制海権を堅持したいイギリスとの対立です。

 ドイツはオーストリア,イタリアと手を組み(三国同盟),イギリスはフランス,ロシアと手を組み(三国協商),両陣営が対立することとなります。

 この対立は,やがて多民族が暮らすバルカン半島でのスラブ人(ロシアが支援)とゲルマン人(ドイツが支援)の民族運動にまで影響を及ぼしました。(「パン・スラブ主義」と「パン・ゲルマン主義」の対立)

 こうした状況下で,1914年,ボスニア・サラエボでオーストリアの皇太子がスラブ系のセルビア人に狙撃される「サラエボ事件」が起こります。

 そしてこの事件をきっかけに,全世界を巻き込んだ第一次世界大戦が勃発したのです。

 三国協商側の国とのつながりが強かった日本も参戦することとなった第一次世界大戦ですが,戦争が長期化するにつれ,当時経済基盤の弱かったロシアは危機的な状況に陥りました。

 ロシアではこの状況を打破すべく,「ソヴィエト(労働協議会)」が結成されて革命運動が広がり,1917年には社会主義を掲げるロシア革命が勃発しました。


ロシア革命とモロゾフ・ゴンチャロフ

 このロシア革命の混乱を避け,他国に亡命したロシア人も数多くいました。

 亡命の道を選んだロシア人の中には,日本の貿易港神戸に居住した人も多かったようです。

 そうしたロシア人の1人が,フョードル・D・モロゾフです。

 モロゾフは1931年,神戸に「モロゾフ製菓株式会社」を設立しました。

 「モロゾフ」のサイトによると,「翌1932年,モロゾフは日本で初めて”バレンタインデーにチョコレートを贈る”というスタイルを紹介」したと説明されています。

 日本でバレンタインデーにチョコレートを贈るという風習が定着した経緯については諸説ありますが,「モロゾフ」の販売が一大契機となったことは間違いありません。

 一方,同じ神戸の「ゴンチャロフ」を創業したマカロフ・ゴンチャロフも,フョードル・D・モロゾフと同様にロシア革命の影響でロシアを亡命し,来日したロシア人の1人でした。

 ロマノフ王朝の宮廷菓子職人であったマカロフ・ゴンチャロフは,1923年に神戸でチョコレート工房を開業しました。

 「ゴンチャロフ」のサイトによると,「ウィスキーボンボンはゴンチャロフが日本ではじめて作ったと言われています。」と紹介されています。

 ロシア革命の勃発が,めぐりめぐって日本にチョコレート文化が浸透するきっかけとなったとは,とても興味深い話です。


神戸・阪神御影駅前のバレンタイン広場

 こうした歴史的背景もあり,神戸市は日本のバレンタインの発祥の地(聖地)とされています。

 1986年からは,神戸市とイタリアのテルニ市(聖バレンタインの出身地)との交流も始まり,2013年5月には「モロゾフ」と関わりの深い御影に「バレンタイン広場」が完成しました。

 日本のバレンタインの聖地を求め,神戸市東灘区御影を訪問しました。

(阪神・御影駅と5700系電車)
5700

 バレンタイン広場は,阪神電車・御影駅前にあります。

(阪神・御影駅とバレンタイン広場)
Photo

 円形のバレンタイン広場中央には,陶板で作られたイタリア・テルニ市の地図があります。

(イタリア・テルニ市の地図)
Photo_2

 テルニ市はイタリアの首都ローマの北側に位置することがわかります。

 また,バレンタイン広場の一角には,聖バレンチノ教会のモニュメントも設置されています。

(聖バレンチノ教会のモニュメント)
Photo_3

 写真中央の2つの石碑が聖バレンチノ教会のモニュメントです。

 近づいて見てみましょう。

 モニュメントの御影駅側にはイタリア・テルニ市の紹介文があります。

(テルニ市の紹介文)
Photo_4

 「テルニ市は『愛の守護神』と呼ばれる『聖バレンチノ』の聖地でもあり,この街からバレンタインデーが世界に広まったと言われています。一方,神戸は日本におけるバレンタインデー発祥の地です。バレンタインデーが結びつけた両市の交流は1986年にスタートし,現在も続いています。」と紹介されています。

 一方,モニュメントのバレンタイン広場側には,テルニ市長メッセージと聖バレンチノ教会・ステンドグラスが紹介されています。

(テルニ市長メッセージ・聖バレンチノ教会・ステンドグラス)
Photo_5

 テルニ市長のメッセージには,「スイーツの街である神戸・御影にあるこの広場を訪問された方々がバレンタインデーの意義やテルニ市を想い,テルニ市と神戸市の友好交流がますます盛んになるよう期待しています。」とあります。

 写真左下が聖バレンチノ教会,写真右下が聖バレンチノ教会のステンドグラスです。

 次にバレンタイン広場に併設するバス停を見てみましょう。

(阪神御影南口(バレンタイン広場前)バス停)
Photo_6

 板チョコのデザインのバス停です。

 写真中央にある広告は,左側が聖バレンチノ教会のステンドグラス,右側はモロゾフのチョコレートの広告となっています。

(阪神御影南口(バレンタイン広場前)バス停標識)
Photo_7

 愛をイメージさせるかわいいハート形のバス停標識もあります。

 屋根部分にはテルニ市の紹介もあります。

 このように,阪神・御影駅前はバレンタインムード一色となっています。

 また阪神・御影駅から少し南に歩くと,灘の酒蔵めぐりを楽しむことができます。

 御影を訪問し,バレンタインと日本酒の世界を楽しむというのも,ハイセンスな神戸の楽しみ方だと思います。


 では,最後にゴンチャロフとモロゾフのお菓子を御紹介したいと思います。

ゴンチャロフのチーズスフレとコーヒー

 神戸・三宮にあるゴンチャロフの喫茶「ゴンチャロフ・さんプラザ店」へ行きました。

(ゴンチャロフ・さんプラザ店)
Photo_8

 メニューにイートイン限定のチーズスフレがあったので,コーヒーとともに注文しました。

(ゴンチャロフのチーズスフレとコーヒー)
Photo_9

 ハロウィンバージョンのチーズスフレでした。

 ふわふわのチーズスフレに生クリームやベリーソースを添えて,アイスクリームやコーヒーとともにゴンチャロフ自慢の味を楽しみました。


モロゾフのデザートプレートとコーヒー

 続いて,神戸から阪神電車に乗って,大阪・梅田にあるモロゾフの喫茶「カフェモロゾフ阪神百貨店梅田本店」へ行きました。

 メニュー表を見るなり,注文するメニューは一発で決まりました。

 こちらです。

(モロゾフのデザートプレートとコーヒー)
Photo_10

 モロゾフのプリン,デンマーククリームチーズケーキそしてモンブランが一度に味わえるデザートプレートとコーヒーです。

 私以外,周りは全て女性でしたが,私はスイーツ男子だからと自分に言い聞かせ,美味しくいただきました。

 今回御紹介したゴンチャロフとモロゾフのお菓子は,よく考えるといずれも本題のチョコレートがないというオチがあるのですが(笑),義理でお許しください。


<参考文献>
 浜本隆志「バレンタインデーの秘密 愛の宗教文化史」平凡社新書
 宮崎正勝「早わかり世界史」日本実業出版社

<参考サイト>
 「バレンタインとモロゾフについて」(モロゾフ株式会社)
 「ゴンチャロフのこだわり」(ゴンチャロフ製菓株式会社)

2018年2月 8日 (木)

稲荷山経塚の簪(かんざし)の耳かき -京都府京都市-

 当ブログの読者の方から,耳かきの本があるとの情報をいただきました。

 これは興味深いと思い,ネットで中古本を購入してみました。

 上野玲「耳かきがしたい」(ジャイブ)という本です。

(上野玲「耳かきがしたい」(ジャイブ))
26092141

 耳かきをするのが大好きな人を「ミミカキスト」と定義し,ミミカキストのためのバイブルとして書かれた本です。

 耳かきの歴史,耳かきのコツ,耳かきの名店,中国の耳かき技術の現地取材,ニューヨークのティファニーでの耳かき探し旅,はたまた「耳かきをするとよい子に育つ説」まで…耳かきのごとく深く掘り下げた数々の話が紹介されています。

 巻頭にはカラー写真で「日本全国耳かきコレクション」の紹介もあり,私が持ってないご当地耳かきもたくさん紹介されていて,私の収集熱がより一層刺激されました。

 その一例を御紹介します。

(「日本全国耳かきコレクション」関東編)
26092142
 (上野玲「耳かきがしたい」ジャイブから引用)

(「日本全国耳かきコレクション」九州編)
26092143
 (上野玲「耳かきがしたい」ジャイブから引用)

 私が持っている耳かきもちらほら見受けられます。

 でも,持ってないのもあって,くやしいです(笑)。

 この本の中に,日本最古の現存する耳かきが紹介されています。

 明治44年に現在の京都市伏見区の「稲荷山経塚(いなりやまきょうづか)」から出土した金銅製の簪(かんざし)です。

(稲荷山経塚の簪)
2609214
 (国立博物館所蔵 上野玲「耳かきがしたい」ジャイブから引用)

 写真上部の端が耳かき状になっていることがわかります。

 平安末期から鎌倉初期のもののようです。

 女性たちが髪を結い,装飾品として簪を差すのがおしゃれだったようで,その簪の先に実用的な耳かきをつけ,耳をかいたり,頭の地肌をかくことに使われたようです。

 この話を知って,ふと思い出した耳かきがあります。

 日本刀の笄(こうがい)の耳かきです。(「日本刀の笄(こうがい)の耳かき -山口県山口市-」参照)

 日本刀の鐔(つば)の穴に差す笄は,男性の髪を手入れするだけでなく,耳かきとしても使われました。

 この話も含めると,日本の女性は簪を使い,男性は笄を使って耳かきをしていたと考えられます。

 これは日本耳かき史(文化史)の研究に値する重要な事実ではないかと思います。


<参考文献>
 上野玲「耳かきがしたい」ジャイブ

<関連リンク>
 「蜃気楼の向こう側」(今回の本を御紹介いただいた「サウスジャンプ(つなまよ)」さんのブログです。本・音楽・御本人のイラストなどを楽しく,興味深く紹介されています。)

2018年2月 4日 (日)

宇宙食の世界3 -宇宙白飯とスペースカレー,宇宙食のナトリウム量制限とその実例-

 スペースワールドで売られていた宇宙食のシリーズの最終回は,宇宙食の白ご飯とカレーを一度に使って,カレーライスにして味わってみたいと思います。

 まずはご飯の用意からです。


宇宙白飯

 宇宙で味わう日本のお米「宇宙白飯(SPACE RICE)」です。

(「宇宙白飯(SPACE RICE)」包装)
Space_rice

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が認証した製法により,尾西食品株式会社(亀田製菓グループ)が製造した製品です。

 お湯か水を注ぐだけでふんわりご飯が出来上がるようですが,念のため袋の裏の作り方を確認しておくこととしました。

(宇宙白飯の作り方)
Photo

 袋を開けて,その中に直接熱湯か水を注ぎ込み,袋のチャックを閉めて,熱湯なら15分,水なら60分待てばご飯ができると説明されています。

 水で作る方法は宇宙空間での調理を想定してかも知れませんね。

 私はカレーライスにしたいので,熱湯を注ぐことにしました。

 調理法を確かめた上で,袋を開封しました。

(宇宙白飯(開封時の様子))
Photo_2

 開封し,上から眺めた様子です。

 乾燥したご飯のほかに,プラスチックのスプーンと乾燥剤も入っています。

 ご飯が干からびた感じです。

 このご飯は,一度炊いたご飯を乾燥させて作る「干し飯(ほしいい)」(アルファ化米)そのものだと思いました。

 昔からある非常食(兵糧食)の発想が,宇宙食に応用されているのですね。

 袋の中に熱湯を注ぎ,15分待ちました。

 出来上がったご飯がこちらです。

(宇宙白飯)
Photo_3

 見事なご飯が出来上がりました。

 一度水分を飛ばしているので,米粒は若干ボソボソした感じはありますが,ふっくらとなって,ご飯として十分美味しいレベルでした。

 宇宙で白いご飯が食べられるのは,よく考えてみるととても贅沢なことではないでしょうか。


スペースカレー(宇宙日本食レトルトカレー)

 続いて,カレーを用意します。

 カレーはハウス食品が製造している「スペースカレー(宇宙日本食レトルトカレー)」です。

(スペースカレー(宇宙日本食レトルトカレー))
Photo_4

 箱には「ウコン,カルシウムを多く含み,無重力の宇宙空間での生活をサポート 宇宙ステーション長期滞在用に特別に開発されたビーフカレー」と説明されており,カレーの写真のほかに,国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の写真も掲載されています。

 箱の裏面には詳しい説明書きがありました。

(箱(裏面)説明書き)
Photo_5

 その説明書きには,
(1)世界15カ国が協力して計画を進めている国際宇宙ステーション(ISS)に日本初の宇宙有人実験施設「きぼう」が取りつけられていること

(2)「スペースカレー」は,ハウス食品が宇宙航空研究開発機構(JAXA)とともに開発し,正式認証されていること

(3)ISSの中(無重力状態)で食べることを想定し,ウコン・カルシウムを多く含ませ,スパイシーで味を濃くしていること
 が説明されています。

 無重力状態では食べ物の重みだけでなく,舌で感じる味まで軽くなったように感じるのかも知れません。

 スペースカレーの箱を開け,レトルトを鍋に入れて熱湯で温めました。

 スペースカレーも完成です。


宇宙食で作ったカレーライス「スペースカレーライス」

 宇宙白飯を皿に盛りつけ,スペースカレーをかけました。

 これで宇宙食のみで作った「スペースカレーライス」の完成です。

(「スペースカレーライス」)
Photo_6

 素晴らしいです。そして贅沢な組み合わせです。

 しばし感動を覚えながら,実際に「スペースカレーライス」を味わってみました。

 スペースカレーはビーフカレーなので,基本食材として牛肉が使われていますが,具材として一番多いのは「きのこ」類です。

 舞茸,エリンギ,マッシュルームといろんな種類のきのこが入っており,「きのこビーフカレー」と表現するとぴったり当てはまると思いました。

 味は洋風のカレーで,ハウス食品のお馴染みのレトルトカレーの味と大差はないように思いました。

 ただ,説明書きにもあったように,若干味が濃くて,こしょう系のスパイスもやや強く感じられる味に仕上げられています。

 この濃くてスパイシーなスペースカレーが宇宙白飯と一緒に食べるとちょうどよい味となり,途中からは宇宙食であることを忘れ,普通にカレーライスとして美味しくいただきました。

 なかなか楽しい宇宙食体験でした。


宇宙食に求められるナトリウム量制限と実例

 「宇宙日本食」は宇宙航空研究開発機構(JAXA)が認証した日本版の宇宙食のことで,和食に限らず日本で通常食べられているものが対象とされています。

 ただ,宇宙食である以上,やはり厳しい条件を数多くクリアしなければならないようです。

 例えば,「食品中のナトリウム量を1,000mg以下に抑える」という制限が設けられています。

 宇宙食の場合,なぜナトリウム量を制限する必要があるのでしょうか。

 宇宙空間は重力が微少となるため,骨からのカルシウム喪失が増加し,骨量が減少しやすくなります。

 こうした環境にあって,宇宙飛行士がカルシウムの代謝を促進させるナトリウムを多く摂取すると,骨量が減少するリスクをさらに高めてしまうこととなるのです。

 こうした事態を防ぐため,ナトリウム量に制限が設けられているという訳です。

 裏を返せば,カルシウムを強化した食品が望ましいとも言えます。

 今回の「スペースカレー(宇宙日本食レトルトカレー)」も,この骨量減少が考慮された食品となっています。

 具体的には,ビタミンD(※)やイソフラボンが添加されることで,カルシウムの調整・強化・吸収の促進や骨密度の強化が図られているのです。
 (※ビタミンD2,D3を含む食品として,魚肉,肝臓,鶏卵,きのこ,海藻類などがある。)

 先にこのスペースカレーは「きのこビーフカレー」という表現が合うとお話ししましたが,これはビタミンDを強化するため,ひいては人間の骨密度を安定させるためにきのこ類が多く入れられているとも言えるのです。

 この条件のほか,スペースカレーの場合は,宇宙放射線による細胞の酸化を考慮し,抗酸化作用のあるウコン(ターメリック)が強化(通常製品比 2倍強)されているなど,様々な工夫がなされています。

 レトルトカレー1つとっても,美味しさだけでなく,地球とは異なる宇宙の環境で働く宇宙飛行士の健康までも考慮された食品でないと,宇宙食と成り得る条件をクリア出来ないのです。

 宇宙飛行士の栄養確保・健康維持に必要不可欠な宇宙食。

 宇宙では宇宙データ観測,科学実験,医学実験など様々な活動が行われていますが,こうした活動を行えるのも,美味しい宇宙食があってこそです。

 宇宙食の確保・品質向上は,人間が宇宙で研究活動を行うための前提条件の1つと言えるでしょう。


<関連リンク>
 「国際宇宙ステーション(ISS)」(宇宙航空研究開発機構(JAXA))
 「宇宙日本食」(宇宙航空研究開発機構(JAXA))
 「スペースカレー<ビーフ>」(ハウス食品株式会社)
 「アルファ米を知る(宇宙日本食)」(尾西食品株式会社)

<関連記事>
 「宇宙食の世界1 -スペースブレッド- スペースワールド グランドフィナーレを迎えて
 「宇宙食の世界2 -ライスケーキ(おもち)-

« 2018年1月 | トップページ | 2018年3月 »

最近のトラックバック

2018年10月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ