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2018年9月16日 (日)

ハンガリー料理の特徴と主な料理2 -冷たい桃のスープ・グヤーシュスープ・マンガリッツァ豚のソテー・ショムロ地方のスポンジケーキ-

冷たい桃のスープ

 ハンガリー料理の特徴の1つとして特筆すべきは,食事として冷たく甘い果物のスープが飲まれることです。

 果物を絞った汁にサワークリーム(または生クリーム),牛乳,香辛料などを加えて煮立たせた後,冷やしたスープです。

 ハンガリー出身の店員さんのお話では,桃のほかにも,サクランボやイチゴ(ベリー)など様々な果物が使われ,特に夏によく飲まれているそうです。

 店員さんが満面の笑顔で「デザート!デザート!」と言いながら出していただいたスープがこちらです。

(冷たい桃のスープ)
Photo

 確かに見た目もデザートのようなスープです。

 でも,メインの前の食事用スープとして出されている訳ですし,ジャガイモの冷製スープ「ヴィシソワーズ」のような感じだろうと思いながらいただいてみました。

 「普通に甘い…。これはデザート…。」

 私の正直な感想です。

 桃の果汁がほとんどで,クリームが入った桃のジュースを飲んでいるかのようでした。

 中には賽の目に切った桃も入っていました。

 次にグヤーシュスープを御紹介しますが,通常のコースではこの「冷たい桃のスープ」か「グヤーシュスープ」いずれか1品を選ぶようになっていて,いずれも同等の「料理」の扱いです。


グヤーシュスープ

 伝統的なグヤーシュスープです。

 「冷たい桃のスープ」とは対照的に,寒い時期向けの温かいスープです。

 グヤーシュがハンガリーの国民的料理となったのは1800年代後半のことです。

 ハプスブルク家に支配された「オーストリア・ハンガリー二重帝国」の時代にあって,グヤーシュはハンガリーのアイデンティティを示す料理として確立したのです。

 屋外で大鍋で作られるグヤーシュを軽めにしたのがグヤーシュスープです。

 牛肉,玉ねぎ,トマト,パプリカ,香辛料などを煮込んで作られます。

 店員さんから,「グヤーシュは『牛飼い』という意味です。」と教えていただきました。

(グヤーシュスープ)
Photo_2

 スープの表面に点々と浮かんでいる緑色はバジル入りのオイルです。

 そしてスープカップの左隣に置かれている緑色の野菜は,スープの辛さを調節するためのパプリカ(青唐辛子)です。

 いただいてみると,ビーフシチューのような深い味わいのスープで,中には角切りの牛肉・人参・ジャガイモがゴロゴロ入っていました。

 主な食材がパプリカかビーツかで異なりますが,ボルシチにも似ているように思いました。

 あまり辛味はないので,途中で試しに青唐辛子をスープに入れ,少しかじってみました。

 すると,この青唐辛子が激辛で,一気に辛いスープへと変化しました。

 ヨーロッパの料理の中でも辛い料理が多いとされるハンガリー料理ですが,グヤーシュはその意味でも代表的な料理と言えるでしょう。


マンガリッツァ豚のソテー ポテトと紫キャベツ添え

 ハンガリーの代表的な料理ということで,ハンガリーの食べる国宝「マンガリッツァ豚」のソテーを御用意いただきました。

(マンガリッツァ豚のソテー ポテトと紫キャベツ添え)
Photo_3

 マンガリッツァ豚をソテーし,デミグラスソースに似た肉と香味野菜のうまみたっぷりのソースをかけた料理で,マッシュポテトや紫キャベツ,スライスしたリンゴ,ミニトマトなどが添えられています。

 マンガリッツァ豚は肉質がとてもやわらかく,脂肪も溶けやすいので,肉の食感と脂肪のうま味の両方をバランスよく味わうことができました。

 また,添え野菜やソースに着目すると,オリジナルソースはもとより,紫キャベツ,スライスリンゴ,ベリーソースなど甘い食べ物が多いことに気付きます。

 フォアグラとトカイワインの組み合わせもそうですが,肉と甘い食べ物を組み合わせた料理が多いのもハンガリー料理の特徴の1つと言えるでしょう。
(オーストリア料理のカツレツ(ウィンナーシュニッツェル)と甘いベリーソースの組み合わせも同じ流れにあると言えます。)

 お店の方から,マンガリッツァ豚のパンフレットを見せていただきました。

(マンガリッツァ豚(ピック))
Photo_4

 モコモコした毛に覆われた,羊のような豚です。

 ハンガリーで誕生した特殊な豚で,その希少性からハンガリーの国宝にも認定されていますが,飼育と消費がうまく循環させることで頭数も安定するため,食べ続けることも必要なことのようです。

 このパンフレットはハンガリーサラミでも有名なピック社のものですが,このピック社のあるハンガリー南東部の都市セゲドはサラミとパプリカの主要産地となっています。

 そのため,ピック社の工場内に「ピックサラミ・セゲドパプリカ博物館」が設けられており,サラミとパプリカの歴史や製造法を学ぶことができます。


ショムロ地方のスポンジケーキ

 デザートは「ショムロ地方のスポンジケーキ」という珍しいケーキを用意していただきました。

(ショムロ地方のスポンジケーキ)
Photo_9

 ケーキの底から順に,ナッツのスポンジケーキ,洋酒・ベリーのケーキ,その上に白いバニラクリームケーキがのせられ,仕上げにチョコレートソースがたっぷりとかけられています。

 生クリームと甘い果実のソースも添えられています。

 このケーキの特徴はたっぷりかかったチョコレートソースと白いバニラクリームケーキです。

 チョコレートソースはココアパウダーから作られています。

 白いバニラクリームケーキは,食感が牛乳かんか名古屋のういろうのように感じ,一般的なケーキ生地とは少し異なったものでした。

 3層のケーキに3種のソース。様々な味を楽しみながら,コーヒーと共に美味しくいただき,食事を締めくくりました。


モーツァルトクーゲル

 お土産として,店頭のミニショップで販売されていたオーストリアのチョコレート菓子「モーツァルトクーゲル」を買いました。

(モーツァルトクーゲル)
Photo_6

 ヘーゼルナッツクリームとマジパンクリームをチョコレートでコーティングしたお菓子です。
 ※マジパン…砂糖とアーモンドを練り合わせた製菓材料。

 中のマジパンがしっとりとやわらかく,かたいチョコレートと対照的な組み合わせで,日本ではあまり見かけないチョコレート菓子です。

 ハンガリーとオーストリアと言えば,かつてのオーストリア皇紀で,ハンガリーびいきだった「エリザベート(シシー)」を思い浮かべますが,そのシシーのグッズも販売されていました。


 今回いただいた料理は,基本のコース料理とアラカルトの中から代表的なハンガリー料理をアレンジしていただいたものです。

 こころよく応対してくださったお店の方に感謝の意を申し上げ,お店を後にしました。

 その際,店主さんから,「また東京にお越しの際はお寄りください。今度は気負わずに。」と声をかけていただきました。

 ハンガリー政府から依頼を受けてオープンし,ハンガリー大使館のお墨付きで,ディナーはドレスコードもある東京のレストランとなると,それなりに意識して訪問したことは確かなのですが,お店はとても和やかな雰囲気で,興味深いハンガリーのお話もたくさん伺え,とても居心地の良いひとときを過ごすことができました。

 今度は気負わずに訪問できそうです(笑)。



<参考文献>
 キース・ベローズほか「世界の食を愉しむ BEST500」日経ナショナル ジオグラフィック社
 関田淳子「ハプスブルク家の食卓」新人物文庫

<店舗情報>
 「AZ Finom(アズフィノム)」(東京都渋谷区神宮前2-19-5 AZUMAビル地下1階)

<関連リンク>
 「ピック(ピックサラミハンガリー)」(ハンガリーサラミ・マンガリッツァ豚)

<関連記事>
 「ハンガリー料理の特徴と主な料理1 -トカイワイン・豚肉のパテ・ハンガリーサラミ・パプリカ・フォアグラ・スズキのソテー-
 「オーストリア料理の特徴と主な料理 -カイザーゼンメル,グーラッシュ,キプフェル,ウィンナーシュニッツェル-

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コメント

コウジ菌さん、こんにちは(*^-^*)

ほぁー(゜゜)すごい!!
と、思いながら読みました。

食事中に甘いスープ飲むんですね(゜.゜)
これは飲んでみたいなぁ
私は少し辛いのは好きだけど、激辛は無理なので、グヤーシュスープは青唐辛子はなしで食べてみたいです。
食べる国宝っていうのはよくできてるシステムというか循環なんだなと勉強になりました。
理想的な飼育と消費な気がしますヽ(´▽`)/
デザートもおいしそうでした

私はハンガリーに限らず…他の国のことにあまり詳しくないので、コウジ菌さんのブログは楽しいです!
日本のことも全然知らないことが多いので、コウジ菌さんはすごいなぁと毎回思います。

これからも頑張ってくださいo(*^▽^*)o

食事の途中で甘いスープ…!
私だったら絶対選ばないかなー(笑)

ゆめはる 様

ゆめはるさん,コメントいただきありがとうございます。
コメントはもちろん,活動を再開され,再び私のブログにお越しいただいたこともとても嬉しいです。

本当にスゴイのは,ゆめはるさんの絵や手芸の方ですよ。

世の中の何にでも好奇心や興味を持つこと,そしてその事について,自分で調べたり,ちょっと勇気を出して行動してみることは,新たな情報が得られ,自分の人生にとてもプラスになることだと思います。

そうしてわかったこと,学んだことをブログを通じて皆さんと共有できたらとの思いで,記事を書いています。

だから,「知らないことがわかった!」と言っていただけると,共有できたようでとても嬉しいです。

食事に甘いスープ,OKなんですね(笑)
私も甘いもの好きですが,デザートとして出していただきたかったです(笑)

グヤーシュスープ,せっかくだからと青唐辛子も入れてみましたが,ちょっとかじっただけで激辛でした…(>_<)
ハンガリー人は辛いのが大丈夫な人が多いのでしょうね。

食べる国宝マンガリッツァ豚の循環システムのお話,ゆめはるさんも考えてくださったことがよくわかり,嬉しかったです。
国宝ですから,食べ過ぎるとストップがかかるのでしょうね(笑)

デザート・モーツァルトクーゲルは,チョコレートがお好きなゆめはるさんも気に入っていただけると思います。

ゆめはるさんの温かいコメントで,また頑張ろうという気持ちになりました!
ありがとうございました。

chibiaya 様

chibiayaさん,おはようございます。
素直なコメントいただき,ありがとうございます(笑)

通常のコースなら,甘い桃のスープかグヤーシュスープのどちらか1つですから…(笑)

和食で,「お食事にご飯と汁物が付きますが,汁物は味噌汁とおしるこ,どちらになさいますか?」と言われてるようなものですね(^o^)

私はあえて,特徴のある料理や味が想像できないような料理を選ぶ傾向にあるので,今回のスープも予約時にお店の方に無理を言って2種類御用意いただいたんですよ。

コミックガムの「いこくい」というマンガに今回の「アズフィノム」(Dish.9)
http://www.comicgum.com/viewer.php?id=133&direct=009
と蒲田の「スピローズ」(Dish.7)
https://comic.pixiv.net/viewer/stories/44719
が登場しています。

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