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2019年5月19日 (日)

福島県会津地方の食文化1 -馬刺し・ニシン・鯉・くきたち菜・三五八漬け・こづゆ・天ぷら・揚げまんじゅう・そば・会津山塩・なめこ茸-

 2019年3月に福島県会津若松市を訪問しました。

 会津若松は,周りを山に囲まれた盆地にあり,交通手段が発達していない昔は,人や物資の交流もままならなかったため,独自の生活文化圏・食文化が形成されてきました。

 そのため,会津若松の食文化は,桜肉(馬肉),ソースかつ丼,輪箱(わっぱ)飯,こづゆ,会津蕎麦,日本酒,鯉料理,羊羹など,会津若松ならではの,他地域では珍しい料理もたくさんあります。

 会津若松ならではの食文化を知りたいと思い,会津若松市内のそば・郷土料理店を訪問しました。


馬刺し・ニシンの山椒煮・鯉の甘煮・くきたち菜

 今回訪問したお店では,会津若松のいろんな郷土料理が一度に堪能できる「おもてなし御膳」というメニューが用意されていたので,こちらを予約注文させていただきました。

 1人でも快く予約を引き受けてくださり,きちんとした席も御用意いただいたので,遠方(広島)から訪問した私にとっては,とてもありがたかったです。

(馬刺し・ニシンの山椒煮・鯉の甘煮・くきたち菜のお浸し)
Photo_49

 写真左上が馬刺し,中央がニシンの山椒煮,右上が鯉の甘煮,左下がくきたち菜のお浸しです。

 個別に料理を御紹介します。

【馬刺し】

(馬刺し)
Photo_50

 会津地方には桜肉(馬肉)を食べる文化があり,桜肉を売る精肉店もあります。

 これは会津地方が旧越後街道の交通の要衝として栄え,人々の生活と密接に関わりを持っていたことや,会津坂下町に馬の「せり場」があったことに由来します。

 今回の馬刺しは,醤油に「にんにく唐辛子みそ」(写真手前の薬味)を溶いていただきました。

【ニシンの山椒煮】

(ニシンの山椒煮)
Photo_51

 かつて海から離れた会津地方は,海産物と言えば乾物が中心でした。

 身欠きニシン,棒タラ,スルメ,貝柱などが挙げられます。

 そのため,会津地方では,そうした乾物を一旦戻して調理した料理も多く存在します。

 ニシンの山椒煮(山椒漬け)は,そんな会津地方の保存食の1つです。

 同じような料理に,スルメを人参と漬け込んだ「いかにんじん」や,棒タラを砂糖・醤油で味付けして長時間煮込んだ「棒たら」などがあります。

【鯉の甘煮】

(鯉の甘煮)
Photo_52

 私は,会津にも鯉の甘煮があることにとても興味を持ちました。

 かつて訪問した山形県米沢市でいただいた鯉の甘煮と同じだったからです。

 会津と米沢はいずれも盆地であること,地理的にも近いこと,藩政改革をきっかけに鯉料理が食べられるようになったことなど,共通点が多くみられます。

 醤油・砂糖・酒などで甘辛く煮た鯉の甘煮は泥臭さもなく,美味しくいただきました。

【くきたち菜のお浸し】

(くきたち菜のお浸し)
Photo_53

 くきたち菜は会津に春の訪れを知らせる野菜とされています。

 辛子醤油で味付けされ,すりゴマがたっぷりかけられたお浸しでした。


三五八漬け・こづゆ

 続いて,「三五八(さごはち)漬け」と「こづゆ」を御紹介します。

【三五八漬け】

(三五八漬け)
Photo_54

 三五八漬けは,ご飯に米麹を加えて糖化させたものに塩を加えた漬け床に野菜などを漬けて作られます。

 野菜の持ち味を生かし,ほんのりとした甘味が楽しめる漬物です。

【こづゆ】

(こづゆ)
Photo_55

 こづゆは,会津地方で江戸時代後期から明治時代初期にかけて武家料理や庶民の御馳走として広まり,冠婚葬祭の料理として振る舞われる郷土料理です。

 干し貝柱,きくらげ,干しシイタケ・里芋・人参・糸こんにゃく・豆麩などが主な食材で,乾物を多く用いられることが特徴となっています。

 具だくさんのすまし汁なのですが,いろんな乾物からよい出汁が出ていました。


会津の天ぷら盛合せ・揚げまんじゅう

 会津の郷土料理でぜひ食べてみたかった料理の1つが,会津の天ぷらです。

 会津には,ほかでは例のなさそうな,珍しい食材の天ぷらが多いのです。

【会津の天ぷら盛合せ】

(会津の天ぷら盛合せ)
Photo_56

 天ぷらにすると衣で元々の食材がわかりにくいですが,写真左から右へ順に,スルメ,ニシン,鯉,まんじゅう,ふきのとうの天ぷらです。

 保存食である乾物のスルメやニシンは天ぷらにするとやわらかく,美味しくいただくことができます。

 鯉の切身を天ぷらにするのも,鯉を美味しく食べるための工夫から生まれた発想なのでしょう。

 ふきのとうは春の訪れを感じさせてくれる天ぷらでした。

 なお,今回の天ぷらに添えられた大根おろしは,金山町で採れた野生の大根「アザキ大根」です。

【まんじゅうの天ぷら】

 続いて「まんじゅうの天ぷら」です。

 この料理は会津訪問前からとても気になっていたので,単品でも注文しました。

(まんじゅうの天ぷら)
Photo_57

 この天ぷら,私はその見た目や大きさから,一瞬「しいたけの天ぷら」かと思いました。

 それでは天ぷらの中身を見てみましょう。

(まんじゅうの天ぷら(中身))
Photo_58

 こしあんが入った薄皮饅頭の天ぷらです。

 私はこの饅頭を見て,福島県郡山市の日本三大まんじゅうの1つ,「柏屋の薄皮饅頭」を思い出しました。

 饅頭自体が大きい上に,衣をつけて揚げてあるので,結構ボリュームがあります。

 私はこのまんじゅうの天ぷらを,盛合せと単品を合わせて2つもいただき,とてもお腹いっぱいになりました。

 私の住む広島にもホルモンの天ぷら(広島市)やもみじ饅頭の天ぷら(宮島)といった珍しい天ぷらありますが,会津の天ぷらも強者です。


盛りそば

(盛りそば)
Photo_59

 盛りそばです。福島県が育成したオリジナルそば品種「会津のかおり」が使われています。

 白くてコシのある美味しいそばでした。


会津山塩

 会津の郷土料理を堪能した後,私はお店の方に気持ちばかりの広島のお土産をお渡しし,お礼申し上げました。

 1人の予約にも快く応じてくださり,きちんとした席も用意していただき,いろんな会津の郷土料理を味わわせていただいたことが嬉しかったからです。

 すると厨房でお忙しくされていた店主さんが出てこられ,「これをお土産にどうぞ」とお店でも使われている会津の山塩をいただきました。

(会津山塩)
Photo_60

 大塩裏磐梯温泉(福島県耶麻郡北塩原村)の温泉水を薪窯で煮詰めて作られる珍しい塩です。

 一般的な食塩に比べて,結晶が細かく,その分塩辛さも強いように感じました。

 そしてただ塩辛いだけでなく,その塩辛さをやさしく包み込むような甘味やうま味が後から追い掛けてくるようにも感じました。

 海から遠く離れた会津ならではの塩です。

 店主さんの温かい人情にも触れることができ,思い出に残る食事となりました。


地元のお店で会津の食探し

 お店から会津若松駅に向かう途中,会津ならではの食品が売られていないかと,地元のスーパーマーケット(「リオンドール千石店」)に寄ってみました。

 店内には,身欠きニシン,馬肉,揚げまんじゅうなど,会津地方ならではの食品がたくさん売られていました。

 また別のお店へ行くと,「なめこ茸」の缶詰が売られており,これも会津の名産だと伺いました。

(なめこ茸(缶詰))
Photo_61

  大根おろしと一緒にいただくのがおすすめだそうです。

 これらの食品は,会津の食生活とかかわりが深いことが理解できました。


まとめ

 今回の旅で,私は「会津の三泣き」(※)を実感しました。

 ※「会津に来たときはその閉鎖的な人間関係に泣き,なじんでくると人情の深さに泣き,去るときは会津人の人情が忘れ難く泣く」こと(福島県庁ウェブページから抜粋)

 訪問したどのお店でも広島から来た私を歓迎してくださり,話が盛り上がって自然と滞在時間が長くなりました。

 特にNHK大河ドラマ「八重の桜」で八重を演じた綾瀬はるかさん(広島市出身)の話題はどこでも盛り上がりました。

 そうした会津のみなさんの人情深さには,涙が出る思いがしました。

 そしてわずか半日の滞在でしたが,夜,会津若松駅を出発した電車の中で温かい人々にめぐり会えたことを思い出すと,会津を離れがたい気持ちになりました。

(会津若松駅・磐越西線・郡山行)
Photo_48

 会津若松駅から磐越西線の電車で郡山駅へ行き,郡山駅から東北新幹線で東京駅まで戻りました。

 次回会津を訪問する際は,もっとゆっくり滞在するプランにし,また会津の温かい人情に触れたいと思いました。

 その時もきっと,西田敏行さん(福島県出身)のように,涙もろくなってしまうんだろうな(笑)


<関連リンク>
 「徳一」(福島県会津若松市東千石1-5-17)
 「電車で会津の旅 会津の隠れた名物郷土料理『鯉の甘煮(うまに)』を食べる」(東武鉄道)
 「会津山塩」(会津山塩企業組合)

<関連記事>
 「あずきの研究12 -なぜ冬に水ようかんを食べる地方があるのか-」(東山温泉「松本家」の水ようかんと湯の花羊羹)
 「山形の食文化の特徴1 -米沢の鯉料理と食用菊-
 「広島の名物・郷土料理1 -ホルモン天ぷら,ホルモン天ぷらの種類と特徴-
 「広島の名物・郷土料理2 -ホルモン天ぷら(ビチ・チギモ),スマートな注文方法-

<参考文献>
 尾形希莉子・長谷川直子「地理女子が教えるご当地グルメの地理学」ベレ出版
 「dancyu おいしい鉄道旅 2018年12月号」プレジデント社

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コメント

西田敏行が会津藩士に扮した時代劇で、身欠きニシンは滅多に食べ
られない御馳走だと言ってました(^_^)
今は山奥の温泉旅館でもお造りがでますが(^-^;

馬刺は居酒屋で食べたことがありますが、カナダ産でした( ̄▽ ̄)
会津で馬肉が食べられるようになったのは、戊辰戦争がきっかけだ
とか。馬肉を食べると傷の治りが早くなるそうです(^_^)

私の先祖は仙台藩の出身!会津や米沢は見方です(^_^)v

なーまん 様

なーまんさん,こんばんは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます。

身欠きニシン,会津には豊富にあって,工夫を凝らして天ぷらにまで発展したのかと思いましたが,逆に貴重な海産物だったのですね。
冷蔵庫がなかったちょっと昔まで,内陸部で生魚や刺身を食べるなんて,滅多にできなかったことでしょう。

馬肉,西日本では熊本のイメージが強いのですが,日本各地へ旅行するようになってから,東北全般や長野にも馬肉を食べる文化があることを知りました。
馬肉を食べると体を回復させる効果があるとは,名実ともに「薬食い」だったのですね!

なーまんさんが仙台とゆかりがあるとのお話,私はなーまんさんのブログで仙台の七夕祭りと平塚の七夕祭りを御紹介されていたことを思い出しました(^o^)

さすがなーまんさん,よく御存知ですね(^_^)/

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