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2019年10月10日 (木)

滋賀県・琵琶湖の恵みと発酵食文化 -マジカ・鮒ずし・ブラックバス・すじえび・発酵食フレンチ-

 滋賀県には,琵琶湖の恵みである湖魚(こぎょ)を使った料理や,その湖魚を発酵させて作られる発酵料理など,独特な食文化があります。

 こうした食文化に興味を持った私は,琵琶湖沿いのお店を訪問し,直接その食文化に触れてみることにしました。


BIWAKO DAUGHTARS(ビワコドーターズ)

 広島から京都まで新幹線,京都からレンタカーを利用して,滋賀県野洲(やす)市にある「BIWAKO DAUGHTARS(ビワコドーターズ)」を訪問しました。

 「danchu」(2018年12月号)の特集「おいしい鉄道旅」の中で,食のエッセイストである平松洋子さんがこちらのお店を訪問された際の記事を読んで,琵琶湖の魚介を使った料理の種類の多さに興味を持ったのがきっかけです。

 琵琶湖畔の民家や農地が広がる地域の中に,突如,おしゃれなお店が目に飛び込んできました。

(BIWAKO DAUGHTARS)
Biwako-daughtars

 店名のとおり,祖母から母,母から娘へと代々引き継がれてきた琵琶湖の伝統食が現代風に味わえるお店です。

 鯉,鮒,鮎,ウナギ,すじえび,ビワマス,もろこ,うろり,たてぼし…琵琶湖沿岸の人以外には聞き慣れない名前の魚や貝の料理もたくさん揃えられていました。

 私の心はときめき,全品味わってみたい気持ちになりました。

 そんな心境の中,今回私が味わったものを御紹介します。

【マジカ(ニゴイ)のバーガー】

 マジカ(ニゴイ)という湖魚のバーガーが用意されていました。

 お店の方から,店頭にあまり出ることがないレアなバーガーだと伺いました。

 商品の説明書きには,「『マジカ(ニゴイ)』 姿からは想像出来ない美味しさ!!」とあり,「マジか!」(笑)と思いながら,注文しました。

(マジカ(ニゴイ)のバーガー)
Photo_20191009195801

 バンズの中身を確認してみましょう。

(マジカ(ニゴイ)のバーガー(中身))
Photo_20191009195802

 中身は,レタス,マジカ(ニゴイ)のフライ(白身魚のフライ),チーズ,タルタルソース,パプリカ,アスパラガスと具だくさんでした。

 マジカ(ニゴイ)はクセのない白身魚のフライに仕上げられていて,タルタルソースやバンズとよく合いました。

 ただ,フライには小骨が多く,取り除きながら食べる必要があることも理解しました。


【ふなずしサンド】

 琵琶湖の発酵食として有名な「鮒ずし」のサンドイッチも注文しました。

 この「ふなずしサンド」は,お客さんから注文を受けてから作られるようで,お店の方が鮒ずしを薄く切って,スライスチーズとともにパンにはさんでくださいました。

(ふなずしサンド)
Photo_20191009200201

 お腹に卵がたっぷり詰まった鮒ずしと北欧のチーズのシンプルなサンドイッチです。

 鮒ずしとチーズという発酵食品同士の組み合わせです。

 チーズの個性が強すぎても弱すぎても鮒ずしの味が損なわれるらしく,両方の味をうまく引き立たせるチーズを探すのに大変苦労されたそうです。

 確かに両方の味が見事に調和していて,鮒ずしとチーズ以外は特に何も味付けされてないのに,美味しいサンドイッチに仕上がっていました。


【琵琶湖のジェラート】

 「琵琶湖のジェラート」というメニューを知って,食べずに帰る訳にはいきません。

 どんなジェラート(アイスクリーム)なのか,興味津々で注文しました。

(琵琶湖のジェラート)
Photo_20191009200601

 一見,白い普通のバニラアイスのようですが,中に鮒ずしの漬け床「飯(いい)」(ごはん)が混ぜられているジェラートでした。

 鮒ずしの発酵で生じた乳酸菌がたっぷり含まれています。

 味は「言われてみれば鮒ずしの飯が入ってるような気もするな」という程度で,生臭みや独特なにおいは全くありませんでした。

 琵琶湖ならではの様々な食べ物・デザートを堪能し,お店を後にしました。


【琵琶湖の舶来サンド】

 夜,テイクアウトした「琵琶湖の舶来サンド」をいただきました。

(琵琶湖の舶来サンド)
Photo_20191009201001

 舶来物(外来種)のブラックバスのフライをメインに,レタス,トマト,パプリカなどの具とタルタルソースをはさんだサンドイッチです。

 ブラックバスはクセがない白身で,野菜やタルタルソースともよく合い,想像以上に食べやすかったです。


【えび豆】

 お土産に「えび豆」と「えびの生ふりかけ」を購入し,後日いただきました。

(えび豆)
Photo_20191009201101

 「えび豆」は,琵琶湖産の「すじえび」と大豆の「田舎煮」(甘辛い味で煮る素朴で家庭的な煮物)です。

 「すじえび」は,釣り好きな私が表現すると「オキアミ」とそっくりな姿かたちです。

 甘辛い佃煮風なので,ごはんとの相性も抜群でした。


【えびの生ふりかけ】

 「えびの生ふりかけ」は,琵琶湖産の「すじえび」を甘辛く炊いて,そぼろ状になるまで水分を飛ばし,ふりかけにしたものです。

(えびの生ふりかけ)
Photo_20191009201102

 甘辛い味付けや海老とゴマの香ばしさがごはんにピッタリ合いました。

 BIWAKO DAUGHTARS(ビワコドーターズ)は琵琶湖の湖畔沿いにあるので,自動車か鉄道の最寄駅(野洲駅)からタクシーで行くことになると思いますが,それだけの価値があるお店だと思いました。


ロテルド比叡 湖からのフレンチ

 滋賀県側から車で比叡山を登り,オーベルジュとして有名な「ロテルド比叡」を訪問しました。

 こちらのレストランで,近江の発酵文化をとり入れたフレンチを味わいました。

 その中で発酵食が用いられた料理を御紹介したいと思います。


【鮎のフリット 米麹と胡瓜】

 「鮎のフリット 米麹と胡瓜」は,小鮎を唐揚げにし,米麹とキュウリのソースにのせた料理です。

(鮎のフリット 米麹と胡瓜)
Photo_20191009223701

 カリカリに揚げられた小鮎は頭から丸ごと食べることができました。

 ソースは米麹とキュウリを滑らかに仕上げたもので,米麹のコクとほのかな甘みがフリットとよく合いました。


【フロマージュブラン 貴腐ワインのジュレ 繊細な鮒鮓のアルモニー】

 次に鮒ずしを使った創作料理を御紹介します。

(フロマージュブラン 貴腐ワインのジュレ 繊細な鮒鮓のアルモニー)
Photo_20191009223702

 平易に表現すると,「白チーズと貴腐ワインのゼリーソースと繊細な鮒ずしのハーモニー(調和)」です。

 白チーズの真ん中にスライスした鮒ずしがのせられ,貴腐ワインのゼリーソースがかけられた料理です。

 白チーズ,貴腐ワイン,そして鮒ずしと発酵食が勢揃いです。

 「BIWAKO DAUGHTARS(ビワコドーターズ)」の鮒ずしサンドと同様に,チーズと鮒ずしが組み合わされており,組み合わせによって相性が良くなることを改めて感じました。


滋賀県・琵琶湖と東南アジアに共通する保存食・発酵食文化

 和食の代表格と言える寿司は,魚を炊いた米で漬ける「なれずし」(鮒ずしもその一種)が発展・変化してできた料理です。

 その「なれずし」は東南アジアから日本を含む東アジアへ伝わってきた食品とされています。

 東南アジアには,その一帯を流れるメコン川やカンボジアのトンレサップ湖など,豊かな水源が数多くあり,その水源から採れるたくさんの魚と稲作が結びついて「なれずし」や「魚醤(ナンプラー・ニョクマム・プラホックなど)」などの保存食・発酵食文化が生まれ,発展してきました。

 関西の水がめとなっている琵琶湖と広大な稲作地帯を有する滋賀県は,東南アジアの自然環境・生活環境と共通するところも多く,その結果,似たような保存食・発酵食文化が現代まで受け継がれているのではないかと考えます。


<関連リンク>
 「BIWAKO DAUGHTARS」(滋賀県野洲市菖蒲230)
 「ロテルド比叡」(京都市左京区比叡山一本杉)

<参考文献>
 「danchu おいしい鉄道旅」(2018年12月号)プレジデント社

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コメント

なれずしと言えば、稲作と漁労の民の代表的食品!
畑作と畜産の民の食品とのコラボは面白いですね(^。^)
個人的には白身魚のフライは苦手なので、ふなずしサンドと
琵琶湖のジェラートを食べてみたいですね(^-^;

なーまん様

なーまんさん,こんばんは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます。

鮒ずし,なーまんさんは大丈夫そうですね!
白身魚のフライはお苦手のようですが(^_^;)
逆の人の方が多いと思いますけど…(笑)

ふなずしサンド,ごはんで作ったものをパンにはさんで食べるというのは現代風ですよね。
ジェラートもイタリアのアイスですし。

農業(米)と漁業(魚)のみならず,漁業(魚)と畜産(チーズ),国内と海外など,今ではいろんな食の組み合わせが可能となっていますが,そうした試みを通じて,また新たな食が生まれてくるのでしょうね。

琵琶湖にはいろんな珍しい食べ物がありますし,今回御紹介したような新たな試みもなされているお店もあるので,機会があれば御訪問ください!

昨日の餃子ナイトではお世話になりました。オラのふるさと、滋賀県を訪ねてくださってありがとうございます。ふなずし、個人的に世界でいちばんうまい食べ物だと勝手に思ってます(ソウルフードゆえ、バイアスかかりまくりなのはお許しを)。昔は各家で漬けてて、魚の処理やら温度管理やらも適当だったので、猛烈に臭うこともありました(それはそれで蠱惑的だったけど)が、今はプロが洗練された仕事をしたものばかりで、こうやっていろいろな食品に組み合すことも増えたし、ふなずしにあまり慣れていない人にも気軽に食べてもらえるので、うれしい限りです。

きたむら 様

きたむらさん,こんばんは。
こちらこそ昨夜の餃子ナイトでは大変お世話になりました。

餃子を皮から作るのは初めての体験で,餃子の餡や調味料も本格派で勉強になりました。
そして,きたむらさんの食に関する半端ない知識にはただただ驚きました。

滋賀県御出身だとおっしゃってて,鮒ずしが世界で一番うまい食べ物だというお話をしてくださったのもよく覚えております(^o^)
鮒ずしで言えば,以前,滋賀県高島市の鮒ずしのお店でも買って味わった経験があります。
昔は冷蔵庫なんてなかったから,臭いも強烈だったのでしょうが,人間の知恵の結晶とも言える保存食ですよね。
お腹に卵のある鮒ずしも美味しいですよね!

滋賀(近江)は発酵食文化が盛んで,これは全国に誇れると思います。
鮒ずしにしても,今回御紹介した料理のように現代風にアレンジすることも含め,もっと身近な食として,伝承され続けるといいなと思います。

またお会いして,楽しい食のお話を伺えたらと思います。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

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