新潟の食文化探訪2 -佐渡岩もずく・南蛮海老・のどぐろ・のっぺ・笹川流れ藻塩・新潟すし三昧「極み」-
燕三条駅から弥彦線・越後線経由で新潟駅へ
新潟県燕市・三条市で金属加工産業とそれに関連する食文化について学んだ後,燕三条駅から弥彦線の電車に乗って吉田駅へ向かい,同駅で越後線の電車に乗り換えて新潟駅へ向かいました。
(E129系・吉田駅・越後線)
弥彦線や越後線など新潟地区で幅広く活躍している「E129系」と呼ばれる電車です。
新潟地区の黄金色の稲穂を表した「黄金イエロー」と佐渡島のトキを表した「朱鷺(とき)ピンク」のラインが大きな特徴となっています。
吉田駅からしばらくの間は田園風景が広がっていましたが,次第に住宅やビルが増え,電車は新潟市の中心部に入りました。
そして終点・新潟駅に到着しました。
(新潟駅ホーム・駅名標とE129系(越後線))
ホームにはE129系の車両が多く,なんとなく駅全体がかわいいイメージになっていました。
新潟市内(万代島)散策
新潟駅からバスで中心街の古町(ふるまち)へ行き,このエリア一帯をしばらく散策した後,徒歩で万代島(ばんだいじま)へ向かいました。
(信濃川と万代島(朱鷺メッセ・万代島フェリーターミナル))
信濃川の向かいが「朱鷺メッセ新潟コンベンションセンター」と「ホテル日航新潟」(写真右上),そして「万代島フェリーターミナル」(写真左上奥側)です。
朱鷺メッセを経由して,その先の万代島フェリーターミナルまで歩きました。
この万代島フェリーターミナルから佐渡島行きのフェリーに乗船することができます。
ターミナル内に港湾の展示コーナーがありました。
(新潟県港湾資料室入口)
(新潟県港湾資料室)
佐渡島行きフェリーの待ち時間を利用して,港湾について学ぶことができる施設でした。
「新潟はB級グルメ天国」
さらに施設内を歩いていると,興味深いポスターを見つけました。
(ポスター「新潟はB級グルメ王国」)
粟島:わっぱ煮
佐渡:佐渡ブリカツ丼
新潟:あっさり醤油ラーメン,濃厚味噌ラーメン,(鶏の)半身揚げ,新潟タレかつ丼,ポッポ焼き,イタリアン(みかづき)
燕三条:燕三条背脂ラーメン,カレーラーメン
弥彦:パンダ焼き(パンダの形をした饅頭)
長岡:長岡生姜醤油ラーメン,長岡洋風カツ丼,あぶらげ(ネギ付き),イタリアン(フレンド)
柏崎:サバサンド,柏崎鯛茶漬け
小千谷:小千谷へぎそば
十日町:十日町へぎそば
上越:頸城(くびき)の押し寿司,する天(塩スルメの天ぷら)
妙高:笹寿司
糸魚川:糸魚川ブラック焼きそば
南北に長く,東西にも広がりのある新潟県だけに,各地に様々なご当地グルメがありますね。
サプライズ花火
万代島から再び歩いて新潟市の繁華街へ向かっていると,背後から「ボン,ボーン」と花火の打ち上げ音が聞こえました。
振り返ってみると,花火が打ち上げられていました。
(サプライズ花火(新潟市))
万代島から柳都(りゅうと)大橋を渡った先,秣川岸通(まぐさかわぎしどおり)交差点付近から眺めた花火です。
(2022年6月12日夜)
「♪花火はぁー越後のぉー 花火は越後のぉー♪」(小林幸子「雪椿」のフレーズで)
紅白歌合戦で小林幸子さん(新潟市出身)のステージを迎えた時のように,驚きと感動に満ちた花火でした。
「越後の馳走」の郷土料理
サプライズ花火ですっかり上機嫌の私は,続いて新潟市中央区東堀通の鮨・割烹店を訪問しました。
事前に予約しておいたので,お店に入るとすぐにカウンター席を御案内いただきました。
私は「越後の馳走」という郷土料理と寿司がセットになった会席料理を注文しました。
お寿司屋さんのカウンターなので,少し緊張しながら,料理を待ちました。
(バイ貝煮・佐渡岩もずく酢・南蛮海老の佃煮)
先付けとして「バイ貝煮」(写真左側),「佐渡岩もずく酢」(写真中央),「南蛮海老の佃煮」(写真右側)をいただきました。
だし風味をほんのりと感じるバイ貝の煮物,佐渡の天然岩もずくを使ったもずく酢,そして新潟の代表的な食材の1つ「南蛮海老」の佃煮を堪能しました。
続いて「のどぐろの若狭焼き」が提供されました。
(のどぐろの若狭焼き)
のどぐろ(アカムツ)は,日本海側を中心に水揚げされる高級魚です。
白身魚ですが,うなぎのようにとても脂がのっているのが特徴です。
白身はふわふわでジューシーな仕上がり,そして皮はパリッと香ばしく焼き上げられていました。
これは文句なしに美味しい一品でした。
続いて,新潟の郷土料理「のっぺ」が提供されました。
(のっぺ)
「のっぺ」は,根菜やきのこ,鮭などが入った煮物です。
里芋,蓮根,人参,タケノコ,椎茸,かまぼこ,ぎんなんなどの具に,上品なだし汁がしっかりとしみ込んでいました。
美味しい料理も手伝って,次第に板前さんともお話しするようになり,心地よく過ごせるようになりました。
続いて用意されたのが「南蛮海老の真丈揚げ」です。
(南蛮海老の真丈揚げ)
南蛮海老は,真っ赤な色と甘みの強さが特徴の甘エビです。
(南蛮海老の真丈揚げ(中身))
その南蛮海老を粗めにすり身にして油で揚げた料理です。
天つゆのほかに,笹川流れの藻塩でいただきました。
(笹川流れ藻塩)
「笹川流れ」とは,新潟県村上市の海岸線に広がる岩礁や洞窟などの景勝地を言います。
JR東日本のリゾート観光列車「海里」(羽越本線・新潟~酒田)に乗ると,この笹川流れの区間は徐行運転となり,車窓からもその景色を楽しめるようです。
そんな笹川流れで作られた藻塩は,角の取れたまろやかな味わいで,南蛮海老の甘みをうまく引き立ててくれる一品でした。
新潟すし三昧「極み」
新潟県内の寿司店舗が協力して提供されているお得なメニューがあります。
「新潟すし三昧 極み」です。
新潟の旬の地魚・トロ・イクラが付いた特上寿司10カンにお椀が付いて一律3,850円(税別3,500円)という大変お得な寿司セットです。
今回私が味わった「越後の馳走」も,新潟の郷土料理と「極み」がセットになった会席でした。
板前さんが「それでは寿司を御用意しますね」とおっしゃって,カウンターに受け皿と醤油が用意された時,いよいよクライマックスを迎えた気持ちになりました。
(醤油と南蛮えび醤油)
つけ醤油として,醤油(写真左側)と「南蛮えび醤油」(写真右側)の2種類が用意されました。
「南蛮えび醤油」は,南蛮海老から作られた魚醤で,海老の風味豊かな醬油です。
そして寿司の受け皿にも工夫がなされていました。
(安田瓦の皿と新潟県の刻印)
安田瓦は新潟県阿賀野市の伝統瓦で,美しい鉄色をしているのが特徴です。
その安田瓦の素材で作られ,新潟県の形をした刻印が施されている受け皿でした。
板前さんが1つ1つ丁寧に握ってくださったお寿司をいただきました。
そのお寿司を御紹介します。
(スズキ)
河口や海に生息するスズキは,大きな川によって成り立った新潟ならではの魚です。
(マグロ)
マグロの赤身です。透き通るような赤色が印象的でした。
(バイ貝)
バイ貝の刺身の海苔巻きです。
新鮮でコリコリした歯応えのバイ貝と,パリッとした板海苔の食感を楽しめました。
(南蛮海老)
新潟を代表する魚介,南蛮海老です。
写真撮影用にと,飾りの尻尾もつけていただきました。
身がとても甘くてねっとりしており,南蛮えび醬油との相性も抜群でした。
この時,板前さんから「南蛮海老」の名前の由来を教えていただきました。
南蛮海老の「南蛮」は赤い唐辛子の意味で,その南蛮と同じように濃い赤色をした海老なので,「南蛮海老」と呼ばれているのだそうです。
ちなみに,唐辛子のことを北陸や東日本では「南蛮」と呼ぶ地域が多く,九州では「胡椒」と呼ぶ地域が多いのですが,皆さんの地域ではどう呼ばれているでしょうか。
(赤イカ)
こちらは赤イカです。
イカに包丁で細かく切れ目が入っており,シソや梅のアクセントも光っています。
たれが塗られていたので,そのままいただきました。
(マグロの中トロ)
マグロの中トロです。お寿司屋さんのカウンターで中トロがいただけるなんて最高です。
(甘鯛の昆布締め)
こちらは甘鯛の昆布締めです。
ねっとりとした歯ごたえと熟成された旨味を味わえました。
(ヒラメ)
ヒラメです。繊細で上品な味を堪能しました。
(南蛮海老の味噌汁)
途中で南蛮海老の味噌汁が提供されました。
海老の頭から出るだしが,みそ汁に海老の風味と深いコクを与えていました。
(アジ)
こちらはアジの握りです。
新鮮なアジでないと刺身では食べられません。
刻み生姜とネギがのせられており,たれも塗られていたので,そのままいただきました。
(のどぐろの炙り)
のどぐろの炙りです。
一品料理で出された炙りと同じく,脂がしたたり落ちるのではないかと思うほど脂がのっていました。
正直な話,中トロよりも深く印象に残りました。
「のどぐろ」という名称は,口を開けた時に「のど」の奥が「黒い」ことに由来しているのですが,その名称が新潟から広まったことについては,板前さんからのお話で初めて知りました。
私は広島県に近い島根県浜田市あたりで呼ばれている地方名かと思っていましたが,今では全国で呼ばれているようです。
(いくらの軍艦巻き)
いくらの軍艦巻きです。
いくらの粒が大きく,1粒1粒からパーッと旨味が飛び出しました。
(だし巻き玉子)
締めはお店自慢のだし巻き玉子でした。青のりの風味がきいて,ほのかに甘い玉子焼きでした。
新潟の新鮮な魚介類をお寿司でたくさん味わうことが出来ました。
(いちごのムースとさくらんぼ)
そして,新潟県内各地の食材・産品が集約された,まさに「御馳走」と呼ぶにふさわしい会席でした。
新潟でお寿司をいただいてわかったこと
最初は,握って出されたお寿司を箸でいただいていたのですが,途中からじかに手に取っていただきました。
手で握ってもらったお寿司を,箸でつまんでいただくことに抵抗を感じ始めたからです。
実際に手でいただくことで,板前さんのお気持ちまでじかに受け取っているような気持ちになりました。
あと,新潟のお寿司は,新鮮なネタはもちろん,シャリがとても美味しいことがわかりました。
こちらのお店では,新潟県加茂市・加茂七谷(かもななたに)産のコシヒカリが使用されていましたが,シャリだけでも美味しいと思ったのは人生初で,さすが米どころ新潟だと思いました。
板前さんに寿司を握ってもらっている途中で,「この調子だと量が多いかも知れない」と思い,カッコつけて「シャリ少なめでお願いします」とお願いしたことを後で後悔しました(笑)
今回はコース料理の一環として,しかもカウンターでいただいたこともあって,お寿司を一貫ずつ御提供いただきましたが,「極み」を注文した際は,こんな感じで提供されるようです。
(新潟すし三昧「極み」(イメージ・広告))
新潟県すし商生活衛生同業組合の広告の一部を加工・引用
高級なお寿司屋さんでも,定額でこれだけの内容なら,観光客でも安心して注文できますよね。
本当に採算度外視では?と思うほど充実した新潟すし三昧「極み」。
機会があれば,新潟すし三昧「極み」で,贅沢の「極み」・幸せの「極み」を体験してみてください。
<関連サイト>
「のっぺ」(農林水産省「うちの郷土料理」新潟県)
「地域ブランド 安田瓦」(安田瓦協同組合)
「新潟県すし三昧 極み」(新潟県すし商生活衛生同業組合)
「鮨・割烹 丸伊」(新潟市中央区東堀通8-1411)
<関連記事>
「新潟の食文化探訪1 -なぜ燕・三条地域で金属産業が発達し,背脂ラーメンが誕生したのか-」
<参考文献>
まっぷる「新潟 佐渡 '23」(昭文社)
野瀬泰申「食は「県民性」では語れない」角川新書
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小千谷の郷土料理は「おじや」だと思っていました(^.^)
辻堂のテラスモールという所に「越後叶屋」というへぎそばのお店がありますが、大阪が本社のチェーン店でした!
最近愛飲している「雪椿」が新潟県加茂市の会社だったので、ホッとしました!
冗談はこれくらいにして^^
「新潟県すし三昧 極み」カウンターで食べたくなりました!
良い仕事してますね〜♪
いくらの軍艦巻きも、軍艦が小さいのかと思いましたが、そんな事ないのですね!
最近はスマホが常識でSNSブームなので、にぎりを一枚ずつ撮影しても、逆に板さんは喜んでいたのでは?
投稿: なーまん | 2022年7月31日 (日) 17時39分
なーまん 様
なーまんさん,こんばんは。
早速コメントいただき,ありがとうございます。
確かに小千谷におじやがあったら面白いですね。
大阪の会社なら,そばを扱うだけでも珍しいのに,ふのりを使ったへぎそばのお店を展開されているというのも驚きです。
愛飲されているお酒「雪椿」のお話,なーまんさんのブログでお返事いただいたお話ですね。
ここでカモ一族のお話と,酒を醸すお話と,加茂市のお酒「雪椿」のお話が結び付きました!!
お礼に私から歌を…
「酒はー 越後のぉー 酒は越後のぉー 雪椿」(^^ゞ
新潟のすし三昧「極み」,カウンターで,一貫ずつ握ってもらったお寿司をいただくのも良かったですよ!
なーまんさんなら,日本酒「雪椿」か「極み」と御一緒に。
お寿司はすべて通常と同じサイズなので,お寿司だけでも満足な量だと思います。
「極み」は,当初イメージ広告のような一皿にすべて盛られたものを想定していました。
実際にはカウンターで一貫ずつ出していただくこととなり,「極み」を撮影することが目的だったので,申し訳ないと思いつつ,一貫ずつ撮影させていただきました。
嫌な顔1つせずに,むしろこころよく撮影に応じていただいた板前さんに感謝しています。
そして,また新潟へ行った時は,このお店に行って,撮影なしにじっくりお寿司をいただこうと思っています。
お寿司屋に慣れてないのがバレバレですが,色々と勉強させていただきました(^^ゞ
投稿: コウジ菌 | 2022年7月31日 (日) 19時28分
さすが新潟、海の幸が美味しそうです。
回転でないお寿司屋さんの、しかもカウンターとなると料金が気になって気が気じゃなさそうですが、定額なら安心して食べられますね。
「佐渡島行きフェリーの待ち時間を利用して」ということは佐渡島にも行かれたのでしょうか。
楽しみです(^^)
投稿: chibiaya | 2022年7月31日 (日) 19時59分
chibiaya 様
chibiayaさん,こんばんは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます(^-^)
新潟は海の幸に恵まれ,お米も美味しいので,お寿司は抜群に美味しかったです。
回転してないお寿司屋さんのカウンターで食べるのは,やはり緊張しました。
おっしゃるとおり,これがお任せだと料金が気になって,あれもこれも食べることはないと思います。
お品書きにも値段は書かれてなかったですし…。
なので,お寿司屋さんで定額で十分な量があるシステムは,とても安心できました。
このようなお寿司屋さんが地元にもあればいいなと思いました。
佐渡島,行きたかったのですが,新潟は1泊2日だったので,行ってません(>_<)
ごめんなさい。
ですが,もう少し新潟県内を巡ったことを記事にしようと思いますので,引き続き御覧いただければ幸いです。
投稿: コウジ菌 | 2022年7月31日 (日) 22時20分