菅原道真ゆかりの地(大阪府藤井寺市道明寺)で道明寺粉と道明寺桜餅について学ぶ
道明寺桜餅と道明寺
和菓子の桜餅は、小麦粉の生地で作られた関東風の「長命寺桜餅」と、もち米(道明寺粉)で作られた関西風の「道明寺桜餅」の2種類に分類できます。
その「道明寺」という名称のルーツである大阪府藤井寺市の道明寺。
和菓子好きな方、和菓子を作っておられる方、食文化に興味をお持ちの方などで、このお寺の名前を御存知の方も多いと思います。
今回、道明寺粉と道明寺桜餅について学ぶため、大阪府藤井寺市道明寺を訪問しました。
近鉄・道明寺駅と道明寺天神通り商店街
近鉄南大阪線・準急列車で近鉄・道明寺駅に到着しました。
(近鉄列車と道明寺駅ホーム(準急・河内長野行きと普通・柏原行き))
道明寺駅は近鉄・南大阪線と道明寺線の駅です。
駅を出てすぐの場所に、「大坂夏の陣・道明寺合戦記念碑」がありました。
(大坂夏の陣・道明寺合戦記念碑)
道明寺合戦は、大坂夏の陣で真田幸村軍と伊達政宗軍が激突した戦いです。
それから約400年の時を経た夏、ようやく私が道明寺の地にたどり着きました(笑)
道明寺駅周辺の地図を見ると、道明寺と道明寺天満宮があり、その寺社に続く商店街「道明寺天神通り商店街」がありました。
(道明寺天神通り商店街)
どこか懐かしさを感じる、地域に密着した商店街です。
道明寺を訪問する前に、ぜひとも調達しておきたい食べ物がありました。
桜餅です。
道明寺周辺のお店で桜餅を買って、道明寺境内でいただく、名付けて「道明寺作戦」。
戦いの火ぶたが切って落とされ、スマートフォンを片手に「桜餅はどこじゃ、どこにあるのじゃ」と目の色を変えて和菓子店を探しました。
そうして見つけたお店が「御菓子司 梅屋店舗」です。
(御菓子司 梅屋店舗)
「見つけたり!」
でもお店のシャッターがちょっと気になり…さらにお店に近づいてみると…。
(休業の貼り紙)
「誠に勝手ながら しばらくの間休業させていただきます」
「無念じゃ、安芸の国から参ったのに、実に無念じゃ…」
明らかにトーンダウンして引き戻しました。
でも気分だけでも味わいたいと思い、道明寺近くのスーパーマーケットへ行きました。
(食品館アプロ 道明寺店)
和菓子コーナーへ行くと、季節外れなので桜餅はなかったものの、土用餅と柏餅のセットが販売されていました。
この和菓子セットを購入し、道明寺へ向かいました。
道明寺
道明寺入口にたどり着きました。
(道明寺入口)
少し緊張しつつ、山門に向かいました。
(道明寺山門)
気を引き締めて、山門をくぐりました。
入ってすぐのところに、道明寺略縁起(りゃくえんぎ、起源・由来)がありました。
(道明寺略縁起)
道明寺の由来については、後ほどまとめて御紹介します。
(道明寺案内板)
こちらは道明寺の案内板で、現代版「道明寺略縁起」です。
(道明寺本堂(遠景))
こちらが道明寺の本堂です。
さらに歩いて近づいてみました。
(道明寺本堂)
道明寺本堂を正面から眺めた様子です。
心ばかりのお賽銭を納め、手を合わせました。
(伊藤柏翠の句碑)
境内に句碑がありました。
その1つ、伊藤柏翠(いとう はくすい)の「大安で吉日 梅の道明寺」という句碑です。
いくら桜餅に道明寺粉が使われようと、菅原道真と言えばやはり「梅」なのですね。
ひととおり境内を散策した後で、椅子に腰かけ、休憩を兼ねて和菓子をいただきました。
境内で食べることに少し申し訳なさを感じましたが、お賽銭を納めたことでお許しをいただこうと思います。
(土用餅・柏餅)
道明寺でいただいた土用餅と柏餅です。
ここで道明寺桜餅をいただきたかった…(笑)
道明寺天満宮
道明寺に隣接して道明寺天満宮があります。
天満宮と言えば、菅原道真を祭神とする神社で、北野天満宮(京都)、大宰府天満宮(福岡)、防府天満宮(山口)など全国各地にありますが、道明寺天満宮もその1つです。
この道明寺天満宮を訪問しました。
(道明寺天満宮神門)
天満宮の梅の紋章もあります。
(道明寺天満宮注連柱・灯籠)
道明寺天満宮の注連柱(しめばしら)と灯籠(とうろう)です。
さらに中へと進みました。
(道明寺天満宮拝殿)
こちらが道明寺天満宮の拝殿です。
梅の紋章があちこちに配されています。
ならば天神さまお使いの「牛」もいらっしゃるのではないかと探してみると…
(撫で牛)
やはりいらっしゃいました。
ここで私も一句。
「東風(こち)吹かば におひおこせよ 桜餅 桜なしとて 餅を忘るな」
意味「(道明寺や道明寺天満宮に)桜のおもかげはなくとも、桜餅のことも忘れないでほしい。せめて桜餅の匂いだけも感じられたら…」
道明寺桜餅への深い思い入れが感じられる一句です(笑)
道明寺粉についてわかったこと
今回道明寺や道明寺天満宮を訪問し、道明寺粉についてわかったことをまとめてみます。
○土師氏の寄進により建立された尼寺で、当初は「土師寺」と呼ばれていた。
○菅原道真の伯母の覚寿尼(かくじゅに)が住職をしていたこともあり、菅原道真自身もよくこのお寺を訪問した。
○菅原道真は、土師氏の後裔(こうえい)にあたる。
○本尊の国宝十一面観音菩薩像は、菅原道真が自ら刻んだ像だと伝えられている。
○菅原道真の左遷が決まった時、菅原道真は土師寺を訪れ、覚寿尼と別れを惜しんだ。
○菅原道真の死後、「土師寺」は菅原道真の号「道明」にちなんで「道明寺」と改められた。
○桜餅の材料として有名な「道明寺粉(糒、ほしい、ほしいい)」は、菅原道真が太宰府に左遷された後、覚寿尼が毎日お供えした御膳のお下がりを多くの人に分け与える為に乾燥・貯蔵したことが始まり。
道明寺粉は、お供えした後のごはんをパラパラに乾燥させた「干し飯(ほしいい)」のことで、それを蒸したり茹でたりすることで、再びごはんやお餅に戻して食べられたようです。
「菅原道真へのお供えしたご飯のお下がり」が「道明寺糒(道明寺粉)」へとつながり、やがてその道明寺粉が和菓子の材料として用いられるようになり、道明寺粉の名前を冠した道明寺桜餅として西日本を中心に広まったのです。
まとめ
藤井寺市道明寺は、「道明寺桜餅」発祥の地というよりは、桜餅の材料となる「道明寺粉(糒、干し飯)」発祥の地であり、菅原道真ゆかりの地であることがわかりました。
そのため、本来は菅原道真と関わりの深い「梅」の街なのですが、全国的には道明寺粉を使った道明寺桜餅が有名になったため、「桜」の街だと思われることもあるのです。
ちなみに、後になって知ったのですが、道明寺では「道明寺糒(どうみょうじほしい)」が1本千円で販売されているようです。
私も「あっ、ほしい」と思ったのですが、時すでに遅しでした。
(近鉄列車と道明寺駅ホーム(普通・古市行きと普通・柏原行き))
菅原道真ゆかりの地を訪問したことで、様々なことを学べました。
<関連サイト>
「蓮土山 道明寺」(大阪府藤井寺市道明寺1-14-31)
「道明寺天満宮」(大阪府藤井寺市道明寺1-16-40)
<関連記事>
「関東の和菓子と関西の和菓子 -和菓子の比較検証-」
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