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2023年10月 8日 (日)

吉原の桜鍋・馬肉料理 -東京都台東区「桜なべ中江」の桜なべランチ-

吉原の桜鍋

 江戸時代、吉原(現在の東京都台東区千束)に幕府公認の遊郭が設けられました。

 以降、吉原は遊郭の街として華やかな文化が形成されました。

 食の分野においても、独自の食文化が形成されました。

 その1つが桜鍋です。

 桜鍋の桜は「馬肉」を意味します。

 吉原で桜鍋が食べられるようになった理由は定かではありませんが、「遊郭で遊びたい客が自分の乗ってきた馬を吉原で売って遊ぶ金を作った」、「馬を売りつけられたお店は、牛鍋にならって馬肉で鍋を作ることを考案し、売り出したところ、吉原名物として流行した」という言い伝えがあります。

 吉原で桜鍋を提供するお店は「蹴飛ばし屋」という愛称で呼ばれ、最盛期には20軒以上のお店で賑わったようです。

 現在は「桜なべ中江」1店舗のみとなってしまいましたが、このお店では吉原の伝統的な桜鍋を味わうことができます。


「桜なべ中江」の桜なべランチ

 吉原の桜鍋を味わうため、東京都台東区日本堤の「桜なべ中江」を目指しました。

 上野駅から台東区循環バス「ぐるーりめぐりん」に乗車しました。

(台東区循環バス「ぐるーりめぐりん」・上野駅入谷口)
Photo_20231008113601

 土手通りにある「吉原大門(よしわらおおもん)」というバス停で下車すると、すぐ目の前に「桜なべ中江」がありました。

(「桜なべ中江」店舗(全景))
Photo_20231008113701

 吉原大門はかつての吉原遊郭の玄関口で、「桜なべ中江」もこの場所で明治38年から桜鍋・馬肉料理を提供されています。

 近くには馬肉を販売されているお店もありました。

(馬肉の千葉屋)
Photo_20231008113703

 こちらのお店では、様々な部位の馬肉だけでなく、馬肉の総菜(佃煮、ハンバーグ、煮こごりなど)や馬の油も販売されています。

 やがて開店(予約)時刻となったので、「桜なべ中江」に戻りました。

(「桜なべ中江」店舗(入口))
Photo_20231008113702

 関東大震災の翌年に再建され、現存している建物で、文化庁の登録有形文化財に指定されています。

 お店に入ると、予約席へ案内していただきました。

 今回私はお昼時に訪問しましたが、ランチは土日祝のみで、1日限定30食となっています。

 最初に3点盛りが用意されました。

(3点盛り(お新香・馬刺し・桜肉佃煮))
Photo_20231008114401

 写真左からお新香、馬刺し、桜肉佃煮です。

 馬刺しは生姜醤油でいただきました。
 肉質がとてもきめ細かく、やわらかくて、クセも全くありませんでした。

 桜肉佃煮は、馬肉を醤油や砂糖で甘辛く煮たものですが、やわらかく煮込まれており、酒の肴やご飯のおともに最適な一品でした。

 お新香をポリポリいただいていると、続いて馬肉の握り寿司が運ばれてきました。

(馬刺し握り寿司)
Photo_20231008114501

 適度にサシ(脂)が入った馬肉の握り寿司です。

 肉がとてもやわらかく、口の中ですし飯と一緒になってスッと溶けていく感じでした。

 やがて「桜なべ」の準備が始まりました。

(桜なべセット(桜なべ・卵・ご飯・みそ汁))
Photo_20231008114601

 こちらが桜なべのセットです。

 桜なべのほか、生卵、白ご飯、みそ汁が用意されました。

 桜なべのコンロに火をつけ、煮込みの開始です。

(桜なべ)
Photo_20231008114602

 玉ねぎ、江戸菜(小松菜)、しらたき、麩、焼き豆腐、しめじと一緒に秘伝の味噌だれで煮込みます。

 やがて桜肉(馬肉)が桜色になりました。

 取り皿に桜肉などを入れ、溶き卵をつけていただきました。

(取り皿の卵につけた桜肉・しらたき・麩)
Photo_20231008114701

 甘辛いタレが桜肉に浸み込み、より一層美味しく、食べやすくなりました。

 馬肉を煮て固くなるどころか、逆にやわらかくなったのが不思議でした。

 江戸菜、しらたき、麩、焼き豆腐、しめじも味噌だれと馬肉の旨味をたっぷりと含み、心ゆくまで桜なべを堪能できました。

 食べ終えると、体が芯から温まり、精力がついたように思いました。

 精算を済ませ、「どれ、ちょいと街へ繰り出そうかい」とお店の戸を開けた瞬間、外は土砂降りの雨でした。

 お店の目の前がバス停なので、しばらく玄関で雨宿りし、バスに飛び乗って浅草駅へ向かいました。

 浅草駅に着いた途端、雨は止みましたが、お店の目の前がバス停だったので助かりました。


 桜鍋をつつきながら、吉原の歴史に思いを馳せるのも、東京の楽しみ方の1つです。


<関連サイト>
 「桜なべ中江」(東京都台東区日本堤1-9-2)

<参考文献>
 土田美登世「いまどきの旬 桜鍋」(「dancyu」2022年2月号)
 榊こつぶ「江戸を喰う 桜なべ」(ぶんか社「俺流!絶品めし」Vol.30)

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コメント

江戸時代は隅田川から山谷堀を通って、舟で吉原大門まで行くのが粋な遊び方だった様ですが、明治以降は馬で今はバスですか(^^)
馬刺や馬肉入りうどんは食べた事ありますが、桜鍋はありません^^;
一見牛鍋の様ですが、味噌味というところがミソ?
横浜の野毛には馬肉と鹿肉が同時に味わえる「ばか鍋」というのがあるそうです(^^)

なーまん様

なーまんさん、こんにちは。
いつもコメントいただき、ありがとうございます。

今ならハイヤー(車)で行けば粋でしょうが、台東区のバスで行くところが私らしい(笑)
今で言うと、乗ってきた車を売って遊ぶお金を作るようなものですね。

馬肉入りうどんは桜鍋より珍しいです!
昔は今より馬肉は安かったのでしょうが、今や高級食材となってしまいました。

おっしゃるとおり、このお店の桜なべは明治時代の味噌ベースの牛鍋をヒントに作られたもののようです。
桜なべの味噌がミソとは、ウマい表現ですね(笑)

馬肉と鹿肉をあわせた料理、本当に提供されているお店があるとは驚きで、嬉しくなりました。
世の中まだまだ、バカにしたもんじゃありませんね(笑)

何かでこの店のことを読んだ記憶が…
誰かのエッセイだと思いますが、誰だったんだろう?
握り寿司がとっても美味しそうです。
Googleのストリートビューでこの店を見たら、隣に似たようなたたずまいの天ぷら屋さんが。
25年ぐらい前に2年間ほど入谷に住んでいましたが、近辺をもっとウロウロしておけばよかった、と今さらながら思います。

chibiaya 様

chibiayaさん、こんばんは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます。

私は、参考文献として追加しましたが、土田美登世さんのエッセイや榊こつぶさんの漫画で知りました。

馬刺しの握り寿司、馬肉に適度に脂が乗り、やわらかくて美味しかったです。
繊細な赤身の味を楽しめました。

隣の天ぷら屋さん、さすがよく御覧になってますね(笑)
そうなんです。桜なべ中江と同じような年季の入った建物があり、開店前からお客さんが並ばれていたので、私も気になりました。
「土手の伊勢屋」という天ぷら屋さんです。
http://www.dotenoiseya.jp/
「土手の中江(桜なべ中江)」とともに、昼夜問わず食事を提供されていたようです。

入谷にお住まいだったんですね。
私は「カフェバッハ」(台東区日本堤)に続き、このエリアは2回目でした。
よそ者の方がウロウロするものなんでしょうね(笑)

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