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2024年1月

2024年1月28日 (日)

群馬の食文化の特徴を探る(6)-ポテト入り焼きそばと子供洋食・スタイルブレッド・築地銀だこ・焼きまんじゅう・赤城山麓 徳川埋蔵金-

東京・浅草から東武鉄道で群馬・桐生へ

 2023年12月末に,群馬県桐生市の武正米店を訪問しました。

 前回の訪問が2021年12月末なので,約2年ぶりです。

 これで4回目の訪問となります。

 広島から飛行機で羽田空港へ行き,東武鉄道浅草駅から「特急りょうもう」赤城行に乗車して,桐生を目指しました。

(浅草駅・特急りょうもう・赤城行)
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 「特急りょうもう」の車両です。

(東武鉄道浅草駅ホーム)
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 東武鉄道浅草駅のホームは、出発方向から右側に大きくカーブしています。

 この形状だとホームと車両との間にすき間が生じるため、車両のドアには乗降ステップが敷かれます。

(行先表示板(赤城行))
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 行先を確かめ、乗車しました。

(特急りょうもう車内)
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 「特急りょうもう」車内の様子です。

 浅草駅を出発した時点では比較的空いていたのですが、北千住駅で大勢の人が乗車し、座席はほぼ満席となりました。

 その後、春日部、久喜、館林、足利市、太田などの駅を経て、新桐生駅に到着しました。

(新桐生駅ホーム)
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 これまではずっと桐生駅で下車していたため、新桐生駅で下車したのは今回が初めてです。

 新桐生駅から歩いて武正米店へ向かいました。

 新桐生駅前の大通りを真っすぐ歩いていくと、大きな橋が近づいてきました。

 渡良瀬川にかかる錦桜橋(きんおうばし)です。

(錦桜橋から眺めた渡良瀬川)
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 錦桜橋からしばらく渡良瀬川を眺めました。

 錦桜橋を渡ってさらに歩くと、「新宿一丁目」と表記された信号機がありました。

(新宿一丁目信号)
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 「桐生市内にも新宿があるんだ」と興味深くその信号機を眺めました。

 街並みを楽しみながら歩いているうちに、武正米店にたどり着きました。


武正米店の「ポテト入り焼きそば」・「子供洋食」

(武正米店)
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 武正米店です。何度訪れても、お店の前では緊張します。

 米店とクリーニング店と飲食店を兼業されています。

 「こんにちはー」とお店に入ると,皆さんは奥の住居でお正月を迎える準備をされている様子でした。

 しばらくして奥様が私の存在に気付き、「あー広島の方!」と応対してくださいました。

 そのあとで御主人も出て来られ、お二人と再会することができました。

 電車の中で注文する料理を考えていたのですが、私が注文する前に御主人が「焼きそばと子供洋食だよね」と厨房で調理を開始されました。

 正解!お見事です(笑)

(店内の様子)
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 しばらくして「ポテト入り焼きそば」が出来上がりました。

(ポテト入り焼きそば)
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 茹でたじゃがいもともやしが入った焼きそばです。

 仕上げに青のりがかけられ,紅生姜も添えられています。

 ウスターソースの風味に近いさらりとした焼きそばソースが使われています。

 私が作る焼きそばは、お好み焼に使われる濃厚甘口ソースを使う(お好み焼と焼きそばでソースの使い分けをしない)ので、同じ焼きそばでも味はかなり異なります。

 このお店の焼きそばソースは、麺だけでなく、茹でたじゃがいもにもよく合います。

 もっちりとした麺,ホクホクのじゃがいも,シャキシャキのもやしが甘いソースとからまり,ボリューム満点の美味しい焼きそばでした。

 続いて「子供洋食」が出来上がりました。

(子供洋食)
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 武正米店の看板料理「子供洋食」です。

 子供洋食は,茹でたじゃがいもと刻んだねぎ,干し海老をソースで炒め,仕上げに青のりをかけて,紅生姜を添えた料理です。

 じゃがいもにソースがねっとりと絡みつき,ねぎの甘みや干し海老の香ばしさも加わって,焼きそばやお好み焼と同等の立派な料理となっています。

 童心に帰り、ほっこりとした気持ちにさせてくれる郷土食です。


桐生と粉もの・ソースの食文化

 食後に奥様がコーヒーを淹れてくださり,コーヒーをいただきながら会話を楽しみました。

(コーヒー)
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 その時のお話をいくつか御紹介します。

【焼きそば・子供洋食の持ち帰り容器】
 焼きそばや子供洋食を持ち帰る際、昔は「経木(きょうぎ、へぎ)」と呼ばれる木を紙のように薄く切ったものが使われていたそうです。
 「そう言えば、たこ焼きの皿に舟形の経木が使われているのを見たことがあるな」と思いました。
 経木に焼きそばや子供洋食をのせ、持ち運びできるよう三角に折ってお客さんに提供されていたそうです。

【子供洋食とポテト焼きそば、どっちが先?】
 子供向けのおやつとして、子供洋食が先に食べられていたようです。
 その後、養蚕・織物工場で働く女工さん向けの昼食として、麺を加えたポテト焼きそばが考案されたそうです。

【内陸で喜ばれた海産物加工品のトッピング】
 桐生は海から遠く離れた地域のため、昔の子供たちは鰹節・青のり・干し海老といった「海の香りがする食べ物」(海産物加工品)を喜んで食べたそうです。
 甘くてホクホクのじゃがいも、洋食の味であるソース、そして「海の香りがする食べ物」で作られた子供洋食は、まさに子供たちの好きなものばかりで、最高のおやつだったことでしょう。

【ぎゅうてん】
 御主人は当初、焼きそばや子供洋食ではなく「ぎゅうてん」のお店をされたかったそうです。
 私はとっさに「牛天」という漢字をイメージし、牛肉や天ぷら(天かす・揚げ玉)の入ったお好み焼のことかと思いましたが、実際は小麦粉の生地に山芋や干し海老などを加えたお好み焼の名称で、焼く時に生地を「ぎゅっと」押すことから「ぎゅうてん」と呼ばれているそうです。

【冷凍パン「スタイルブレッド」と桐生】
 全国のホテルやレストランで採用されている「スタイルブレッド」の冷凍パン。
 この会社はもともと桐生のパン屋さんで、その後冷凍パンメーカーとして桐生を拠点に全国展開されているとのことでした。

【「築地銀だこ」と桐生】
 たこ焼き店「築地銀だこ」(株式会社ホットランド)の創業者は、桐生の御出身なのだそうです。
 創業者の佐瀬守男さんは、桐生のお菓子「アイスまんじゅう」や、粉もの文化・ソース文化にヒントを得た「たこ焼き」を販売するお店を経営された後、「築地銀だこ」のお店で全国展開され、現在に至っています。
 同店のたこ焼きは、佐瀬さんが幼い頃から桐生の「焼きそば」・「子供洋食」・「ぎゅうてん」などに慣れ親しんでおられたからこそ生まれた商品だとも言えるでしょう。
 また、たこ焼きに経木の皿が使われたり、青のり・鰹節・干し海老といった「海の香りがする食べ物」が重視されていたり、メニューにソース焼きそばもあったりと、桐生発祥ならではの発想やこだわりも感じられます。

 桐生が小麦粉・粉もの文化の街であることを実感しました。

 「炭水化物のまち桐生」バンザイ!

 今回も興味深いお話をたくさん伺うことができました。

 奥様に広島のお土産をお渡しし,お礼を述べたあと,御主人に車で新桐生駅まで送っていただきました。

 新桐生駅に着き,御主人にお礼を申し上げた後,感謝を込めて車が見えなくなるまでお見送りしました。

 私が遠い広島から飛行機と特急電車を乗り継いで訪問する理由は、「子供洋食」や「ポテト入り焼きそば」を味わうことはもちろん、その先にある、お店の皆さんの温かな人情に触れることができるからです。


桐生のお土産

 新桐生駅の売店で、桐生のお土産を購入しました。

【焼きまんじゅう】

 「に志きや」の「焼きまんじゅう」を購入しました。

(焼きまんじゅう(包装))
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 かために焼き上げたパンのような厚みと弾力があります。

(焼きまんじゅう(焼きまんじゅうとタレ))
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 開封してみると、焼きまんじゅうとタレが入っていました。

 「電子レンジで温め、タレをかけてお召し上がりください」と説明書きがあったので、そのようにしてみました。

(焼きまんじゅう)
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 こちらが焼きまんじゅうです。

 小麦粉のほかに、米やもち米も入った生地で、温めるともっちりとした食感になりました。

 タレはみたらし団子のタレに似た、醤油ベースの甘辛いタレです。

 ちなみに「まんじゅう」ですが、中にあんこなどは入っていません。

 もっちりとした薄焼きのパンに、みたらし団子のタレをかけていただく感じでした。

【赤城山麓 徳川埋蔵金】

 青柳の「赤城山麓 徳川埋蔵金」というお菓子も購入しました。

(青柳「赤城山麓 徳川埋蔵金」(包装))
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 幕末、江戸幕府が官軍に江戸城を明け渡す前に、当時の勘定奉行 小栗上野介忠順(おぐりこうずけのすけただまさ)が幕府再興のために御用金を密かに領国の赤城山麓に埋蔵したという「徳川埋蔵金伝説」にちなんだお菓子です。

 マカダミアナッツを練り込んだサブレでホワイトチョコレートをはさんだ、小判形のお菓子です。

(青柳「赤城山麓 徳川埋蔵金」)
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 香ばしいマカダミアナッツとホワイトチョコレートの味が楽しめる群馬のお菓子です。


 お土産を買い、ホームで待っていると、浅草行きの「特急リバティりょうもう」が入線しました。

(新桐生駅・特急リバティりょうもう・浅草行)
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 またいつか武正米店を訪問したいと思いつつ,桐生を後にしました。


<関連サイト>
 「武正米店」(群馬県桐生市浜松町1-6-35)
 「ぎゅうてん」(「うちの郷土料理」農林水産省)
 「スタイルブレッド」(群馬県桐生市広沢町1-2525-2)
 「築地銀だこ」(株式会社ホットランド)
 「に志きや」(群馬県桐生市仲町3-6-8)
 「上州菓匠 青柳」(群馬県桐生市本町5-364)

<関連記事>
 「群馬の食文化の特徴を探る(2)-桐生市「子供洋食」からわかる群馬の食文化-
 「群馬の食文化の特徴を探る(3)-スバル最中,コロリンシュウマイ,花ぱん,アイスまんじゅう,食文化を通じた地域の研究-
 「群馬の食文化の特徴を探る(4)-「子供洋食」と「ミックス ポテト入り焼きそば」-
 「群馬の食文化の特徴を探る(5)-桐生市・武正米店の「ポテト入り焼きそば」と「子供洋食」-

2024年1月21日 (日)

産直市・産直野菜コーナーの魅力4 -紅妃(こうひ)・紅菜苔(こうさいたい)-

紅妃(こうひ)

 広島市内のスーパーマーケットの産直野菜コーナーに珍しいキウイフルーツが販売されていました。

(紅妃(包装))
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 「紅妃(こうひ)」というレッドキウイフルーツです。

(紅妃)
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 販売されていた紅妃は、一般的なキウイフルーツに比べて小さいサイズでした。

 包丁で切って中身を確認してみました。

(紅妃(中身))
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 中心が赤いのが特徴です。

 この赤はポリフェノールの1つ「アントシアニン」によるもので、抗酸化作用があります。

 買った直後は表面がまだ硬く、予想どおり食べても酸っぱいだけでした。

 ビニール袋にリンゴと一緒に入れて追熟させると良いようですが、私は包装された状態で1~2週間、冷蔵庫の野菜室に入れっぱなしにしておきました。

 すると次第に表面がやわらかくなり、食べ頃となりました。

 熟した紅妃は、酸味が少なく、とても甘いキウイフルーツでした。


紅菜苔(こうさいたい)

 同じスーパーマーケットの産直市コーナーで、菜の花のような野菜が販売されていました。

(紅菜苔(包装))
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 「紅菜苔(こうさいたい)」です。

 長さが約60cmもある大きな野菜で、ところどころ菜の花に似た黄色い花が咲いていました。

 私は見た瞬間、広島の紅葉(もみじ)にちなんだ「紅葉苔(もみじごけ)」という名の地元野菜かと勘違いしました。

 陳列棚に横に寝かせる感じでたくさん積まれていました。

 大量に収穫できたのか、まだ知名度が低いからか、1束98円(税抜)で販売されていました。

 私はこの紅菜苔に興味を持ち、花束を抱えるような感じで買い物かごへ入れ、購入しました。

 自宅で紅菜苔をビニール袋から取り出してみました。

(紅菜苔)
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 これ、見た目は葉っぱと茎がある花ですよね。

 私を含め、初めて見た人は、どこまで食べられるのか、そしてどうやって食べるのか戸惑うと思います。

 産直野菜のコーナーに商品として陳列されていたから食用だと安心して買えましたが、例えば野山で初めて紅菜苔を見かけたら、食べられるかどうか判断に迷うでしょう。

 先入観を持ちたくなかったので、インターネットや本などで下調べはせず、まずは直感で調理してみることとしました。

 茎は赤紫色をしています。

 茎の皮は、フキやイタドリのように少しかたく、繊維質もあったため、縦方向に皮をむいてみました。

(紅菜苔の茎と皮)
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 赤紫色の皮をむくと、フキのような鮮やかな緑色の茎になりました。

 茎はくぼみがあり、太さも均一ではないため、その皮をむくのも意外と手間がかかりました。

 葉や花は「菜の花」に似ており、茎はフキに似ているため、まずは煮て「おひたし」を作ってみました。

(紅菜苔のおひたし)
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 食感は、見た目と同様、菜の花やフキと似ていました。

 味は、クセのない葉物野菜の味で、菜の花、大根の葉、小松菜に似ていると思いました。

 続いて、紅菜苔を味噌汁の具にしてみました。

(紅菜苔の味噌汁)
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 黄色い花がリアルに浮かんでいます。

 葉・花・茎の全てが使え、茎の皮も加熱すればやわらかくなり(アントシアニンが溶けて緑色になり)、独特のクセやにおい・えぐみもないため、他の葉物野菜と同様、様々な料理に気軽に使うことができます。

 次に、紅菜苔をゴマ油で炒めてみました。

(紅菜苔の油炒め)
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 シンプルに塩だけの味付けにしたのですが、特に葉の旨味が凝縮されて美味しくいただけました。

 茎はアスパラガスを炒めたような味・食感でした。

 わざわざ皮をむく必要がないこともわかりました。

 最後に、おでんの鍋に紅菜苔をパラパラと入れ、さっと煮込んでみました。

(おでん(紅菜苔))
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 シャクシャクとした食感で、おでんの汁を含んだ美味しい一品となりました。


 中国から日本に渡ってきて、和名は「紅菜花(べになばな)」と呼ばれるアブラナ科の野菜「紅菜苔」。

 洗って適当な大きさに切れば、そのまま煮物や炒め物に使え、独特のクセやにおい・えぐみもないので、実はとても扱いやすい野菜だとわかりました。

 翌日、同じ産直野菜コーナーへ行ってみると、まだ少しだけあったので、「こんなにお買い得な野菜はない」と追加で買いました。

 「紅葉苔(もみじごけ)」と勘違いした昨日とは一転し、「あっ、紅菜苔がある」と余裕の表情で(笑)

2024年1月14日 (日)

国立科学博物館特別展「和食」-日本にある料理と「和食」の違い・「和食」とはどんな料理なのか-

国立科学博物館特別展「和食」

 東京・上野公園にある国立科学博物館で、「特別展「和食」-日本の自然、人々の知恵-」が開催されています。(2023年10月28日~2024年2月25日)

(国立科学博物館特別展「和食」パンフレット)
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 私は「和食の日」にあたる2023年11月24日(11(いい)24(にほんしょく)の日)に国立科学博物館を訪問しました。

(国立科学博物館)
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 特別展「和食」は、国立科学博物館の地球館・特別展示室で開催されています。

(特別展「和食」・会場MAP)
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 こちらは会場マップです。

 「「和食」とは?」という問いかけから始まり、「日本列島の食材の紹介」、「和食の成り立ち」、「和食の真善美」、「わたしの和食」、「和食のこれから」(特設ショップ)という構成となっています。


特別展「和食」会場の様子

 展示会場では、和食に関する様々な事例が紹介されています。

 その一部を御紹介したいと思います。


【和食が育む食材】

 食材の展示コーナーに、和食の原点となる「日本の水」の紹介コーナーがありました。

 そこでは「硬水(こうすい)」と「軟水(なんすい)」(※)について触れられており、日本は総じて「軟水」の国だと説明されていました。
 ※ミネラル成分(カルシウム・マグネシウム)が多く含まれる水を「硬水」、少ない水を「軟水」といいます。

 各都道府県別の水道水(原水)の硬度マップを見ると、沖縄と熊本、そして関東南部の硬度が高く、逆に山形、宮城、愛知、広島の硬度が低いことがわかりました。

 硬度が高い地域は、石灰岩などを多く含む地質(琉球石灰岩、阿蘇火山による溶結凝灰岩、関東ローム層など)が影響していますが、国土が狭く降雨量が多い日本では、総じて軟水地域が多いのが特徴です。

 西条(広島)は、灘(兵庫)や伏見(京都)と並ぶ「日本三大酒処」として有名ですが、それは三浦仙三郎さんが広島で初めて製造が難しいとされる軟水を使った酒造に成功し、その技術が全国に伝えられたからです。

 「なぜ広島は全国指折りの軟水地域なのか」と思いつつ会場を歩いていると、「あっ、これか」とわかる展示がありました。

(花崗岩と塊状石灰岩)
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 花崗岩(かこうがん)と塊状石灰岩(かいじょうせっかいがん)の展示なのですが、花崗岩は「水の硬度を上げにくい地質試料」として、塊状石灰岩は「水の硬度を上げる地質試料」として紹介されていました。

 広島はこの花崗岩が多いのです。

 和食料理人・平野 寿将(ひらの ひさま)さんが、だしをとるのに最適な水(軟水)を求めて、広島に来られた理由もわかりました。

 キノコのコーナーでは、興味深い標本が展示されていました。

(マツタケとバカマツタケ)
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 バカマツタケって…(笑)

 マツタケよりもこのバカマツタケを食べてみたいです。

 野菜のコーナーでは、次のような問いかけがありました。

 「ジャガイモのどこを食べてる?」
 「サツマイモのどこを食べてる?」

 ジャガイモは「茎」、サツマイモは「根」を食べているそうです。

 ジャガイモは土中の茎の先端に栄養を蓄えて太くなったもの、サツマイモは根が栄養を蓄えて太くなったものなのだそうです。

 ジャガイモのくぼみにあるのは芽で、サツマイモのくぼみから生えているのは細い根であることがその証拠です。

 栽培する際、ジャガイモは種芋を植え、サツマイモは茎を植えるのも、結局同じ茎の部分を植えているということなのですね。

 さらに歩くと、ダイコンが勢ぞろいしていました。

(多彩な地ダイコン)
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 ちなみに、ダイコンは地上に出た部分(青い部分)は「胚軸(はいじく)」、地下の部分(白い部分)は「根」と分けられるようです。

 魚のコーナーでは、マグロの仲間が展示されていました。

(マグロの仲間)
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 海の中にいるような気分になりました。

 続いて「発酵」に関する展示コーナーがありました。

(日本人が飼いならしたカビ コウジカビ)
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 コウジカビ(コウジ菌)は、遺伝子が部分的に壊れ、固体に生えると機能し、野外ではめったに見つからず、日本人が麹をつくる目的で飼いならしたものとのことです。

 コウジカビを使って作られる、日本酒、醤油、味噌などの原材料や製造工程の展示もありました。

(しょうゆの分類)
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 写真左側、色の濃い方から、再仕込みしょうゆ、たまりしょうゆ、濃口しょうゆ、淡口しょうゆ、白しょうゆです。

 「だしの科学」コーナーでは、「うま味」の資料として、池田菊苗博士が昆布から抽出したグルタミン酸(具留多味酸)が展示されていました。

(第一号抽出具留多味酸)
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 「うま味」は池田博士が命名した味覚の分類上の表現、「旨味」は美味しさの表現と区別されています。


【和食の成り立ち】

 和食の成り立ち(歴史)のコーナーでは、各時代の様々な料理が展示されていました。

(織田信長の饗応膳)
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 こちらは1582(天正10)年5月に、織田信長が安土城で徳川家康をもてなした時の料理を再現したものです。

 5つの膳で構成されている本膳料理です。

 当時は鶴(つる)、鴫(しぎ)、白鳥などの野鳥や、鮒(ふな)、鯉(こい)のような川魚がごちそうだったようです。

 江戸時代の屋台を再現したコーナーがありました。

(江戸時代の屋台(再現))
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 そば、寿司、天ぷらの屋台が展示されていました。

(江戸時代の寿司(再現))
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 寿司の屋台では、アナゴ、アユ、エビ、卵巻き、コハダ、白魚、マグロの握り寿司が紹介されていました。

 さらに時代は幕末へと進みます。

(ペリー提督の饗応膳)
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 こちらは幕末の1854(嘉永7)年、2度目の来日となるペリーを横浜の応接所でもてなした時の料理を再現したものです。

 江戸の料理屋「百川(ももかわ)」が料理を請け負いました。

 吸い物、刺身、煮物、なます…と、まさに当時の日本の贅を尽くした料理が用意されたようです。

 これらの料理について、アメリカ人のペリーがどう受け止めたのか興味深いところです。

 アメリカの民謡「ヤンキードゥードゥル」(※)を流しながら浦賀に登場したペリーと当時の日本では、文化の差がかなりあったことでしょうから。
 ※日本では「アルプス一万尺」の歌として親しまれています。

 明治以降、日本独自に発展した洋食も紹介されていました。

(ライスカレーなど洋食の紹介)
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 ライスの山のくぼみにカレーが注がれているライスカレーに、ひときわ興味を持ちました。


「和食」特別展記念料理・デザート

 特別展の展示をひととおり見学し、特設ショップで買い物をした後、地球館中2階のレストラン「ムーセイオン」でランチをいただきました。

 特別展「和食」の開催期間中は、記念メニューも用意されています。

(「和食」特別展記念メニュー(料理))
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 料理は「牛タンシチュー赤味噌仕立て 生海苔バターソース」と「イクラと紅鮭の和食丼 ばら海苔を添えて」の2種類です。

 バターソースに生海苔が使われていたり、サーモンではなく紅鮭(本当の親子丼!)が使われているところが大きな魅力です。

 どちらにするかとても悩ましいところですが、牛タンシチューを注文しました。

(牛タンシチュー・玉ねぎスープ・ライス)
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 玉ねぎスープとライス(又はパン)も付いています。

(牛タンシチュー赤味噌仕立て 生海苔バターソース)
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 赤味噌仕立てのデミグラスソースでじっくり煮込まれた厚切りの牛タンに、生海苔入りのバターソースが添えられています。

 オクラ、アスパラガス、ズッキーニなどの野菜も彩り良く盛り付けられていました。

 デミグラスソースに赤味噌を加えることで、コクと深みのあるシチューに仕上げられていました。

 また、牛タンに生海苔のバターソースを添えていただくと、さわやかな海苔の風味が口の中に広がり、味に変化と美味しさが加わりました。

 ライスとの相性も抜群でした。

 続いてデザートをいただきました。

 デザートも記念メニューが用意されています。

(「和食」特別展記念メニュー(デザート))
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 盆栽仕立ての和風ムースです。

(白あん黒蜜のムース 盆栽仕立て)
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 南天の葉やエディブルフラワーが添えられ、盆栽のように仕上げられています。

 バニラアイス、焼きさつまいも、抹茶わらびもち、黒蜜ソース、白あんムース、黒まめ、ワッフルコーンが使われています。

 ワッフルコーンの中にはイチゴが隠されています。

(ワッフルコーンとイチゴ)
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 和のテイストを生かしたデザートで、ボリュームのある洋食をいただいた後でもすんなりといただくことができました。


朝日新聞記念号外「特別展和食」と「科博寄席 on 和食の日」

 館内では、朝日新聞の記念号外も配布されています。

(朝日新聞記念号外「特別展和食」)
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 マンガ「サザエさん」の新聞記事も掲載されています。

(新聞記事「磯野家にみる食卓の変化」)
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 「サザエさん」は戦後から現代までの食卓の変化がマンガに反映されており、こうした視点から「サザエさん」を読むのも面白いと思います。

 午後は日本館2階の講堂で、「和食の日」にちなんだ寄席や手品を楽しみました。

(「科博寄席 on 和食の日」パンフレット)
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(「科博寄席 on 和食の日」案内と参加整理券)
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 三遊亭右左喜(さんゆうてい うさぎ)さんの「正しいラーメンの食べ方」と、三遊亭遊馬(さんゆうてい ゆうば)さんの「百川(ももかわ)」、そしてきょうこさんの「和妻(わづま)」(日本古来の手品)を観賞しました。


日本にある料理と「和食」の違い・「和食」とはどんな料理なのか

 2013年に「和食 日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを機に、和食は国内のみならず、世界からも注目される食文化となりました。

 その一方で、今の日本では、全国の食材・料理のみならず、世界各国の食材・料理まで入手し、味わえるようになっています。

 では、日本にある料理と「和食」の違いは何なのでしょうか。

 そして、そもそも「和食」とはどんな料理をいうのでしょうか。

 今回の特別展「和食」は科学的・歴史的な観点から和食にアプローチする展覧会ですが、この問いかけに対し、明確な回答が導き出されているわけではありません。

 世界各国から様々な料理を取り入れ、自国の料理に組み入れてきた日本は、伝統食である和食と、それ以外の料理を線引きすることがとても難しいからです。

 どこまでを「和食」ととらえるかは人によってまちまちで、主催者はその傾向を把握するためのアンケートまで実施されています。

(あなたにとっての「和食」アンケート回答結果(中国・四国地方))
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 すき焼き、あんパン、オムライス、照り焼きバーガー、焼き餃子などはいずれも日本の国民食ですが、「和食」だと思うかどうかは別であることがわかります。

 また、しょうゆ、味噌、うどんなど、多くの人が「和食」だと思う食べ物であっても、その原材料の多くが海外からの輸入品というケースも多いのです。

 一般的な「和食」の定義として、次のようなものが挙げられます。
・明治時代以降の「洋食」や「中華」に対する言葉
・日本人の伝統的な食文化
・油脂や肉食を排除した食文化
・米飯を中心とした食事(ご飯と副食(汁・おかず・漬物)で構成される食事)体系
・食材の持ち味を重視する料理(「料理しない料理」・「引き算の料理」)
・コウジカビ(コウジ菌)から展開する発酵食文化(しょうゆ、味噌、日本酒など)
・甘味、酸味、塩味、苦味に次ぐ第五の味「うま味」を重視する食文化

 そもそも「洋食」ですら、海外の料理を日本に取り入れ、日本人向けにアレンジされた料理なのですから、「和食」と呼ぶか「洋食」と呼ぶか「中華」と呼ぶか本国の「○○料理」と呼ぶかはとても難しく、人によって意見が分かれるのです。

 室町時代にポルトガルから伝来した「天ぷら」は「和食」だと思う人が多いのも、歴史が作り上げた1つの結果だと思います。

 人それぞれの思いが積み重なり、「和食」のイメージが形成されているのでしょう。

 「和食」とはどんな料理をいうのか、御興味のある方は特別展「和食」(今後、山形、宮城、長野、愛知、京都、熊本へ巡回予定)でヒントを探してみてください。


<関連サイト>
 公式ウェブサイト「国立科学博物館特別展 和食
 「国立科学博物館」(東京都台東区上野公園7-20)

<関連記事>
 「日本料理の特徴と主な料理1 -日本料理は引き算の文化-
 「日本料理の特徴と主な料理2 -料理人 平野寿将さんから熟成魚の魅力を学ぶ-
 「安芸津のじゃがいもと肉じゃが・杜氏と広島の日本酒 -広島県東広島市安芸津町-

<参考文献>
 公式ガイドブック「特別展 和食 日本の自然、人々の知恵」朝日新聞社
 朝日新聞記念号外「特別展和食」
 「時空をこえる本の旅50選」東洋文庫

2024年1月 7日 (日)

徳島の食文化探訪 -徳島のお好み焼「豆天玉」(甘い金時豆と天ぷら入りのお好み焼き)-

徳島県のご当地グルメ

 徳島県を訪問しました。

(徳島駅)
Photo_20240107132001

 その目的は、徳島市内でご当地グルメを味わうことと、鳴門市の「第九の里なると」(板東俘虜収容所跡地・ドイツ館・道の駅第九の里)を訪れることでした。

 徳島県観光グルメガイド「たべたび徳島」で紹介されている徳島県の主なご当地グルメは次のとおりです。

【徳島県東部】
鳴門鯛、鳴門わかめ、すだち、すだちブリ、徳島ラーメン、阿波前寿司、三郷梅酒、たらいうどん、鳴ちゅるうどん、しらす丼、竹ちくわ、フィッシュカツ、豆天玉、とくしまバーガー、阿波ういろ、酒ケーキ、恋成フィナンシェ、金長まんじゅう、鳴門っ娘、滝の焼餅

【徳島県西部】
祖谷(いや)そば、そば米雑炊、「でこまわし」(ごうしいも、豆腐、こんにゃくを串に刺して下焼きをし、味噌だれをつけてさらに焼いた料理)、お美姫(おみき)鍋、半田そうめん、地酒、ジビエ料理、妖怪ソフトかっぱーな、ぶどう饅頭、鳴門うず芋

【徳島県南部】
海賊料理、阿波尾鶏、ジビエ料理、南阿波丼、南阿波鍋、ハモ料理、阿波晩茶、「はんごろし」(もち米にうるち米を混ぜ、半分だけ潰して作るおはぎ)、南阿波スイーツ、氷柱羊羹、さばせ大福、亀のもなか

 どれも食べてみたいものばかりです。

 徳島県内には実に多くの料理・食文化があることがわかります。


徳島のお好み焼「豆天玉」

 徳島は関西圏と近く、昔から関西圏との文化的交流も盛んだったため、お好み焼を食べる食文化も発展しました。

 ソースの消費量も、徳島市は全国トップクラス(ほか広島市、岡山市、神戸市、大阪市など)を誇ります。

 そんなお好み焼文化圏の1つである徳島市には、ちょっと珍しいお好み焼があります。

 「豆玉」・「豆天玉」です。

 「豆玉」は玉子入りお好み焼に甘く煮た金時豆をトッピングしたもの、「豆天玉」はそれに小海老の天ぷらを加えたものを言います。

 今回は徳島のお好み焼「豆天玉」を御紹介します。


ニュー白馬の「まめ天玉」

 「お好み焼に甘い金時豆を入れるとどんな味になるのだろうか」

 その謎を解明すべく、徳島市一番町のお好み焼・鉄板焼店「ニュー白馬」に伺いました。

(ニュー白馬(店舗))
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 レンガ造りのビルにある店舗です。

 お店の入口に「まめ天玉」を紹介した懸垂幕がありました。

(懸垂幕(まめ天玉))
Photo_20240107133002

 「徳島のソウルフード」と紹介されています。

 甘く煮た金時豆と小海老の天ぷらがのせられた写真を見るとワクワク感が止まらず、お店に入りました。

 鉄板が置かれたテーブル席に御案内いただきました。

 メニューを見ると、様々なお好み焼・鉄板焼が用意されていました。

 「サービス定食」(お好み焼、ご飯、味噌汁、一品(平日のランチタイム))のほか、お好み焼にプラスできる「おにぎりセット」(おにぎり2個・味噌汁・漬物)や「ご飯セット」(ご飯・味噌汁・漬物)も用意されています。

 豆天玉を食べたい私は、単品のお好み焼が紹介されたページを中心に見ましたが、金時豆入りの「まめ天玉」のほかに、トッピングにも「金時豆」があることに注目しました。

 「よし、これでいこう」

 意を決して、店主さんに注文しました。

 「まめ天玉に金時豆をトッピングしていただきたいのですが」

 店主さんは一瞬フッと笑みを浮かべ、「わかりました。できますよ」とおっしゃって厨房に入られました。

 甘い金時豆をダブルでトッピングしたお好み焼、名付けて「豆豆天玉」。

 あんこ好きの私にはたまりません。(この時点ではまだどんな味かわからないにもかかわらず(笑))

 私は甘く炊いた金時豆をパンに入れた「豆パン」をイメージしました。

(豆パン(アンデルセン))
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 甘い金時豆たっぷりの豆パンです。

 今回私が注文した「豆豆天玉」も中身がこんな感じだといいな(笑)

 しばらくして、豆天玉の生地と材料が運ばれてきました。

(豆天玉(生地と材料))
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 お好み焼の材料に小海老の天ぷらと甘い金時豆が盛られています。

 こちらのお店では、お好み焼をお店の人に焼いてもらうか、目の前の鉄板で自分で焼くかを選ぶことができるのですが、お好み焼文化圏・広島に住む私は「自分で焼く」選択をしました。

 小海老の天ぷらをずらすと、玉子やネギも登場しました。

(豆天玉(生地と材料・中身))
Photo_20240107134101

 甘く炊いた金時豆だけをつまんでパクつきたい衝動に駆られます(笑)

 広島のお好み焼は生地を混ぜない「重ね焼き」なので、私としては生地を混ぜること自体に抵抗があったのですが、小海老の天ぷら以外の生地をスプーンで混ぜました。

 熱せられた鉄板に生地を薄く広げ、中心に小海老の天ぷらをのせて焼きました。

 その様子を御覧になっていた店主さんが、慌てて私の席に来られました。

 「これでは生地が薄過ぎる。生地を寄せてもっと盛った形にしないと…」

 広島では生地をクレープ状に薄く広げて焼くため、そのイメージで生地を広げたのですが、これは間違っていました。

(鉄板で混ぜた生地を焼く様子)
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 こんな感じに厚く盛って焼くのだそうです。

 それにしても、頂上に君臨する天ぷらが気になります。

 しばらくして私がひっくり返そうとすると、お店の奥から「まだまだ」の声が…(笑)

 ようやくOKが出て、大きなヘラでお好み焼をひっくり返しました。

(豆天玉ひっくり返し(初回))
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 表面がこんがりと美味しそうに焼けています。

 天ぷらも一番下になり、ジュウジュウ焼けるはずです。

 周りを見渡すと、地元のお客さん達はお店の方にお好み焼を焼いてもらい、できたお好み焼を自分のテーブル席の鉄板に運んでもらって、アツアツの状態で召し上がっていました。

 お昼時、地元の人々が普通にランチでお好み焼を召し上がっている様子を見て、徳島でお好み焼文化が浸透していることがわかりました。

 店主さんは注文を受けたお好み焼を焼きながら、私のお好み焼の焼き具合も気にしてくださり、2回目にひっくり返すタイミングも教えてくださいました。

 セルフなのに、お店の人に余計な手間をかけてしまっている…。

 ごめんなさい。広島に住む私は、生地を混ぜて焼くお好み焼を食べた経験は皆無に等しいのです。

(豆天玉ひっくり返し(2回目))
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 再度ひっくり返した様子です。

 ところどころに金時豆が見え、中心には焼けた天ぷらもあります。

 この天ぷらからにじみ出た油が生地にも伝わり、表面がカリッとした仕上がりになりました。

 仕上げにテーブルに置かれているソースを塗り、削り粉と青のりをかけました。

 「辛子マヨネーズもどうぞ」と冷蔵庫から出していただきました。

(辛子マヨネーズ)
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 これも新鮮でした。

 なぜなら広島にはお好み焼にマヨネーズをかける習慣はなく、好きな人はトッピングで注文するものだからです。(最近はお好み焼にマヨネーズをかける(付ける)お店も徐々に増えていますが。)

 こうなると、「お好み焼に金時豆を入れるのは変わっている」とは言えなくなります。

 徳島をはじめ全国の人から見れば、広島のお好み焼の方がずっと変わっていると思われるでしょうから。

 今回はもちろん「郷に入っては郷に従え」で徳島の調理・調味法で作りました。

 豆天玉、いや豆豆天玉の完成です。

(豆天玉)
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 見た目は普通のお好み焼ですが、天ぷらと金時豆(しかもダブル!)が入ったボリューム満点のお好み焼です。

(豆天玉(カット))
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 ヘラ(コテ)で小さく切りながらいただきました。

 豆パンのような、生地の中に金時豆がゴロゴロ入っているお好み焼をイメージしていたのですが、実際は熱で溶け、ほとんどが生地と一体化してしまい、原形を留めている金時豆はごくわずかでした。

 元々ソースが甘いこともあり、「甘い金時豆が入っている」という違和感は全くなく、ましてやお菓子を食べているという感覚もありませんでした。

 一般的なお好み焼と比べ、「生地がほのかに甘くなっている」、「金時豆のかたまりを時折感じる」程度でした。

 一方、小海老の天ぷらは適度に油が抜けて、表面はカリッと、中はしっとりと、揚げ焼きにしたような仕上がりになっていました。

 これにソースを合わせると、小海老の香ばしさに油とソースのコク・旨味が加わり、最強の組合せとなりました。

 お好み焼に甘い金時豆や天ぷらを加えると、それらがアクセントとなり、旨味やコクも増します。

 奇抜な味も想像していましたが、むしろ食べやすい味に変化しました。

 また徳島に来る機会があれば、ぜひ豆天玉を味わいたいと思います。

(新町橋から眺めた眉山)
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 眉(まゆ)のように見えることから名付けられた徳島市のシンボル「眉山(びざん)」。

 私には青のりをたっぷりかけた豆天玉に見えます(笑)


<関連サイト>
 「ニュー白馬」(徳島市一番町1-13)

<関連記事>
 「徳島県鳴門市・第九の里なると(板東俘虜収容所跡地・ドイツ館・道の駅第九の里)を訪ねて -第九の里ジェラート-

<参考文献>
 野瀬泰申「食は「県民性」では語れない」角川新書
 徳島県観光グルメガイド「たべたび徳島」徳島県観光政策課

2024年1月 3日 (水)

魚柄仁之助先生の世界6 -エゴマ味噌・エゴマの実を使った料理、「縁食」と「非円食」について-

魚柄仁之助特製エゴマ味噌・エゴマの実

 魚柄仁之助先生から「荏胡麻(エゴマ)味噌」と「エゴマの実」を郵送していただきました。

 届いた封筒の中には、保存袋に入れられたエゴマ味噌とエゴマの実が入っていました。

(「エゴマ味噌」と「エゴマの実」(保存袋))
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 定形郵便で送っていただいたので、わずかな量でしたが、魚柄先生の手作りのエゴマ味噌ということで、とても嬉しく思いました。

(エゴマ味噌(保存袋))
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 普通の茶封筒に手紙のようにエゴマ味噌を封入される魚柄先生の技にも感心しました。

 エゴマ味噌を保存袋からスプーンですくい出してみました。

(エゴマ味噌)
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 エゴマに味噌などの調味料を加え、すり鉢とすりこぎで擂ることにより、褐色でねっとりしたペースト状に仕上がっています。

(エゴマの実)
Photo_20240103115902

 こちらはエゴマの実です。

 見た目・大きさは、ポピーシードやマスタードシードに似た小さくて丸い実で、香ばしさとプチプチとした食感が特徴です。

 いただいたエゴマ味噌を使って、いくつか料理を作ってみました。


エゴマ味噌だれ(鯛の刺身)

 エゴマ味噌の活用法を考えた際、ひらめいたのがご飯にのせることです。

 ただ、それだけでは面白くないので、醤油代わりに刺身に使ってみることにしました。

 エゴマ味噌に微量のみりんを加えて加熱し、鯛の刺身にのせてみました。

(鯛の刺身・エゴマ味噌だれ)
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 みりんの甘みが出て、エゴマ甘味噌だれになりました。

 ただ、醤油や味噌に比べて甘くマイルドな味なので、イメージしていたほど刺身を引き立たせる味にはなりませんでした。

 逆に最初の直感どおり、このエゴマ味噌だれをアツアツの白ご飯にのせていただくと、エゴマの香ばしさが引き立ち、美味しくいただけました。


エゴマトンコマキャベツ

 いただいたエゴマ味噌は水分が少ないため、料理に使う場合は「エゴマ味噌だれ」のように、液体で少しのばした方が使いやすいことがわかりました。

 繊細なエゴマの風味をできるだけ残したいので、エゴマ味噌をお湯で溶いてみました。

(お湯で溶いたエゴマ味噌)
Photo_20240103120301

 褐色のエゴマ味噌が、しゃぶしゃぶに使う「ゴマだれ」か,サラダにかける「ごまドレッシング」のようなクリーミーな調味料に一変しました。

 これを魚柄先生の考案された料理に使えば、真の「うおつか流うおつか料理」が作れます(笑)

 魚柄先生の「とんコマキャベツ」にエゴマ味噌を使ってみることにしました。

 ボウルに豚コマ肉、お湯で溶いたエゴマ味噌ペースト、塩、片栗粉を入れます。

(豚コマ肉・エゴマ味噌ペースト・塩・片栗粉)
Photo_20240103120401

 これを手でよく揉み込み、豚コマ肉になじませます。

(エゴマ味噌と豚コマ肉をなじませた様子)
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 ごく少量のエゴマ味噌でも、のばして豚肉にからめると、適度にまんべんなくエゴマがまぶされることがわかりました。

 フライパンにザク切りのキャベツを敷き、その上に下拵えした豚コマ肉をのせ、フタをして蒸し焼きにしました。

(蒸し焼きの様子)
Photo_20240103120601

 この状態でフタをして蒸し焼きにすれば、キャベツの水蒸気で焦げることはありません。

 あとは美味しく仕上がるよう、ひたすら「エゴマトンコマ、エゴマトンコマ…」と唱えるのです(笑)

 キャベツがしんなりし、豚コマ肉の色が変化してきたら、フタを開けてキャベツと豚コマ肉をよく混ぜ合わせます。

 こうすることで肉がほぐれ、下味を付けた肉の旨味をキャベツへ移すことも出来ます。

 そして「エゴマトンコマキャベツ」の完成です。

(エゴマトンコマキャベツ)
Photo_20240103120801

 エゴマが豚肉とキャベツにいきわたり、良い具合に仕上がりました。

 いただいてみると、ほのかにエゴマの風味がする美味しい料理になっていました。

 ここでふと思いつき、エゴマトンコマキャベツにエゴマの実をふりかけてみました。

(エゴマの実をかけたエゴマトンコマキャベツ)
Photo_20240103120901

 エゴマの実のプチプチとした食感が楽しめ、さわやかな風味を感じ、香ばしさも増しました。

 「エゴマトンコマキャベツ」成功です。


チキン棒エゴマ味

 魚柄先生の著書「うおつか流 食べつくす!」(農文協)に、安価な鶏のムネ肉やササミを使って作る「チキン棒」が紹介されています。

 この「チキン棒」は、鶏のムネ肉やササミに塩をすり込み、肉の水分を飛ばして鶏の旨味を凝縮させ、それを蒸した料理です。

 塩をして水分を飛ばすことで保存性が高まり、地鶏のような食感のハム・サラダチキンが出来上がるのです。

 このレシピを参考に、エゴマの風味を加えたチキン棒を作ってみることとしました。

 鶏ムネ肉の皮を取り除き、そのままでは大きいので三等分し、塩を加えました。

(鶏ムネ肉に塩を加えた様子)
Photo_20240103121301

 これにお湯で溶いたエゴマ味噌ペーストを加えます。

(鶏ムネ肉にお湯で溶いたエゴマ味噌を加えた様子)
Photo_20240103121401

 そして塩とエゴマ味噌を鶏ムネ肉によくすり込み、ザルに置きます。

(鶏ムネ肉に塩とエゴマ味噌をすり込んだ様子)
Photo_20240103121402

 少量のエゴマ味噌でも、鶏肉の表面にまんべんなくすり込むことが出来ました。

 この状態で、室内で干しました。

 本当は天日干しか、冷蔵庫内での乾燥が良いのですが、自宅のベランダは車の往来が激しい道路が近く、冷蔵庫に(ラップをせず)このままで保存するのも抵抗があったので、室内の日当たりの良い場所に置いたり、日中あまり使わない場所に置いたりしながら、乾燥させました。

(干した鶏ムネ肉(3日後))
Photo_20240103142901

 3日後の鶏ムネ肉の様子です。

 この日に加熱調理しようと思いましたが、仕事で帰りが遅くなり、もう1日延ばしました。

(干した鶏ムネ肉(4日後))
Photo_20240103142902

 4日後の鶏ムネ肉の様子です。

 完全に乾燥してはいませんでしたが、肉が傷んだようなにおいまでし始めたので、ラップですき間がないよう1本1本きっちりと包み、蒸し器に入れました。

(ラップで包み蒸し器に入れた様子)
Photo_20240103143101

 この状態で約20分、蒸しました。

(蒸し器で蒸し上げた様子)
Photo_20240103143102

 出来上がりは熱いので、しばらく冷ましてから取り出しました。

(チキン棒(ラップ包み))
Photo_20240103143103

 蒸したことにより、ラップが肉にぴっちりと密着しました。

 ラップから取り出しました。

(チキン棒エゴマ味)
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 こちらが完成した「チキン棒エゴマ味」です。

 市販の鶏ムネ肉ですが、干したことで肉に地鶏のような弾力がつきました。

 干し方が不十分だったからか若干肉が傷んだような気もしましたが、問題なく食べられました。

 塩をたっぷりすり込む、天日干しにする、冷蔵庫にそのまま入れて乾燥させるといった方法で、できるだけ短時間に肉の水分を抜くことが大切だと思います。

 ラップに密閉されて日持ちするので、冷蔵庫に保存して、「うまい棒」のように好きな時におやつ感覚で食べることができます。

 水っぽいムネ肉を干すことにより、肉と旨味が凝縮されて、地鶏のような食感・美味しさに変化することがわかりました。

 また、エゴマ味噌を加えたことにより、エゴマの風味も楽しめました。

 なお、今回御紹介した「チキン棒」については、生協パルシステムの動画サイトでも紹介されていますので、よろしければ御覧ください。(抜粋:1分37秒)

(農文協・パルシステム共同企画『かんがえるタネ』“世界が転換する時代の「台所サバイバル」”ダイジェスト版)

 (生協パルシステム公式チャンネル)


赤飯(エゴマ塩)

 赤飯を食べる際、ふと思い付いて、黒ゴマの代わりにエゴマの実と塩をふりかけてみました。

(赤飯(エゴマ塩))
Photo_20240103151201

 食べると、口の中でエゴマの実がプチプチ弾け、さわやかなエゴマの風味が口いっぱいに広がって、赤飯の美味しさを引き立てました。

 赤飯とエゴマ塩の組合せは、高級な和食をいただいている感じがしました。


まとめ

 先程御紹介した動画の中で、魚柄仁之助先生からは「私とあなたの関係でつくる食」、藤原辰史先生からは「縁食」というお話が紹介されています。

 お金の「円(えん)」ではなく、人と人との「縁(えん)」がつなぐ食の関係があっていいのではないかというお話なのですが、今回のエゴマ味噌とエゴマの実、そしてその材料で作った料理も「縁」でつながった食の1つと言えるでしょう。

 そして、「縁(つながり)」で得た食(縁食・非円食)や食事は、喜びが大きく、美味しい(と思える)のも確かです。

 「縁食」・「非円食」は今後の食の重要なキーワードとなるかもしれません。


<関連サイト>
 「塩と冷蔵庫でできちゃう“熟成”「チキン棒」を作ってみた!」(生協パルシステム)
 「魚柄仁之助の食文化情報局 台所の穴」(魚柄仁之助公認サイト)

<関連記事>
 「魚柄仁之助先生の世界4 -魚柄仁之助先生の手作り醤油を味わう -醤油・乾燥醬油の実・ゆかり・とんコマキャベツ・おにぎり・こむすび・手抜きうどん-
 「魚柄仁之助先生の世界5 -ミズホ学級ファイナル講演会「毎日が命日」・食事会-
 「美術館とカフェ・レストランの魅力8 -おいしいボタニカル・アート記念講演会「おいしい植物」と人間の歴史・展示会特別メニュー-

<参考文献>
 魚柄仁之助「おいしいごはんはこう作る」新星出版社
 魚柄仁之助「うおつか流 食べつくす!」農文協

2024年1月 1日 (月)

新年明けましておめでとうございます -開設10周年を迎えて-

 新年明けましておめでとうございます。

 読者の皆様も,新たなお気持ちで新年を迎えられたことと思います。

 おかげさまで,本日,ブログ開設10周年(ブログ開設日2014年1月1日)を迎えることが出来ました。

 もう10年経つのかと私自身が一番驚いています。

 振り返ってみると、ブログ開設当初と現在では、かなり方向性が変わってきています。

 ブログ開設当初は、①正月休みの暇つぶしとして、②お金をかけずに、③ご当地耳かきを中心に整理をするというものでした。

 それが時の流れとともに、①時間に追われながら、②記事によってはお金がかかり、③食文化の話を中心に整理をするというものに様変わりしました。

 しかしながら、この「様変わり」は私にとってプラスに作用しています。

 このブログの執筆や取材を通じて、読者の皆様をはじめ、いろんな方とのつながりができ、それが私の生きがいとなっているからです。

 それは時間あれば得られるものでも、お金を積めば得られるものでもありません。

 また、食に限らずどんなジャンルにおいてもそうですが,興味を持ち,ちょっとの勇気と行動力でその世界に踏み込めば,その先には思わぬ喜びや感動,新たな出会いや発見が待っているような気がします。

 そして、この「ちょっとした勇気と行動力」を与えてくださっているのは、実は今こうしてお読みいただいている読者の皆様なのです。

 読者の皆様からの見えない大きな力に支えられていると思うからこそ、ここまで何とか継続出来ました。

 その分、私が得た喜びや感動,新たな出会いや発見を皆様にお伝えし、お返しができたらと思います。


 食文化やご当地耳かきの探訪を通じて,今年はどんな出会い・発見があるでしょうか。

 全ては偶然が積み重なった結果ですので,私自身も今からワクワクしています。

 今後も,当ブログにお越しいただいた皆様に,できるだけ真実をお伝えし,記事をお読みいただくことで,何か1つでも御参考になることがあればとの思いで,ブログの作成に取り組みたいと思います。

 引き続き御愛顧の程,よろしくお願い申し上げます。

 2024年 元旦

 コウジ菌

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