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2024年1月 7日 (日)

徳島の食文化探訪 -徳島のお好み焼「豆天玉」(甘い金時豆と天ぷら入りのお好み焼き)-

徳島県のご当地グルメ

 徳島県を訪問しました。

(徳島駅)
Photo_20240107132001

 その目的は、徳島市内でご当地グルメを味わうことと、鳴門市の「第九の里なると」(板東俘虜収容所跡地・ドイツ館・道の駅第九の里)を訪れることでした。

 徳島県観光グルメガイド「たべたび徳島」で紹介されている徳島県の主なご当地グルメは次のとおりです。

【徳島県東部】
鳴門鯛、鳴門わかめ、すだち、すだちブリ、徳島ラーメン、阿波前寿司、三郷梅酒、たらいうどん、鳴ちゅるうどん、しらす丼、竹ちくわ、フィッシュカツ、豆天玉、とくしまバーガー、阿波ういろ、酒ケーキ、恋成フィナンシェ、金長まんじゅう、鳴門っ娘、滝の焼餅

【徳島県西部】
祖谷(いや)そば、そば米雑炊、「でこまわし」(ごうしいも、豆腐、こんにゃくを串に刺して下焼きをし、味噌だれをつけてさらに焼いた料理)、お美姫(おみき)鍋、半田そうめん、地酒、ジビエ料理、妖怪ソフトかっぱーな、ぶどう饅頭、鳴門うず芋

【徳島県南部】
海賊料理、阿波尾鶏、ジビエ料理、南阿波丼、南阿波鍋、ハモ料理、阿波晩茶、「はんごろし」(もち米にうるち米を混ぜ、半分だけ潰して作るおはぎ)、南阿波スイーツ、氷柱羊羹、さばせ大福、亀のもなか

 どれも食べてみたいものばかりです。

 徳島県内には実に多くの料理・食文化があることがわかります。


徳島のお好み焼「豆天玉」

 徳島は関西圏と近く、昔から関西圏との文化的交流も盛んだったため、お好み焼を食べる食文化も発展しました。

 ソースの消費量も、徳島市は全国トップクラス(ほか広島市、岡山市、神戸市、大阪市など)を誇ります。

 そんなお好み焼文化圏の1つである徳島市には、ちょっと珍しいお好み焼があります。

 「豆玉」・「豆天玉」です。

 「豆玉」は玉子入りお好み焼に甘く煮た金時豆をトッピングしたもの、「豆天玉」はそれに小海老の天ぷらを加えたものを言います。

 今回は徳島のお好み焼「豆天玉」を御紹介します。


ニュー白馬の「まめ天玉」

 「お好み焼に甘い金時豆を入れるとどんな味になるのだろうか」

 その謎を解明すべく、徳島市一番町のお好み焼・鉄板焼店「ニュー白馬」に伺いました。

(ニュー白馬(店舗))
Photo_20240107133001

 レンガ造りのビルにある店舗です。

 お店の入口に「まめ天玉」を紹介した懸垂幕がありました。

(懸垂幕(まめ天玉))
Photo_20240107133002

 「徳島のソウルフード」と紹介されています。

 甘く煮た金時豆と小海老の天ぷらがのせられた写真を見るとワクワク感が止まらず、お店に入りました。

 鉄板が置かれたテーブル席に御案内いただきました。

 メニューを見ると、様々なお好み焼・鉄板焼が用意されていました。

 「サービス定食」(お好み焼、ご飯、味噌汁、一品(平日のランチタイム))のほか、お好み焼にプラスできる「おにぎりセット」(おにぎり2個・味噌汁・漬物)や「ご飯セット」(ご飯・味噌汁・漬物)も用意されています。

 豆天玉を食べたい私は、単品のお好み焼が紹介されたページを中心に見ましたが、金時豆入りの「まめ天玉」のほかに、トッピングにも「金時豆」があることに注目しました。

 「よし、これでいこう」

 意を決して、店主さんに注文しました。

 「まめ天玉に金時豆をトッピングしていただきたいのですが」

 店主さんは一瞬フッと笑みを浮かべ、「わかりました。できますよ」とおっしゃって厨房に入られました。

 甘い金時豆をダブルでトッピングしたお好み焼、名付けて「豆豆天玉」。

 あんこ好きの私にはたまりません。(この時点ではまだどんな味かわからないにもかかわらず(笑))

 私は甘く炊いた金時豆をパンに入れた「豆パン」をイメージしました。

(豆パン(アンデルセン))
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 甘い金時豆たっぷりの豆パンです。

 今回私が注文した「豆豆天玉」も中身がこんな感じだといいな(笑)

 しばらくして、豆天玉の生地と材料が運ばれてきました。

(豆天玉(生地と材料))
Photo_20240107133901

 お好み焼の材料に小海老の天ぷらと甘い金時豆が盛られています。

 こちらのお店では、お好み焼をお店の人に焼いてもらうか、目の前の鉄板で自分で焼くかを選ぶことができるのですが、お好み焼文化圏・広島に住む私は「自分で焼く」選択をしました。

 小海老の天ぷらをずらすと、玉子やネギも登場しました。

(豆天玉(生地と材料・中身))
Photo_20240107134101

 甘く炊いた金時豆だけをつまんでパクつきたい衝動に駆られます(笑)

 広島のお好み焼は生地を混ぜない「重ね焼き」なので、私としては生地を混ぜること自体に抵抗があったのですが、小海老の天ぷら以外の生地をスプーンで混ぜました。

 熱せられた鉄板に生地を薄く広げ、中心に小海老の天ぷらをのせて焼きました。

 その様子を御覧になっていた店主さんが、慌てて私の席に来られました。

 「これでは生地が薄過ぎる。生地を寄せてもっと盛った形にしないと…」

 広島では生地をクレープ状に薄く広げて焼くため、そのイメージで生地を広げたのですが、これは間違っていました。

(鉄板で混ぜた生地を焼く様子)
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 こんな感じに厚く盛って焼くのだそうです。

 それにしても、頂上に君臨する天ぷらが気になります。

 しばらくして私がひっくり返そうとすると、お店の奥から「まだまだ」の声が…(笑)

 ようやくOKが出て、大きなヘラでお好み焼をひっくり返しました。

(豆天玉ひっくり返し(初回))
Photo_20240107134701

 表面がこんがりと美味しそうに焼けています。

 天ぷらも一番下になり、ジュウジュウ焼けるはずです。

 周りを見渡すと、地元のお客さん達はお店の方にお好み焼を焼いてもらい、できたお好み焼を自分のテーブル席の鉄板に運んでもらって、アツアツの状態で召し上がっていました。

 お昼時、地元の人々が普通にランチでお好み焼を召し上がっている様子を見て、徳島でお好み焼文化が浸透していることがわかりました。

 店主さんは注文を受けたお好み焼を焼きながら、私のお好み焼の焼き具合も気にしてくださり、2回目にひっくり返すタイミングも教えてくださいました。

 セルフなのに、お店の人に余計な手間をかけてしまっている…。

 ごめんなさい。広島に住む私は、生地を混ぜて焼くお好み焼を食べた経験は皆無に等しいのです。

(豆天玉ひっくり返し(2回目))
Photo_20240107135801

 再度ひっくり返した様子です。

 ところどころに金時豆が見え、中心には焼けた天ぷらもあります。

 この天ぷらからにじみ出た油が生地にも伝わり、表面がカリッとした仕上がりになりました。

 仕上げにテーブルに置かれているソースを塗り、削り粉と青のりをかけました。

 「辛子マヨネーズもどうぞ」と冷蔵庫から出していただきました。

(辛子マヨネーズ)
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 これも新鮮でした。

 なぜなら広島にはお好み焼にマヨネーズをかける習慣はなく、好きな人はトッピングで注文するものだからです。(最近はお好み焼にマヨネーズをかける(付ける)お店も徐々に増えていますが。)

 こうなると、「お好み焼に金時豆を入れるのは変わっている」とは言えなくなります。

 徳島をはじめ全国の人から見れば、広島のお好み焼の方がずっと変わっていると思われるでしょうから。

 今回はもちろん「郷に入っては郷に従え」で徳島の調理・調味法で作りました。

 豆天玉、いや豆豆天玉の完成です。

(豆天玉)
Photo_20240107140601

 見た目は普通のお好み焼ですが、天ぷらと金時豆(しかもダブル!)が入ったボリューム満点のお好み焼です。

(豆天玉(カット))
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 ヘラ(コテ)で小さく切りながらいただきました。

 豆パンのような、生地の中に金時豆がゴロゴロ入っているお好み焼をイメージしていたのですが、実際は熱で溶け、ほとんどが生地と一体化してしまい、原形を留めている金時豆はごくわずかでした。

 元々ソースが甘いこともあり、「甘い金時豆が入っている」という違和感は全くなく、ましてやお菓子を食べているという感覚もありませんでした。

 一般的なお好み焼と比べ、「生地がほのかに甘くなっている」、「金時豆のかたまりを時折感じる」程度でした。

 一方、小海老の天ぷらは適度に油が抜けて、表面はカリッと、中はしっとりと、揚げ焼きにしたような仕上がりになっていました。

 これにソースを合わせると、小海老の香ばしさに油とソースのコク・旨味が加わり、最強の組合せとなりました。

 お好み焼に甘い金時豆や天ぷらを加えると、それらがアクセントとなり、旨味やコクも増します。

 奇抜な味も想像していましたが、むしろ食べやすい味に変化しました。

 また徳島に来る機会があれば、ぜひ豆天玉を味わいたいと思います。

(新町橋から眺めた眉山)
Photo_20240107141501

 眉(まゆ)のように見えることから名付けられた徳島市のシンボル「眉山(びざん)」。

 私には青のりをたっぷりかけた豆天玉に見えます(笑)


<関連サイト>
 「ニュー白馬」(徳島市一番町1-13)

<関連記事>
 「徳島県鳴門市・第九の里なると(板東俘虜収容所跡地・ドイツ館・道の駅第九の里)を訪ねて -第九の里ジェラート-

<参考文献>
 野瀬泰申「食は「県民性」では語れない」角川新書
 徳島県観光グルメガイド「たべたび徳島」徳島県観光政策課

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コメント

お好み焼きに甘い金時豆…!
お弁当によく入ってるあれですよね?
味の想像が全然つきませんが、マヨネーズとか青のりとか、豆に合うんですか?
”「甘い金時豆が入っている」という違和感は全くなく”ということは、合うも合わないもないのかもしれませんが(^^;)
金時豆にマヨネーズつけたら、意外と美味しかったりして…?!

少し話がそれますが、ソースの消費量トップクラスの岡山のお好み焼きは広島寄り?
それとも大阪寄りですか?
小海老の天ぷらは原料は近くても食感は違いますから、アクセントになりますね!
横浜の広島焼きのお店では、イケメンのお兄さんがデモンストレーションを兼ねて焼いてくれますが、本場では自分で焼くのが「通」なのでしょうか?
子供の頃、私は生地を混ぜて焼くお好み焼しか知りませんでした(^_^;)

chibiaya 様

chibiayaさん、こんばんは。
いつもコメントいただき、ありがとうございます。

金時豆は、おっしゃるとおり、弁当にもよく入っている甘く炊いたものです。
あのおかずかデザートか迷う豆です(笑)
その甘い金時豆に一番合うのは、ずばりお好み焼用ソースです。
お好み焼用のソースは濃厚でかなり甘く味付けされていますが、その味に甘い金時豆がうまく溶け込むのです。
「違和感が全くなく」というのは、濃くて甘いお好み焼ソースに金時豆がそのままなじみ、ソースの一部となってしまうぐらい合っていたという意味で表現させていただきました。
あと、お好み焼店によっては、豆玉・豆天玉用に甘さ控えめの金時豆を作られているようです。
甘い金時豆にマヨネーズ、これは味の想像がつきませんが、おそらくお好み焼ソースに両者の仲を取り持ってもらう方がよいかと思います。

なーまん 様

なーまんさん、こんばんは。
今日は2つもコメントいただき、恐縮です。ありがとうございます。

ソースの消費量、大阪市や神戸市を抜いて、岡山市、広島市、徳島市がトップ3です。
広島風お好み焼のエリアはあまり広くなく、広島県西部(安芸)ぐらいのエリアで、広島県東部(備後)になると関西風お好み焼が主流となります。
そのため、岡山市は関西風お好み焼(大阪寄り)が主流です。

小海老の天ぷらは、そば屋さんの天ぷらそばの天ぷらに似ていると思いました。
お好み焼に干し海老を入れると旨味が増しますが、同じ発想だと思います。
この天ぷらをギューッと押し付けながら焼くと、ぬれ煎餅のような食感になります。
これに甘い濃厚ソースをかけると、美味しいお好み焼生地の一部に変化するのです。

広島風お好み焼は技術と大きな鉄板が必要となるので、お店の人に焼いてもらい、お店で食べるか、持ち帰るのが一般的です。
自宅で作ることはあまりしません。各自、近所に行きつけのお好み焼店があるのも特徴です。
ではなぜ混ぜ焼きのお好み焼店では自ら作ろうと思うのか。これはできるだけ混ぜずに重ね焼きのお好み焼に仕上げたいと思うからです。
とお返事を書いていて、やっぱり豆天玉だけでなく、広島のお好み焼・広島人の食べ方もほかから見れば変わっているのだろうなと自覚しました(^^ゞ

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