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2024年4月21日 (日)

菓子パン「アベック」の謎に迫る -ニシカワ食品「アベック」・岡野製パン所「アベックパン」-

「アベック」の意味

 「アベック」は、フランス語で「avec」と表記し、「~と、~と一緒に」という意味を持つ言葉です。

 英語の「with(ウィズ)」と同じ意味となります。

 この「アベック」という言葉は、かつて日本では「恋人」という意味で使われていました。

 現在では「カップル」という言い方が一般的で、「アベック」という言い方はすっかり昭和の言葉となってしまいましたが、今でも少数ながら「アベック」を使う方もおられます。

 私としては、「カップル」という言葉には「一般的、あっさり」というニュアンスが、「アベック」という言葉には「懐かしの、じめじめ、ベタベタ」というニュアンスが込められている印象があります。

 そして「パートナー」とか「ペア」という言葉になると、「アベック」のニュアンスからはますます遠ざかるようにも思います。

 そんな複雑な事情を抱える「アベック」という言葉を、あえて商品名にされている菓子パンを見つけました。

 今回は、私が見つけた「アベック」パンを2つ御紹介し、最後にパンの名称「アベック」に込められた意味についても検証してみたいと思います。


ニシカワパン「アベック」

 兵庫県加古川市の「ニシカワ食品」から、「アベック」という菓子パンが販売されています。

 広島市中区の「パントリー そごう広島店」で購入しました。

(アベック(包装))
Photo_20240421132301

 金色の文字で「アベック」、「ミルク風味のクリームを折り込んで焼き上げたパンにミルクホイップを絞り チョコで仕上げました」と説明書きがあります。

 袋を開けてみましょう。

(アベック)
Photo_20240421132401

 長さ約11cm、幅約7cm、高さ約6.5cmのパンです。

 パンの間にホイップクリームが詰められ、その上にチョコレートがコーティングされています。

(アベック(真上))
Photo_20240421132501

 真上から眺めると、キスを求める唇のようにも見えます。

(アベック(断面))
Photo_20240421132601

 断面を見ると、パンがハート形に見えます。

 そのパンの谷間には、ホイップクリームがぎっしり詰められていることがわかります。

 コッペパン(ロールパン)にホイップクリームをサンドし、チョコレートでコーティングした「銀チョコ(ロール)」とよく似ています。

 ユニークな形をしたパンなので、パンを裏返してみました。

(アベック(底面))
Photo_20240421132801

 平たい円形のパンに切れ目を入れ、その切れ目で半分に折り返してボリューム感のある立体型に仕上げられていることがわかりました。

 ここが「銀チョコ(ロール)」との違いです。

 ずっしりとして、とてもボリュームがあるパンのように見えますが、パンがフワフワでとても軽いので、意外とすんなりいただけました。

 その軽いパンがホイップクリームとチョコレートをうまく受け止め、エクレアのような感覚で美味しくいただけました。

 ニシカワ食品のウェブサイトでは「アベック」について、「1980年代の登場から「ずっと仲良し」スイーツなパン」、「コーヒー・紅茶もとても仲良し」と紹介されています。

 チョコレートとホイップクリームが出会い、パンの上で「仲良く」一緒になった、みんなに愛される菓子パンです。


岡野製パン所「アベックパン」

 広島県尾道市因島で創業し、同県福山市に本社を構える「岡野製パン所」から、「アベックパン」という菓子パンが販売されています。

 広島県三原市の「フジグラン三原店」で購入しました。

(アベックパン(包装))
Photo_20240421133001

 この「アベックパン」のデザイン、フォント、色…まさに「アベック」と呼ばれた時代のイメージそのものです。

 よく見ると、袋に大きく「AVEC」と記載されています。

 袋にホイップクリームやチョコレートがベタベタついているのも、これまた「アベック」感を出しています(笑)

 開封しました。

(アベックパン)
Photo_20240421133201

 長さ約17cm、幅約7cm、高さ約4.5cmのパンです。

 パンの間にホイップクリームが詰められ、チョコレートとホワイトチョコレートがコーティングされています。

 ホイップクリームはチョコレートがコーティングされたあとにのせられています。

(アベックパン(断面))
Photo_20240421133301

 半分に切ってみると、やはりパンがハート形に見え、そのパンの谷間にホイップクリームがぎっしり詰められています。

 ホイップクリームと2種類のチョコレートの「アベック」です。

 パンの底を確かめてみました。

(アベックパン(底面))
Photo_20240421133601 

 こちらもパンに切れ目を入れて二つ折りになされています。

 1つのパンが寄り添うのも「アベック」と呼ばれる理由の1つかも知れません。

 見た目からドーナツのような重い生地のパンをイメージしましたが、実際にいただいてみると、そのイメージとは裏腹に、クロワッサンのような軽い生地のパンでした。

 パンを軽めの生地にした方が、ホイップクリームやチョコレートとのバランスがとれるからでしょう。

 食べ進めるうち、このパンはホイップクリームと2種類のチョコレートだけではないことに気付きました。

 パンの中にさらに「つぶあん」が練り込まれているのです。

 どこに入っているのか、次の図解を御覧ください。

(アベックパン(図解))
Photo_20240421133901
 ※画像をクリックすると拡大します。

 アベックどころの話じゃない複雑な関係が展開されています(笑)

 ホイップクリームとチョコレート、ホイップクリームとあんこ、いずれも相性抜群の「アベック」なので、これらを一度にいただくと、美味しさもお得感も飛躍的にアップしました。


まとめ

 今回は「アベック」という菓子パンについて検証しましたが、現在主流の「銀チョコ(ロール)」も含め、チョコレートとホイップクリームを組み合わせたパンは、今も昔も不動の人気であることは間違いありません。

 「アベック(パン)」は、その見た目や組合せから、洋菓子の「エクレア」にヒントを得たパンではないかとも思います。

 「アベック(パン)」ではなく「カップルパン」と呼べばより親しみがわくかと言われたら、そんな感じもせず、やはり今はほとんど使われなくなった「アベック」という言葉だからこそ、インパクトや話題性を持つパンなのだと思います。

 まとめると、菓子パンの「アベック」という名称には、
①1つの丸いパンが身を寄せ合い
②その形が唇やハートに見え
③ホイップクリームとチョコレートが出会い
④コーヒーや紅茶とも仲良く
⑤時代を超えて長年愛され続けたい
という意味が込められているように思います。

 また、秋田の「たけや製パン」では食パンにジャムとマーガリンを組み合わせた「アベックトースト」というロングセラーパンも販売されています。

 「アベック」は、時代を超えてパンの世界で受け継がれ、愛され続けているのです。


<関連サイト>
 「ニシカワ食品」(兵庫県加古川市野口町長砂799番地)
 「岡野製パン所」(広島県福山市神村町3120-1)
 「アベックトースト」(たけや製パン・秋田県秋田市川尻町字大川反233-60

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コメント

「アベックパン」をアベックでご紹介下さり、ありがとうございますm(^.^)m
アベックやランデブーは、おフランス語なんですね(^^;;
パンタロンやネグリジェも使われなくなりましたが・・・
「カフェオーレ」や「クロワッサン」は健在ですね^ ^
ニシカワパンはチョコとミルクホイップのアベック!
岡野製パン所はチョコレートとホワイトチョコレートのアベックと思いきや・・・
ホイップクリームやあんこまで参戦とは!
これは嬉しいバトルロイヤルですね^o^

なーまん 様

今回は不規則な投稿となったにもかかわらず、続けてコメントをくださり、誠にありがとうございます。
なーまんさんにぜひ読んでいただきたいと思って書いたので、良かったです(^-^)

パンタロンは思いつきましたが、ランデブーやネグリジェまでは捻り出せませんでした。
既視感という意味の「デジャヴ」もそうですね。
これは菓子パンの新製品開発のチャンスかも知れませんね(笑)
ただ、そのうち「カップル」も「アベック」と同じ運命をたどりそうな気も…。

ニシカワパンのアベックに続き、岡野製パン所のアベックパンを見つけた時、記事にすることを決めました。
岡野製パン所のアベックパンは230円(税込み248円)と、結構いいお値段だなと思って買ったのですが、あんこまで入っている豪華版で、これならと納得しました。
ニシカワパンのアベックは神奈川の店舗でも売られているかも知れません。
買いたいと思ってくださる人が増えることを願っております。

あ~もうこれは間違いなく美味しいやつ!
岡野製パン所のは私も見た目にドーナツっぽさを感じましたが、軽いパンなんですね。
オールドファッションっぽいドーナツでも間違いなく美味しいと思いますが、カロリーが恐ろしいことになりそうな(^^;

chibiaya 様

chibiayaさん、こんばんは。
今回は不規則な投稿となったにもかかわらず、朝・晩と続けてコメントをくださり、誠にありがとうございます。

そう、チョコレートとホイップクリームを組み合わせた菓子パンは、最強レベルの人気ですよね。
「アベック」というネーミングは珍しいですが、こうした組合せの菓子パンは全国各地にあることでしょう。

岡野製パン所の「アベックパン」、やはり見た目は、ゴツゴツしたドーナツ(オールドファッション)のようなパンに見えますよね。
ただ実際は軽いクロワッサンのようなパンでした。
もし本当に「アベック」がオールドファッションドーナツのようなパンで作られたものだったら…カロリーも相当でしょうが、私は1個を一気に食べ切る自信がありません(笑)
ちなみに、オールドファッションドーナツにチョコレートをかけたようなパンは、西日本ではリョーユーパン(福岡県大野城市)の「マンハッタン」が有名です。

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