日本各地の食文化

2018年11月 7日 (水)

愛媛県新居浜市 「東洋のマチュピチュ」別子銅山遺跡とマチュピチュカレー

「東洋のマチュピチュ」別子銅山遺跡

 ペルーのアンデス山脈にあるマチュピチュ遺跡。

 標高2,280mの高地にあるインカ帝国の天空都市の遺跡です。

 信じられないような高地に都市遺跡があることで有名ですが,実は日本にも「東洋のマチュピチュ」と称される観光地があります。

 愛媛県新居浜市にある別子銅山遺跡です。

 別子銅山は,標高750m前後の東平(とうなる)地区を拠点に,赤石山系の山中から海面下約1,000mまで広範囲に採鉱された銅山です。

 元禄3(1690)年に銅の露頭が発見された翌年から住友が採掘を開始し,昭和48(1973)年の閉山までの283年間で総出鉱量約3,000万トン,産銅量約65万トンを記録しました。


別子銅山と住友,新居浜市の郷土料理「いずみや」

 別子銅山は,現在の住友グループの基礎を築いた母なる銅山でもあります。

 東平には最盛期には5,000人余りの銅山関係者とその家族が住み,劇場や「私立住友別子尋常高等小学校」(教員は住友社員)も設置されてました。

 現在はレンガ造りの銅山関連施設や生活関連施設の面影を残すのみとなっていますが,その遺跡群は確かにペルーのマチュピチュを彷彿させるものがあります。

(東平から新居浜市街地・瀬戸内海を望む)
Photo

 写真手前上方の遺跡が「貯鉱庫跡」,下方の遺跡が「索道停車場跡」,写真右上は新居浜市街地と瀬戸内海です。

 新居浜市内には「リーガロイヤルホテル新居浜」がありますが,都市型の大型ホテル「リーガロイヤルホテル」が新居浜市にあるのも,住友の企業城下町ならではと言えるでしょう。

 また,新居浜市には「いずみや」と呼ばれる郷土料理もあります。

 コノシロやアジなどの魚に「おから」を合わせる押し寿司で,そのルーツは江戸時代に住友家からもたらされた寿司飯の押し寿司にあります。

 当時貴重だった米に代わって「おから」を用いた押し寿司が新居浜の料理となったのです。

 住友家由来の料理ということで,料理名は住友家の屋号「泉屋」に由来しています。

 ちなみに現在の住友グループの「井桁マーク」もこの「いずみ」に由来したものです。


別子銅山遺跡と銅食器

 東平から山側を眺めました。

(東平から赤石山系を望む)
Photo_2

 「索道停車場跡」から赤石山系を撮影した写真です。

 東平の奥にもさらに高い山々が連なっているのがわかります。


 続いて「小マンプ」(短いトンネル)内の鉱山運搬機器を見学しました。

(小マンプ内鉱山運搬機器展示場)
Photo_3

 銅鉱石運搬車両や蓄電車など住友金属鉱山株式会社から新居浜市に寄贈された運搬機器・車両が展示されています。


 その後,「東平歴史資料館」を見学しました。

(銅食器などの銅製品)
Photo_4

 銅食器は見た目の美しさや熱伝導率の良さが特長として挙げられます。

 そう言えば,フランス料理店の厨房でもキャスロール鍋などの銅製調理器具をよく見かけるように思います。


マチュピチュカレー

 「マイントピア別子・東平ゾーン」施設内のレストラン「もりの風」で食事をしました。

 特色のあるメニューの中から,私は最も別子銅山らしいと思った「マチュピチュカレー」を注文しました。

(マチュピチュカレー)
Photo_5

 「SNS映え」,「インスタ映え」しそうな料理です(笑)。実際,周りのツーリング仲間からも注目されました。

 お店の方から,「両側のライスが別子銅山の山を,カレー中央の白い生クリームが山あいを流れる足谷川を表現しています。」と教えていただきました。

 ライスに刺さったレンコンやサツマイモは別子銅山の遺跡でしょうか。

 ライスの形が左右異なっており,起伏のある山々がうまく表現されていると思いました。

 ライスの山を少しずつ採掘する楽しみを味わいながら,美味しくいただきました。

 カレーライスの具を「インカのめざめ」にすると,より話題性のあるマチュピチュカレーに仕上がるかも知れませんね。


 別子銅山周辺は,飲食店・お土産店・鉱山観光・資料館・温泉など楽しめる施設が集まった魅力あふれる観光地です。

 四国の観光にぜひ御利用ください。


<関連リンク>
 「住友の歴史 別子銅山」(住友グループ広報委員会)
 新居浜の郷土料理「いずみや」(えひめ愛フード推進機構)
 「マイントピア別子

<参考文献>
 尾形希莉子・長谷川直子「地理女子が教えるご当地グルメの地理学」ベレ出版

2018年8月29日 (水)

津軽鉄道食景色3 -東北・北海道新幹線車内で津軽鉄道「ストーブ弁当」を味わう-

 2018年3月に行った北東北(岩手・秋田・青森)旅行のお話も今回で最終話となります。

 青森市内に宿泊した後,青森駅からJR奥羽本線で新青森駅へ,新青森駅から東北新幹線で仙台駅へ,仙台駅から仙台空港アクセス線で仙台空港へ,仙台空港からIBEXエアラインズで広島空港へ,広島空港から車で自宅に戻りました。

 旅の締めくくりとして,帰りの東北新幹線車内でいただいた津軽鉄道の駅弁「ストーブ弁当」を御紹介したいと思います。


津軽鉄道「ストーブ列車」と「ストーブ弁当」

 津軽鉄道では,毎年12月~3月末までの間,「ストーブ列車」が運行されています。

 この列車は,車内にダルマストーブが設置されており,乗客がストーブを囲んで暖をとったり,スルメを焼いて味わったりできる冬のイベント列車です。

 ストーブの燃料は石炭で,その焚きつけには細かく割った古い枕木が使われています。

 走行中,ときどき車掌さんがストーブの様子をみて石炭を継ぎ足すのですが,暖房ではなく石炭ストーブというのがノスタルジックで情緒あふれますね。

 その「ストーブ列車」の運行に合わせて販売されているのが,津軽鉄道の「ストーブ弁当」です。

 私は時間の関係で「ストーブ列車」には乗ることができませんでしたが,この「ストーブ弁当」をぜひ味わいたいと思い,事前注文しました。


「ストーブ弁当」の注文

 この「ストーブ弁当」は,2個以上からの受付けで,利用日の3日前までに注文しておく必要があります。

 しかも受取時刻が午前11時から午後2時までの間となっているので,遠く離れた広島から1人で訪問する私には相当な覚悟が必要でした。

 でもどうしても味わってみたいという思いが強かったので,意を決して広島から津軽鉄道本社に電話し,「ストーブ弁当」を2個注文しました。

 その時一番不安だったのは,きちんと決めた日時に指定駅(津軽五所川原駅)で弁当を受け取れるかどうかでした。

 そこで私は津軽鉄道の方に事情を説明し,「万一受け取ることができなくても,代金はお支払いしますのでよろしくお願いします。」とお伝えしました。

 すると津軽鉄道の職員さんは「キャンセルになる場合は早めにお知らせください。別に御希望のお客様にお譲りできるかも知れませんので。」とおっしゃってくださいました。

 相手の気持ちに配慮した,ありがたいお言葉だなと思いました。

 これは何としてでも行かねばと思いつつ,当日を迎え,無事予定時刻に指定駅の津軽五所川原駅で弁当を受け取ることができました。

 津軽五所川原駅のホームの様子です。

(津軽五所川原駅ホーム)
Photo

 手書きの看板に温かみを感じます。

 列車「走れメロス号」が停車していたので,撮影しました。

(津軽鉄道「走れメロス号」)
Photo_2

 オレンジ色と緑色が基調となった湘南色に似た塗装の列車です。

 この日は津軽鉄道に関係したグルメを堪能し,「ストーブ弁当」をお土産にして,五所川原市を後にしました。


JR北海道所有の新幹線H5系

 青森市内で1泊し,北東北旅行の最終日を迎えました。

 朝,青森駅から新青森駅へ行き,東北新幹線に乗車して仙台駅まで戻りました。

(新青森駅「ようこそ青森へ!」(ねぶた))
Photo_7

 やはり青森のねぶたは迫力があっていいですね。

 しばらく真新しい新青森駅構内を散策した後,新幹線ホームへ行き,7:43発東北新幹線・はやぶさ10号・東京行へ乗車しました。

(東北・北海道新幹線「はやぶさ」H5系)
Photo_8
盛岡駅のホームで撮影

 写真は盛岡駅での「はやぶさ10号」です。

 東海道・山陽新幹線のN700系などに比べ,先端が長細い形になっています。

 東北・北海道新幹線の「はやぶさ」に使われる車両は,主にJR東日本所有の「E5系」とJR北海道所有の「H5系」の2種類があるのですが,そのほとんどはJR東日本の「E5系」車両です。

 一方のJR北海道の「H5系」車両は,2018年現在,実質2編成しか運用されていないため(つまり2本の列車が新函館北斗駅と東京駅間を往復しているのみのため),「H5系」のはやぶさはとてもレアな列車なのです。

(東北・北海道新幹線「はやぶさ」H5系(シンボルマーク))
Photo_9
盛岡駅のホームで撮影

 E5系とよく似ているのですが,車体中央の帯がライラック,ルピナス,ラベンダーを想起させる「採香パープル」で,シンボルマークも北海道の地形がモチーフとされています。

 それでは,車内へどうぞ。


東北・北海道新幹線車内で「ストーブ弁当」を味わう

 新幹線の席の後方にある机を手前に出し,津軽鉄道の「ストーブ弁当」を置きました。

(津軽鉄道「ストーブ弁当」(包装))
Photo_10

 竹かご箱の弁当で,包装紙にはレトロなダルマストーブが描かれています。

 包装紙の裏には,「ストーブ弁当」の説明書きがあり,出来る限り地元の食材を使って,愛情込めて作った手作り弁当であることや,津軽鉄道を舞台にしたマンガ「ちゃぺ!津軽鉄道四季ものがたり」の中でもこの「ストーブ弁当」が紹介されていることなどが紹介されています。

 私は津軽五所川原駅の売店で「ストーブ弁当」を購入した際,お店の方からこのマンガ「ちゃぺ!津軽鉄道四季ものがたり」のお話を伺いました。

(「ちゃぺ!津軽鉄道四季ものがたり」表紙)
Photo_11

 津軽五所川原駅売店で購入した「ちゃぺ!津軽鉄道四季ものがたり」です。

 主人公のちゃぺ(津軽の愛称で「子猫」)ちゃんとストーブ列車が描かれています。

(「ちゃぺ!津軽鉄道四季ものがたり」「ストーブ列車」記事)
Photo_12
(作/川上健一・画/ひきの真二「ちゃぺ!津軽鉄道四季ものがたり」小学館ビッグコミックス p142-143を引用)

 本には「ストーブ列車」と「ストーブ弁当」の紹介記事もあります。

 津軽鉄道のウェブページによると,そもそも「ストーブ弁当」は,小学館の関係者が津軽鉄道を盛り上げる企画の一環として販売されたものなのだそうです。

 「ストーブ列車」と「ストーブ弁当」について知識を得た上で,「ストーブ弁当」の箱を開けてみましょう。

(津軽鉄道「ストーブ弁当」)
Photo_13

 写真左上から時計回りに,若生おにぎり,赤カブの漬物,フキとニシンの煮物,レンコンはさみ揚げ,右上角が鮭のハラス,海老フライ,ホタテの煮物,里芋黒ゴマ和え,人参とゴボウの煮物,松前漬け,そして梅干とスルメイカのおにぎりです。

「若生(わかおい)おにぎり」
 ごはんに1年ものの薄くて柔らかい昆布を巻いて作られたおにぎりです。
 海苔の代わりに昆布を使った,津軽ならではの食べ物です。

「赤カブの漬物」
 津軽地方には皮も果肉も赤いカブが漬物にされています。

「フキとニシンの煮物」
 フキ・ニシンは津軽ならではの食材です。

「レンコンはさみ揚げ」
 レンコンに海老のすり身をはさんで揚げた天ぷらです。

「鮭のハラス」
 ハラスは鮭の腹の部分のことです。
 脂ののったハラスの塩焼きです。

「海老フライ」
 フライの衣にあられが使われており,津軽地方の「つぶ雪」が表現されています。

「ホタテの煮物」
 青森はホタテの生産量が全国トップクラスで,ホタテ料理もたくさんあります。

「里芋黒ゴマ和え」
 だしで煮た里芋に黒ゴマがまぶされています。
 これは「ストーブ弁当」の石炭に見立てたおかずとなっています。

「人参とゴボウの煮物」
 全国出荷量で青森の人参は第4位,ゴボウは全国1位となっており,ともに青森で多く出荷されています。
 青森の人参と言えば,私は「リゾートしらかみ」に乗車した際に知った深浦町の「ふかうら雪人参」を思い出します。

「松前漬け」
 松前漬けは北海道の郷土料理ですが,数の子・昆布・スルメイカを使った料理は青森でもよく食べられています。
 青森には松前漬けに大根の漬物などを混ぜた「つがる漬」,「ねぶた漬」という料理もあるようです。

「梅干とスルメイカのおにぎり」
 「ストーブ列車」で焼くスルメイカや松前漬けも含め,スルメイカがよく登場しますが,青森ではそれだけ馴染み深い食材なのでしょうね。
 梅干の酸味とスルメイカの旨味が加わることで,食が進みました。


 本来はのんびりと走る「ストーブ列車」の車内で味わうべき「ストーブ弁当」ですが,今回は日本最速の新幹線「はやぶさ」の車内で味わいました。

 こんな食べ方する人はなかなかいないと思います(笑)。

 素朴で都会の弁当とは一線を画した感がありますが,都会ではなかなか味わえないような贅沢な津軽の海の幸・山の幸がたくさん詰められていて,津軽のふるさとの味を堪能することができました。

 JR五能線経由で五所川原,弘前,青森と駆け足で回り,青森滞在は1泊2日とわずかなものでしたが,その数々の思い出がこの弁当に詰められているような気がしました。

 かの太宰治も,これと同じような弁当を持たせてもらって青森から上京したのかも知れませんね。


まとめ

 「ストーブ弁当」を味わった後,車窓から東北の風景を眺めていると,あっと言う間に仙台駅に到着しました。

(東北・北海道新幹線E5系とH5系)
Photo_14
仙台駅のホームで撮影

 仙台駅に停車する新幹線E5系(写真左奥,はやぶさ103号・盛岡行)とH5系(写真右手前,はやぶさ10号・東京行)です。

 よく似ていますが,ボディー側面のラインがE5系はピンク色(つつじピンク),H5系は紫色(彩香パープル)となっています。

 今回の北東北旅行は,東北新幹線,秋田新幹線,「リゾートしらかみ」,五能線,奥羽本線と鉄道を乗り継ぐ旅でもありましたが,今度機会があればぜひ津軽鉄道の列車にも乗り,車内で津軽鉄道の駅弁を味わってみたいです。

 津軽鉄道の駅弁は,今回御紹介した「ストーブ弁当」(12月~3月)のほかに,「さくら弁当」(4月~5月),「だざい弁当」(6月~8月),「いなほ弁当」(9月~11月)と四季折々に多彩な弁当が用意されています。

 津軽鉄道の旅やグルメを楽しむことは,津軽の風土や文化を知ることにつながることを実感しました。


<関連リンク>
 「津軽鉄道株式会社

<参考文献>
 作/川上健一・画/ひきの真二「ちゃぺ!津軽鉄道四季ものがたり」小学館ビッグコミックス
 作/やまさき十三・画/北見けんいち「釣りバカ日誌 82 津軽鉄道冬景色!?の巻」小学館ビッグコミックス

<関連記事>
 「津軽鉄道食景色1 -津鉄汁セット,ストーブ列車石炭クッキー-
 「津軽鉄道食景色2 -若生おにぎり,中まで赤~いりんごジャム,干し餅,五農産米-
 「秋田と青森を結ぶリゾート列車「リゾートしらかみ」の魅力 -ジョイフルキャンディー・マグカツドック-
 「新幹線車内でレモンケーキを味わう -山陽新幹線・東北・北海道新幹線・さかたやのレモンケーキ-

2018年8月17日 (金)

津軽鉄道食景色2 -若生おにぎり,中まで赤~いりんごジャム,干し餅,五農産米-

 津鉄汁セット,ストーブ列車石炭クッキーに続き,津軽鉄道と津軽鉄道沿線の食べ物を御紹介します。


若生おにぎり

 津軽鉄道本社屋1階の「コミュニティカフェ でる・そーれ」で「若生(わかおい)おにぎり」を購入しました。

 「若生おにぎり」は,ごはんを海苔の代わりに昆布で巻いたおにぎりで,津軽の郷土料理です。

 「若生」は1年ものの薄くて柔らかい昆布を言います。

 広げた若生の上にご飯をのせ,ご飯の端を若生で包み,パタンと二つ折りにして作られます。

(若生おにぎり)
Photo

 太宰治も若生おにぎりが好物で,夜食としていたようです。

(若生おにぎり(中身))
Photo_2

 いただいてみると,昆布の程よいしょっぱさがご飯の味を引き立て,海の香りが口の中に広がる美味しいおにぎりでした。

 ちなみに若生おにぎりは食べる際にちょっとしたコツがいります。

 昆布の繊維方向を考えて噛まないと,昆布が噛み切れないのです。

(若生おにぎりの食べ方)
Photo_3
(コミュニティカフェ でる・そーれ『What's?若生おにぎり』から引用(抜粋))

 昆布の繊維に平行になるよう,おにぎりを縦に持って噛み切る必要があります。

 再度「若生おにぎり(中身)」の写真を御覧いただければ,昆布の切れ目が繊維に沿ってまっすぐに切れているのがお分かりいただけると思います。

 海苔の代わりにやわらかい昆布を使っておにぎりを作るとは,これも1つの生活の知恵であり,立派な食文化ですね。


「中まで赤~いりんごジャム」

 「中まで赤~いりんごジャム」は,五所川原市特産のりんご「御所川原」で作られたジャムです。

 この「御所川原」は皮だけでなく,中まで赤いとても珍しいりんごです。

(「中まで赤~いりんごジャム」(包装))
Photo_4

 箱上側の絵は中まで赤いりんご「御所川原」を輪切りにしたもので,りんごの皮だけでなく,中心部まで赤くなっていることがわかります。

(「中まで赤~いりんごジャム」)
Photo_5

 粗めに切ったりんごをシンプルに砂糖だけで煮詰めて作られたジャムです。

 果肉まで赤いので,ジャムもやさしい赤色をしています。

 いただいてみると,甘さは控え目で,その分りんごの酸味を強く感じました。

 中まで赤いのですが,酸味が強いりんごです。

 「御所川原」の素材の味を大切にした手作りのジャムです。


干し餅

 津軽鉄道「津軽五所川原駅」の売店で五所川原名物の干し餅が売られていました。

(干し餅(包装))
Photo_6

 何だか食べにくそうだと思ったのですが,お店の方から「そのままでも食べられますよ。」と教えていただき,購入してみました。

 餅にゴマ,バターが入っています。

 そのままいただいてみると,サクサクした軽いせんべいのような食感で,ほのかにバターの香りがし,黒ゴマがアクセントになっていました。

 こんがりと焼いたり,油で揚げて食べても美味しいようです。

 餅を凍らせた上で干して乾燥させた保存食で,高野豆腐とよく似ています。

 私はこの干し餅をいただいた時,全く同じだと思った食べ物がありました。

 このブログで御紹介した宇宙食「ライスケーキ(おもち)」です。

 宇宙食のライスケーキは,フリーズドライ製法なのですが,フリーズドライとは凍らせて干す(乾燥させる)ことなので,干し餅の製法と一緒です。

 それならと,宇宙食のライスケーキと同様,この干し餅をしばらく水に浸してからいただいてみると,予想どおり粘りのある餅に戻りました。

 昔ながらの製法が実は宇宙食の製法と一緒であることに感動しました。


「五農産米」

 「五農」は青森県立五所川原農林高等学校の通称で,「五農産米(ごのうざんまい)」は五農で栽培・収穫したお米のことです。

 津軽鉄道の駅に「五農校前駅」という駅があるのですが,こちらも五所川原農林高等学校前を略した駅名となっています。

(「五農産米」)
Photo_7

 米を炊いてごはんでいただきました。

(「五農産米」のごはん)
Photo_8

 ごはんがまばゆいばかりに輝いて見えました。

 ちなみにこの茶碗は…普段私が使っている茶碗です(笑)。

 ふっくらと仕上がり,適度な弾力を感じました。

 雑味がなく,ほのかな甘味があります。

 冷めても美味しかったので,弁当やおむすびにも適していると思いました。

 「五農産米」は,国際標準である「グローバルG.A.P(※)」の認証を受けています。
 ※G.A.PはGood(適正な),AGRICULTURAL(農業の),PRACTICES(実践)の略。農業生産の環境的,経済的及び社会的な持続性に向けた取組みを認証する制度。

 また,いずれも期間限定ですが,米菓メーカー「岩塚製菓」(新潟県長岡市)から「五農産米」を使ったせんべい(商品名「五農米でつくった味しらべ」)が販売されたり,ANAグループが「五農産米」を羽田・成田発国際線ファーストクラスの機内食(ごはん)に採用するなど,各界からも高い評価を得ています。


 今回は時間の都合で津軽鉄道には乗れなかったのですが,津軽鉄道のグルメは盛りだくさんで,とても楽しめました。

 青森へお越しの際はぜひ津軽鉄道や津軽鉄道沿線のグルメをお楽しみください。


<関連リンク>
 「津軽鉄道株式会社
 「コミュニティカフェ でる・そーれ
 「青森県立五所川原農林高等学校

<参考文献>
 永松 潔・高橋遠州「テツぼん 13」小学館ビッグコミックススペシャル

<関連記事>
 「津軽鉄道食景色1 -津鉄汁セット,ストーブ列車石炭クッキー-

2018年8月15日 (水)

津軽鉄道食景色1 -津鉄汁セット,ストーブ列車石炭クッキー-

津軽五所川原駅と津軽鉄道本社

 秋田駅から「リゾートしらかみ1号」に乗り,五所川原駅へ行きました。

 終点の青森駅までではなく五所川原駅で下車した理由は,津軽鉄道と「立佞武多の館(たちねぷたのやかた)」を見学するためです。

 津軽鉄道は鉄道ファンの間でも有名な鉄道で,ストーブ列車などのイベント列車の運行やオリジナルグッズの販売など魅力的な企画・イベントをたくさん手がけておられます。

 津軽鉄道「金木(かなぎ)駅」からは,太宰治の生家「斜陽館」なども観光でき,太宰治ファンにもおすすめの鉄道です。

 訪問当日は,列車に乗車できるほどの時間的余裕はなかったのですが,津軽鉄道の魅力の一端に触れたいと思い,JR「五所川原駅」に隣接する津軽鉄道「津軽五所川原駅」と津軽鉄道本社1階にある「コミュニティカフェ でる・そーれ」を訪ねました。

(津軽鉄道「津軽五所川原駅」と津軽鉄道本社)
1

 写真の左側にある建物が津軽鉄道本社,右側にある建物が津軽鉄道「津軽五所川原駅」です。

 津軽鉄道本社1階には「サン・じゃらっと」と呼ばれる地域交流施設があり,その中に飲食コーナー「コミュニティカフェ でる・そーれ」があります。


津鉄汁セット

 私は「コミュニティカフェ でる・そーれ」で津鉄汁セットをいただきました。

(津鉄汁セット)
Photo

 写真右下が津鉄汁で,手前がいなり寿司とおにぎり,写真左上から横にお茶,厚焼き玉子とふきの佃煮,野菜のゴマ和えです。

 メインの津鉄汁は,醤油仕立てのすまし汁で,長芋入りの丸いすいとん,青森シャモロック,人参,舞茸,ごぼう,白髪ねぎなど具だくさんです。

 大きなおにぎりの中には塩鮭がたっぷり入っていました。

 いなり寿司は酢飯に紅しょうがが混ぜられているため,ピンク色をしています。
 もち米も入っているので,つやつやしています。
 甘めの寿司飯をきめの細かいいなりで包み,くるみをのせた津軽特有のいなり寿司です。

 そして,注目すべきは箸入れです。

 「箸入れ」と太宰治の作品「走れメロス」をかけて「はしいれメロス」と記載されているのです(笑)。

 ちなみに,津軽鉄道の列車は「走れメロス号」で,過去には期間限定列車「人間失格号」も運行されたようです。

 津軽鉄道,面白い!


ストーブ列車石炭クッキー

 食事後,「コミュニティカフェ でる・そーれ」で販売されていたお土産を購入しました。

 何にしようか眺めたところ,ひと際目立っていたのが「ストーブ列車石炭クッキー」です。

 津軽鉄道では,冬の間,客車に石炭ストーブを設置した「ストーブ列車」が運行されており,乗客はこのストーブを囲んで暖をとったり,スルメを焼いて食べたりしながら冬の津軽を楽しむことができます。

 「ストーブ列車石炭クッキー」は,その「ストーブ列車」の燃料である石炭に似せたオリジナルクッキーです。

(ストーブ列車石炭クッキー(包装))
Photo_2

 モノクロのパッケージが石炭っぽさを演出しています。

(ストーブ列車石炭クッキー)
Photo_3

 見た目や形が石炭そっくりなクッキーです。

 ブラックココアが使われていることで真っ黒でほろ苦いクッキーに仕上がっています。

 売上の一部はストーブ列車の維持に役立てられているようです。

 「列車の中でストーブを焚く」,これはよく考えたらスゴイことで,津軽地方ならではの冬の風物詩と言えるでしょう。


 青森・五所川原へお越しの際はぜひ津軽鉄道と津軽鉄道グルメをお楽しみください。


<関連リンク>
 「津軽鉄道株式会社
 「コミュニティカフェ でる・そーれ

<参考文献>
 永松 潔・高橋遠州「テツぼん 13」小学館ビッグコミックススペシャル

<関連記事>
 「津軽鉄道食景色2 -若生おにぎり,中まで赤~いりんごジャム,干し餅,五農産米-

2018年7月14日 (土)

福岡県北九州市「藍昊堂(あおぞらどう)」の「旦過名物レモンチーズまんじゅう」

 北九州市の玄関口,小倉駅から南へ向かって徒歩約15分のところに「旦過市場(たんがいちば)」があります。

 「旦過市場」は鮮魚,青果,惣菜など約120もの店舗が肩を寄せ合っており,「北九州の台所」と呼ばれています。

 そんな食の宝庫「旦過市場」で,ふと気になるお菓子を見つけました。

 旦過市場内の製菓・製パン店「藍昊堂(あおぞらどう)」の「旦過名物レモンチーズまんじゅう」です。

(「旦過名物レモンチーズまんじゅう」販売の様子)
Photo

 商品説明には,「甘く漬けこんだレモンピール入りチーズまんじゅう。国産レモンの砂糖漬けをトッピングし,レモンアイシングでコーティング。夏にピッタリのレモンケーキ風のチーズまんじゅうです。」とあります。

 確かに見た目がレモンケーキのような形とコーティングとなっています。

 興味を持ち,購入してみました。

(「旦過名物レモンチーズまんじゅう」)
Photo_2

 長さ約7.5cm,幅約5cm,高さ約3cmのレモンケーキの形をしたお菓子です。

 スコーンに似たケーキ生地の上にレモンアイシングがコーティングされており,三角形の国産レモンの砂糖漬けがトッピングされています。

(「旦過名物レモンチーズまんじゅう」中身)
Photo_3

 中には饅頭のあんの代わりに固形の白いチーズが入れられています。

 実際にいただいてみました。

 サクサクとしたケーキ生地は,甘さ控えめで,厚切りのレモンピールも練り込まれているので,レモン風味のスコーンのようです。

 中の白いチーズはあっさりとしてクセがなく,ケーキ生地と一緒にいただくと,チーズのわずかな塩気がほのかな甘味のケーキ生地を引き立て,見事に調和していました。

 レモン風味のレモンピール入りケーキ生地,レモン風味のアイシング,そしてレモンの砂糖漬けと,様々なレモンの風味・酸味を一度に楽しむことが出来る洋菓子でした。

 それにしても,見た目も味も洋菓子そのものなのに,なぜ「まんじゅう」と呼ばれるのでしょうか。

 これは「藍昊堂」のウェブページにもあるのですが,どうやら宮崎銘菓の「チーズ饅頭」にヒントを得て作られたお菓子であることに理由があるようです。


 小倉にお越しの際は,旦過市場を訪問し,いろんな食べ物を探してみられるのも面白いと思います。


<関連リンク>
 「藍昊堂(あおぞらどう)」(福岡県北九州市小倉北区魚町4-2-23)
 「チーズ饅頭」(宮崎市観光協会)

2018年6月10日 (日)

青森のソウルフード探訪記2 -味噌カレー牛乳ラーメン・味噌カレー牛乳煎餅・味噌バターカレー牛乳どらやき-

 青森県青森市を訪問しました。

 弘前駅から奥羽本線で青森駅へ向かったのですが,青森駅のホームに降り立つと,本州北端のターミナル駅なので,感慨深いものがありました。

 この駅の先にあるのは,かつての青森と函館を船で結んだ青函連絡船の旅客ターミナルです。

 現在は八甲田丸が係留保存され,一般公開されています。

(青森駅に停車する701系電車と青森ベイブリッジ)
701


青森のソウルフード「味噌カレー牛乳ラーメン」

 青森駅周辺を歩いていると,お土産店や飲食店で「味噌カレー牛乳ラーメン」という珍しいネーミングのラーメンをよく目にしました。

 このラーメン,知る人ぞ知る青森のソウルフードなのです。

 そこで,この「味噌カレー牛乳ラーメン」が一体どんなラーメンなのか,味わってみることとしました。

 私は牛乳(生乳)が全く飲めないので,少しためらいもあったのですが,食文化に興味を持つ者として,珍しい青森の郷土料理を味わうことなく帰る訳にはいかないと思い,「味噌カレー牛乳ラーメン」で有名なお店を訪問しました。

 お店のメニューには,味噌ラーメン,塩ラーメン,しょうゆラーメン,カレーラーメン,バターラーメンなどシンプルな味のラーメンも用意されていました。

 そうした単体の味がいろいろと組み合わされることでメニューが増やされ,味噌バター,味噌カレー,牛乳(バター入り),味噌カレーバターとだんだんと複雑なメニューとなり,その頂点に「味噌カレー牛乳ラーメン(バター入り)」が君臨しているのです。

 個人的には,札幌ラーメンなら味噌バター,冒険して味噌カレーバターまでがストライクゾーンかなと思ったのですが,青森のソウルフードは「味噌カレー牛乳ラーメン」なので,少し勇気を出して,このラーメンを注文しました。

(味噌カレー牛乳ラーメン(バター入り))
Photo

 これが「味噌カレー牛乳ラーメン(バター入り)」です。

 味噌の褐色,カレーの黄色,牛乳の白色が混ざり,明るめの黄色いスープとなっています。

 具はもやし,メンマ,わかめ,チャーシューで,その上にバターの塊がのせられています。

 スープの表面がテカテカしており,相当こってりしているのではないかという印象を持ちました。

 テーブルには梅干しも用意されていました。

 スープがたっぷり注がれ,麺が見えないので,麺をアップで撮影してみました。

(味噌カレー牛乳ラーメン(麺))
Photo_2

 黄色く太いちぢれ麺です。

 牛乳と表面の油脂で麺に光沢があります。

 ドキドキしながらラーメンをいただいてみました。

 スープは,味噌ベースのスープに牛乳を加え,カレー粉を加えた感じで,味噌の風味とスパイシーなカレー粉(カレールウではない)のおかげで見た目ほどこってりしておらず,牛乳っぽさも感じない仕上がりとなっていました。

 それぞれの味がうまく協調し合って,独自の美味しさを生み出しています。

 このスープをうまく受け止めているのが,札幌ラーメン系の太くコシのあるちぢれ麺です。

 スープと同じ黄色い麺で,色の一体感もあります。

 味の強さは商品名の順番と同じく,強い順に味噌味,カレー味,牛乳味そしてバター味だと感じました。

 「この味ならいける」と思い,完食しました。

 食べ終えた後になって,メニュー表に「味付けはいかようにも致します。お申し付けください。」と書かれていることに気付きました。

 そこで,レジでの精算時,お店の方に,「例えば牛乳を少なめとか注文できるのですか。」と尋ねたところ,あっさりと「はい,できますよ。」と教えていただきました。

 牛乳は少なめにお願いすればよかった…。

 お店を出ると,お店の入口で味噌カレー牛乳ラーメンを紹介する映像が流れていました。

(「味の札幌 大西」入口)
Photo_3

 その映像で味噌カレー牛乳ラーメンの作り方が紹介されていたので,興味を持ってひととおり観てみました。

 味噌カレーラーメンの作り方は,
(1)ラーメン丼に自家製味噌ペーストを入れる。
(2)このペーストに牛乳とカレー粉を加える。
(3)このスープベースを豚骨と鶏ガラベースの熱いスープで溶く。
(4)太ちぢれ麺を入れ,もやし,チャーシュー,メンマ,わかめ,そしてバターの塊をのせて完成。
というものでした。

 私にとっては,味噌ペーストに牛乳パックの牛乳をそのまま入れていた場面の映像が衝撃的でした。

 やはり…牛乳は少なめにお願いすればよかった(笑)。


味噌カレー牛乳煎餅

 青森のソウルフード「味噌カレー牛乳ラーメン」にちなんだ味噌カレー牛乳味のお菓子もあります。

 「味噌カレー牛乳煎餅」です。

(味噌カレー牛乳煎餅(包装))
Photo_9

 「味噌のコクとスパイシーなカレー,牛乳のまろやかさが絶妙なご当地名物味のせんべいです。」と説明されています。

 包装の裏面には,青森味噌カレー牛乳ラーメンについて説明書きがありました。

(味噌カレー牛乳煎餅(包装裏面))
Photo_5

 味噌カレー牛乳ラーメンには,バターが自動的にトッピングされること(だから名称に「バター」が入ってないのですね。),30年以上の間,青森市民に愛され続けるソウルフードであることなどが説明されています。

 開封し,煎餅を取り出してみました。

(味噌カレー牛乳煎餅)
Photo_6

 中心が盛り上がった一辺が約4.5cmの正方形で,黒ゴマが加えられた南部せんべい風のせんべいです。

 ただ,市販の南部せんべいと比べて軽い食感で,味は明治「カール カレーあじ」(2017年5月25日販売終了)に似ているように感じました。

 カレー粉と牛乳の味が前面に出ており,ほんのりと味噌味を感じました。

 この煎餅を汁の中に入れると,青森県八戸市の名物「せんべい汁」を進化させた「味噌カレー牛乳せんべい汁」ができそうです(笑)。


味噌バターカレー牛乳どらやき

 「青森市文化観光交流施設 ねぶたの家 ワ・ラッセ」内にある「青森ふるさとショップアイモリー」で面白いお菓子を見つけました。

 (ドラえもんの口調で)「味噌バターカレー牛乳どらやきー」(笑)。

(味噌バターカレー牛乳どらやき(包装))
Photo_10

 味噌カレー牛乳ラーメン以上に味の想像がつかない食べ物です。

 「2012年ふるさと食品コンクール」で青森県知事賞を受賞した青森県推奨土産品認定商品です。

(味噌バターカレー牛乳どらやき)
Photo_11

 袋を開けた瞬間,カレーの香りが広がりました。

 どらやきの皮は,小麦粉・卵・砂糖のほか,地元津軽の味噌が加えられており,水の代わりに牛乳でこねて焼き上げられたものです。

 味噌や牛乳が加えられていますが,一般的な甘いどらやきの皮とよく似ています。

 特徴的なのは中のあんです。

 甘い白あんにカレーが混ぜられているため,ベースは甘いのですが,カレーのスパイシーな風味も感じられる不思議な味のカレーあんに仕上がっています。

 そして写真のどらやきをよく御覧いただくと,カレーあんと皮の間に黄色の薄い層があることが御確認いただけるかと思います。

 これはバターの層です。

 バターがたっぷり塗られていることで,味噌,牛乳,カレーあんの味をうまく包み込み,全体がうまく調和した味に仕上がっているのです。

 このどらやきはバターが重要な役割をしているので,商品名も「味噌カレー牛乳」ではなく「味噌バターカレー牛乳」とされているのでしょう。

 味噌カレー牛乳をお菓子にするというアイデアも面白いのですが,「面白い,珍しい」にとどまらず,その味をうまくまとめ,立派な青森のお菓子に仕上げられていることが素晴らしいです。

 もちろん,ドラえもんにもおすすめです。


 味噌カレー牛乳にバターまで加わった青森のソウルフード,いかがでしたでしょうか。

 私はこう思いました。

 「わいは,めぇ!」(これはびっくり,うまい!)


<関連サイト>
 「味の札幌 大西」(青森市古川1-15-6 大西クリエイトビル1F)
 「有限会社マルカワ渋川せんべい」(青森市新田1-9-17)
 「青森ふるさとショップアイモリー」(青森市安方1-1-1)
 「松栄堂」(青森市栄町1-5-4)

<関連記事>
 「青森のソウルフード探訪記1 -万茶ンの太宰ブレンド・りんごジュース自動販売機・イギリストースト-

2018年5月16日 (水)

広島の名物・郷土料理4 -でんがく・ホルモンおでん,田楽とおでんの食文化史-

 広島には「ホルモン天ぷら」のお店が数多くありますが,こうしたお店の中には,天ぷら以外にもホルモンを使った広島ならではの料理が用意されていることがあります。

 その代表的な料理が「でんがく」と「ホルモンおでん」です。

 今回は,この2つの料理を御紹介したいと思います。


でんがく

 店内のメニューには「でんがく(汁)」や「でんがくうどん」と表記されているのですが,実際に出されてみないと名前だけで理解するのは難しい料理だと思います。

 「でんがく」は,地元広島でも御存知の方は少ない料理でしょう。

(でんがく)
Photo

 これがその「でんがく」です。

 ひらがなで表現されたやさしいイメージとのギャップを感じてしまうような見た目です(笑)。

 「でんがく」は,一言で表現すれば,ホルモン汁のことです。

 具は,小腸,チギモ(脾臓),ヤオギモ(肺),センマイ(牛の第三胃袋),ガリ(軟骨)など様々な種類のホルモンと,キャベツや春菊などの野菜で構成されています。

 ホルモンを煮込むことで抽出されるだしを塩味で整えたシンプルな味付けですが,様々な部位のホルモンを入れて煮込むことで,ホルモン本来のうまみや,脂のコクが凝縮された奥深い味の汁に仕上がっています。

 キャベツや春菊といった野菜は,口内をさっぱりとリフレッシュさせる効果もあります。

 ホルモン天ぷらとは違い,見た目そのままのホルモンが入っているので,野趣あふれる料理ですが,やわらかく煮込まれており,いろんなホルモンを確認しながら味わえるというメリットがあります。

 この「でんがく」に,うどんを加えると「でんがくうどん」,そうめんを加えると「でんがくにゅうめん(でんがくそうめん)」と呼ばれる料理になります。

 広島の「でんがく」は,様々なホルモンを一度に,そのうまみを余すことなく味わえる汁だと定義することができるでしょう。


ホルモンおでん(牛スジ・ヤオギモ)

 「でんがく」はホルモンの煮込み汁ですので,「おでん」に近い料理だと言えます。

 ところが,「でんがく」を提供している広島のホルモン天ぷら店には大抵,牛すじやホルモンを出汁にした黒い汁が特徴の「ホルモンおでん」も提供されているのです。

 こちらがその「ホルモンおでん」です。

(ホルモンおでん)
Photo_2

 上の串が牛スジ,下の大きな塊の肉が牛の肺です。

 スジ肉は,市販のおでんの具としてもよくみかけますね。

 ただ,今回のスジは,ホルモンを扱う店のスジだけに,一回り大きく,肉付きも多いように思いました。

 一方,牛の肺(フワ)は,広島では「ヤオギモ」と呼ばれます。

 かなり大きく重い塊なので,箸でつまみ上げるのは難しく,お店の方に大きな金網で掬い上げてもらいました。

 広島以外の方には馴染みが薄い肉かも知れませんが,広島にはこの「ヤオギモ」を醤油,砂糖,生姜などで甘辛く煮た「牛やおぎも煮」という料理があり,専門店のみならず広島市内のスーパーの惣菜コーナーなどでもよく販売されています。

 ですので,「ヤオギモ」のおでんは,地元広島の方であれば,そんなに抵抗ないという方も多いでしょう。

 この黒い汁が特徴の広島の「おでん」と,すまし汁に近い広島の「でんがく」は,同じ煮込み料理でありながら対照的な料理となっています。


「田楽」と「おでん」の食文化史

 今回御紹介した広島の「でんがく」は,豆腐やこんにゃくなどに味噌を塗って焼いた「田楽(でんがく)」と関係があるのでしょうか。

 このことを考える前提として,「田楽」と「おでん」の食文化史にも少し触れておきたいと思います。

 「田楽」という名称は,平安時代に田楽法師が竹馬に乗り,田植えの豊作を祈願して舞い踊る姿が,豆腐に長い串を刺し味噌をつけて焼く料理に似ていたことに由来しています。

(豆腐の味噌田楽(愛知県岡崎市))
Photo_3

 この「田楽」が,のちに接頭語の「お」を付けた「おでんがく」となり,略されて「おでん」と呼ばれるようになりました。

 「田楽」に用いる食材も,豆腐のほかにこんにゃくも使われるようになり,醤油も登場することによって,焼く料理から煮込む料理へと組み替えがなされるようになりました。

(こんにゃくの味噌田楽(愛知県岡崎市))
Photo_4

 そして,具材も鳥獣肉や魚肉練り製品にまで広がり,「おでん」という料理に変化して現在に至っています。

 つまり「おでん」は元々の「田楽」という料理からは別物の,独立した料理へと進化したわけです。


広島の「でんがく」の意味を考える

 こうした「田楽」と「おでん」の食文化史を踏まえた上で,改めて広島の「でんがく」という名称の由来について考察してみたいと思います。

 広島の「でんがく」はホルモンを煮込んで作られる「おでん」とよく似た料理です。

 しかしながら,広島ではホルモンは「おでん」を作る際の出汁や具材としても使われていますので,ホルモン煮込み汁のことまで含めて「おでん」と呼ぶと,それぞれの料理の区別が付かなくなってしまいます。

 そこで,「おでん」とは別の料理という意味で,おでんのルーツとなった名称である「でんがく」という呼び名が用いられるようになったのではないでしょうか。

 このお話は私の推論に過ぎませんが,広島の「でんがく」という料理の名称は,何らかの形で「おでん」や「田楽」と関係性があるのではないかと考えます。


<関連記事>
 「広島の名物・郷土料理1 -ホルモン天ぷら,ホルモン天ぷらの種類と特徴-
 「広島の名物・郷土料理2 -ホルモン天ぷら(ビチ・チギモ),スマートな注文方法-

2018年5月12日 (土)

青森のソウルフード探訪記1 -万茶ンの太宰ブレンド・りんごジュース自動販売機・イギリストースト-

太宰治も通った喫茶店「万茶ン」

 青森県弘前市を訪問しました。

(弘前駅に停車する701系電車)
701

 弘前駅の発車メロディーは,津軽三味線による「津軽じょんがら節」です。

 弘前では,「奇跡のりんご」のスイーツが味わえる「パティスリー山崎」や,バナナ最中の「旭松堂」,「弘前市立観光館(想い出ショップさくらはうす)」,弘前城などを巡りました。

 見どころ満載の弘前市内において,太宰治ファンなら押さえておきたい店があります。

 喫茶店「万茶ン(まんちゃん)」です。

(喫茶店「万茶ン」)
Photo

 創業が昭和4年と東北最古の喫茶店で,文豪 太宰治をはじめ,洋画家の阿部合成や作家の石坂洋次郎なども通い,この店で珈琲を楽しんだようです。

 店内は静かで落ち着いた雰囲気で,旅の疲れを癒してくれました。

 私は昭和の珈琲「太宰ブレンド」を注文しました。

 店内を見回してみると,私が座った席の真後ろに太宰治の本が集められていました。

(太宰治の本)
Photo_2

 「人間失格」,「走れメロス」,「斜陽」,「お伽草子」,「女生徒」…中高生時代にいろんな作品を読んだなと懐かしく思いました。

 カウンターではマスターがサイフォンでコーヒーを丁寧に淹れておられました。

 コーヒーが出来上がり,テーブルに運ばれてきました。

(「万茶ン」の「太宰ブレンド」)
Photo_3

 コーヒーがカップに注がれた後,置いていかれたサイフォンの中にもう一杯分のコーヒーがあったので,コーヒーを2杯分ゆっくりと楽しむ事ができました。

 深みがあり,後味がすっきりした味わいのコーヒーでした。

 私の旅はいつも駆け足の「走れメロス」状態なのですが,できればこの喫茶店でしばらくゆっくりしたいなと思うほど,落ち着いて雰囲気の良いお店でした。


青森駅・りんごジュースの自動販売機

 続いて青森市を訪問しました。

 青森駅で降り,ねぶたの展示・体験施設「ねぶたの家 ワ・ラッセ」やりんごを中心に青森のグルメを集めたショップ「AーFACTORY」,「青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸」などを散策しました。

(青森駅周辺施設)
Photo_4

 3月中旬だったので,まだ雪が積もっていますが,写真の橋が「青森ベイブリッジ」,橋のふもと,写真左側が「AーFACTORY」,写真右側手前が「ねぶたの家 ワ・ラッセ」,さらに写真中央奥には青函連絡船として活躍した八甲田丸も見えます。

 青森駅構内を歩いていると,青森らしい自動販売機がありました。

(青森駅・りんごジュースの自動販売機)
Photo_5

 青森のりんご(ふじ・トキ・つがる・きおう)100%のジュースだけがずらりと販売されています。

 りんごジュースの飲み比べができるなんて,青森らしくていいアイデアですね。


工藤パンの「イギリストースト」

 青森駅から青森市街を散策していると,コンビニエンスストアで面白い商品案内を見つけました。

(イギリストースト商品案内)
Photo_6

 「青森県のソウルフード イギリストーストありま~す♪」

 青森県のソウルフード?青森とイギリス?

 興味を持って店内に入り,イギリストーストなるものを購入してみました。

 宿泊先のホテルで開封し,いただきました。

(イギリストースト(包装))
Photo_7

 イギリスの旗,ユニオンジャックがデザインされた「イギリストースト」。

 地元青森の工藤パンの商品です。

 なるほど,山形の食パンをイギリスパンと呼ぶことから,イギリスなんですね。(工藤パンでは山形の食パンを「イギリスブレッド」として販売されています。)

 でもトーストされて(焼かれて)ないのに,トーストとは面白いネーミングです。

(イギリストースト(中身))
Photo_8

 イギリスパンが二枚合わせになっており,中にマーガリンとグラニュー糖のフィリングがはさまれています。

 グラニュー糖がたっぷりで,ジャリジャリした食感が楽しめます。

 マーガリンとグラニュー糖のコンビ。

 そう言えば,二枚合わせではありませんが,食パンの上にマーガリンとグラニュー糖が塗られた「シュガーマーガリン」という昔ながらの菓子パンがあります。

 「イギリストースト」は,この「シュガーマーガリン」を二枚合わせにした菓子パンのことです。

※「シュガーマーガリン」,私の住む広島だけではないですよね…。広島では,シュガーマーガリンにさらにイチゴジャムまで塗られたパンも見かけるのですが,全国区かと言われれば少し自信がありません。

 訪問したお店では,ほかにもグラニュー糖が多い「ジャリ増し」や,ラスクも売られていました。

(「イギリストースト ラスク」)
Photo_9

 ラスクの方がトーストっぽい気もします。

 ラスクなら,ジャリ感とともにバリバリ感も味わえます。

 イギリストーストに関するウェブサイトを見てみると,地元青森ではオリジナル商品のほかにも,チョコレートやコーヒークリーム,小倉あん,ジャムなどいろんな種類のイギリストーストが販売されているようです。

 中には,フレンチトーストやフレンチトースト・ピザ風まで販売されたこともあるようで,こうなると,イギリスなのかフランスなのかイタリアなのか,一体どこの国のパンなのかわからなくなってしまいます(笑)。

 ちなみに,以前当ブログで,青森や秋田ではバナナが好まれ,バナナ最中という郷土菓子まであることを御紹介しましたが,「工藤パン」でも,「スペシャルバナナ」や「バナナオムレット」などバナナのパンも販売されているようです。


 青森には魅力的な食べ物や飲み物がたくさんありますので,食をテーマにした旅行もおすすめです。


<関連サイト>
 「万茶ン」(青森県弘前市土手町36-6)
 「青森りんごシリーズ」(「acure(アキュア)」JR東日本ウォータービジネス)
 「工藤パン」(イギリストースト)

<関連記事>
 「青森・秋田の郷土菓子 バナナ最中 -青森・秋田でバナナ最中が好まれる理由-
 「青森のソウルフード探訪記2 -味噌カレー牛乳ラーメン・味噌カレー牛乳煎餅・味噌バターカレー牛乳どらやき-

2018年4月15日 (日)

青森・秋田の郷土菓子 バナナ最中 -青森・秋田でバナナ最中が好まれる理由-

青森・秋田にあるバナナのお菓子

 青森県や秋田県北部には「バナナ最中」と呼ばれる郷土菓子があります。

 バナナ風味の白あんを最中の皮で包んだお菓子です。

 北東北に位置する青森や秋田で,南国の果物であるバナナのお菓子が人々に好まれ,長年愛されているのはなぜか,秋田と青森のバナナ最中を御紹介しながら,その謎を解明したいと思います。


煉屋菓子舗の「煉屋バナナ」・「煉屋ミニバナナ」

 秋田市の「あきた県産品プラザ」で,「煉屋菓子舗(ねりやかしほ)」の「煉屋バナナ」と「煉屋ミニバナナ」を購入しました。

(「煉屋バナナ」・「煉屋ミニバナナ」(包装))
Photo

 写真の上側がレギュラーサイズの「煉屋バナナ」,下側がミニサイズの「煉屋ミニバナナ」です。

 レギュラーサイズは,バナナの実物大を意識してか,かなり大きいです。

(煉屋菓子舗「煉屋バナナ」・「煉屋ミニバナナ」)
Photo_2

 最中の皮に「煉屋バナナ」と刻印されています。

 そしてバナナ風味のあんが包まれています。

 あんは白あんをバナナ風味にし,バナナをイメージする黄色に仕上げられています。

 あんのバナナ風味がとても強く,ねっとりとして,口に含むととろけるような食感もあるので,生のバナナそのものをいただいているような感覚になりました。

 やわらかくふんわりした仕上がりの最中と,バナナそっくりの香り・食感がするバナナあんが見事に調和した一品です。


旭松堂の「バナナ最中」

 青森のバナナ最中を求めて,青森県弘前市の「旭松堂(きょくしょうどう)」を訪問しました。

(旭松堂店舗)
Photo_3

 老舗の和菓子店という感じですが,「エンゼルケーキ」と呼ばれる白いバタークリームケーキなど,洋菓子も販売されています。

(旭松堂「バナナ最中」(包装・しおり))
Photo_4

 旭松堂のバナナ最中です。

 大きさは上品な小ぶりのサイズで,秋田の「煉屋ミニバナナ」に近いです。

 箱に入っていたしおり(写真上側)には,「夢菓子」と「む」という文字が書かれています。

 「ゆめがし」ではなく「むがし」と読むのか,と思いましたが,このしおりを眺めていて,ふと気付きました。

 しおりの上から順に「夢菓子(むかし) なつかし バナナ最中」と読めばよいのですね!

 しおりの裏には,「バナナ最中 古都弘前.....昭和のはじめ,バナナという果物を食べた人は少なく 初代,万次郎が上京の際 高価で芳香な果物を食し後に,菓子で模したのがはじまりです....。」
と説明書きがありました。

(旭松堂「バナナ最中」)
Photo_5

 最中の皮には「バナナ」と刻印されています。

 中のあんは,白く上品なバナナ風味の白あんです。

 あんのバナナ風味が強く,とてもきめ細やかな仕上がりで,しっとりととろけるような食感もあります。

 香ばしくしっかり焼き上げられた最中の皮と一緒に食べることにより,バナナあんのとろけるような食感が強調され,生のバナナそのものを包んだ最中をいただいているような感覚になりました。


バナナ最中の一番の特徴とは

 当初,私がバナナ最中に抱いていたイメージは,「バナナカステラの中に入っているバナナ風味の白あん(バナナあん)を最中の皮で包んだお菓子」というものでした。

 バナナ最中を実際にいただいてみて,そのイメージに近いとは思いましたが,予想外の驚きもありました。

 バナナあんの食感です。

 バナナ最中のあんは,バナナ風味が強いだけでなく,とてもきめ細やかでねっとりとしているので,生のバナナをいただいているような風味や食感が楽しめるのです。

 これがバナナ最中の一番の特徴だと思います。


日本独自のパン・洋菓子の特徴とバナナ最中

 このように,バナナ最中は本物のバナナと風味や食感がそっくりに作られているのが特徴です。

 南国の果物であるバナナが高価で入手困難だった昭和初期,青森や秋田でもバナナの風味・食感に似た手頃なお菓子をと津軽の菓子職人により考案されたのがバナナ最中なのです。
(もっとも,現代ではバナナ最中1本より本物のバナナ1本の方が安いのですが…。)

 私はこうしてバナナ最中についてまとめているうちに,ふとレモンケーキのことが頭に浮かびました。

 私はレモンケーキについてまとめた際,昔から幅広い層に支持を得ている日本独自のパン・洋菓子には,

(1)果物とパンまたは焼菓子という組み合わせが多い。
(2)饅頭にヒントを得たあんパンなど,どこか和菓子の要素も取り入れている。
(3)昔はまだ珍しかった果物を加えたり,香り付けとして用いたりすることで,西洋の趣を持たせている。

という特徴が見出せ,そうした考えから生まれた菓子の1つがレモンケーキではないかとまとめました。

 この特徴は,青森や秋田で昔から支持されているバナナ最中にもそのまま当てはめることができます。

 バナナ最中の場合は,(1)果物(バナナ)と焼菓子(最中の皮)の組み合わせで,(2)最中という和菓子の要素を取り入れ,(3)昔はまだ珍しかった果物(バナナ)を白あんの香り付けとして用いている,と説明できるからです。

 ちなみにこの発想は,バナナカステラ,メロンパン,パインパンなどにも当てはまると思います。

 最近のお菓子では,東京土産の1つとなっている「東京ばな奈」もこうした特徴をうまくとらえたお菓子だと言えるでしょう。

 それに青森や秋田と同様,東京だってバナナの産地ではありませんよね(笑)。


青森・秋田でバナナ最中が好まれる理由

 このように考えると,場所は違えど,バナナ最中はレモンケーキと同じ発想から考案されたお菓子で,だからこそ今も昔も幅広い層から好まれているのだと説明できます。

 青森・秋田のバナナ最中は,遠い南国の果物であるバナナへの強い憧れが原動力となり,当時身近な和菓子であった最中にヒントを得て,白あんの香り付けや食感を本物のバナナそっくりに仕上げることで,多くの人に支持を得て,今も愛され続けている郷土菓子なのです。


<関連サイト>
 「煉屋菓子舗」(秋田県大館市泉町4-3)
 「旭松堂」(青森県弘前市本町102)

<関連記事>
 「広島のレモン菓子・レモンケーキ1 -和菓子から生まれた日本独自の洋菓子-

2018年4月 2日 (月)

秋田の食文化探訪 -がっこ・なた漬け・きりたんぽ鍋・くじらかやき-

 岩手県盛岡市から秋田新幹線こまちを利用して秋田県秋田市を訪問しました。

(秋田駅に停車する秋田新幹線こまち)
Photo

 秋田駅に停車する秋田新幹線こまちです。

 写真右奥には,秋田支社色のピンク色のラインが入った奥羽本線701系電車も見えます。

 新幹線と在来線が同じ駅のホームを利用する様子は,とても興味深いものがあります。

(JR東日本「行くぜ,東北。」キャンペーンのぼり旗)
Photo_2

 秋田駅構内に設置されていたJR東日本「行くぜ,東北。」キャンペーンののぼり旗が私を迎えてくれました。

 広島から「来たぜ,東北。」

 秋田駅から秋田市の繁華街「川反(かわばた)通り」沿いにある郷土料理店へ行き,秋田の郷土料理を堪能することとしました。


がっこ

(がっこ盛合せ)
Photo_4

 「がっこ」(漬物)の盛合せです。

 写真左上から時計回りに,ピンク色の「あねっこ漬け」,「いぶりがっこ」,器に盛られた「やたら漬け」,皿の右下へ回って「人参漬け」,「さっと干し大根(柿漬け)」,「いぶりがっこチーズのせ」で,計6種類のがっこ盛合せです。

 「あねっこ漬け」は,きゅうりや大根などの漬物を刻み,梅酢で色をつけたもち米と混ぜ合わせた漬物で,その見た目や食感が初々しい娘さんを想像させることから名付けられた漬物です。

 「いぶりがっこ」は,大根をいったん燻(いぶ)し,その燻した野菜を米ぬかで漬けこんだ漬物です。

 秋田では漬物のことを「がっこ」と呼びますが,この言い方は「香の物(=漬物)」を意味する「こうこ」や,「雅香」に由来するようです(その他諸説あります)。

 大根を薫製にする理由ついては,生のままだと大根が辛いためとか,漬物にする大根が寒さで凍ってしまうのを防ぐためとか,囲炉裏の上でいったん薫製にすると美味しかったためといったことがあるようです。

 「やたら漬け」は,ありあわせの野菜を「やたら」めったら塩漬けし,味噌や醤油で調味した漬物です。

 私は山形市を訪問した時にいただいた「丸八やたら漬」のやたら漬けを思い出しました。
 いぶりがっこと同様,生活の知恵から生み出した漬物と言えるでしょう。

 「人参漬け」は,人参版のいぶりがっこです。

 「さっと干し大根(柿漬け)」は,さっと軽く干した大根に柿を加えて漬けたもので,柿の上品な風味がする漬物です。

 「いぶりがっこチーズのせ」は,いぶりがっこにチーズをのせたもので,薫製とチーズの相性の良さを生かした漬物です。


なた漬け

 秋田の漬物「なた(鉈)漬け」です。

(なた漬け)
Photo

 大根を「なた」(包丁)で切って麹(甘酒)に漬けた漬物です。

 米麹のほんのりとした甘味が感じられる漬物で,べったら漬けとよく似ています。

 私はこの「なた漬け」を味わって,石川の「かぶら寿司」を思い出しました。

 「かぶら寿司」は大根ではなく蕪(かぶ)をブリや人参とともに麹で漬けた料理ですが,麹とともに漬け込み,麹と一緒に食べるという意味で共通していると思いました。

 漬物(がっこ)だけでもたくさんの種類があり,食べ応え十分でした。


きりたんぽ鍋

 秋田を代表する郷土料理と言えば「きりたんぽ鍋」が挙げられるでしょう。

 きりたんぽ鍋を注文すると,1人だったこともあり,お椀で提供していただきました。

(きりたんぽ鍋(きりたんぽとせり))
Photo_5

 「きりたんぽ」の語源は,粗くつぶしたご飯を棒に巻き付けて焼いた「たんぽ」を切って鍋に入れたことに由来します。

 今回のきりたんぽ鍋は,このきりたんぽのほかに,比内地鶏,舞茸,白ねぎ,糸こんにゃく,せりなどが入った醤油仕立ての鍋に仕上げられていました。

 お椀の中の緑色の野菜が「せり」で,お椀の右下部分に見えるもやしのような食材が,せりの根です。

 せりの根まで食べられているのかととても興味を持ちました。

 せりの根をいただいてみると,シャキシャキした食感で,醤油仕立てのだし汁とよく合いました。

 きりたんぽも,ご飯を焼いた香ばしさと鍋のだし汁をたっぷり吸ったもちもち感がありました。

 全て食べ終え,お腹が一杯になったところへ,2椀目のきりたんぽ鍋が提供されました。

(きりたんぽ鍋(きりたんぽと比内地鶏))
Photo_6

 一瞬「えっ?」と思い,お店の方に伺うと,1つの椀にきりたんぽを2つ入れており,2椀でたんぽ1本分(きりたんぽ4つ分)になるからだそうです。

 具材は1椀目と一緒です。手前に比内地鶏の肉やもつ(内臓)も見えます。もつも一緒に煮込まれているので,良いだしが出ていました。


くじらかやき

 ここまででかなりお腹一杯になったのですが,最後にどうしても味わってみたかった秋田の郷土料理を注文しました。

 「くじらかやき」という料理です。

 こちらの店に来る途中,川反通りの料理店を眺めながらを歩いていると,「くじらかやき」と記載されたお品書きがやたらと目に付きました。

 鯨料理なのだろうとは想像はできますが,なぜ秋田で鯨が食べられているのか,鯨と言えば山口の下関や仙崎,和歌山の太地など限られた地域しか頭に浮かばない私には不思議でした。

 そこでこの「くじらかやき」を味わってみることとしました。

(くじらかやき)
Photo_7

 「くじらかやき」は,ナスと塩クジラを煮込んだ味噌仕立ての料理です。

 具を取り皿に盛ってみました。

(くじらかやき(具材))
Photo_8

 ナスも塩クジラも拍子木切り(細長い棒切り)に揃えられています。

 塩クジラは皮と皮下脂肪の部位が使われています。

 ナスと塩クジラのみ,味付けは味噌というシンプルな料理です。

 鯨は皮下脂肪の塊なので,味噌の汁にあぶらがかなり溶け出しています。

 ナスは塩クジラ(脂肪)との相性が良く,交互に美味しくいただきました。

 この「くじらかやき」と呼ばれる郷土料理について,店主さんから詳しくお話を伺うことができました。

 お話によると「くじらかやき」は,

(1)かつて秋田県男鹿市では鯨がたくさん捕獲できたため,捕鯨業が栄えた。

(2)鯨の売り上げで地元はうるおい,後に「くじら学校」と呼ばれる校舎まで新築された。(現在の秋田県男鹿市立船川第一小学校)

(3)捕鯨は出稼ぎの一つとなり,捕鯨に携わった人々を通じて,鯨の食文化も広がっていった。

(4)そうした鯨料理の1つが「くじらかやき」。

(5)「くじらかやき」は,「鯨貝焼き」が語源で,もともとは貝(ホタテ貝など)を鍋代わりにし,鯨とナスを煮込んで作られた。

(6)ナスを入れることからもわかるように,これは夏の料理。夏の重労働を克服するため,鯨の脂肪や塩分を摂取してスタミナをつける意味もあった。

(7)ナスの代わりに「ミズ」と呼ばれる山菜が入れられることもある。

 とのことでした。

 男鹿半島にも立派な鯨の食文化があったのですね。

 ちなみに,秋田には「くじらかやき」と似た「なんこかやき(なんこ鍋)」と呼ばれる料理もあります。

 「なんこ」とは「馬肉」のことで,干支で南(南向(なんこう))は「午(馬)」があてられることに由来しています。

 つまり「なんこかやき(なんこ鍋)」とは,馬脂を溶かして馬肉を炒め,野菜とともに味噌で煮た鍋のことなのですが,その発想や調理法は「くじらかやき」とよく似ていることは注目に値します。

 秋田の食文化は奥が深く,興味が尽きません。


 今回訪問した秋田の郷土料理店「お多福」では,店主さんや板前さんから,この「くじらかやき」のお話をはじめとして,秋田の食文化や伝統文化について多くのことを教えていただきました。

 カウンターでお店の方と楽しくお話ししながらいただいた秋田の郷土料理。

 秋田の人のあたたかさに触れることができ,思い出深い食事となりました。


<関連サイト>
 「お多福」(秋田市大町4丁目2番25号)
 「丸八やたら漬」(山形市の漬物・郷土料理店)
 「なた漬け」(お宝!日本の「郷土」食)「農林水産省広報誌「aff(あふ)」2011年4月号」」

<関連記事>
 「山形の食文化の特徴2 -芋煮,納豆汁,ひょう干し煮,あさつきの酢味噌和え,そば-」(「丸八やたら漬」の食事処「香味庵まるはち」でいただいた郷土料理を紹介しています)
 「鯨の食文化2 -下関の鯨料理-」(鯨料理(各部位)を紹介しています)

より以前の記事一覧

最近のトラックバック

2018年11月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
無料ブログはココログ