日本各地の食文化

2023年5月 7日 (日)

広島の名物・郷土料理7 -G7岸田総理刻印饅頭・吾作饅頭・白みそもみじ・餅ずんだ-

平安堂梅坪の「G7岸田総理刻印饅頭」

 2023年5月19日から21日の3日間,広島市で「G7広島サミット(主要国首脳会議)」が開催されます。

 開催地・広島では,この「G7広島サミット」を盛り上げようと,様々な応援フェアや関連イベントが行われています。

 食の関係で言えば,広島県産食材やお酒のPRイベント,広島県食材を使った料理・スイーツの食事イベント,G7各国(フランス,アメリカ,イギリス,ドイツ,日本,イタリア,カナダ)の料理やスイーツが楽しめるイベントなどが開催されています。

 その1つとして,広島の代表的な和菓子店「平安堂梅坪」から,期間限定で「G7岸田総理刻印饅頭」が販売されています。

 平安堂梅坪へ行き,この饅頭を購入しました。

(G7岸田総理刻印饅頭)
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 2個セットで500円(税込)です。

 G7広島サミットロゴマークと岸田総理の顔が描かれた饅頭です。

 「えっ,本当にこんな名前の饅頭?」

 と思われる方もいらっしゃると思いますが,食品表示の商品名にもちゃんと明記されています。

(食品表示(G7岸田総理刻印饅頭))
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 この饅頭が店舗に山積みされていました。

 広島のお土産として購入する方もいらっしゃると思います。

 G7広島サミットロゴマークの饅頭と岸田総理の饅頭,それぞれ1個ずつ入った組合せが基本ですが,G7広島サミットロゴマークの饅頭が2個入った組合せも販売されていました。

 続いてこの饅頭の中身を確認してみましょう。

 G7広島サミットロゴマークと岸田総理の饅頭,どちらをカットするか…非常に悩ましい問題ですが,私の出した結論は次の写真です。

(G7岸田総理刻印饅頭(中身))
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 岸田総理,申し訳ございません(笑)

 このように薄皮の中には,北海道産小豆で作られた粒あんがぎっしり詰まっていました。

 昔ながらの薄皮で,ほどよい甘さの粒あんを包んだ,まさに日本を象徴する和菓子です。

 この饅頭がG7広島サミットの場で各国首脳に出されたら,「ミスターキシダ!」みたいな感じで盛り上がりそうです(笑)


平安堂梅坪の「吾作饅頭」

 平安堂梅坪を代表する銘菓が「吾作饅頭」です。

(吾作饅頭(包装))
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 包装紙に丸が描かれていますが,これは禅僧・仙厓(せんがい)和尚の「一円相画賛」にある「円相」(丸)に由来するものです。

 仙厓和尚は筆で饅頭のような丸を描き,「これ食ふて茶のめ」と記されています。

 筆できれいな丸を描くことは,実はとても難しい技のようです。

 ちなみにこの饅頭は,広島を描いた漫画「ましろ日(ひ)」(原作:香川まさひと,作画:若狭星 小学館)でも登場します。

(吾作饅頭)
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 クルミがのせられた小豆あんの饅頭です。

(吾作饅頭(中身))
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 中のあんこは,G7岸田総理刻印饅頭と同じ粒あんです。

 クルミの香ばしさとコクが嬉しい広島の銘菓です。

 ちなみに,吾作饅頭の「吾作」は,「見た目は不細工だけれども,こころは優しい吾作さん」に似ていることにちなんでおられるのだとか。

 この饅頭がG7広島サミットの場で各国首脳に出されたら,「ミスターゴサク!」みたいな感じで盛り上がりそうです(笑)


やまだ屋の「白みそもみじ」

 広島駅や広島市内のスーパーマーケットでちょっと珍しいもみじ饅頭を見つけました。

 もみじ饅頭の老舗「やまだ屋」と味噌の老舗「新庄みそ」がコラボレーションしたもみじ饅頭「白みそもみじ」です。

(白みそもみじ(包装))
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 新庄みその創業100周年を記念して作られたもみじ饅頭で,2023年4月27日から4万個限定で販売されています。

 「新庄しんちゃん」がかわいいですね。

 富山「日本海みそ」の「雪ちゃん」や,新潟「田中屋本店」の「あかねちゃん」などもそうですが,田舎のほのぼのとした子供のキャラクターを見かけると,放っておけないのです(笑)

 開封しました。

(白みそもみじ)
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 形は一般的なもみじ饅頭と同じです。

 中身を見てみましょう。

(白みそもみじ(中身))
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 カットした瞬間から,白みその良い香りがしました。

 いんげん豆をベースに,「新庄みそ」の白みそを混ぜたあんこです。

 こうじのやさしい甘味と味噌の芳醇な香りが楽しめる,甘じょっぱい白みそあんです。

 そしてこの白みそあんは,もみじ饅頭のカステラ生地ともよく合います。

 石川・能登などに「みそまんじゅう」がありますが,この饅頭と風味がよく似ています。

 ちなみに,宮島の老舗もみじ饅頭店「紅葉堂」では,呉の老舗みそメーカー「ますやみそ」とコラボレーションした「揚げもみじ 白みそあん」が販売されているようで,こちらも要チェックです。


やまだ屋の「餅ずんだ」

 同じ「やまだ屋」で,「餅ずんだ」という和菓子が期間限定で販売されています。

(餅ずんだ(包装))
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 「えっ,東北のずんだ餅のお菓子?」
 「広島のお菓子としては,随分はずんだ発想のお菓子だな」

 店頭に堂々とたたずんだ姿は,私の目を釘付けにしました。

 開封してみると…もみじ饅頭の形ではなく,四角でした。

(餅ずんだ)
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 カットして中身を確かめてみましょう。

(餅ずんだ(中身))
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 枝豆を細かくすりつぶして甘みを加えた「ずんだ」の鮮やかな黄緑色です。

 もっちりした生地にさわやかなずんだが包まれていて,まさに「ずんだ餅」の風味・食感でした。

 「やまだ屋」の看板商品「桐葉菓(とうようか)」や,京都「京菓子司 満月」の「阿闍梨餅(あじゃりもち)」,福岡から全国展開されている「もち吉」の「えん餅」などと同じ系統の,もっちりとした生地が特長の饅頭です。

 ずんだあんを餅生地の中に詰めるという逆転の発想で,ネーミングも「ずんだ餅」をひっくり返して「餅ずんだ」。

 ずんだ餅は仙台など東北地方を中心としたお菓子で,西日本では珍しいのですが,「餅ずんだ」は,その美味しさや魅力に着目し,餅生地製造のノウハウを生かして誕生したお菓子だと言えるでしょう。


<関連サイト>
 「平安堂梅坪」(福屋八丁堀本店 広島市中区胡町6-26ほか)
 「G7広島サミット 公式サイト」(外務省)
 「やまだ屋」(宮島本店 広島県廿日市市宮島町835-1ほか)
 「新庄みそ」(広島市西区三篠3丁目12-23)

2023年4月30日 (日)

東京・銀座「資生堂パーラー」のレストラン -ポタージュ・サラダ・ミートクロケット・ビーフシチュー・カスタードプリン-

東京・銀座の資生堂パーラー

 東京・銀座の資生堂パーラーは,1902(明治35)年に銀座の街に開店した,120年以上の歴史を持つカフェ・洋食レストランです。

 資生堂薬局の一角で製造されたソーダ水やアイスクリームが販売され,もの珍しさやモダンなイメージもあって,たちまち人気を博したようです。

 やがて,谷崎潤一郎や夏目漱石といった文化人が集うサロンにもなりました。

 資生堂パーラーは,日本の洋食レストラン・カフェの先駆者であり,その伝統を今に受け継いでおられる日本の代表的なお店の1つです。

(東京銀座資生堂ビル)
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 銀座八丁目にある東京銀座資生堂ビルです。

(資生堂パーラー店舗(花椿通り))
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 こちらは銀座「花椿(はなつばき)通り」と資生堂パーラーです。

 「花椿通り」の名称は,出雲から寄贈された出雲椿が街路樹として植えられ,通りのシンボルとなったことに由来します。

 そして「資生堂」のシンボルマーク「花椿」とのかかわりも深いようです。

 そんな資生堂パーラーでいただいた料理・デザートをいくつか御紹介します。


カブのポタージュとサラダ

 資生堂パーラーでランチをいただきました。

 1階の受付で名前を告げると,1組ずつエレベーターでレストランへ御案内いただけます。

 私は4階のレストランに御案内いただきました。

 テーブル席に着き,注文を済ませると,お水が用意されました。

(資生堂パーラーオリジナルグラスに注がれた水)
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 よく見ると,グラスやテーブルクロスに資生堂の文字や花椿のマークが施されており,楽しむことができます。

 今回はアラカルトで注文しました。

 また,本日のスープ,サラダ,コーヒーが付くセットメニューも注文しました。

(カブのポタージュとサラダ)
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 セットメニューのスープとサラダです

 スープはカブのポタージュでした。

 レタスやトマトが盛り付けられたサラダは,和風ドレッシングかフレンチドレッシングかを選ぶことができ,選んだドレッシングをお店の方が目の前でたっぷりとかけてくださいます。


ミートクロケット

 ポタージュとサラダを味わったところで,一皿目のメイン料理が運ばれていました。

 「ミートクロケット」(ミートコロッケ)です。

(ミートクロケット)
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 俵型のコロッケが2つ,その上に素揚げのパセリがのせられています。

 そして赤いトマトソースが添えられています。

 総菜として売られている一般的なコロッケと比べると,かなり高価なのですが,その価値を探るべく,ミートクロケットにナイフを入れました。

(ミートクロケット(中身))
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 こちらがミートクロケットの中身です。

 ジャガイモは使われておらず,ベシャメルソースの中に,やわらかい仔牛肉とハムの角切りがゴロゴロと入っていました。

 酸味の効いたトマトソースが,ベシャメルソースのコロッケとよく合いました。

 確かに,これは納得の一品です。

 そして忘れてはならないのが,サクサクに揚げられたパセリです。

 厨房では「フライ・パセリ」と呼ばれているようです。

 パセリは180~190℃の油でシュワシュワと約20秒ほど揚げ,引き上げてすぐ塩が振られます。

 パセリを油で揚げると緑の色素が出るので,パセリ専用の小鍋と揚げ油が使われているそうです。

 このエレガントに仕上げられたパセリは,作家・エッセイストの平松洋子さんいわく「銀座八丁目の魔法」。

 一皿に込められたシェフの熱い思いが感じられました。


ビーフシチュー

 続いて「ビーフシチュー」をいただきました。

(ビーフシチュー)
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 ビーフシチューは陶器の壺に入れられ,卓上コンロの火にかけたアツアツの状態で運ばれます。

 具は和牛三枚肉を中心に,玉ねぎ,人参,ブロッコリーなどで構成されています。

 デミグラスソースで煮込まれた牛肉のかたまりがゴロゴロと入っており,それぞれの野菜の火加減も絶妙で,とても贅沢な気分を味わえました。

(ビーフシチューとライス)
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 続いて,セットのライスと一緒にいただきました。

 ソースポットで供されるカレーと同様に,ライス(皿)にシチューをかけるのが一般的な食べ方だと思います。

(ビーフシチューライス(シチューがけ))
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 (山崎ヒロキ・近藤タカシ「銀座レッスン 1」集英社 p13の一部を引用)

 こんな感じで。

 私は漫画の主人公のように豪快に皿をひっくり返してドボドボ注がず,スプーンでライスの上にかけましたが(笑)

 こうした食べ方のほかに,漫画「銀座レッスン」では,逆にビーフシチューの壺の中にライスを入れて混ぜるという大胆な方法も紹介されています。

(ビーフシチューライス(ライス混ぜ))
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 (山崎ヒロキ・近藤タカシ「銀座レッスン 1」集英社 p15の一部を引用)

 こうすると,最後のライスの1粒までソースが浸み込んで美味しいようです。

 そこで,少々お行儀が悪いのですが,私もこの方法でビーフシチューライスをいただいてみました。

(ビーフシチューライス(ライスを混ぜた様子))
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 ビーフシチューのソースがご飯にしっかり浸み込んで,最後の一口まで美味しくいただけました。


カスタードプリン・焼菓子(プチフール)・コーヒー

 メインを2皿と欲張ったので,お腹がいっぱいになりました。

 これでコーヒーで締めくくり…と思っていると,お店の方から「デザートはいかがでしょうか」とデザートのメニュー表を持ってきていただけました。

 カフェメニューは別フロアの「サロン・ド・カフェ」でのみ味わえるものと思っていたのですが,この時初めてレストランフロアでもいただけることを知りました。

 周りを見渡すと,確かにストロベリーパフェなどのデザートを召し上がっている方が何人かおられました。

 そこで私はカスタードプリンを注文しました。

(カスタードプリン)
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 ガラスの高台の皿に,スタイルの良いカスタードプリンがのせられ,カラメルと生クリームが添えられています。

(カスタードプリンと焼菓子(プチフール))
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 焼菓子(プチフール)とともにいただきました。

 卵黄の味が濃く,しっかりとしたボディのプリンで,上品な甘さのカラメルとよく合っていました。

(コーヒー)
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 最後にコーヒーをいただきながら,ゆったりと食後のひとときを楽しみました。


まとめ

 今回,私は食べたいものをアラカルトで注文したのですが,その結果,ランチコースよりも値段が高くなってしまいました(笑)

 でも,その支払った額に見合う満足感を得ることができました。

 東京・銀座には,高い額を払うだけの価値があるお店がたくさんあります。

(銀座で価値のあるお店)
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 (山崎ヒロキ・近藤タカシ「銀座レッスン 1」集英社 p7の一部を引用)

 その価値の本質を見極めるには,知識と経験が求められますが,たとえ不慣れな場合でも,直感的に「一線を越えた何かがある」ことは理解できますし,こうした経験を積み重ねることによって本当の価値がわかるようになります。

 また,高いお金を払えば本気度やそこから得る吸収力が高まることも確かです。

 支払いの際,値段の高低にかかわらず「気持ち良くお金を使えた」と思ったなら,そのお店の商品・サービスは自分に合っていた(合っている)と言えるでしょう。

 そんなお店に出会えるといいですね。


<関連サイト>
 「資生堂パーラー」(東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル)
 「資生堂(社名の由来・花椿マーク)」(株式会社資生堂)
 「銀座花椿通りとは」(銀座花椿通り会)

<関連記事>
 「山陰本線の観光列車「あめつち」の旅(倉吉駅-出雲市駅編)-あめつち御膳・大山みどり・鳥取二十世紀梨ゼリー感動です-」(「出雲の椿と銀座・資生堂」)

<参考文献>
 原作:山崎ヒロキ 漫画:近藤タカシ「銀座レッスン 1」集英社
 「花椿(2022年9月号)」(資生堂)
 平松洋子「銀座のパセリ」(「dancyu」2022年12月号)

2023年3月19日 (日)

ガスビル食堂で昼食を -特製ガスビルカレー(ビーフカレー)・ムーサカ-

大阪ガスビルディング

 2022年11月に大阪・御堂筋を訪問しました。

 夜の御堂筋は,カラフルなイルミネーションで彩られていました。

(御堂筋イルミネーション・道修町交差点付近)
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 大阪メトロ・御堂筋線の淀屋橋駅を降りてしばらく南へ歩くと,大阪ガスの本社「大阪ガスビルディング」が見えてきます。

(大阪ガスビルディング(大阪ガス本社)・夜景)
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 大阪ガスビルディングは日本有数の美しい建築物として有名で,テレビ「名建築で昼食を -大阪編-」でも紹介されました。

 梅田に戻り,街中を歩いていると,新梅田食堂街で面白い標語を見つけました。

(知らんけど 言うたらあかん 火の始末)
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 「知らんけど」言うたらあかん 火の始末

 その後,大阪市中央区の広報誌「広報ちゅうおう」を読んでみると,この標語は令和4年度の大阪市防火標語であることがわかりました。

 この日は大阪・梅田のホテルに泊まり,翌日お昼に再び大阪ガスビルディングを訪問しました。

(大阪ガスビルディング(大阪ガス本社)・御堂筋側)
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 昼間の眺めも美しく,御堂筋の代表的な建物の1つとなっています。

 御堂筋の歩道でこのビルを眺めていると,どこからともなく年配の男性が私に寄って来られ,大阪弁で「地下鉄の駅はどっち?」と尋ねられました。

 広島から来た私はちょっと自信がなかったのですが,北を指して「あっちです」とお答えしました。

 「知らんけど…」

 この時初めて「知らんけど」という言葉は,こういう使い方をすればよいのだと理解しました(笑)

 お教えした年配の男性も全然違う方向へ歩いて行きましたが…(笑)

 気持ちを取り直し,大阪ガスビルディング周辺を散策しました。

(大阪ガスビルディング(大阪ガス本社)・西側)
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 ビルのてっぺんに親しみのある大阪ガスのマークがありました。

(大阪ガス株式会社と登録有形文化財の表札)
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 「登録有形文化財 この建造物は貴重な国民的財産です 文化庁」

 大阪ガスの重厚な表札とともに,登録有形文化財の表札がありました。


ガスビル食堂

 予約の時間となったので,ガスビル食堂へ向かいました。

 ガスビル食堂は大阪ガスビルディングの8階にありますが,御堂筋沿いの正面入口からではなく,別にある会社の玄関から入ります。

(大阪ガスビルディング1階・ガスビル食堂入口)
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 入口にガスビル食堂の案内看板がありました。

 特別な感じがして,少し緊張しました。

 そしてエレベーターもガスビル食堂専用エレベーターを利用します。

(ガスビル食堂専用エレベーター)
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(エレベーターボタン)
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 8階のガスビル食堂まで直通の専用エレベーターです。

 8階に着くと,テレビ番組「名建築で昼食を」の紹介ポスターが展示されていました。

(テレビ番組「名建築で昼食を」の紹介ポスター)
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 「名建築で昼食を 大阪編」の第4話で大阪ガスビルディングとガスビル食堂が紹介されています。

 レストラン入口で名前をお伝えすると,テーブル席へ御案内いただけました。

 店内は見晴らしの良い大きな窓に沿って,かなりゆったりめにテーブル席が配置されていました。

 私は1人だったにもかかわらず,4人用のテーブル席に御案内いただきました。

(店内からの眺め)
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 テーブル席から眺めた大阪の街(御堂筋)の様子です。

 こんな素晴らしい景色を見ながら食事できるとは,もうそれだけで幸せです。


特製ガスビルカレー・ビーフカレー

 ガスビル食堂の看板メニューの1つに「特製ガスビルカレー」があります。

 そこで私はビーフカレーを注文しました。

 ウェイター・ウェイトレスの方がお客さんの目の前でライスを皿に盛り付けてくださるのですが,その際,お客さんがストップと意思表示するまでライスを盛り続けていただけます。

 これはガスビル食堂ならではのサービスです。

 やがてビーフカレーとライスがテーブルに運ばれてきたので,私はどこでストップと言おうかとソワソワしていました。

 すると…私の姿を御覧になったウェイトレスさんが「ライス,全部盛っておきましょうね」と一気にライスを山盛りにしてくださいました。

 嬉しいけど,食べられるかなぁ(笑)

(特製ガスビルカレー・ビーフカレー)
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 こちらが特製ガスビルカレー(ビーフカレー)です。

 ライスと漬物(らっきょう・福神漬け・セロリのピクルス)がセットになっています。

 ちなみに,ガスビル食堂には「ハートセロリ」というシンプルな生のセロリを味わえるメニューもあります。

 ソースポットには牛肉の大きなかたまりがゴロゴロ入っていました。

 ソースポットからカレーと牛肉をすくい,ライスに盛り付けてみました。

(特製ガスビルカレー・ビーフカレー(盛り付け))
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 ライスの標高が高く,カレールーが断崖絶壁を滝のように流れ落ちました(笑)

 いただきました。

 じっくり煮込まれた上品なホテルカレーでした。

 そして特筆すべきは牛肉です。

 肉がとてもやわらかく,口の中で嚙みしめるたびに,霜降り肉の旨味と甘味がジュワッとにじみ出てきました。

(ビーフカレーの牛肉)
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 上質な肉が使われており,ガスビル食堂(大阪ガス)のプライドを感じる一品でした。


ムーサカ

 続いて「ムーサカ」をいただきました。

 「ムーサカ」はギリシャ料理を日本人の味覚に合うようアレンジした料理で,こちらもガスビル食堂の看板メニューの1つです。

(ムーサカ)
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 色とりどりの野菜が盛り付けられ,それを囲うようにマッシュポテトが添えられています。

 まるでデコレーションケーキのような美しさです。

(ムーサカ(拡大))
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 牛ヒレ肉と玉ねぎのデミグラスソースの上に,人参,ナス,ピーマン,トマト,カリフラワー,マッシュルームといった野菜が彩り豊かに盛り付けられています。

 その周囲には,デコレーションケーキの生クリームのように,マッシュポテトが美しく飾り付けられています。

 絶妙な火加減の野菜を,じっくり煮込まれた濃厚なデミグラスソースでいただきました。

 デミグラスソースはマッシュポテトを添えていただくことにより,コクとまろやかさが増し,また違った美味しさを楽しめました。

 また,このデミグラスソースをビーフカレーのライスとも合わせてみたのですが,「うんうん」とうなずく美味しさでした。


まとめ

 ライス大盛りのビーフカレーとボリューム満点のムーサカをいただき,お腹も幸せも十分満たされました。

 大阪ガスと言えば,私が京都に住んでいた頃によく放送されていた大阪ガスのテレビCMを思い出します。

(大阪ガス「DAY BY DAY きっといい明日」)

(YouTube ohsimar3「DAY BY DAY きっといい明日」)

 関西(出身)の方は御存知の方も多いのではないでしょうか。

 ガスビル食堂で,クオリティの高い料理をいただくことが出来ました。

 ガスビル食堂で食事をすれば,幸せで満たされ,きっといい明日になること間違いなしです。

 知らんけど(笑)


<関連サイト>
 「ガスビル食堂物語」(大阪ガス株式会社・大阪市中央区平野町四丁目1番2号)
 「名建築で昼食を -大阪編-」(テレビ大阪)

<関連記事>
 「ギリシャ料理の特徴と主な料理1 -サガナキ・ホリアティキ・スブラキ・ムサカ・マスティクア-

<参考文献>
 治島カロ「おおきに!喫茶メモリーズ」少年画報社

2023年2月26日 (日)

広島の食文化の特徴について -広島市郷土資料館企画展「実は広島~こんなご縁がありました 食べもの編」から学ぶ-

広島市郷土資料館企画展「実は広島~こんなご縁がありました 食べもの編」

 広島市南区の広島市郷土資料館で,企画展「実は広島~こんなご縁がありました 食べもの編」(2022年12月10日~2023年2月26日)が開催されました。

(企画展「実は広島~こんなご縁がありました 食べもの編」チラシ(表面))
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 企画展「実は広島~こんなご縁がありました 食べもの編」チラシの一部を引用

 広島と身近な食べもののつながりをテーマにした企画展は,なかなか興味深いものがあります。

(企画展「実は広島~こんなご縁がありました 食べもの編」チラシ(裏面))
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 企画展「実は広島~こんなご縁がありました 食べもの編」チラシの一部を加工・引用

 「誰もが知っている,あのスナック菓子 ルーツは広島にあった!」

 「ジャムやマーマレードときいて思い出すあのブランド 創業以来ずっと広島を本拠にしている!」

 「お好み焼きに欠かせないあの食品 ほとんど広島で作られている!」

 「広島湾岸ではもうほぼ見ることができなくなったけれど,かつてはかなりの規模でつくられていた!」

 その謎を解くべく,広島市郷土資料館を訪問しました。

(広島市郷土資料館)
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 レンガ造りの建物です。

 戦前は「宇品陸軍糧秣支廠(うじなりくぐんりょうまつししょう)」の缶詰工場だった建物を改修し,郷土資料館として活用されています。

 「糧秣」の「糧」は兵士の食料(食糧),「秣」は軍馬のエサという意味で,糧秣支廠ではこれらを食べ物を調達・製造し,軍隊に補給していました。

 広島市郷土資料館は,もともと食べ物と深いご縁があると言えます。


宇品陸軍糧秣支廠とカルビー株式会社

 スナック菓子の大手企業「カルビー株式会社」は,現在東京に本社がありますが,発祥の地は広島です。

 広島県廿日市市には大きなカルビーの工場があり,馬鈴薯運搬船,その名も「ポテト丸」という船が北海道・十勝から広島港へ原料のジャガイモを運んできています。

 創業者の松尾孝さんは,当時未利用だった米ぬかの中から胚芽を取り出して製粉し,健康食品を作る研究を始めますが,その中で胚芽にはビタミンB1が多く含まれていること,カルシウムを加えればさらに良い健康食品が作れることがわかりました。

 戦後,宇品陸軍糧秣支廠で製粉業を営んでいた松岡政一さんと新会社を設立し,イモ菓子やパン,飴の製造をはじめ,のちにキャラメルの製造販売で繫盛することとなりました。

 1949年には「松尾糧食工業株式会社」を立ち上げます。(カルビー株式会社の創立)

 その後,1955年にカルシウムの「カル」,ビタミンB1の「ビー」を合わせた「カルビー」という社名が誕生しました。

(カルビーキャラメル)
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 広島市郷土資料館企画展展示資料の一部

 カルビーのミルクキャラメルとバラキャラには,おまけでカードも付いていたようです。

 やがてキャラメルの販売が低迷し,今度は米の代わりに小麦を使った「あられ」を作り,「かっぱあられ」として販売したところ,かっぱキャラクターの人気も手伝って,一気に人気商品となります。

(カルビー「かっぱあられ」と「かっぱ」シリーズ)
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広島市郷土資料館企画展展示資料の一部

 「黄桜」のかっぱと雰囲気が似ています。

 この「かっぱあられ」のシリーズとして誕生したのが,今も人気のスナック菓子「かっぱえびせん」です。

 カルビー株式会社は広島発祥の企業で,かつては宇品陸軍糧秣支廠の食肉処理場跡地に本社があったのです。


広島の缶詰業とアヲハタ株式会社

 明治に入ると,缶詰の製造技術を学んだ日本人が全国各地で缶詰製造を試みるようになります。


 広島でもそうした動きが起こり,広島は缶詰の食材(中国山地の牛,瀬戸内海の牡蠣,野菜,果実,山の幸(栗・タケノコ・松茸)など)が安価に集積される街であったことから,缶詰業が盛んになります。

(缶詰ラベル(大衆の友・ボイルド松茸・富国煮))
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 広島市郷土資料館企画展展示資料の一部

 「大衆の友」(まめと牛肉の煮物),「ボイルド松茸」,「富国煮」(牛レバーの醤油煮)の缶詰ラベルです。

 「大衆の友」のラベルには「これは まめと牛肉の煮合わせですが づいぶんおいしう御座いますね」という会話が記載されています。

 左から読むのに慣れてない私はつい「友の衆大」,「ドルイボ茸松」などと読んでしまいます(笑)

 広島では特に牛肉の缶詰が多く製造されました。

(缶詰ラベル(ふき・べいか・びわ))
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 広島市郷土資料館企画展展示資料の一部

 「ふき」,「べいか」(瀬戸内海で採れるイカ),「びわ」の缶詰ラベルです。

 私はとっさに「きぬ」,「かいべ」,「わび」と読んでしまいましたが…(笑)

 このように,当時は安価な(今は高価な)広島の食材が缶詰にされ,国内外で販売されたのです。

 こうした缶詰業の発展を一気に高めたのが,戦争による需要の拡大です。

 食品を長期に保存できる缶詰は,軍隊の携帯食として重宝されました。

 戦中,陸軍の第五師団,宇品陸軍糧秣支廠,海軍の呉鎮守府を擁した広島では,缶詰の需要が急速に伸びていったのです。

(空缶・糖度計・防衛食容器)
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 広島市郷土資料館企画展展示資料の一部

 防衛食容器は,戦中,空き缶が不足したことを受けての磁器製の容器です。

 紙製の容器まで作られたようです。

(缶詰工場(肉詰め作業))
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 広島市郷土資料館「陸軍の三廠~宇品線沿線の軍需施設~」p4 の一部を加工・引用

 缶詰工場で女性工員が肉詰めをされている様子です。手作業なのが印象的です。

(缶詰工場(箱詰め作業))
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 広島市郷土資料館「陸軍の三廠~宇品線沿線の軍需施設~」p4 の一部を加工・引用

 こちらは尋常缶詰の箱詰め作業の様子です。

 通常は高さ11.4cmの尋常缶詰が,戦時には容量の少ない高さ5.1cmの缶詰が使われたようです。

 広島市郷土資料館のすぐ近くに,当時の缶詰工場大煙突の基礎が保存されています。

(缶詰工場大煙突の基礎)
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 戦時中は,携帯に優れ,長期保存できることから,軍隊の携行食として缶詰や乾パンが活躍したようです。

(乾パン)
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 現在は災害対策食としても活躍する乾パンです。

 職場でカンパンの話をしていたら「カンパンマン」だと言われました(笑)

 広島の瀬戸内海地域では,みかんやレモンなど柑橘の栽培が盛んです。

 広島県竹原市忠海町でみかんの缶詰を製造し,全国展開されたのが「株式会社旗道園」,現在の「アヲハタ株式会社」です。

(アヲハタ印(ブルーフラッグ))
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 広島市郷土資料館企画展展示資料の一部

 アヲハタのシンボルマークは,イギリスの大学対抗ボートレースの応援旗に由来するといわれています。

(昔の「アヲハタ」ママレードの広告)
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 広島市郷土資料館企画展展示資料の一部

 昔の「アヲハタ」ママレードの広告です。

 朝のパンに,学校のお弁当に,午後のお茶に,とかしておいしい飲み物に…ママレードがいろんなシーンで活躍したことがわかります。

(アヲハタ缶詰再現品)
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 広島市郷土資料館企画展展示資料の一部

 みかん,マンダリンオレンジ,びわ,マスカット,洋梨,黄桃,イチジク,みつ豆,ビーフシチューと,様々な缶詰が販売されています。

 かつては缶詰が主力商品でしたが,現在ではびん詰のジャム・マーマレードが主力商品となっています。

 アヲハタ株式会社の前身となる株式会社旗道園を立ち上げた中島董一郎(なかしま とういちろう)は,留学先のイギリスやアメリカでマーマレードとマヨネーズに出会い,日本での商品化を目指しました。

 その後,彼はマヨネーズを製造する会社として「食品工業株式会社」を設立し,「キューピーマヨネーズ」というブランド名で販売します。

(発売初期のキューピーマヨネーズと発売当時の広告)
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 広島市郷土資料館企画展展示資料の一部

 現在のアヲハタ株式会社とキューピー株式会社には,このようなつながりがあるのです。


イカと広島

 広島のお好み焼には,イカ天(イカ天かす)が入れられます。

 イカ天は,スルメイカをローストし,薄く伸ばして油で揚げた珍味で,スナック菓子やお好み焼のトッピングとして幅広く愛用されています。

(スルメをのばす道具)
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 広島市郷土資料館企画展展示品の一部

(シリンダー・姿フライの金型・姿フライの材料とせんべい)
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 広島市郷土資料館企画展展示品の一部

 イカをプレスするシリンダー,イカの姿に成型する金型,姿フライの材料とせんべいの展示です。

 このイカ天(イカの姿フライ)の発祥地は広島で,全国で流通するイカ天の大多数が呉市や尾道市を中心とした広島県内のメーカーで製造されています。

 広島県のイカの水揚げ量は全国比でわずか0.1%ほどしかないにもかかわらず,イカ加工品の製造量は全国トップクラスとは,これいかに?

 広島とスルメイカのかかわりは,江戸時代の広島藩主・浅野斉賢(なりかた)の娘と,のちの対馬藩主・宗義和(よしなり)との縁組がきっかけで,広島と対馬の間で船による交易が行われるようになったことにさかのぼります。

 この際,広島は「漁師が多種多様な瀬戸内の水産資源を相手に,様々な漁法を習得していたにもかかわらず,漁村・漁船の数に比して漁場が狭かった」,一方の対馬は「周りに豊かな漁場がありながら漁業があまり盛んではなかった」ことから,対馬で広島の漁師がイカ漁などを行うようになり,スルメにして中国へ輸出されるようにもなりました。

 こうした歴史背景から,広島県でのイカ加工品の製造が増えていったのではないかと推測されています。

 一方で,広島は「昆布の佃煮」の生産量も全国トップです。

 広島でスルメイカや昆布の加工品の生産が多い理由として,広島が「西廻海運(北前船)」の寄港地だったことに由来するという説もあります。

 乾燥させたスルメや昆布は,軽くて持ち運びに便利で,傷みにくいというメリットがあることから,北前船の積み荷となり,各地で交易の商品となりました。

 こうした対馬や北前船との交流が,広島のイカ天や昆布加工品の生産に大きく関係していることは間違いありません。

(イカの姿フライ・イカ天の展示)
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 広島市郷土資料館企画展展示品の一部

 館内にイカの姿フライ・イカ天がずらりと展示されていました。

 「ああ,食べたくなってきた…」

(展示品の注意書き)
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 「当館では販売はしておりません。食べたくなったら,販売店へどうぞ。」

 はい,わかりました。

 後日,広島市内のスーパーマーケットへ行くと,たくさんのイカ天商品が販売されており,その圧倒的な商品数・陳列スペースに驚きました。


広島と海苔

 海苔の産地と言えば有明海沿岸が有名ですが,江戸時代後期から明治時代にかけては,江戸湾(下総・品川・大森など)での海苔養殖が盛んで,広島湾も一大生産地でした。

(明治24(1891)年全国の海苔生産順位)
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 明治24(1891)年には,全国で広島が海苔の生産第1位となっています。

(海苔の養殖に使われた道具)
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 広島市郷土資料館蔵

 戦後,工業化に伴い広島湾の埋め立てが進み,広島の海苔養殖は昭和31(1956)年をピークに減少していきますが,味付け海苔を中心とした海苔加工会社は広島に数多くあり,全国に出荷されています。

 最近では,広島から海苔の魅力を広く伝える活動もなされています。

 「広島青苔会(ひろしまあおごけかい)」発行の「わくわく海苔ノート」もその1つです。

(わくわく海苔ノート)
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 イメージキャラクターは「のり姫さま」です。

 「もしかしてノートの色は板海苔と同じ黒?」とノートを開いてみました。

(わくわく海苔ノート(内容))
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 さすがにノートは白い紙でした(笑)

 ノートの下部に「海苔の豆知識」が紹介されたノートです。

 広島には,贈答用,日常用,お土産用と様々な海苔商品があります。


まとめ

 明治以降の広島の食文化には次のような歴史的背景や特徴が大きくかかわっていると言えます。

①貧困で耕地・漁場が狭く,海外を含む県外へと進出・移住せざるを得なかった。

②穏やかな広島湾は,牡蠣や海苔の養殖が盛んになる一方,海軍の拠点ともなった。

③日清・日露戦争で宇品港が海外進出の拠点となって以来,広島は「軍都」として戦争の影響を強く受け,食文化においても,軍需品・捕虜がもたらした食文化・戦後(被爆後)の食糧難・軍用施設を背景に発展したものが多い。

④戦争の影響で製造業が栄え,食品加工産業が発展した。

⑤軍隊の食事がベースとなっているため,ボリュームがある食べ物が多い。

 食の具体例として,①はイカや広島菜,②は牡蠣や海苔,③は缶詰,肉じゃが,バウムクーヘン,ハム・ソーセージ,お好み焼,スナック菓子,④は缶詰やイカ天,⑤はお好み焼やメロンパンなどが該当します。

 こうした観点から広島のご当地グルメ,お土産コーナー,アンテナショップを巡ると,新たな発見があると思います。

<関連サイト>
 「広島市郷土資料館」(広島市南区宇品御幸二丁目6-20)
 「カルビー株式会社」(東京都千代田区丸の内1-8-3)
 「アヲハタ株式会社」(広島県竹原市忠海中町一丁目1-25)
 「広島青苔会」(広島海苔株式会社内事務局)

<関連記事>
 「のりのりそば -広島の生海苔と新潟の布海苔(ふのり)-
 「「ワルのりスナック」から広島弁を学ぶ

<参考文献>
 「陸軍の三廠~宇品線沿線の軍需施設~」広島市郷土資料館
 「廣島缶詰物語」広島市郷土資料館
 シャオヘイ「~お好み焼ラバーのための新教科書~熱狂のお好み焼」ザメディアジョン

2023年1月29日 (日)

大阪の老舗の味を求めて -大阪のおでん・関東煮(鯨すじどて・たこ甘露煮・鯨すじ・さえずり・ころ)と菊壽堂義信の「高麗餅」-

大阪の関東煮(かんとうだき)

 大阪・道頓堀を訪問しました。

(道頓堀・ネオンサイン)
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 いつ訪れても,道頓堀・戎橋(えびすばし)は人でいっぱいです。

 この戎橋から道頓堀筋を東へしばらく歩いたところに,弘化元年(1844年)創業のお店「たこ梅」があります。

 「たこ梅」は「関東煮(かんとうだき)」,いわゆる「おでん」で有名なお店です。

(たこ梅本店(店舗))
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 「日本一古いおでん屋」と言われています。

 こちらのお店で,鯨やたこなど,大阪ならではのおでん(関東煮)をいただきました。

 鯨は流通量が少なくなり,今や高級食材となっていますが,大阪の伝統的なおでんには欠かせない具の1つです。

 まずは鯨の一品料理をいただきました。

(鯨のすじどて)
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 「鯨のすじどて」(鯨すじ肉のどて煮)です。

 甘辛い味付けで,やわらかくなるまでしっかり煮込まれていました。

 お酒のおつまみだけでなく,ごはんのおかずとしてもぴったりです。

 続いておでん(関東煮)をいただきました。

(大根と厚揚げ)
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 大根と厚揚げです。

 大根も厚揚げもだし汁がよく浸み込んでおり,その美味しさが私の体にも浸みわたりました。

 こちらのお店では,おでんの注文を受けると,お店の方がちょうどよく煮えたおでんを選んで提供してくださいます。

 そのため,注文したおでんがまだあまり煮えていない場合は,しばらく待つようにお願いされます。

 どんな具もベストな煮え具合でいただくことができるのです。

 続いて「ひろうす」をいただきました。

(ひろうす)
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 「ひろうす」は,つぶした豆腐に野菜を中心とした様々な具を詰めて油で揚げたもので,「飛竜頭(ひりょうず・ひりゅうず)」,さらにさかのぼればポルトガルの揚げ菓子「フィリョース」がその名の由来とされています。

 がんも,がんもどきのことです。

 お店独自の「ひろうす」で,中にはゴボウ,レンコン,椎茸,人参,ぎんなん,黒ゴマなどの具がたっぷり入っていました。

(たこ甘露煮)
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 こちらは「たこ甘露煮」です。

 創業から受け継がれている秘伝のだし汁でしっかり煮込まれ,とてもやわらかく仕上がっていました。

 そしていよいよ,鯨のおでんを注文しました。

(鯨すじ・大根・里芋)
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 写真右半分が鯨すじ,左下が大根,左上が里芋です。

 鯨すじは,すじ肉の大きなかたまりでしたが,だし汁を吸ってとてもやわらかくなっていました。

 飴色に煮込まれ,ねっとりとした食感で,牛すじ肉に似た味でした。

 里芋もホクホクで食べ応えがありました。

(さえずり・ころ)
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 皿の左側の串が「さえずり」,右側の串が「ころ」です。

 「さえずり」は鯨の舌です。

 その名称は,お客さんがチューインガムのようにクッチャクッチャ噛む音が小鳥のさえずりに似ていたことに由来するようですが,今の「さえずり」は,ほどよい弾力を残しつつも,やわらかく食べやすい一品に仕上げられています。

 鯨の旨味が凝縮されており,思わず「美味しい~」とさえずりたくなるような串でした。

 一方の「ころ(コロ)」は,鯨の皮です。

 私はグルメ漫画「美味しんぼ」で知りました。

 鯨の皮には厚い脂肪の層がありますが,それをいったん油で揚げた上で,おでんだしで煮込まれているため,適度に油抜きされて食べやすくなっています。

 表皮の部分はプルンと,脂肪の部分はジュワッとした食感でした。

 噛みしめるほどに,中から鯨の甘い脂とおでんのだしがにじみ出て,その旨味がじわじわと舌に伝わってくる感じでした。

 秋田の郷土料理「くじらかやき」と同様,鯨の皮と皮下脂肪のうまみを楽しむ料理です。

 鯨は今や高級食材となっていますが,おでんに入れた鯨は他に代えがたい美味しさ・魅力があり,それが現在,そして未来へと引き継がれている理由なのだろうなと思いました。


菊壽堂義信の「高麗餅」

 翌日,大阪メトロ堺筋線に乗り,北浜駅で下車しました。

 北浜駅周辺は大阪のビジネス街で,近くの道修町(どしょうまち)通には,田辺三菱製薬,塩野義製薬,小林製薬,扶桑薬品工業,武田薬品工業など,製薬会社の本支店が集まっています。

 こうしたビジネス街の一角,高麗橋にある和菓子店「菊壽堂義信(きくじゅどうよしのぶ)」を訪問しました。

(菊壽堂義信(店舗))
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 江戸時代から続く老舗の和菓子店です。

 大きな看板があるわけでもなく,初訪問の際は,よほど注意して探さないと通り過ごしてしまうようなお店です。

 まさに知る人ぞ知るお店なのですが,知っておられる方は普通に引き戸を開けて中に入り,お菓子を注文しておられました。

 外観と同様,店内も静かな佇まいでした。

 「高麗餅(こうらいもち)」を1セット,持ち帰りで注文しました。

 お店の方は「かしこまりました。しばらくお待ちください。」とおっしゃって奥の厨房へ向かわれました。

 お客さんの注文を受けてから,1つずつ丁寧に作られます。

 しばらくして,箱詰めされた高麗餅が手渡されました。

 「今日中にお召し上がりください」とのことでした。

 大事に抱えながら,広島の自宅まで持って帰りました。

(高麗餅(箱))
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 シンプルながら伝統を感じるデザインの包みです。

 中はどんな感じだろうかとワクワクしながら箱を開けました。

(高麗餅)
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 色彩豊かな5種類の高麗餅が並んでいました。

 写真左(手前)から,粒あん,白あん,抹茶あん,こしあん,ゴマあんの高麗餅です。

(高麗餅(中身))
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 白あん,抹茶あん,こしあんの中身です。

 高麗餅は,甘くやわらかい餅(求肥)を様々なあんこで包み,手で握って仕上げられたお菓子です。

 大人の親指くらいのサイズで,しかもあんこはすべて甘さ控えめなので,一度にすべて味わうことができます。

 粒あんは,小豆の粒の歯応えが心地よく,小豆本来の風味が楽しめました。

 白あんは,白小豆が使われており,上品で繊細なあんこでした。

 抹茶あんは,いただいた瞬間,さわやかな抹茶の香りが口いっぱいに広がりました。

 こしあんは,小豆の雑味がなく,口の中でさらりと溶ける,甘さ控えめのあんこでした。

 ゴマあんは,すりゴマの香りが素晴らしく,ゴマのコクが餅とよく合いました。

 このお店の高麗餅で一番大切にしたいのがその鮮度です。

 お店では,あんこが手で握ってやっとまとまる程度の,ギリギリの水分で作られています。

 そのため,何よりも握りたて,作りたてが一番で,時間が経つにつれ,あんこの水分が飛んで,表面がひび割れてきます。

 消費期限は1日どころか,数時間と思っておいた方が良いでしょう。

 改めて高麗餅の写真を御覧ください。

 あんこの表面が,ところどころひび割れているのがお分かりいただけると思います。

 平日の日中のみの営業で,日持ちしないこともあり,高麗餅本来の味を楽しめる方は限られてしまいますが,機会があれば御賞味ください。


<関連サイト>
 「たこ梅」(本店・大阪市中央区道頓堀1-1-8 ほか)
 「菊壽堂義信」(大阪市中央区高麗橋2-3-1)

<関連記事>
 「秋田の食文化探訪 -がっこ・なた漬け・きりたんぽ鍋・くじらかやき-

2023年1月22日 (日)

帝国ホテルのパンケーキ -帝国ホテル大阪・アップルクランブルのパンケーキ トフィーソース-

 帝国ホテルの人気メニューの1つに,パンケーキ(インペリアルパンケーキ)があります。

 このパンケーキを味わってみたいと思い,大阪・天満橋にある「帝国ホテル大阪」を訪問しました。

(帝国ホテル大阪(全景))
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 写真左の四角い建物が帝国ホテル大阪,写真右の丸い建物がOAP(大阪アメニティパーク)です。

(帝国ホテル大阪・玄関)
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 パンケーキは2階にあるカジュアルレストラン「カフェ クベール」でいただくことができます。

(カフェ クベール(入口))
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 お店の方に席を御案内いただいた後,メニューを見ました。

 アラカルトメニューに「インペリアルパンケーキ いちご添え」があったのですが,訪問当日は「英国フェア」(2022年11月1日~2023年1月6日)が開催されており,英国にちなんだパンケーキ「アップルクランブルのパンケーキ トフィーソース」も用意されていました。

 このパンケーキに付いてくるソースポットに入ったトフィーソースが魅力的で,期間限定だったこともあり,「アップルクランブルのパンケーキ トフィーソース」を注文することにしました。

 コーヒーもセットで注文しました。

 しばらくして,テーブルの上にカトラリーが用意されました。

 そしてコーヒーが運ばれてきました。

(コーヒー)
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 1杯1,200円,セットだと1,000円ですが,おかわりにも応じていただけるので,サービスやレストランの雰囲気も含めると相応の値段ではないかと思います。

 その後しばらくして,待望のパンケーキがワゴンで運ばれてきました。

(アップルクランブルのパンケーキ)
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 インペリアルパンケーキに,アップルクランブル(リンゴが入った英国発祥の焼菓子),リンゴのコンポート(シロップ煮),薄くスライスしたリンゴ,生クリームが添えられています。

 そしてトフィーソースがこちらです。

(トフィーソース)
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 レーズンとリンゴがたっぷり入った熱々のトフィーソース(バターと砂糖を加熱して作るキャラメル味のソース)です。

 さらにバニラアイスも付いていました。

(バニラアイス)
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 バニラビーンズたっぷりで,卵黄の風味をしっかり感じるバニラアイスでした。

 目で楽しんだ後,メインのパンケーキをいただきました。

 1枚1枚丁寧に焼かれ,表面はきれいな焼き色をしています。

 この丸くて上品なパンケーキが3枚重ねられていました。

 表面はサックリ,中はしっとりとした仕上がりで,3層のパンケーキをナイフとフォークで一気にカットしていただくと,とても贅沢な気分になりました。

(パンケーキ・トフィーソース添え)
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 パンケーキだけでも美味しいのに,パンケーキに熱々のキャラメル味のトフィーソースをかけると,脳に快感物質が分泌され,多幸感を感じるレベルの美味しさでした。

 大阪は,帝国ホテル大阪のほかにも,「純喫茶 アメリカン」(難波)や「サンシャイン」(梅田)など,パンケーキ・ホットケーキが用意されている喫茶店・カフェがたくさんあります。

(純喫茶アメリカン)
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 モーニングでパンケーキ・ホットケーキを用意されているお店も多くみかけました。

 これも大阪の「粉モン文化」の1つだと思います。


<関連サイト>
 「帝国ホテル大阪」(大阪市北区天満橋1-8-50)

2023年1月 8日 (日)

福島県会津地方の食文化2 -馬肉料理・こづゆ・いかにんじん・ニシンの山椒漬け・ソースカツ・ごまこんにゃく・会津地鶏・たまりせんべい-

 今回は会津地方の郷土料理を御紹介します。

 夕方,会津若松駅から磐越西線で喜多方駅へ向かいました。

(磐越西線・普通・喜多方行・会津若松駅)
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 写真左が磐越西線・郡山行き,写真右が私が乗車した磐越西線・喜多方行きの列車です。

 喜多方駅に着くと,赤べこやラーメンの横断幕が出迎えてくれました。

(横断幕「ようこそ喜多方へ!」喜多方駅)
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 この度の夕食のお目当ては,赤べこ(牛)でもラーメンでもなく,馬ですが(笑)

(レンガ造りの喜多方駅入口)
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 レトロな味わいのあるレンガ造りの喜多方駅入口です。

 喜多方駅から徒歩で宿泊先の喜多方グリーンホテルへ向かい,少し休憩しました。

 その際,フロントの方から,飲食店情報をはじめ,地元の様々なお話を教えていただきました。
 この場をお借りしてお礼申し上げます。

 その後,喜多方の街を散策しながら郷土料理店「会津田舎家」へ向かいました。

(郷土料理店「会津田舎家」)
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 店名どおり,田舎の屋敷のような店舗でした。

 会津は山に囲まれているため,山の幸や保存性に優れた乾物の魚介類を中心に,独自の食文化が形成されました。

 その1つが馬肉料理です。

 そこで,今回はこの馬肉料理を中心とした会津の郷土料理コースをいただきました。


【メンマチャーシュー大根・馬モツ煮込み】

 お通しは「メンマチャーシュー大根」と「馬モツ煮込み」でした。

(メンマチャーシュー大根と馬モツ煮込み)
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 メンマとチャーシューが使われた料理とは,ラーメンの街・喜多方ならではです。

(馬モツ煮込み)
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 こちらは馬のモツ(内臓)の煮込みです。

 広島には「やおぎも」と呼ばれる牛の肺(フワ)を甘辛く煮た料理がありますが,それとよく似た味・食感でした。


【馬刺し】

(馬刺し(ヒレ肉))
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 馬肉と言えば「馬刺し」です。

 刺身に厚みがありますが,ヒレ肉なのでとてもやわらく,クセが全くありませんでした。

 皿の右下に添えられているのは「ニンニク唐辛子味噌」で,馬刺しにこの調味料を添えて食べるのが会津流です。


【こづゆ】

 かつて海から離れた会津地方は,海産物と言えば乾物が中心でした。

 身欠きニシン,棒タラ,スルメ,貝柱などが挙げられます。

 そのため,会津地方ではこうした乾物を一旦戻して調理した料理も多く存在します。

 その1つが,会津の代表的な郷土料理「こづゆ」です。

(こづゆ)
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 こづゆは,会津地方で江戸時代後期から明治時代初期にかけて武家料理や庶民の御馳走として広まり,冠婚葬祭の料理として振る舞われる郷土料理です。

 シイタケ・人参・里芋・タケノコ・ホタテの貝柱などが入った具だくさんのおつゆです。

 干しシイタケやホタテの貝柱など乾物が使われることが特徴です。


【いかにんじん】

 「こづゆ」と同様に,海産物(乾物)が使われた会津の郷土料理が「いかにんじん」です。

(いかにんじん)
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 スルメイカと人参を和えた保存食(常備菜)です。

 スルメイカ(乾物)の塩味が主な調味料となっています。

 保存性を高めるためか,少々しょっぱめの味付けとなっていました。


【ニシンの山椒漬け】

 こちらも海産物(乾物)が使われた会津の郷土料理「ニシンの山椒漬け」です。

(ニシンの山椒漬け)
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 身欠きニシン(ニシンの乾物)を戻し,醤油,酢,酒,みりんなどの調味料で漬け込んだ料理です。

 酢でさっぱりとしていて,山椒のさわやかな香りがニシンの味を引き立てていました。


【ソースカツ】

 会津はソースカツ丼が有名で,ソースカツ丼のお店がたくさんあります。

 「(今回の訪問では無理だけど)会津のソースカツ丼も食べてみたかったな」と思っていると,不意打ちで「ソースカツ」が提供されました。

 これは嬉しいサプライズでした。

(ソースカツ)
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 豚ヒレ肉のソースカツです。

 会津のソースカツ丼は丼飯に千切りキャベツを敷き,その上にソースカツがのせられますが,その丼飯がないバージョンです。

 トンカツが甘辛いソースにからまり,ご飯も欲しくなる一品でした。


【自家製ごまこんにゃく】

 お店の看板料理の1つ「自家製ごまこんにゃく」です。

(自家製ごまこんにゃく)
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 白ゴマと黒ゴマの2種類で,酢味噌でいただきました。

 こんにゃくというよりは,豆乳で作った湯葉のような食感で,ゴマの風味豊かな一品でした。


【会津地鶏のせせり】

 会津地鶏もいただきました。

(会津地鶏のせせり)
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 「会津地鶏のせせり」の焼き鳥です。

 「せせり」は鶏の首回りの肉で,「ネック」とも呼ばれます。

 地鶏のせせりの肉なので,身が引き締まって弾力があり,かむほどにじわじわと旨味を感じました。


【おむすびセット】

 コースの締めのご飯は「おむすびセット」でした。

(おむすびセット)
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 俵形のおむすびと,冬至カボチャの煮物,生キクラゲの刺身(青菜とわさび),きゅうりの漬物,しその実の醤油漬け,イカのキムチマヨネーズ和えが盛られていました。

 締めの料理に至るまで,会津の食材・料理を堪能できるコースでした。

 コース料理は以上ですが,せっかくなのでもう少し郷土料理を味わいたいと思い,アラカルトでも注文しました。


【馬タン焼き】

 改めてメニューを眺めていて,ふと目に留まった料理がありました。

 馬肉料理の1つ「馬タン焼き」です。

 馬のタンとは珍しいと思い,この馬タンに賭けることとしました。

 これが第11番目の料理となります。

(馬タン焼き)
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 馬タン焼きが6枚で6連タン!
 
 味はタン塩(単勝)一本勝負!

 ここからは実況中継でお伝えします。

 「喜多方第11レース。本日のメインレースを迎えました。」

 「皿の上に6枚の馬タン,今ゲートイン完了です。」

 「各馬タン一斉にスタートしました。タンにしては意外とやわらかく好スタートです。かむほどに脂がジュワッと後に続きます。のど元の第1カーブを過ぎると,次々と食べたい欲求が増してきます。」

 「さぁ最終コーナー。口の中は肉と脂で混戦模様。やわらかさが勝つか,ウマ味が勝つか,歯応えだって負けてない,脂と肉汁も次々と追いかけてくる,ハナ差で風味も続く。これは予想外の一戦だ。箸の動きはハイペース。もはや誰にも止められない。ほぼ同時に胃の中にゴールイン!」

 「ただいまのレース,馬タン,1皿1,100円…」

 馬タンは初めてでしたが,ビギナーズラックな美味しさで,福島の記念になりました。

 ※少々ふざけた表現になったことをお許しください。


【たまりせんべいアイス】

 デザートに,喜多方の「たまりせんべい」を使ったアイスクリームをいただきました。

 喜多方は沿道に蔵が連なる「蔵の街」で,醸造業でも栄えてきました。

 その蔵で作られた(たまり)醤油と地元のお米を使って作られたのが「たまりせんべい」で,喜多方の代表的なお菓子となっています。

(たまりせんべいアイス)
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 たまりせんべいの上に抹茶とチョコレートのアイスクリームがのせられています。

 香ばしいせんべいが,アイスクリームに添えられるウェハースのような役割をしていました。

 一緒にいただくと,アイスクリームにたまり醤油の風味が加わり,その甘じょっぱさが見事にマッチしたデザートでした。


【まとめ】

 会津の郷土料理を満喫しました。

 こちらのお店は,馬肉専門の卸業者から馬肉を仕入れておられるようで,新鮮で美味しい馬肉を味わうことができます。

 また,馬肉料理に限らず様々な会津の郷土料理を御用意されています。

 会津の食から,会津の風土や文化を知るのも面白いと思います。


<関連サイト>
 「会津田舎家」(福島県喜多方市梅竹7276-2)
 「喜多方グリーンホテル」(福島県喜多方市字二丁目4664)

<関連記事>
 「福島県会津地方の食文化1 -馬刺し・ニシン・鯉・くきたち菜・三五八漬け・こづゆ・天ぷら・揚げまんじゅう・そば・会津山塩・なめこ茸-
 「福島県の御当地ラーメン -喜多方ラーメン(喜多方市)と郡山ブラック(郡山市)-

2022年12月18日 (日)

福島県の御当地ラーメン -喜多方ラーメン(喜多方市)と郡山ブラック(郡山市)-

 福島県喜多方市と郡山市を訪問しました。

 喜多方と言えば「喜多方ラーメン」,そして郡山と言えば「郡山ブラック(ラーメン)」ということで,それぞれの御当地ラーメンを味わうこととしました。

 今回は,この喜多方ラーメンと郡山ブラックの代表的なお店のラーメンを御紹介したいと思います。

喜多方ラーメン(喜多方市)

 会津若松市内を散策した後,喜多方市へ移動し,喜多方グリーンホテルで宿泊しました。

 翌朝,喜多方で「朝ラー」(朝食にラーメン)を体験したいと思い,早朝6時40分にホテルをチェックアウトしてお店へ向かいました。

 途中,レトロ横丁商店街に興味深いスポットがありました。

(喜多方ラーメン神社)
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 喜多方は人口に対してのラーメン店舗数が日本一の街だけに,ラーメン神社まであります。

 鳥居が2本の箸で作られています。

 ボードに記載された「らーめんソフトクリーム」も気になるところですが,早朝なので,また次の機会に伺いたいと思います。

(浜町食堂)
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 こちらは「浜町食堂」です。レトロな雰囲気を醸し出しています。

 現在は閉店されているようですが,レトロ横丁ならではの建物だと思いました。

 しばらく散策した後,レトロ横丁商店街から中に入った通りにある喜多方ラーメンのお店「坂内食堂(ばんないしょくどう)」に伺いました。

(坂内食堂(店舗))
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 この写真は,食事後の落ち着いた時間に撮影したものですが,開店(7時)前は,開店待ちのお客さんで行列ができていました。

(坂内食堂(店舗正面))
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 こちらは店舗正面の写真です。

 私がお店に着いたのは開店時刻10分前でしたが,平日(月曜日)の早朝にもかかわらず,すでにお客さんが15人程度並んでおられました。

(坂内食堂(店舗入口))
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 開店時の入店待ちの様子です。

 開店時には約30人の行列となり,私の後ろにもお客さんがずらっと並んでおられました。

 私のような県外からのお客さんが多い様子でしたが,軽トラで食べにきた人など,地元の方も少なからずおられたようです。

 お店入口にあるレジで注文し,料金を先払いするシステムでした。

 私は看板メニューの「肉そば」(1000円)を注文しました。

 お客さんが多いので1人だと相席となり,座る席もお店の方が指定されます。

 席に座ってラーメンが運ばれるのを待つ間,店内をウオッチングしていたのですが,注文を受けたラーメンを何人分かまとめて作り,提供されている様子でした。

 しばらく待っていると,私の席に「肉そば」が運ばれてきました。

(肉そば)
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 「肉そば」はいわゆるチャーシュー麺のことですが,このチャーシューの盛りはスゴイです。

 チャーシューに覆われ,麺が全く見えません。

 この贅沢感が人気の理由の1つなのでしょう。

(肉そば(麺))
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 麺は加水率が高く,プリッとした舌ざわりと歯応えが特徴の平打ちちぢれ麺です。

 メンマも登場し,やっとラーメンっぽくなりました。

 上品な塩スープとモチモチの太麺,そして圧倒的な量を誇るチャーシューで組み立てられたラーメンです。

 「肉,肉,麺・スープ」というサイクルで朝からボリュームたっぷりのラーメンをいただきました。

 今回御紹介した坂内食堂のラーメンは塩スープですが,喜多方ラーメンのスープは鶏がら,豚骨,醤油,塩とお店によって様々です。

 喜多方ラーメンの特徴は,スープではなく麺(太麺・ちぢれ麵・多加水麺)にあるのです。

 このことは,喜多方へ行って初めて知りました。

 喜多方ラーメンと言えば「醤油スープの平打ちちぢれ麵」で,その醬油スープは「蔵の街 喜多方」の醤油蔵と関係があるという認識をしていた私は,カルチャーショックを受けました。

 次回は,ぜひ醤油ベースの喜多方ラーメンも味わってみたいです。

 「朝ラー」を済ませ,次の目的地である郡山へ行くため,喜多方駅へ向かいました。

(喜多方駅ホームと列車)
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 磐越西線の普通列車に乗り,まずは会津若松駅へ向かいます。

(磐越西線・普通・会津若松行・喜多方駅)
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郡山ブラック(郡山市)

 会津若松駅に到着しました。

(只見線全線運転再開記念展示パネル・会津若松駅)
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 こちらは,鉄道開業150年と,JR只見線が全線運転再開された(※)ことを祝った記念パネルです。
 ※平成23年新潟・福島豪雨災害から約11年経った2022年10月1日に只見線全線の運転が再開されました。

 約40分の待ち時間を経て,会津若松駅から磐越西線・普通列車に乗り,郡山駅を目指しました。

(磐越西線・普通・郡山行・会津若松駅)
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 磐梯山や猪苗代湖を眺めながら,約1時間で郡山駅に到着しました。

(郡山駅)
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 郡山駅には東北新幹線や東北本線などが通っているからか,会津と比べて都会的な印象を受けました。

 郡山駅から徒歩約10分の「郡山ブラック」がいただけるお店に伺いました。

(枡はん(店舗))
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 お昼時だったこともあり,お客さんが並んでおられました。

 濃口ラーメン(郡山ブラック)とチャーハンが有名なお店です。

 私は濃口ラーメンを注文しました。

 カウンター席で待っていると,しばらくして濃口ラーメンが用意されました。

(濃口ラーメン)
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 濃厚な醤油が使われた黒いスープが特徴のラーメンです。

 具は刻みねぎ,メンマ,チャーシュー,ナルトです。

 スープが黒いため,チャーシューやナルトが映えています。

(濃口ラーメン(麺))
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 麺はモチモチしたストレート麺で,醬油スープとよくからみました。

 こちらのお店の人気メニューは「濃口半チャンラーメン」(濃口ラーメンと半チャーハンのセット)のようですが,富山ブラックラーメンと同様に,ライスと合わせても美味しいと思います。


まとめ

 喜多方ラーメンのスープは醬油だけではないことには驚きましたが,福島県内にはこのほかにも,手打ち麺が特徴の「白河ラーメン」などの御当地ラーメンがあり,ラーメン店と蕎麦屋(どちらも用意されているお店も!)の数が多いことは確かです。

 この現象は,香川県で讃岐うどんのお店が多いこと,福岡県でラーメン店とうどん屋が多いこと,さらには広島にお好み焼店が多いこととの共通点があるように思います。

 その共通点とは「観光客向けだけでなく,地元の日常食でもあること」です。

 それだけ地元の人々に愛され続け,育まれている食べ物だとも言えます。

 福島のラーメンを地元の人と一緒に味わえば,きっと福島の日常も感じ取れると思います。


<関連サイト>
 「坂内食堂」(福島県喜多方市字細田7230)
 「老麺会」(蔵のまち喜多方 老麺会(らーめんかい))
 「枡はん」(福島県郡山市本町1-14-3 あさやビル1階)

<関連記事>
 「特急リバティ会津・会津鉄道リレー号の旅1 -浅草 鶏シューマイ弁当と浅草の和菓子-
 「特急リバティ会津・会津鉄道リレー号の旅2 -浅草今半の牛肉重・くるみゆべし大福・会津産紅玉のジュース・会津栗モンブラン-

<参考文献>
 青木健「教養としてのラーメン」光文社

2022年12月 4日 (日)

神奈川の食文化探訪3 -江ノ島のたこせんべい・藤沢「萬福楼本店」の麻婆豆腐ランチ・湘南台「葦(Ashi)」のホットサンドミックス-

江ノ島のたこせんべい

 鎌倉駅から江ノ島電鉄に乗り,江ノ島を訪問しました。

(江ノ島電鉄・江ノ島駅)
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 江ノ電は,鎌倉駅と鎌倉大仏(高徳院)の最寄り駅・長谷駅の区間しか利用したことがなかったのですが,長谷駅から江ノ島駅方面は美しい海岸沿いを走ったり,街中を走ったりと変化に富んだ景色を楽しめました。

 江ノ島駅からは歩いて江ノ島を目指しました。

(弁天橋から眺めた江ノ島)
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 江ノ島は,いつ来ても人が多く,海風が強いような印象があります(笑)

(弁財天仲見世通り)
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 江ノ島のスタート地点,弁財天仲見世通りの入口です。

 同じ場所をビッグ錠先生が描くと次のようになります。

(弁財天仲見世通り(漫画))
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 ビッグ錠「たこせんべい」(ぶんか社「俺流!絶品めし Vol.27」掲載)から一部引用

 江ノ島は何度か訪れたことがありますが,「たこせんべい」が有名なことは最近読んだビッグ錠先生の漫画で初めて知りました。

(江ノ島名物の紹介)
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 ビッグ錠「たこせんべい」(ぶんか社「俺流!絶品めし Vol.27」掲載)から一部引用

 「なんだ?みんなが食ってるの」
 「タコせんべいだよ」
 「知らないのぉ?」
 「江ノ島といやぁシラス丼とタコせんべいだよ!」

 はい,私も知りませんでした。

 というわけで,江ノ島・弁財天仲見世通り沿いにあるお店「あさひ本店」へ伺いました。

(たこせんべい「あさひ本店」)
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 お店には大勢のお客さんが並んでいました。

 今まで意識せずに素通りしていました(笑)

(メニュー・価格表)
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 メニューには,「丸焼きたこせんべい」,「丸焼きエビせんべい」,「大人の焼きタコ ガーリック風味」,「青のせんべい(しらす)」のほか,「湘南ゴールド」というオレンジが使われたチューハイやサイダーなども販売されていました。

(券売機)
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 私は券売機で「丸焼きたこせんべい1枚」の食券を購入しました。

 食券を握りしめ,列に並んでしばらく順番を待っていると,お店の方が来られ,食券と引き換えに「たこせんべい引換券」が渡されました。

(たこせんべい引換券)
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 これで注文がお店に行き届いたことになります。

(たこせんべい「あさひ本店」での順番待ち)
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 引換券に交換してからも,しばらく待つことになります。

 それは,たこせんべいを焼き上げるのに時間がかかるからでもあります。

 たこせんべいの作り方は「あさひ本店」のウェブサイトによると,①生タコを塩が抜けるまで丁寧に洗う,②生タコに下味(醤油ベースでほんのりピリ辛な薄味)を付ける,③生タコに粉をまぶして鉄板に並べる,④高温(185℃)の鉄板で生タコを挟み,約1トンのプレスをして焼き上げる,と説明されています。

(たこせんべいの焼き上げ)
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 ビッグ錠「たこせんべい」(ぶんか社「俺流!絶品めし Vol.27」掲載)から一部引用

 「タコを2枚の鉄板ではさんで」
 「圧縮して高温で焼き上げる!」
 「このタコの焼ける香りがたまんねぇんだな」

 私もたこせんべいが焼き上がるのを待つ間,調理場を見学しましたが,生タコが一気に高温の鉄板でプレスされることで,キュウキュウと悲鳴のようなリアルな音が発せられるのが印象的でした。

(たこせんべい調理場)
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 写真のプレス機で2枚分のたこせんべいができます。

 これをハサミでジョキジョキと半分に切って,長方形のたこせんべい(1枚分)の完成です。

 下味を付けた生タコに粉をまぶし,鉄板でプレスすることで一気にせんべいにするという,何とも豪快でスピーディーな調理法です。

(たこせんべいの持ち方)
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 プレス機の前には,「たこせんべいの持ち方」の説明書きがありました。

 たこせんべいは両手で,対角線上に持たないと風圧で割れてしまうようです。

 出来立てのたこせんべいをいただきました。

(たこせんべい)
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 「片手で持ったら割れる」と注意されているのに,夢中になって片手で持って撮影してしまいました(笑)

 それくらい,薄くてビッグなんだジョー。ねっ,ビッグ錠先生。

 お味は,タコが丸ごとプレスされているので,タコの旨味を存分に味わえました。

 特に,タコが焼けた部分は,タコがスルメ(干しイカ)のようになり,タコそのものの味を楽しめました。

 この日の夜,ビッグ錠先生とお会いしたのですが,私は「すごくリアルに描いておられますね」と率直な感想をお伝えしました。


藤沢・萬福楼本店のランチ

 江ノ島から小田急電車に乗り,藤沢駅へ行きました。

 当ブログをお読みいただいている,なーまんさんから教えていただいた中国料理店で昼食をいただくこととしました。

 地元の方がおすすめのお店であれば,間違いないと思ったからです。

 藤沢駅北口から銀座通りをしばらく歩くと,目指すお店「萬福楼本店」がありました。

(「萬福楼本店」店舗)
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 多彩なメニューが用意されているお店のようで,ワクワクしながらお店に入りました。

 メニュー表を見ると,数多くの料理が用意されており,上海で食べた上海焼きそばもあったので,これにしようかと迷いましたが,まずはお店の特徴を知ることが一番だと思い,麻婆豆腐のランチ定食を注文しました。

 店員同士の中国語での会話が飛び交う中,しばらくして麻婆豆腐ランチが提供されました。

(麻婆豆腐ランチ)
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 またまたビッグだジョー(笑)

 大盛りの麻婆豆腐に丼に盛られたライス。
 これに中華スープとザーサイとデザートの杏仁豆腐まで付いて680円とは驚きです。

 しかも麻婆豆腐は挽き肉たっぷりで味も本格的です。

 「麻婆豆腐白飯忘我本能的交互喫食!」
(麻婆豆腐とライスを交互に,我を忘れてワシワシといただきました。)

 思わずデタラメな中国語が飛び出すほど,ボリューム満点で美味しい麻婆豆腐ランチでした。

 藤沢駅周辺の中国料理店は「茶馬燕(ちゃーまーえん)」に続き2軒目となりますが,大きな街だけに様々な用途・ニーズに合わせたお店があるなという印象を受けました。

 「我満腹於萬福楼,謝謝」


湘南クリエイティブガトー 葦(Ashi)のホットサンドミックス

 藤沢駅から小田急電車に乗って,湘南台駅へ行きました。

 湘南台駅近くにある洋菓子店「湘南クリエイティブガトー 葦(Ashi)」で,ホットサンドミックスとコーヒーをいただきました。

(ホットサンドミックスとコーヒー)
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 ホットサンドは,ハムチーズとベーコンエッグの2種類(2枚ずつ)です。

 ハムチーズは,チーズがギューンと伸びるほど熱々で,薄切りトマトも入っており,ピザをいただいているかのようでした。

 ベーコンエッグは,ベーコン・タマゴサラダ・玉ねぎがはさまれたホットサンドで,スパイスの効いたベーコンの美味しさが際立つ一品でした。

 いつ伺ってもお客さんが絶えることなく,湘南の人気店です。


 今回は,神奈川県藤沢市の江ノ島,藤沢駅前,そして湘南台の飲食店を御紹介しましたが,藤沢だけでも様々なお店があり,まだまだ魅力的なお店がたくさんあるように思いました。


<関連サイト>
 「あさひ本店」(神奈川県藤沢市江の島1-4-8)
 「萬福楼本店」(神奈川県藤沢市藤沢1009 中島ビル1F)
 「湘南クリエイティブガトー 葦」(藤沢湘南台店・神奈川県藤沢市湘南台1丁目4-3 ほか)

<関連記事>
 「神奈川の食文化探訪1 -釜揚げしらす・コーンフレーククッキー・湘南チーズパイ・鵠沼魚醤-
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 「中国料理の特徴と主な料理4 -上海料理(紅焼肉・上海粗炒面)と上海リニアモーターカー-

2022年10月 2日 (日)

山口の食文化探訪4 -ディアボロ・クレームカラメル・くりまさる・長門ゆずきち-

 山口県山口市を訪問しました。

 今回は,山口市内のカフェレストランと山口県の農産物を御紹介します。


ディアボロ・クレームカラメル

 山口市中心部を流れる一の坂川沿いを散策しました。

(一の坂川)
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 この川にはゲンジボタルが生息しており,5月下旬から6月上旬になると,間近でホタルを鑑賞することができます。

 この一の坂川を少し入った,山口県立山口図書館近くにあるフレンチカフェレストラン「オー・カルチェ・ラタン」を訪問しました。

 フランスのカフェのメニューがないかと探してみると,「ディアボロ」というドリンクがありました。

 店主さんに「ディアボロ」について尋ねると,様々なシロップを炭酸水で割ったドリンクとのことでした。

 そしてオレンジ・レモン・カシスなど様々なフレーバーが用意されていました。

 そこで私は,青りんごのディアボロとクレームカラメルを注文しました。

(ディアボロ(青りんご)とクレームカラメル)
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 写真左上がディアボロ(青りんご),写真右下がクレームカラメルです。

 ディアボロは,あらかじめグラスに青りんごのシロップが入っており,それに炭酸水の「Perrier(ペリエ)」を注いでいただきました。

 改めて店内を見渡すと,フランスの「MONIN(モナン)」のシロップがずらりと並べられており,「モナンのシロップをペリエで割ったドリンクのことなんだ」とわかりました。

 さわやかな青りんごのフレーバーが楽しめるドリンクでした。

 一方,クレームカラメルはいわゆるカスタードプリンのことですが,卵黄のなめらかなコクが楽しめるプリンにほろ苦いカラメルソースがたっぷりとかけられた,絶品のお菓子でした。


くりまさる

 「くりまさる」という名称のカボチャを御存知でしょうか。

 山口市では,阿知須(あじす)地区の「阿知須くりまさる」を中心に,くりまさるの栽培に力を入れておられます。

 くりまさるは「栗(くり)より甘さが勝る(まさる)」ことから名付けられたカボチャです。

 出荷時期(6~8月)になると,山口市の「道の駅きららあじす」やスーパーマーケットなどで販売されます。

 私もいつか山口で味わってみたいと思っていたのですが,「山口市中心商店街」を散策していると,「藤井食料品店」の店頭でくりまさるが販売されていました。

(藤井食料品店)
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(くりまさる(山口市秋穂産))
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 山口市秋穂(あいお)産のくりまさるです。

 9月に訪問しましたが,出荷時期が遅めのくりまさるが販売されていました。

 自宅に持ち帰り,くりまさるを調理しました。

(くりまさる(中身))
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 カボチャは皮がかたくて包丁で切りにくいのが難点ですが,このくりまさるは意外と楽に切ることができました。

 一口サイズに切り,酒・みりん・醤油で煮物を作りました。

(くりまさるの煮物)
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 いただきました。

 甘栗やお菓子ほどに甘いというレベルではありませんが,ゆで栗や蒸し栗に比べると甘く,ホクホクした食感は栗そっくりでした。

 「くりまさる」というネーミングは,埼玉県川越市のさつまいも「栗(九里)より(四里)うまい十三里(半)」とよく似た表現ですが,川越市と同様,地元のブランド農産物として出荷され,様々な料理やお菓子も開発・販売されています。


長門ゆずきち

 山口県の日本海・響灘(ひびきなだ)に沿って走る観光列車「○○のはなし(まるまるのはなし)」に乗車した際,「長門ゆずきち」が使われたお菓子をいただきました。

 長門ゆずきちは柚子やスダチに似た柑橘で,いただいたお菓子も香りがとても良かったので,その時以来すっかり長門ゆずきちのファンになりました。

 その長門ゆずきちが,くりまさると同様,藤井食料品店で販売されていたので購入しました。

(長門ゆずきち(パック))
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 ゴルフボールぐらいの大きさの濃い緑色の柑橘です。

(長門ゆずきち)
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 カボスやスダチに比べて種が少なく皮も薄いため,食べやすく,香り高い果汁がたっぷり採れることが特長です。

 長門ゆずきちを様々な料理や飲み物と合わせてみました。

 まずは炭酸水に長門ゆずきちを絞った果汁を入れ,「長門ゆずきちスカッシュ」を作ってみました。

(長門ゆずきちスカッシュ)
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 長門ゆずきちの香りを楽しめましたが,シロップか砂糖も少し加えた方が良さそうです。

 続いて,鯖の塩焼きに長門ゆずきちを添えてみました。

(鯖の塩焼きと長門ゆずきち)
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 酸味や香りがマイルドなので,果汁をたっぷりかけても焼き鯖の味を損ねることなく,美味しくいただけました。

 続いて,豚ロースステーキに長門ゆずきちを合わせてみました。

(豚ロースステーキと長門ゆずきち)
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 ステーキソースは,焼いた豚肉の肉汁と長門ゆずきちの果汁を合わせ,塩こしょうで味を調えて作りました。

 レモンの場合もそうなのですが,果汁は思い切ってたっぷり使う方が美味しくなります。

 長門ゆずきちのほのかな酸味とさわやかな香りが楽しめるステーキに仕上がりました。

 最後に醤油と長門ゆずきちの果汁を合わせ,ポン酢を作ってみました。

 豚バラ肉や鶏のささみを茹で,長門ゆずきちのポン酢でいただきました。

(長門ゆずきちのポン酢)
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 「こっ,これは…」

 これが本来のポン酢かと,ハッと目が覚めるような美味しさでした。

 このポン酢なら,高価な和牛の霜降り肉のしゃぶしゃぶにも間違いなく合うことでしょう。

 お試しになられた方からの御感想をお待ちしております(笑)


まとめ

 山口市で様々な美味しいものと出会い,味わうことができました。

(山口駅・キハ47形・山口線・新山口行と益田行)
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 今回はJR山陽本線とJR山口線の普通列車でのんびりと旅行しましたが,途中下車した新山口駅には「KDDI維新ホール」をはじめとする新施設が,徳山駅には蔦屋書店やスターバックスが併設された「周南市立徳山駅前図書館」を中心とする新施設ができており,それぞれの駅とその周辺が現代風に一新されていることに驚きました。

 伝統を守りつつ新たなことに挑戦し続ける山口は,訪れる度に新たな発見と感動があります。


<関連サイト>
 「オー・カルチェ・ラタン」(山口県山口市後河原160-1)
 「藤井食料品店」(山口県山口市本町一丁目1-10)
 「山口市・きららあじす」(山口県情報サイト「きらりんく」)
 「長門ゆずきち」(「ぶちうま!やまぐち.net」やまぐちの農林水産物需要拡大協議会
 「KDDI維新ホール」(山口県山口市小郡令和一丁目1-1)
 「周南市立徳山駅前図書館」(山口県周南市御幸通二丁目28-2)

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