食文化事例研究

2023年2月19日 (日)

広島市植物公園「バレンタインフェスティバル2023」 -広島市植物公園のカカオとチョコレート講演会-

広島市植物公園のバレンタインフェスティバル

 広島市植物公園で3年ぶりにリアルのバレンタインイベントが開催されました。

(「バレンタインフェスティバル2023」チラシ)
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 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で,ここ何年か中止を余儀なくされたため,実際に開催された喜びはひとしおでした。

 「またあの楽しい先生(佐藤清隆 広島大学名誉教授)にお会いできる」とワクワクしながら,会場の広島市植物公園を訪問しました。

(広島市植物公園)
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 広島市植物公園です。左奥の建物が大温室です。

 この大温室では,全国でも珍しいカカオが栽培されています。

 そのカカオの木にカカオの実がなっているそうなので,大温室へ向かいました。

 途中,バレンタインデーにちなんだ絵画が展示されていました。

(アルフォンス・ミュシャ「黄道十二宮」)
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 アルフォンス・ミュシャの「黄道十二宮」です。

 私はロートレックやミュシャの絵(ポスター)が好きで,2022年11月には,大阪中之島美術館で開催された展示会「ロートレックとミュシャ パリ時代の10年」を見に行ったのですが,確かにバレンタインデーのイメージによく合っています。


広島市植物公園大温室のカカオ

 大温室に着き,園内でカカオを探しました。

(カカオ)
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 カカオの木がありました。

(カカオの果実)
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 近づいてみると,確かに緑色のカカオの実がなっていました。

 今回,カカオの実が6つでき,今年の5月~6月頃から順次収穫できる見込みだそうです。

(紹介文とカカオの模型)
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 「果実は幹に直接ぶら下がり,果実を割ってみると白いパルプに包まれた種子が行儀よく並んでる」

 「この種子を発酵させ,炒って砕いたものがチョコレートやココアの原料」

 「またカカオの油は体温に近い温度で溶けるので医薬品にも使われている」

 カカオの油が医薬品にも使われているとは驚きです。

(カカオの種類)
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 カカオの種類を説明した看板もありました。

 「フォラステロ種,トリニタリオ種,クリオロ種」

 フォラステロ種は世界で最も多く栽培されている品種,逆にクリオロ種は世界の生産量の1%程度しか栽培されていない希少品種,トリニタリオ種はフォラステロ種とクリオロ種のハイブリッド(いいとこ取り)です。

 「カカオだけ観察できたら十分」という気持ちで展示施設を後にしました。

 そのため,新種のラン「(デンドロビウム)キシダフミオ」を見逃してしまいました。

 岸田首相,次回はぜひバナナとかカカオとか,食べ物に命名してください。
 広島ゆかりの食べ物・飲み物として取材し,記事にしますから(笑)


絵本の朗読とチョコレート作り体験

 カカオを観察した後,展示資料館2階講堂へ行き,バレンタインフェスティバル関連イベント「絵本の朗読とチョコレート作り体験」に参加しました。

 チョコレートの専門家・佐藤清隆先生(広島大学名誉教授)が書かれた絵本「ひと粒のチョコレートに」(福音館書店)の朗読とチョコレート作り体験です。

 親子連れの参加者が多く,定員100名でしたが,受付から10分程度で定員いっぱいとなりました。

 会場で席に座って開始を待っていると,佐藤先生から「おおっ,お久しぶり」と声をかけていただきました。

 私もそれにお応えし,再会を喜びました。

 チョコレートを意識した茶色や赤色の服装で,勢いのある熱いトークで講演される佐藤先生のお姿は,拝見するだけで楽しくなります。

 みんなの前で少し大げさに話をされるところは,私とそっくりです(笑)

 パワーポイントを活用しながら絵本が朗読され,要所要所で,絵本に登場するカカオやチョコレートについて解説していただきました。

 次にチョコレート作り体験として,参加者全員にローストされたカカオ豆が用意されました。

(カカオ豆)
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 こちらがローストしたカカオ豆です。

 高級なベネズエラ産の豆だそうです。

 固い殻(外皮)に包まれており,この殻を割って中の実(胚乳・カカオニブ)を取り出しました。

(カカオ豆の皮・カカオニブ・カカオ豆)
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 写真左上がカカオの殻(皮)で,外皮の「カカオシェル」と薄皮の「カカオハスク」があります。

 写真中央がカカオの胚乳で「カカオニブ」と呼ばれるものです。

 写真右上が殻を割る前のカカオ豆です。

 佐藤先生が「カカオニブの中に小さく細長い棒(胚芽)があるので取り出してください」とおっしゃったので,カカオニブを細かく砕きながら探したのですが,どれが胚芽なのかよくわかりませんでした。

 やむなく佐藤先生を引き留め,どれが胚芽なのか探してもらうと,すぐに「これです」と取り出してもらえました。

(カカオの胚芽)
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 写真中央手前の赤丸で囲ったものがカカオの胚芽(ジャーム)です。

 5mm前後の大きさで,小さい茶柱のような形をしています。

(カカオの胚芽(2本))
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 もう1つのカカオ豆からは,自力で胚芽を見つけることができました。

 胚芽は次の木を作る元になるものなので,胚芽だけを食べても美味しくないとのことでした。

 続いて取り出したカカオニブの実食となりましたが,その際,佐藤先生から「胚芽は取り除くように」とお話がありました。

 「そんなにまずいものなのか」と私は胚芽も食べてみましたが,多少ジャリジャリする程度で,カカオニブと一緒に焙煎されていることもあり,カカオニブの風味とそんなに変わらないように思いました。

 しかしながら,佐藤先生レベルになると,チョコレートの微妙な食感で,この胚芽が取り除かれているチョコレートかどうかが識別できるのだそうです。

 続いて,カカオニブをすりつぶしてドロドロの液状にし,それに砂糖などを加えた「チョコレートの原料」が平たい金属トレーの上に流し込まれました。

 そして,そのトレーを机に叩きつけて液体チョコレートの中の空気を抜く「タッピング」と呼ばれる作業が実演されました。

 このタッピング作業の際,机に金属製のトレーを叩きつけると,「バシャン,バシャン」とかなり大きな音が会場内に響き渡りました。

 実際のチョコレート工場でもタッピングの際は大きな音がするらしく,工場内で働く方々は耳栓をして作業されているとのことです。

 このタッピングも数名の参加者(子ども)が体験しました。

 その後,タッピングを終えたトレーが前の席から後ろの席へ順に回され,その様子を間近で見ることができました。

(トレーでタッピングしたチョコレート)
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 タッピングは,チョコレートを薄く延ばすための作業でもあったのですが,時間の関係で厚い板チョコレートになりました。

 冷めて固まったチョコレートを一口大に割る作業も,数名の参加者(子ども)が体験しました。

(板チョコレートを割る様子)
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 こうしてお土産のチョコレートが完成しました。

(お土産のチョコレート)
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 ソロモン諸島のカカオを70%使ったチョコレートです。

 出来たてよりも,1日置いて馴染ませた方がおいしいとのお話だったので,後日いただきました。

 わずかに甘さを感じる,ほろ苦いダークチョコレートでした。

 後からふわっとさわやかな酸味も感じました。

 チョコレートと一緒に,フラワーバレンタインということで,広島市植物公園の方からバラの花をお土産にいただきました。

(フラワーバレンタイン・バラ)
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 フラワーバレンタインもおしゃれですね。


今回の講演会で新たに学んだこと

 今回の講演会で私が新たに学んだことをまとめます。

・カカオニブにハチミツを混ぜて食べるとチョコレートに近い味になる

・カカオの油脂は,赤ちゃんカカオのお乳

・カカオの油脂の成分は,冷やすと整列して固まる

・カカオ農園ではバナナも一緒に栽培され,バナナの日陰でカカオが栽培される

・カカオ豆は,バナナの葉で包むか木の箱に入れて発酵させる

・カカオの実1個にカカオ豆が約40個あり,板チョコレートが1枚作れる

・カカオニブを2~3日すりつぶしてカカオマス(※)が作られる
 ※すりつぶされたドロドロ状のもの。液体チョコレート

・ブルーム(チョコレートが白く固まった状態)は,花が咲くという意味

・ココアバターの結晶は1型から6型まで6種類あり,その中で最適な結晶を作る作業をテンパリングという

・メキシコではカカオとトウモロコシで作ったドリンクが飲まれている

・メキシコのカカオドリンクはコップ1杯で約600キロカロリーあり,現地の方はこれを朝2杯飲んで昼まで働く

・メキシコのカカオドリンクやモレソースに唐辛子を混ぜる理由はビタミンCを補うため

・カカオは栄養豊富だが,唯一ビタミンCが不足している

・冬の最低気温が16度以下だとカカオは育たない(日本の露地栽培では無理)

・石川県加賀市は,温泉の排熱を利用したカカオ栽培・チョコレート作りに挑戦されている

・油は臭いを吸収するので,チョコレートは冷蔵庫に入れない方がよい


まとめ

 2023年2月18日のTBSテレビ「情報7daysニュースキャスター」で,佐藤先生が「現代のチョコレート製法の基礎を作った科学者」として紹介されました。

 ココアバターの結晶が1型から6型まで6種類ある中,4型から下だと指で触るだけでチョコレートが溶けてしまい,逆に6型だと固すぎて口の中でチョコレートが溶けないため,5型だけが商品チョコレートとして適しているのだそうです。

 その5型にするには「BOB」と呼ばれるパウダー状の油脂が適していると紹介されました。

 また,株式会社 明治との共同研究や,佐藤先生が技術支援された島根県出雲市「La Chocolaterie Nanairo(ラ ショコラトリ ナナイロ)」が「世界の美味しいチョコレート10選」に選ばれたことなども紹介されました。

 最後にスタジオの安住紳一郎アナが「チョコレート,食べたくなりましたね」と三谷幸喜さんにおっしゃってましたが,これこそ佐藤先生の一番望んでおられることなので,クスっと笑えました。


 講演会終了後,佐藤先生と少しお話しました。

 再会を約束して最後に握手したのですが,佐藤先生の手は(私の冷たい手と違って)温かく,まさにチョコレート作りに適した手でした(笑)


<関連サイト>
 「広島市植物公園」(広島市佐伯区倉重三丁目495番地)
 「La Chocolaterie Nanairo」(島根県出雲市斐川町坂田1934)

<関連記事>
 「カカオ豆とチョコレート
 「チョコレートの新しい潮流2 -ハイカカオと機能性チョコレート,発酵の重要性-
 「チョコレートの魅力 -ショコラミルの実演とオランジェット作り体験-
 「島根県出雲市のビーントゥバーチョコレート -La Chocolaterie Nanairo(ラ ショコラトリ ナナイロ)-
 このほか「食文化関連記事一覧表・索引」の「食文化事例研究」にある「チョコレートの研究」を御参照ください。

2023年1月15日 (日)

福島県郡山市・柏屋の和菓子と萬寿神社(まんじゅうじんじゃ) -薄皮職人手づくり薄皮饅頭・柏屋薄皮饅頭・柏屋くしだんご-

 福島県郡山市を訪問しました。

 喜多方駅・会津若松駅から磐越西線を利用し,郡山駅に到着しました。

(磐越西線・郡山駅ホーム)
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 喜多方駅や会津若松駅と比べると,郡山駅は東北新幹線の駅でもある分,大規模で都会的な駅となっています。

(郡山駅)
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 郡山市には「薄皮饅頭」で有名な「柏屋」や,「ままどおる」で有名な「三万石」など,魅力的な菓子店がたくさんあります。

 今回は,郡山市内にある全国的にも珍しい饅頭にちなんだ神社「萬寿神社(まんじゅうじんじゃ)」と「柏屋」の薄皮饅頭を御紹介したいと思います。


菓祖神 萬寿神社

 郡山駅前のメイン道路をひたすら歩き,柏屋の店舗の1つ「開成柏屋」を目指しました。

 まだかまだかと歩き,やっとの思いで開成柏屋・萬寿神社に到着しました。

(萬寿神社案内看板)
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 案内看板を見つけた瞬間,「あっ,本当に饅頭の神社があるんだ!」と興奮しました。

 郡山駅からだと結構距離がある(約2.3km)ので,メイン道路を頻繁に運行している路線バス(福島交通)など公共交通機関を利用されるのが良いと思います。
 (私も往路は徒歩でしたが,復路(郡山駅方面)はバスを利用しました。)

(開成柏屋店舗)
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 萬寿神社は開成柏屋店舗に隣接しています。

 ただ初訪問だったので,どこにあるのかわからず,しばらく店舗を探し回りました。

(萬寿神社案内看板(照明灯))
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 照明灯の看板で店舗の奥に参道があることがわかり,心を落ち着けて神社へ向かいました。

(萬寿神社東参道入口)
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 写真左側が手水を行う「手水舎」,写真右側が「願掛け萬寿石(がんかけまんじゅういし)」です。

(願掛け萬寿石)
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 丸くてかわいらしい,まるでお饅頭のような「願掛け萬寿石」です。

 願い事を聞き届けてくれる願掛けの石です。

 さらに境内を進んでいくと,萬寿神社がありました。

(萬寿神社)
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 日本に饅頭を伝えた饅頭の祖「林浄因(りんじょういん)命」,日本に橘(たちばな・みかんの原種)を持ち帰った菓祖神「田道間守(たじまもり)命」,そして薄皮饅頭を作った柏屋初代の「本名善兵衛(ほんなぜんべい)命」の三柱の神様が祀られています。

(萬寿神社賽銭箱)
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 賽銭箱にも「萬寿(まんじゅう)」の字が記載されています。

 「美味しい饅頭がたくさん食べられますように」

 ちなみに,中国から日本へ饅頭を伝えたのは林浄因のほか,聖一国師(しょういちこくし,円爾(えんに))という説もあります。

 林浄因は奈良で中に小豆餡を入れた饅頭を作り,それが「塩瀬総本家」(拠点は奈良から京都,そして東京へ変遷)の「志ほせ饅頭」に受け継がれ,さらに福島・柏屋の「薄皮饅頭」へとつながっています。

 一方,聖一国師は博多(福岡)で酒饅頭の製法を伝え,それが「とらや」(拠点は京都から東京へ変遷)の「虎屋饅頭」に受け継がれています。

 「畿内説」か「九州説」か,邪馬台国論争のようなお話になりますが,いずれにせよ,小豆餡入りの饅頭が和菓子を代表するお菓子となり,現在に続いていることは確かです。


薄皮職人手づくり薄皮饅頭

 萬寿神社を訪問した後,隣接する開成柏屋でお菓子を買いました。

 店内で商品を見て回っていると,薄皮職人さん手づくりの薄皮饅頭が販売されていました。

 地元のお店でしか買えない貴重な薄皮饅頭です。

 この薄皮饅頭と「くしだんご」を購入しました。

(薄皮職人手づくり薄皮饅頭(化粧箱))
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 特別な薄皮饅頭だけに,化粧箱ののしに作られた薄皮職人さんのお名前まで記載されています。

(薄皮職人手づくり薄皮饅頭(包装紙))
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 包装紙も薄皮のような透けてみえる高級紙が使われています。

(薄皮職人手づくり薄皮饅頭(箱の中))
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 箱は柏屋薄皮饅頭と同じものが使われていますが,薄皮職人手づくり薄皮饅頭は柏屋薄皮饅頭と比べて一回り小さく,その分,箱の仕切りスペースの余裕が大きくなっています。

(薄皮職人手づくり薄皮饅頭)
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 包みには「郡山中町 御菓子 柏屋善兵衛 こし」と記載されています。

(薄皮職人手づくり薄皮饅頭(中身))
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 饅頭を切って中を確かめると,あんこがぎっしりで,見事な薄皮になっているのがわかりました。

 ほのかに黒糖の風味がする薄い饅頭(生地)と,口の中でさらりと溶ける絶妙な甘さのあんこ(こしあん)が特長の手づくり饅頭です。

 萬寿石のようなかわいい丸い形で,手に取って食べやすく,温かみを感じるのは手づくりならではです。

 一般に販売されている柏屋薄皮饅頭との違いを知るため,後日,柏屋薄皮饅頭も購入しました。

(柏屋薄皮饅頭(包装))
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 柏屋薄皮饅頭(季節限定・新あずき)の包装紙です。

(柏屋薄皮饅頭(化粧箱))
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 薄皮職人手づくり薄皮饅頭と同じ外箱ですが,薄皮のような半透明の包装紙はありません。

(柏屋薄皮饅頭(箱の中))
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 先に御紹介した写真「薄皮職人手づくり薄皮饅頭(箱の中)」と見比べていただくとわかるのですが,柏屋薄皮饅頭は箱の仕切りに合わせたジャストサイズとなっています。

(薄皮職人手づくり薄皮饅頭と柏屋薄皮饅頭(包装))
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 写真左側が薄皮職人手づくり薄皮饅頭,写真右側が柏屋薄皮饅頭です。

 包みのデザインも異なっています。

(薄皮職人手づくり薄皮饅頭と柏屋薄皮饅頭(中身))
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 それぞれの薄皮饅頭を切ってみました。

 写真左側が薄皮職人手づくり薄皮饅頭,写真右側が柏屋薄皮饅頭です。

 全体的に,手づくりの方がより薄皮になっていることがわかりました。

 特に饅頭の底の部分は,あんこが透けて見えるぐらい薄く仕上げられていました。

 食材は一緒なので,味については基本的に同じです。

 目の前に計16個の薄皮饅頭。

 萬寿神社での私の願い事は叶いました(笑)


柏屋くしだんご

 郡山駅から東北新幹線で東京駅へ向かいましたが,その新幹線の車中で,開成柏屋で購入した「柏屋くしだんご」をいただきました。

(柏屋くしだんご(こしあん))
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 店頭でこしあんとつぶあんが販売されていたので,私はこしあんを選びました。

 もっちりとやわらかい串団子に,ほどよい甘さのこしあんがきれいにまんべんなく塗られていました。


 福島県郡山市。饅頭好きなら一度は訪れたい饅頭の聖地です。


<関連サイト>
 「柏屋」(「開成柏屋」福島県郡山市朝日1-13-5 ほか)
 「菓祖神 萬寿神社」(福島県郡山市朝日1-13-5(開成柏屋敷地内))
 「日本三大まんじゅうとは」(柏屋)

<関連記事>
 「うどん・そば・饅頭・羊羹発祥の地 博多 -聖一国師と承天寺,禅料理と博多の食文化-

2022年10月29日 (土)

広島のレモン菓子・レモンケーキ20 -ファミリーマートのレモンケーキ(瀬戸内産レモン)(「サイクリングしまなみ2022」タイアップ商品)-

「サイクリングしまなみ2022」とファミリーマートのタイアップ商品

 2022年10月30日(日)に,「瀬戸内しまなみ海道」(西瀬戸自動車道)を舞台に大規模な国際サイクリング大会「サイクリングしまなみ2022」が開催されます。

 このサイクリング大会のすごいところは,広島県と愛媛県を結ぶ高速道路(瀬戸内しまなみ海道)を全面通行止めにし,その高速道路がサイクリングコースになるところです。

 美しい瀬戸内海とその島々を眺めながらサイクリングを楽しむことができます。

 この大会の開催に合わせ,ファミリーマートが「サイクリングしまなみ2022」とのタイアップ商品を期間限定・地域(中国・四国)限定で販売されています。

 瀬戸内産レモンを使用した「レモンケーキ(瀬戸内産レモン)」と四国乳業らくれん牛乳を使用した「ミニクリームパン(らくれん牛乳入りミルククリーム)」です。

 このファミリーマートのタイアップ商品の1つ「レモンケーキ(瀬戸内産レモン)」を御紹介します。


レモンケーキ(瀬戸内産レモン)

 広島市内のファミリーマートで「レモンケーキ(瀬戸内産レモン)」を購入しました。

(レモンケーキ(瀬戸内産レモン)(包装))
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 お昼に行くと,パンのコーナーに4~5個まとめて販売されていました。

 レモンケーキという名称ですが,一般的な菓子パンと同じサイズです。

(レモンケーキ(瀬戸内産レモン))
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 袋から取り出してみると,ビッグサイズのレモンケーキが登場しました。

 大きさは,長さ約15cm,幅約8cm,高さ約5cmです。

 表面には,底も含めてまんべんなく黄色いレモンチョコレートがコーティングされています。

 もしレモンチョコのコーティングがなければ,この大きさや形は広島など西日本の一部地域で呼ばれている「メロンパン」そのものです。
 (こうした地域では,丸い形の「メロンパン」は「サンライズ」や「コッペパン」と呼びます。)

 中身を見てみましょう。

(レモンケーキ(瀬戸内産レモン)(中身))
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 フワフワのケーキ生地の中にはクリームがたっぷりはさまれています。

 いただいてみました。

 レモンチョコにしっかりとしたレモンの風味と酸味を感じました。

 冷蔵庫で少し冷やしていただくと,レモンチョコのパリッとした食感とケーキ生地のフワッとした食感を一度に楽しめました。

 そしてこのレモンケーキの最大の特長は,何と言っても中のクリームです。

 しばらく食べ続けていると,ホイップクリームに瀬戸内産レモンゼリーが混ぜ込まれていることに気付きました。

 この特製クリームには,まるで生のレモンをかじった時のような強いレモン風味と酸味が感じられ,同じくレモン風味豊かなレモンチョコと一緒になって,しっかりとしたレモンの風味と酸味が楽しめました。

 これなら全国,世界各地から訪問されたサイクリストの皆様へ瀬戸内産レモンの魅力をPRすることができます。

 実際,大会当日には,サイクリストや大会関係者向けにこのレモンケーキが用意されるようです。


 サイクリストの皆さん,愛媛県と広島県の美しい瀬戸内海や島々を眺めながらサイクリングを楽しんでください。

 そしてお土産は,レモンケーキをはじめとする瀬戸内の産品をたくさんお買い求めください!


<関連サイト>
 「サイクリングしまなみ」(サイクリングしまなみ2022実行委員会)
 「しまなみ海道の絶景が舞台の国際サイクリング大会「サイクリングしまなみ2022」タイアップ商品発売」(ファミリーマート)

<関連記事>
 「広島のレモン菓子・レモンケーキ14 -しまなみレモンバイク・瀬戸田レモンケーキ・瀬戸田レモネード・瀬戸内レモン丼-
 「広島のレモン菓子・レモンケーキ15 -汐待亭の「揚げレモンケーキパフェ」と梅月堂の「すっぱい瀬戸田レモンケーキ」-
 「広島のレモン菓子・レモンケーキ18 -尾道市瀬戸田町の魅力・島ごころ・向栄堂・尾道グリーンスローモビリティ・意外なレモンケーキの歴史-

<レモンケーキ関連記事>
 「レモンのお菓子」(「chibiaya日記」)
  埼玉県在住のchibiayaさんが,関東で販売されているレモンケーキを中心に,レモンケーキの情報を詳しく紹介されています。
 当ブログ「食文化関連記事一覧表・索引」の「食文化事例研究」にある「レモンケーキ・レモン菓子」も御参照ください。

2022年9月18日 (日)

フードテックの世界 -培養肉と食用コオロギ(コオロギせんべい・コオロギチョコ)-

 広島バイオテクノロジー協議会が主催する「令和4年度 広島バイオフォーラム」(令和4年7月28日)に参加しました。

 今回のテーマは「機能性食品とフードテック」で,食の最先端の世界が紹介されました。

 「フードテック」は「フード」と「テクノロジー」を掛け合わせた造語で,最先端の技術を活用し,イノベーションによって食の可能性を広げる取組みのことです。

 今回は,この広島バイオフォーラムで学んだフードテックの世界と,それに関連する食を御紹介したいと思います。


「日本初!食べられる培養肉の作製」

 日本を含む世界中で「SDGs(エスディージーズ):持続可能な開発目標」に取り組まれている中,食肉の世界においても,その生産に伴う環境負荷や将来の世界的な人口爆発に伴う食糧難への懸念,菜食主義者(ヴィーガン・ベジタリアン)の増加などを受けて変化の兆しがみられます。

 具体的には,大豆ミートに代表される「プラントベースフード(植物由来食品)」,昆虫食をはじめとした「代替タンパク質」,食べられる「培養肉」などの研究が進められています。

 日本でもこうした分野の研究が進められており,このうち「培養肉」の分野では,東京大学と日清食品がトップランナーとなって研究されています。

 今回のフォーラムでは,東京大学大学院情報理工学系研究科特任助教の島 亜依さんから「培養肉」の研究成果について御報告いただきました。

【主な講演内容】
○世界人口の増加に伴い食肉需要が増え続ける見込みの中,現行の畜産を拡大させることには限界があり,近い将来,食肉の需要が供給を上回る事態となる可能性がある。

○そうした事態の解決策の1つとして,家畜から採取した筋肉の細胞を培養液の中で増やし,その増やした細胞を使って食肉を作る試みがある。

○食肉の世界は,「狩猟」(食肉1.0)→「畜産」(食肉2.0)→「培養肉」(食肉3.0)へと進んでいくだろう。

○培養肉には,①食糧難を解決できる,②環境負荷が少ない,③「アニマルウェルフェア」(動物愛護・動物福祉)を実現できる,④家畜伝染病などの影響を受けない,という大きな4つのメリットがある。

○オランダ・マーストリヒト大学のマーク・ポスト博士によって開発された世界初の培養肉バーガーの値段は,約3,250万円(25万ユーロ)。

○アメリカ・イートジャスト社がシンガポールで販売認可を受けた培養肉のチキンナゲットは,1皿約2,000円。

○東京大学の研究グループでは「培養ミンチ肉」の作製から,次のステップとなる筋繊維が同じ方向に並んだ「培養ステーキ肉」の作製に取り組んでいる。

○「培養ステーキ肉」は,動物の筋肉構造と同じく,組織の両端を固定して細胞を一方向に並べることで肉の食感を出すことを目標としている。

○培養肉を作るだけでなく,実際に人間が食べられる肉にすることが求められるが,このハードルが高い。


 現在,食肉を安定的に確保する主な手段は「畜産」ですが,これがいずれ「培養肉」にシフトする可能性もあるというお話は衝撃的でした。

 フォーラムには,畜産(行政)に携わっている方も多く参加されていたので,私と同じような感想を持たれた方も多かったのではないかと思います。

 また,培養液の中で筋肉細胞を増殖させるだけでなく,その細胞を一方向に並べて筋繊維を作り,肉の食感をも本物に近づけるという画期的な取組みも興味深く,培養肉の分野が現実の世界にどんどん近づいているように感じました。


「循環型食品としての食用コオロギの可能性」

 続いて,株式会社グリラスの代表取締役社長・徳島大学バイオイノベーション研究所講師の渡邉崇人さんから,代替タンパク質としての食用コオロギの研究成果について御報告いただきました。

【主な講演内容】
○今後,世界人口の増加に伴い,動物性タンパク質の不足が深刻となる事態「タンパク質クライシス」が到来すると言われている。

○環境負荷の低い新たな次世代タンパク源として「フタホシコオロギ」に注目し,研究開発を進めている。

○食品残渣(残った食品・廃棄する食品)を利用してコオロギを飼育する技術開発にも取り組み,食料を循環生産するための研究も進めている。

○コオロギは飼いやすく,成長が早く,食性(食べるもの)が広い。このような特性を持つ昆虫は,コオロギとミールワーム類しかいない。

○コオロギはエビやカニと同様に,足がとれてもまた生える(再生芽)特徴があり,人にも応用できないか研究が進められている。

○コオロギの食味の改善,甲殻類アレルギーの除去,巨大化・家畜化などをゲノム編集技術レベルで進めている。

○世界でも昆虫食マーケットは拡大傾向にある。

○昆虫食の課題は,①嫌悪感,②健康不安(アレルギー),③味への不安をどうクリアさせるか。

○食品工場に昆虫(コオロギ)を持ち込むこと自体に拒否反応を示す会社も多い。

○食品工場での障壁は,①心理的な嫌悪感,②既存商品への影響,③アレルギー表示の問題

○一方で,無印良品,Pasco(パスコ),UHA味覚糖,ロッテ,日清食品,ZIPAIR(ジップエア),ファミリーマートなど昆虫食導入に前向き・協力的な会社も出てきている。

○食用コオロギが当たり前の食材になることを願っている。


 食品工場や調理現場で虫が発生すれば大きな問題となりますが,食用コオロギを使った食品製造においても,それが食品メーカーに同様の話として扱われる(消費者に同様のイメージを持たれる)ことをどうクリアさせるかが大きな課題と言えそうです。


コオロギせんべい

 株式会社良品計画と株式会社グリラスが共同開発された,コオロギの粉末を使ったお菓子を2つ御紹介します。

 1つ目は「コオロギせんべい」です。

(コオロギせんべい(無印良品・包装))
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 包装には,
「これからの地球のことを考えて,コオロギのパウダー入りせんべいを作りました」
「エビのような香ばしい風味が特長です」
と紹介されています。

 ミニサイズのえびせんべいのようなお菓子です。

 当初は取扱店舗が限定されていましたが,徐々に取扱店舗が拡大されています。

(コオロギせんべい(無印良品))
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 一口サイズで,コオロギの粉末がたっぷりとかけられています。

 臭みはなく,細かい粉末にされているので(コオロギの殻の)ジャリジャリ感もありません。

 馬鈴薯でんぷんが主原料なので,パリパリでとても軽い食感のせんべいです。

 シンプルな塩味で,クセがないのでいくらでも食べられます。

 「コオロギせんべい」と表記されてなければ,コオロギ粉末入りだと意識されることもないでしょう。


コオロギチョコ

 続いては「コオロギチョコ」です。

(コオロギチョコ(無印良品・包装))
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 無印良品店舗の一角に,コオロギせんべいと一緒にどっさりと販売されていました。

 包装には,
「コオロギパウダーを入れたチョコレートバーです」
「高たんぱくに仕上げました」
と説明されています。

 確かに,食材にコオロギの粉末を混ぜることにより,たんぱく質の含有量が高められるというメリットがあります。

(コオロギチョコ(無印良品))
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 ずっしりとした重さがあり,チョコレートとオレンジの甘い香りがしました。

 いただいてみると,コオロギせんべいと同様,コオロギ粉末が入っているという違和感が全くなく,美味しいチョコレートバーでした。

 ずっしりとしているので「カロリーが高いのでは」と栄養成分表示を確認してみると,1本あたり平均184キロカロリーで意外と低いことがわかりました。

 その理由は,サクサクの大豆パフにあるようです。

 チョコレートとオレンジの相性は抜群ですが,それにコオロギ粉末と大豆パフを加え,美味しくて食べやすいチョコレートバーに仕上げられています。


まとめ

 無印良品のお菓子をいただき,日本でも身近なおやつとして昆虫食が食べられる時代になったことを実感しました。

 培養肉の分野も昆虫食の分野も「SDGs」にそった取組みですが,今後は「物珍しさではなく,より身近で一般的な,美味しい食品として受け入れられる環境づくり・仕組みづくり」が求められると思います。

 いくら環境への負荷が少なく,高たんぱく質であることを売りにしても,美味しさが伴わなければリピートされにくいからです。

 日本でも,精肉店に培養肉が並び,食事店のメニューに当たり前のようにコオロギ料理(昆虫料理)がある時代が,意外と早く到来するかも知れませんね。


<関連サイト>
 「広島バイオテクノロジー推進協議会」(事務局:広島県農林水産局農業技術課)
 「培養ステーキ肉」(東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻)
 「株式会社グリラス」(徳島県鳴門市撫養町黒崎字松島45-56)
 「徳島大学バイオイノベーション研究所」(徳島県名西郡石井町石井字石井2272-2)
 「コオロギが地球を救う?」(無印良品)
 「Pasco コオロギカフェ」(Pasco)

<関連記事>
 「昆虫食の研究6 -コオロギラーメン-
 「カンボジア料理の特徴と主な料理9 -コンポントム市場をめぐる(前編) 野菜・果物・炒り米・昆虫食-

<参考文献>
 テキスト「令和4年度 広島バイオフォーラム」広島バイオテクノロジー協議会
 石川伸一「「食」の未来で何が起きているのか 「フードテックのすごい世界」」青春新書
 「料理王国 2020年12月号」ジャパン・フード&リカー・アライアンス

2022年7月17日 (日)

新幹線車内で駅弁とレモンケーキを味わう -上越新幹線・JR貨物コンテナ弁当・湘南ハニーレモン・ホットサンドスペシャル-

 2022年6月中旬に神奈川県と新潟県を訪問しました。

 神奈川県藤沢市湘南台で1泊し,翌朝,東京駅から上越新幹線を利用して新潟県へ向かいました。

 今回は,新潟県へ向かう上越新幹線車内で味わった駅弁とお菓子などを御紹介したいと思います。


グランスタ東京「駅弁屋 祭」と上越新幹線

 朝,東京駅に着いた私は,新幹線車内で食べる駅弁を買うことにしました。

 東京駅構内の商業施設「グランスタ東京」に「駅弁屋 祭」という大型駅弁販売店があります。

 日本各地の200種類を超える駅弁が販売されている,日本一の駅弁屋です。

 店内を回ってみて,その圧倒的な種類の多さに驚きました。

 全国の珍しい駅弁や入手困難な駅弁も山積みで販売されており,地方とのレベルの違いを感じました。

 どれにしようかと目を輝かせながら選んでいると,前々からいつか味わってみたいと思っていた駅弁が販売されていました。

 「ひっぱりだこ飯」で有名な「淡路屋」(神戸市)が2022年1月1日から販売している「JR貨物コンテナ弁当・神戸のすきやき編」です。

 SNSやマスコミで話題となり,一時期はインターネット販売でも入手困難となった駅弁です。

 これから乗車する上越新幹線の車両に合わせた「新幹線E7系弁当」と迷いましたが,今回は「JR貨物コンテナ弁当」を購入することにしました。

 買い物を済ませた私は,JR東日本の「新幹線eチケットサービス」を利用し,交通系ICカードで自動改札機を通りました。

 東海道・山陽新幹線の「チケットレスサービス」を利用した場合は,自動改札機を通過する際に紙の「EXご利用票」(控え)が発行されるのですが,今回の「新幹線eチケットサービス」では自動改札機から紙製の利用票は発行されませんでした。

 「利用票があると,列車名や座席番号が記載されているので便利なんだけどな…」と思いつつホームへ向かっていると,スマートフォンに1通の電子メールが届きました。

 自動改札機の通過と同時に電子メールが届き,それで列車名や座席番号を確認するという完全なチケットレスシステムなのです。

 このシステムに感心しながら,ホームで上越新幹線の入線を待ちました。

(東京駅21番ホーム・発車案内表示器)
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 今回私が乗車する上越新幹線は,東京駅8時52分発「とき」309号・新潟行きです。

 上越新幹線の乗車は初めてなので,心がトキめきます。

 やがて21番ホームに上越新幹線「とき」309号が入線しました。

(上越新幹線「とき」309号・東京駅21番ホーム入線)
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 駅員:「列車が参ります。黄色い線より下がってお待ちください。危険ですから黄色い線より下がってお待ちくださーい!」

(東京駅21番ホーム・上越新幹線「とき」309号・新潟行)
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 かつて上越新幹線と言えば2階建ての「E4系 Max」が有名でしたが,現在は北陸新幹線と同じE7系で運行されています。

(上越新幹線車内(E7系))
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 しばらくして出発時刻を迎え,「とき」309号は静かに東京駅を出発しました。


淡路屋「JR貨物コンテナ弁当・神戸のすきやき編」

 大宮駅を過ぎたあたりで駅弁をいただくことにしました。

(淡路屋「JR貨物コンテナ弁当・神戸のすきやき編」(包装))
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 こちらが淡路屋の「JR貨物コンテナ弁当・神戸のすきやき編」です。

 JR貨物のコンテナの形をしたパッケージで,まさに鉄道マニア・鉄オタ向けの駅弁です(笑)

 新幹線でJR貨物の弁当を食べるというギャップも楽しめそうです。

 それでは箱を開けてみましょう。

(淡路屋「JR貨物コンテナ弁当・神戸のすきやき編」(中身))
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 中ぶたに伸縮式・プラスチック製の箸が入っており,その中ぶたを取り出すと,すき焼き弁当がお目見えしました。

 パッケージといい,伸縮式・プラスチック製の箸といい,機能性や効率性を重視されているところに,コンテナ貨物らしさを感じました。

 すき焼きの具は,牛肉,ネギ,白菜,玉ねぎ,しらたき,焼き豆腐,人参,椎茸でした。

 ご飯には,すき焼きのたれがたっぷりしみ込んでいました。

 箱型で深さが6~7cmあり,ご飯が底までたっぷり入っていました。

 正直なところ,この形は少し食べづらいのですが(笑),それも楽しみの1つです。

 甘辛く煮たすき焼きとご飯を交互に,美味しくいただきました。

 ちなみに,コンテナをのせる貨車の荷重を示す記号は,軽いものから順に「ム」・「ラ」・「サ」・「キ」と表現されます。

 淡路屋さん,これにちなんで,貨物コンテナ弁当に「ムラサキ」という名で醤油を付けるというアイデアはいかがでしょうか(笑)


湘南クリエイティブガトー葦「湘南ハニーレモン」

 駅弁を味わった後,デザートとしてレモンケーキをいただきました。

 前日に「湘南クリエイティブガトー 葦 湘南台店」で購入した「湘南ハニーレモン」です。

(湘南クリエイティブガトー葦「湘南ハニーレモン」)
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 レモン果汁のアイシングでコーティングされたレモンケーキです。

 5月から8月までの限定販売商品です。

(湘南ハニーレモン(中身))
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 中には大粒のレモンピールが入っています。

 いただきました。

 ケーキ生地にはレモン果汁がたっぷり含まれ,レモンピールもザクザク入っていました。

 また,アイシングにもレモンの酸味を十分感じるほどたっぷりのレモン果汁が入っていました。

 それらが口の中で一体となり,まるでレモンをかじっているかのように鮮烈なレモン風味がするレモンケーキでした。

 ケーキ生地にもアイシングにもレモンの酸味・風味をしっかり感じる,大満足のレモンケーキでした。


湘南クリエイティブガトー葦「ホットサンドスペシャル」と「アメリカンコーヒー」

 前日に「湘南クリエイティブガトー 葦 湘南台店」のカフェを利用したので,その時の軽食・ドリンクも御紹介します。

 軽食のメニューには,サンドイッチ,ホットドッグ,ピザ,グラタンなどがありました。

 私はちょっと贅沢に「ホットサンドスペシャル」と「アメリカンコーヒー」を注文しました。

(ホットサンドスペシャルとアメリカンコーヒー)
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 トマト,レタス,キュウリ,ゆで卵,チーズ,ベーコンが入ったホットサンドです。

 カリッと焼き上げられたパン,新鮮な野菜,ゆで卵とチーズの濃厚なコク,焼きたてのベーコン,それにたっぷりのバター・マヨネーズとアクセントのマスタードを絡めていただくホットサンドは,お腹を満たすだけでなく,心まで幸せにしてくれました。

 そしてアメリカンコーヒーともよく合いました。

 店内はお客さんの列が途絶えることがなく,人気の高さが伺えました。


上越新幹線で新潟へ

 再び上越新幹線のお話に戻ります。

 上越新幹線車内での食事を終え,一息ついていると,列車は群馬県の上毛高原駅に到着しました。

(上越新幹線「とき」309号・上毛高原駅停車)
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 次はもう新潟県内の駅です。

 そして新潟県内に入ると,車窓から広い平野と田んぼが広がる様子が伺えました。

(上越新幹線車窓からの眺め(長岡駅-燕三条駅間))
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 さすが米どころ新潟,規模が違います。

 私はこのあと燕三条駅で下車し,新潟の旅を開始しました。


<関連サイト>
 「駅弁屋 祭 グランスタ東京店」(東京駅構内)
 「淡路屋」(兵庫県神戸市東灘区魚崎南町3-6-18)
 「湘南クリエイティブガトー 葦」(藤沢湘南台店・神奈川県藤沢市湘南台1丁目4-3 ほか)
 「湘南クリエイティブガトー葦の湘南ハニーレモン。」(「chibiaya日記」)

<関連記事>
 「新幹線車内でレモンケーキを味わう -山陽新幹線・東北・北海道新幹線・さかたやのレモンケーキ-
 「クルーズフェリー船内でレモンケーキを味わう -シーパセオの廣島檸檬ケーキ・レモネード・軽食・パフェ,サンイートのレモンケーキ-
 「神奈川の食文化探訪1 -釜揚げしらす・コーンフレーククッキー・湘南チーズパイ・鵠沼魚醤-
 「高速クルーザー「シースピカ」に乗って瀬戸内を楽しむ -しまたびレモンケーキ・大長レモネード・ふわりーぬ・瀬戸内広島お好みソース-

2022年3月 6日 (日)

広島のレモン菓子・レモンケーキ19 -「ミニヨン」のお菓子,広島県内の洋菓子・焼き菓子の特徴-

 広島で売られているレモン菓子・レモンケーキを御紹介するシリーズです。

 今回は広島市東区のレモン菓子・レモンケーキを御紹介し,あわせて広島県内のレモンケーキ・ブランデーケーキ・バターケーキ・ロールケーキなど洋菓子・焼き菓子の特徴についてもお話ししたいと思います。


広島のレモンケーキとブランデーケーキをお取り寄せ

 当ブログの読者で,全国のレモンケーキにお詳しいchibiayaさんのブログ記事に,御自分のお誕生日に合わせ,広島からレモンケーキとブランデーケーキをお取り寄せ注文されたお話が紹介されていました。

 私は,注文されたのが地元・広島のどこのお店なのか,とても興味を持ちました。

 ヒントは,レモンケーキとブランデーケーキをお取り寄せでも扱っておられる広島のお店です。

 広島ならではの代表的な洋菓子と言えば,「レモンケーキ」,「ブランデーケーキ(洋酒ケーキ)」,「バターケーキ」が挙げられますが,これらのお菓子を組み合わせ,お取り寄せでも対応されているお店となると,数が絞られてきます。

 「もしかしてあのお店かも…」と思い始めると居ても立っても居られなくなり(笑),すぐにその思いついた店へ車を走らせました。


ケーキハウス「ミニヨン」

 私が今回,広島市南区の自宅から車で向かったお店は,広島市東区光町にあるケーキハウス「ミニヨン」です。

(ケーキハウス「ミニヨン」店舗)
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 「ミニヨン」は,地元・広島ではシュークリームで有名なお店です。

 私はレモンケーキとブランデーケーキ,そして2種類のシュークリームを購入しました。


「広島瀬戸内レモンケーキ」

 レモンケーキはバラ売りで購入しました。

(ミニヨン「広島瀬戸内レモンケーキ」(包装))
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 店名が入った「ミニヨン」オリジナルの包装です。

(ミニヨン「広島瀬戸内レモンケーキ」)
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 サイズは横約7.5cm,幅約5.5cm,高さ約4cmで,レモンケーキの中では大きい方です。

(ミニヨン「広島瀬戸内レモンケーキ」(中身))
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 しっとりした生地で,大きめのレモンピールも入っています。

 バターがたっぷりと含まれた生地をじっくりと焼き上げられているため,バターの風味が豊かで,深いコクも味わえました。

 コーティングされているレモンチョコレートは,パリッとして酸味は控えめでした。

 広島のバターケーキに似たバター風味豊かなケーキ生地に,ザックリと大きめのレモンピールが入った,広島ならではのレモンケーキでした。

 ミニヨンではバターケーキも販売されていることから,その特長をレモンケーキにも生かされているように思いました。


シュークリームとレモンクリームシュー

 続いては,「ミニヨン」の看板商品の1つとなっているシュークリームです。

(ミニヨンのシュークリームとレモンクリームシュー(包装))
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 写真左が定番人気のシュークリーム,右がレモンクリームシューです。

 シュークリームは看板商品の1つだけに,その種類は多く,ほかにもクッキーシュー,チョコシュー,抹茶シュー,苺クリームシューなどが用意されていました。

 このうちシュークリームとクッキーシューだけは,店頭の冷蔵陳列ケースに並べられておらず,注文を受けてからカスタードクリームを詰める販売方法となっています。

(ミニヨン「シュークリーム」)
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 こちらがシュークリームです。

 見た目は一般的なシュークリームと変わりませんが,食べてみるとそのシュー生地にかなりもっちりとした弾力があることがわかりました。

 カスタードクリームもしっかりと卵黄とバニラ風味を感じる王道のカスタードクリームでした。

(ミニヨン「レモンクリームシュー」)
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 続いてレモンクリームシューです。

 こちらはシュー生地の上にレモンチョコレートがかけられており,中のクリームもレモン風味のカスタードクリームに仕上げられています。

 レモンチョコレートも中のレモンカスタードクリームもレモンの風味・酸味を強く感じました。

 興味深かったのは,同じお店の商品でありながら,レモンクリームシューとレモンケーキでは,それぞれに使われているレモンチョコレートの味が異なっていることです。

 レモンケーキに,レモンクリームシューに使われているような強いレモン風味と酸味が楽しめるレモンチョコレートを使ってみるのも良いのではないかと思います。


ブランデーケーキ

 最後にブランデーケーキを御紹介します。

 ミニヨンでは1本ずつ箱売りされています。

(ミニヨン「ブランデーケーキ」(箱))
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 広島県内にはブランデーケーキ・洋酒ケーキを販売されているお店がたくさんありますが,その多くは個包装で,このお店のように1本丸ごと販売されていることは珍しいです。

 このブランデーケーキは,贈答・お土産用としても喜ばれると思います。

 箱を開けてみました。

(ミニヨン「ブランデーケーキ」(開封))
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 ブランデーケーキは,お酒が含まれていることもあってか,たいてい銀色のアルミ袋やアルミ箔で包装されています。

 ブランデーケーキの1本買いは初めてなので,興味津々で包装を取り外しました。

(ミニヨン「ブランデーケーキ」)
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 サイズは長さ約20cm,幅約6cm,高さ約4.5cmです。

 ケーキを焼いた時の割れ目があるのでわかりづらいですが,写真手前の表面に「ケーキハウス ミニヨン」と焼き印がされています。

 ケーキを手で持ち上げると,指がケーキにのめり込んでしまうほど,やわらかいケーキです。

 包丁でカットしました。

(ミニヨン「ブランデーケーキ」(カット))
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 ケーキの底にはブランデーシロップがたっぷりしみ込んでいます。

 広島のブランデーケーキ(洋酒ケーキ)は,カステラに甘い洋酒シロップをしみ込ませたものが多いのですが,「ミニヨン」ではカステラではなく,スポンジケーキのようなやわらかいケーキで作られています。

 そのため,カステラよりも一回り小さく,より軽くきめ細かな舌触りで,ケーキ全体にブランデーシロップの甘い香りが行き渡っていました。

 ちなみに後日,chibiayaさんのブログを訪問すると,私の予想どおり「ミニヨン」でお取り寄せされた旨の記事がアップされていました。

 当たって嬉しかったと同時に,埼玉からよくこのお店を見つけられたなと改めて感心しました。


 「ケーキハウス ミニヨン」(広島市東区光町1-6-16)


広島県内で販売されている洋菓子・焼き菓子の特徴

 「ミニヨン」と言えばシュークリームというイメージだったのですが,広島の代表的な洋菓子「レモンケーキ」・「ブランデーケーキ」・「バターケーキ」すべてが揃ったお店でもあることがわかりました。

 広島県内には,レモンケーキは尾道市瀬戸田・「しまなみ海道」を中心とした瀬戸内地域(県南部),ブランデーケーキは三次市・庄原市・府中市上下町など備後地域(県北部・東部),バターケーキは呉市や広島市など安芸地域(県西部)と,それぞれメインとなる地域がバランスよく存在しています。

 また,これらの洋菓子はすべて,カステラの製法をベースに生み出されていることも大きな特徴です。

 そのため,カステラをベースにした「もみじ饅頭」や,分厚い皮とずっしりとした重さが特徴の「ロールケーキ(ロールカステラ・イタリアンロール)※」もまた,広島ならではのお菓子となっているのです。
 ※江田島市・尾道市瀬戸田町など瀬戸内海地域(県南部)が中心となっています。

 こうした経緯から,広島県内の洋菓子店では,「レモンケーキとブランデーケーキ」,「レモンケーキとバターケーキ」,「レモンケーキとロールケーキ」,「バターケーキともみじ饅頭」といった複数の組合せで販売されているところも多く,お土産店やお土産コーナーには,当然のことながら,これらのお菓子がずらりと並んでいます。

 これに日本では広島が発祥となるバウムクーヘンを加えれば,広島の特徴的な洋菓子・焼き菓子はほぼカバーできていると言えるでしょう。

 こうしたお話を参考に,広島県内のお店や全国のアンテナショップ,銘品コーナーなどで広島ならではの美味しい洋菓子・焼き菓子が見つけていただけると幸いです。


<関連リンク>
 「レモンのお菓子」(「chibiaya日記」)
 埼玉県在住のchibiayaさんが,関東で販売されているレモンケーキを中心に,レモンケーキの情報を詳しく紹介されています。

<レモンケーキ関連記事>
 「食文化関連記事一覧表・索引」の「食文化事例研究」にある「レモンケーキ・レモン菓子」を御参照ください。

<関連記事>
 「レモンケーキとブランデーケーキ -レモンケーキが今も支持されている理由-

2022年2月 6日 (日)

広島のレモン菓子・レモンケーキ18 -ショコラトリーエス「瀬戸内レモン」とパティスリーメイ「レモンケーキ」(「バトンドール」と「はじけるキャンディチョコレート」)-

 広島で売られているレモン菓子・レモンケーキを御紹介するシリーズです。

 今回は広島市東区のレモン菓子・レモンケーキを御紹介します。

 そして最後に,今回の情報を提供してくださった方とのエピソードでまとめたいと思います。


ショコラトリーエス・ボンボンショコラ「瀬戸内レモン」

 広島市東区尾長にあるチョコレート専門店「ショコラトリーエス(Chocolaterie S)」

 2021年10月16日にオープンしたお店です。

 高級チョコレートを取り扱われており,パティシエの辻口博啓さんとも親交がおありのお店との情報を得て,伺いました。

 お店には,ボンボンショコラ(一口サイズの詰め物入りチョコレート)をはじめ,キャラメリゼ,チョコレートシュークリーム,ショコラタブレットなど様々なチョコレートが販売されていました。

 私は,ボンボンショコラをいくつか購入することにしました。

 20種類前後あるので,どれを買おうか迷いますが,まずは純粋にハイカカオチョコレートが味わえる「エクアドル75%」と「ペルー75%」を選びました。

 そして新発売の「ヴァンルージュ」(フランス語で「赤ワイン」という意味)も選びました。

 さらに陳列棚を眺めていると…さりげなく「おすすめ」と書かれたボンボンショコラを見つけました。

 「瀬戸内レモン」のボンボンショコラです。

 「これだっ!」と思い,「瀬戸内レモン」も選びました。

(ボンボンショコラと一覧表)
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 ※画像をクリックすると拡大します。

 プレゼント用も含めて,単品で4種・6個のボンボンショコラを購入しました。

(ボンボンショコラ4種)
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 写真左上の無地が「エクアドル75%」,右上が「ペルー75%」,右下のキラキラのチョコレートが「ヴァンルージュ」,そして左下の黄色いチョコレートが「瀬戸内レモン」です。

(ボンボンショコラ「瀬戸内レモン」)
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 ボンボンショコラ「瀬戸内レモン」です。

 一口サイズ(横約3.5cm,幅約2.5cm,高さ約1.5cm)のチョコレートです。

 黄金色に輝くレモンの形をしたボンボンショコラです。

 いただいてみると…「おおっ,これは!」という驚きがありました。

 中のガナッシュがふわっと柔らかくてレモンの酸味があり,まるでレモン風味のレアチーズケーキを食べているかのような味・食感だったからです。

 中身を確認してみましょう。

(ボンボンショコラ「瀬戸内レモン」(中身))
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 ボンボンショコラ「瀬戸内レモン」の中身です。

 瀬戸内レモンの果汁を使った白いガナッシュが,レモンチョコレートとダークチョコレートでコーティングされています。

 底はマカダミアナッツを使ったプラリネです。

 薄くきれいにコーティングされたレモンチョコレートとダークチョコレート,レモン風味のレアチーズケーキのようなガナッシュ,そしてサクサクとした食感のナッツプラリネが口の中で1つとなり,幸せな気持ちになりました。

 この「瀬戸内レモン」は,私もおすすめの一品です。

 このほか「エクアドル75%」や「ペルー75%」は,中に濃厚なチョコレートのガナッシュが入っていて,タブレットチョコレート(板チョコ)よりさらに深いカカオの風味とコクを味わえました。

 この2つのチョコレートには,エクアドルやペルーの最高品質のカカオが使われているとのことです。

 また「ヴァンルージュ」は,中に濃い赤ワイン風味のガナッシュが入っており,まさにワインとチョコレートのマリアージュが楽しめる一品でした。

 一粒のチョコレートが人をこんなに幸せにするとは…すごいパワーを感じました。


 「ショコラトリーエス」(広島市東区尾長西1-6-37 メゾンドツルヤ102)


パティスリーメイ「レモンケーキ」

 続いて,広島市東区若草町にある洋菓子店「パティスリーメイ」の「レモンケーキ」を御紹介します。

 このお店のウェブサイトのトップページにレモンケーキが紹介されていることから,レモンケーキが看板商品の1つであることは間違いありません。

(パティスリーメイ「レモンケーキ」(包装))
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 レモンケーキは,お店の入口に箱売り・バラ売りともたくさん用意されていました。

 包装の中には,レモンケーキが型崩れしないよう受け皿(トレー)まで入っており,お店のレモンケーキにかける思い入れが感じられました。

(パティスリーメイ「レモンケーキ」)
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 サイズは横約7.5cm,幅約5cm,高さ約3.5cmです。

 レモンの形でレモンチョコレートがコーティングされている,クラシカルなレモンケーキです。

(パティスリーメイ「レモンケーキ」(中身))
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 いただいてみました。

 きめ細かくしっとりとしたバター風味のケーキで,中にはマーマレードのようなレモンピールが入っています。

 これだけでも美味しいレモンケーキなのですが,今回最も感動したのがコーティングされているレモンチョコレートです。

 パリパリした食感のレモンチョコレートで,かみしめる度にジュワっとレモンの強い酸味を感じるのです。

 これまで数多くのレモンケーキをいただきましたが,このレモンチョコレートのレモンの酸味は間違いなくトップクラスです。

 レモンのさわやかさと酸味が強く感じられるレモンチョコレートとケーキ生地を一緒にいただくと,まるで生のレモンをかじっているかのような味わいでした。


 「パティスリーメイ」(広島市東区若草町1-15)


職場仲間から食仲間へ

 今回御紹介したお店「ショコラトリーエス」は,同じ職場の職員から教えてもらった情報です。

 そこで後日,その方にお礼として「エクアドル75%」を1個プレゼントしました。

 喜んでもらえたようで,その後,また珍しいお菓子をいただきました。

 グリコの「バトンドール」とメリーの「はじけるキャンディーチョコレート」です。

(グリコ「バトンドール」とメリー「はじけるキャンディチョコレート」(包装))
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 「バトンドール」はグリコの拠点・関西の店舗を中心に限定販売されているお菓子です。

 メリーの「はじけるキャンディチョコレート」も期間限定で販売されているようです。

(グリコ「バトンドール」とメリー「はじけるキャンディチョコレート」)
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 「バトンドール」は「ショコラ」と「シュガーバター」を,「はじけるキャンディチョコレート」は「メロンクリームソーダ」をいただきました。

 「バトンドール」はポッキーの豪華版です。

 「ショコラ」はエクアドルのチョコレートをプレッツェルにたっぷりとコーティングしたもので,深みのある高級チョコレートとバターの香り豊かなプレッツェルが見事にマッチしていました。

 「エクアドルチョコレート返し」という意味が込められているのかも知れません(笑)

 「シュガーバター」は澄ましバターのリッチな美味しさをダイレクトに味わえるスティックで,「プリッツ・バター味」が好きな私にぴったりのお菓子でした。

 一方,「はじけるキャンディチョコレート」の「メロンクリームソーダ」は,メロンフレーバーのチョコレートの中にはじけるキャンディが散りばめられていて,メロンの香りと舌でプチプチはじける粒々キャンディの食感が楽しいチョコレートでした。

 「味の素ゼネラルフーヅ(味の素AGF)」のはじけるキャンディ「ドンパッチ」を思い起こさせる美味しくて楽しいチョコレートでした。


 仕事に食に様々な形でお世話になった方ですが,先日,任期満了でこの職場を卒業されました。

 最後のお別れの時,彼女が冗談交じりに私のことを「(食の)先生です」と言ってくれたことが嬉しかったです。

 東京限定のお菓子「萩の調 釉」も含め,むしろ私の方がいろんな食の情報を教えていただきました。

 これまでは職場仲間として,これからは食仲間として当ブログの読者であり続けてくれたらいいなと思いつつ,感謝の気持ちでお見送りしました。


 「バトンドール(Bâton d'or)」(江崎グリコ)
 「メリーチョコレート」(メリーチョコレートカムパニー)


<関連リンク>
 「レモンのお菓子」(「chibiaya日記」)
 chibiayaさんが,関東で販売されているレモンケーキを中心に,レモンケーキの情報を詳しく紹介されています。

<レモンケーキ関連記事>
 「食文化関連記事一覧表・索引」の「食文化事例研究」にある「レモンケーキ・レモン菓子」を御参照ください。

<関連記事>
 「萩の調 釉(はぎのしらべ ゆう) -仙台「菓匠三全」の東京限定お菓子-

2021年12月12日 (日)

チョコレートの街・神戸 -フェリシモチョコレートミュージアムとモロゾフ神戸本店-

神戸に新たなチョコレートミュージアム誕生

 2021年10月22日,神戸に新たなチョコレートミュージアムが誕生しました。

 「フェリシモチョコレートミュージアム(felissimo chocolate museum)」です。

 通信販売を中心に事業展開されているフェリシモ(FELISSIMO)が,チョコレートを愛する人たちと一緒に創るミュージアムを目指してオープンされた施設です。

 チョコレートをテーマにしたミュージアムに興味を持ち,2021年11月中旬に訪問しました。


felissimo chocolate museum

 このミュージアムに入場するためには,原則,事前にチケットの予約・購入をしておく必要があります。
(当日空きがあれば,来館時に受付で購入することも出来るようです。)

 予約サイト「アソビュー」で日時を予約し,チケットを購入します。

 私は予約時間に合わせ,阪神神戸三宮駅から徒歩でミュージアムを目指しました。

(フェリシモ本社)
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 神戸市中央区新港町にあるフェリシモ本社です。

 この建物の2階にチョコレートミュージアムがあります。

(フェリシモ玄関)
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 フェリシモ本社の玄関です。
 フェリシモチョコレートミュージアムの案内板も設置されています。

 洗練されたおしゃれな建物で,建物内で社員の方が商品の撮影をされている姿もよく見かけました。

(felissimo chocolate museum入口)
Felissimo-chocolate-museum

 フェリシモチョコレートミュージアムの入口です。

 ミュージアムなので,写真撮影はここまでだろうと思ったのですが,館内の写真撮影も可能でした。

 エントランスには,受付とミュージアムショップがありました。

 受付で事前に交付されたチケットをスマートフォンの画面で提示し,資料をいただいて入場しました。


カカオ豆のお出迎えと「小山進クリエイションの軌跡」

 入場すると,たちまち甘いチョコレートの香りが漂ってきました。

(カカオ豆の展示)
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 照明を落とした小さな部屋にカカオ豆(カカオニブ)が敷き詰められていて,甘いチョコレートの香りが楽しめるコーナーでした。

 さらに進んでいくと,「パティシエ エス コヤマ」のオーナーシェフ小山進さんのチョコレートパッケージが展示されていました。

(「小山進クリエイションの軌跡」)
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 チョコレートだけでなく,そのパッケージにもこだわり,全体として1つの芸術作品に仕上げられている様子が伺えました。


世界のチョコレートパッケージ展示

 続いて,世界のチョコレートパッケージの展示を見学しました。

(チョコレートパッケージコレクション展示)
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 ロの字形に上から下まで,世界中の様々なチョコレートメーカーの商品パッケージが展示されていました。

(チョコレートのパッケージ(カファレル))
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 こちらはイタリアのチョコレートメーカー「カファレル」の展示です。

 チョコレートにヘーゼルナッツを練り込んだ「ジャンドゥーヤ」で有名ですが,かわいいパッケージが揃えられていることでも人気のメーカーです。

 日本では,神戸を拠点として展開されています。

(チョコレートのパッケージ(モロゾフ・バレンタイン))
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 こちらは神戸に本社を置く「モロゾフ」のバレンタインパッケージです。

 日本でバレンタインデーにチョコレートを贈るスタイルは,モロゾフが大きく関わっているのですが,そのモロゾフのバレンタインパッケージです。

 写真左の箱には,モロゾフ創業当初のロシア・クレムリン宮殿の世界一大きな鐘をモチーフにしたマークが入っており,かなり昔の貴重なパッケージであることがわかります。

 このほかにも,「ゴディバ」(ベルギー),「ドロステ」(オランダ),「デメル」(オーストリア),「ハーシー」(アメリカ)など,世界の様々なチョコレートメーカーのパッケージがずらりと展示されていました。


チョコレートのアルミ箔を使った絵画

 続いて,イタリア出身の現代美術家・ヴァレリオ・ベッルーティさんの新作展を鑑賞しました。

(「AMAI」Valerio Berruti の世界)
Valerio-berruti

 誰もが経験する「子ども時代」をテーマにした芸術作品の展示です。

 写真中央は,カカオ豆を輸送する際に利用される袋の素材「ジュート」をキャンバスに描かれた作品です。

(アルミニウムペーパーの絵画)
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 こちらは,チョコレートを包むアルミニウムペーパー(薄いアルミ箔)に描いた絵画です。

 アルミニウムペーパーにチョコレートを包んだ後の折り目まで残っているのが,リアリティがあって良いです。

 私だったら,描く途中でビリッと破いてしまいそうです(笑)

 純粋無垢な子供の表情に,心が癒されました。


チョコレート関連書籍・模型展示とメッセージコーナー

 様々なチョコレートの本を集めたコーナーもありました。

(チョコレート関連書籍展示)
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 その隣には,フェリシモオリジナルのチョコレートの模型が展示されていました。

(チョコレートの模型(全体))
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 ここは撮影スポットとなっており,このチョコレートをバックに記念撮影される人も多く見受けられました。

 私もフェリシモ社員の方に記念撮影していただきました。

 そしてその社員さんから,「このチョコレートは壁にマグネットで貼り付けられているので,取り外すことが出来ますよ」と教えていただいたので,試してみました。

(チョコレートの模型(パーツ))
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 なるほど。このチョコレートを手に写真撮影するのも楽しそうです。

 最後に,チョコレートに寄せられたメッセージ・名言を読ませていただきました。

(チョコレートに寄せられたメッセージ・名言)
Photo_20211212154701

 その中で,私がなるほどと思ったのが次に御紹介するフランスの格言です。

 「La vie est le chocolat, c'est l'amer qui fait apprécier le sucre」
 (人生はチョコレート,苦みが甘みを引き立てる)

 つらい時や苦しい時があるからこそ,より一層楽しみや幸せを感じることが出来るという考えに共感しました。

 最後にミュージアムショップへも行き,チョコレートの世界をたっぷりと楽しむことが出来ました。


モロゾフ神戸本店

 フェリシモチョコレートミュージアムから阪急神戸三宮駅へ向かう途中,三宮センター街のモロゾフ神戸本店に寄りました。

(モロゾフ神戸本店)
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 私が学生の頃,この神戸本店を訪問し,好物のプリンをいただいた時の感動は忘れられません。

(チョコレートの滝(モロゾフ神戸本店))
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 神戸本店は2019年11月にグランドオープンし,その際に「チョコレートの滝」も設置されたようです。

 チョコレートはモロゾフの原点であり,それを象徴する設備となっています。

 こうしたチョコレートの滝を見ると,思わず指を突っ込んで味見してみたくなるのは私だけでしょうか(笑)

 店舗奥のカフェスペースで休憩を兼ねてカフェタイムを楽しむこととしました。

 メニューを見て,トーストサンドとプリン,デンマークチーズケーキがワンプレートで味わえる「トーストサンドプレート」を注文しました。

 カフェモロゾフは,チョコレートよりもプリンやチーズケーキを中心としたメニューが多いのですが,実際にプリンやチーズケーキの人気が高いからなのでしょう。

(トーストサンドプレート(モロゾフ))
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 トーストサンド(ホットプレスサンド)にミニサイズのプリンとデンマークチーズケーキがセットになったお得なメニューです。

 トーストサンドは,薄切り食パンにバターとマヨネーズを塗り,ハム,チーズ,スライストマト,細かく刻んだきゅうり,玉ねぎ,ピクルスをはさんでプレスサンドにしたものです。

 食パンと具材がすべて同じ厚みに統一されていて,端正でとても美しいサンドイッチでした。

 パンはカリッと香ばしくトーストされ,中の具はジュワッとみずみずしく,全体的に上品で整った味に仕上げられていました。

 そしてお楽しみのプリンとデンマークチーズケーキです。

 卵黄の味がしっかりと感じられるプリン,ほろ苦さと甘さを兼ね備えたカラメル,しっとりとした生地のデンマークチーズケーキ,軽めの生クリームと,期待どおりの味を楽しむことが出来ました。

 その後コーヒーをいただきながら,カフェでゆったりとした時間を過ごしました。


 神戸でチョコレートについて学び,様々なチョコレート店を巡ってみるのもおすすめです。

<関連サイト>
 「felissimo chocolate museum」(神戸市中央区新港町7-1)
 「パティシエ エス コヤマ」(兵庫県三田市ゆりのき台5-32-1)
 「カファレル」(「神戸北野本店」神戸市中央区山本通3-7-29ほか)
 「モロゾフ」(「神戸本店」神戸市中央区三宮町1-8-1ほか)

<関連記事>
 「ロシア革命と日本のバレンタインチョコレート -神戸・御影のバレンタイン広場訪問-
 「イタリア料理の特徴と主な料理6 -カファレルのジャンドゥーヤとペルジーナのバッチチョコレート-

2021年11月21日 (日)

コーヒーの名店を訪ねて -東京都台東区「カフェ・バッハ」と福岡市中央区「珈琲美美」-

東京都台東区「カフェバッハ」

 「ああなんて甘いコーヒーの味わい,千回のキスよりも甘く,マスカット酒よりも柔らかな舌触り,もうコーヒーなしではだめ」

 これは音楽家ヨハン・セバスティアン・バッハの「コーヒー・カンタータ」という歌曲に登場するコーヒー好きの娘のセリフです。

 この音楽家バッハの名前に由来する東京のカフェが「カフェ・バッハ」です。

 「カフェ・バッハ」はコーヒーの名店として知られ,全国からコーヒー通が訪れます。

 書店でも,店主の田口護(たぐちまもる)さんが執筆・監修された本をたくさん見かけます。

 美味しいコーヒーを求め,この「カフェバッハ」を訪問しました。

 店内は都会の洗練された「カフェ」というよりは,クラシカルでハイセンスな「喫茶店」と表現する方が合っています。

 私は奥のカウンター席を御案内いただきました。

 メニューを見て,どれにしようか悩んだ挙句,スペシャルティコーヒーの代表格である「ゲイシャ」をいただくことにしました。

 「ゲイシャ」は,「ウォッシュド」(水洗式・あらかじめ果肉を除去して精製されたコーヒー豆)と「ナチュラル」(非水洗式・果肉ごと乾燥させるプロセスを経て精製されたコーヒー豆)の2種類が御用意されていました。

 お店の方に「苦味が少なく,すっきりとした飲み口のコーヒーが好み」だと御相談したところ,「ウォッシュド」を薦めていただいたので,それを注文しました。

 今回いただいたコーヒーは,パナマ・ボケテ地区ドンパチ農園のゲイシャ(ウォッシュド)です。

 店長・工場長の山田康一(やまだこういち)さんにドリップ(抽出)していただきました。

 ペーパードリップ方式で,お湯を注ぐとコーヒー豆(粉)からモコモコと泡が出て,膨らみました。

 これは新鮮なコーヒー豆に含まれる炭酸ガスによるものなのですが,コーヒーの甘く香ばしい香りが漂い,私も期待に胸が膨らみました。

 ドリップが終わり,目の前にコーヒーが置かれました。

(パナマ・ドンパチ・ゲイシャ W(カフェバッハ))
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 想像していたよりしっかりとしたボディーで,ほどよい甘みと酸味が感じられました。

 コーヒーを飲み,目を閉じてしばらく余韻を楽しみました。

 「ナチュラル」だと,さらに厚みのあるボディーを楽しめそうです。

 カウンターで山田さんからコーヒーについて色々と教えていただき,パナマコーヒーの説明書やお店のパンフレットなどもいただきました。

 次回訪問時は,こちらも美味しいと評判のお菓子やパンと一緒に味わいたいと思います。


福岡市中央区「珈琲美美」

 コーヒーの抽出法の1つに「ネルドリップ」という方法があります。

 「ネル」と呼ばれる布フィルターを使う方法で,口当たりが滑らかで雑味のないコーヒーを楽しむことが出来ます。

 このネルドリップコーヒーを求めて,福岡市の名店「珈琲美美(びみ)」を訪問しました。

 お店は福岡市中央区赤坂,国体道路沿いにあり,近くには大濠公園があります。

(「珈琲美美」外観)
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 お店の1階がコーヒー豆などの販売スペース,2階が喫茶スペースとなっています。

 テーブル席を御案内いただき,メニューを拝見しました。

 「モカ」(エチオピア・イエメンのコーヒー)を中心としたメニューとなっています。

 私もエチオピアコーヒーが好きなので,ラインナップの中から「イルガチェフェ・モカ(エチオピア)」を味わうことにし,フルーツケーキと一緒に注文しました。

 カウンター越しに,お店の方がネルドリップでコーヒーを淹れられる様子を拝見したのですが,落ち着きがあって無駄がなく,凛としたふるまいは,茶道のお点前と共通するものがあるように思いました。

(イルガチェフェ・モカ(美美))
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 ワクワクしながら,コーヒーを口に含みました。

 「これこれ,まさに思い描いているエチオピアの味だ」と心の中でつぶやきました。

 甘くてフルーティーなフレーバー,雑味がなくスッキリとした口当たり,酸味を抑え甘みが引き出された味わいで,「探し求めていたエチオピアコーヒーに出会えた」と,とても嬉しい気持ちになりました。

 コーヒーと一緒にフルーツケーキもいただきました。

(フルーツケーキ)
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 ドライフルーツと洋酒(ラム酒・ブランデー)入りのフルーツケーキです。

 7種類ものドライフルーツが入った,贅沢で美味しいケーキでした。

 私はコーヒーはストレート(ブラック)派なので,雑味が少なくスッキリとしたテイストのコーヒーをよく注文します。

 このお店でもう一杯,別のコーヒーを飲んでみたいと思い,ブレンド珈琲の「淡味(たんみ)」(アメリカンに相当するコーヒー)を追加注文しました。

 カウンターに店主の森光充子(もりみつみつこ)さんがお越しになり,私が注文したコーヒーをネルドリップで淹れてくださいました。

 私は承諾をいただいて,カウンターから森光充子さんのネルドリップの様子をじっくり見学させていただきました。

 森光さんがゆっくりとお湯を注ぐと,ネルの中のコーヒー豆がモコモコとゴルフボールのように膨らみました。

 新鮮なコーヒー豆が使われている証拠です。

 しばらくハンドドリップされた後,ネルにまだ抽出液が少し残った状態でネルをさっとカップから離し,ドリップを終えられました。

 このドリップを終えるタイミングも大事なのだと学びました。

 そして「淡味」がテーブル席に運ばれました。

(淡味(美美))
Photo_20211121142701

 雑味がなくスッキリした味わいで,バランスのとれたコーヒーでした。

 ネルドリップはペーパードリップに比べてボディーが重いのでは,というイメージを持っていましたが,実際はとても飲みやすく,たちまちネルドリップコーヒーのファンになりました。

 ネルドリップコーヒーと言えば,かつて東京・表参道で「大坊珈琲店」を営んでおられた大坊勝次(だいぼうかつじ)さんのコーヒーも有名ですが,「珈琲美美」創業者の森光宗男さん(森光充子さんの夫)は大坊勝次さんと御親交が深かったようで,お二人はコーヒー通から「焙煎とネルドリップの名人」と呼ばれています。

 大坊勝次さんと森光宗男さんの共著「珈琲屋」(新潮社)もネルドリップファン必読の本となっています。

 福岡で魅力的なコーヒー専門店を見つけることが出来ました。


まとめ

 コーヒーハンター・川島良彰さんのお店「ミカフェート」のコーヒーに代表されるように,新鮮で良質なコーヒー豆は,豆に含まれる炭酸ガスにより,お湯を注いだ瞬間にコーヒー豆(粉)がモコモコと膨らむのが特徴です。

 今回訪問した2つのコーヒー店も,ドリップの際にコーヒー豆(粉)が膨らみ,黄金色のキラキラとした輝きを発していたのが印象的でした。

 また,「コーヒー豆をどこまで焙煎するか」も美味しいコーヒーを淹れる大事な要素だと学びました。

 私好みの甘くてスッキリとしたテイストは,浅煎りしかないと思っていたのですが,ある程度深く焙煎しないと甘みが出ず,酸味ばかり強調されるコーヒーになることがわかったのです。

 かと言って焙煎し過ぎると,今度は油分が出て焦げ臭くなってしまうのが難しいところなのですが。

 「時代はサードウェーブだから浅煎りで」とか,「このコーヒーが美味しいと評判だから」とか,そういった情報だけで判断せず,実際にお店に足を運び,お店の人に相談し,いろんなコーヒーを味わってみる中で,本当に美味しい一杯のコーヒーに巡り会えたら,その喜びはひとしおだと思います。


<関連サイト>
 「カフェ・バッハ」(東京都台東区日本堤1-23-9)
 「珈琲美美」(福岡県福岡市中央区赤坂2-6-27)
 「ミカフェート」(東京都千代田区神田神保町1-14-3)

<参考文献>
 UCCコーヒー博物館著「図説コーヒー」河出書房新社
 「美の壺 File 485 一杯の至福 コーヒー」日本放送協会(NHK)
 「BRUTUS 特別編集 福岡の大正解」マガジンハウス

2021年11月14日 (日)

スリランカ料理の特徴と主な料理2 -スリランカのヌードルカレー-

カレーの分類(北インド系と南インド系)

 カレーは大きくは北インド系と南インド系に分けることができます。

 北インド系は乳製品(バター(または上澄みの「ギー」),ヨーグルト,生クリームなど)や肉(羊・鶏など)が使われ,主食は小麦粉やそば粉などを使ったチャパティやナンが中心となります。

 日本のインド料理店では,「ターリー」と呼ばれる丸い大きな金属皿に盛り付けられたカレー・ナン・タンドリーチキンや,甘い「ラッシー」(ヨーグルト飲料)が出されるイメージが強いですが,これは北インド系の中高級料理店の飲食スタイルです。

 一方,南インド系は,南国の食物であるココナッツ(ココナッツミルク・ココナッツオイル)やタマリンドが使われ,沿岸部では魚も食材として使われます。

 主食は米や豆類が中心となります。

 ターリーやバナナの葉にカレー・スープ・おかずなどを盛り付けた「ミールス」は,南インドを代表する食事スタイルとなっています。


スリランカカレーの特徴

 スリランカカレーは南インド系のカレーに位置付けられます。

 スリランカカレーの特徴として,ココナッツミルクやココナッツオイルが使われること,ホールのスパイスを中心に使用されること,日本の鰹節に似た「モルディブフィッシュ」が使われるカレーがあること,が挙げられます。

 スパイスは各家庭・お店で御自慢の調合法があり,そのミックススパイスは「ツナパハ」と呼ばれています。

 米食中心なので,カレーにはバスマティライスや赤米のほか,「ストリングホッパー(インディーアッパー)」と呼ばれる米粉麺と一緒に食べられます。

 「ストリングホッパー」は,素麵やビーフンに似た米粉の麺で,米粉を練った生地を器具に詰め,シャワーの吹き出し口のようなたくさんの小さな穴から押し出し,蒸し器で蒸して作られる麺です。


ヌードルカリー

 ライスではなく米粉の麺と一緒に食べるカレーに興味を持ち,日本のスリランカカレーの一大拠点となっている福岡市へ行きました。

(博多駅)
Photo_20211114145501

 今回訪問したお店は,福岡市中央区にあるスリランカ料理店「ヌワラエリヤ」です。

 福岡市内には,スリランカカレーを提供されているお店が数多くあるのですが,今回御紹介する「ヌワラエリヤ」や系列店の「ツナパハ」はその代表的なお店の1つです。

(スリランカ料理店「ヌワラエリヤ」)
Photo_20211114145801

 国体道路沿い,警固交差点の近くにあるお店です。

 ランチタイムに訪問したので,「ランチ」(サラダ・カリー・デザート・紅茶のセット)でヌードルカリーを注文しました。

 最初にサラダが提供され,しばらくして待望のヌードルカリーが提供されました。

(ヌードルカリー)
Photo_20211114145901

 中心部に山盛りの米粉麵,周囲に3種のカレーがかけられたボリューム感あるカレーです。

 カレーは,写真手前右側が「大根のカレー」,左側が「レンズ豆のカレー」,奥が「チキンのカレー」の3種です。

 ココナッツミルクがベースとなっているので,サラリとしたスープ状のカレーとなっています。

 サラリとしている分,スパイスの香りや唐辛子の辛さもストレートに感じられました。

 ひととおりカレーを味わった後,ヌードルをカレーと一緒にいただきました。

 ヌードルは炒めたビーフンです。

 ケチャップが加えられることで,わずかに赤みがかり,ほのかな甘みも感じました。

 そのため,カレーだけを食べるよりも,ヌードルと一緒に食べる方が辛さがマイルドになり,より美味しくいただけました。

 福岡のスリランカカレーは,写真のような,中心部にヌードルやライスが盛られ,その周囲にカレーがかけられているスタイルが基本となっており,様々なお店でこのスタイルのカレーを味わうことが出来ます。

(ココナッツアイスと紅茶)
Photo_20211114150601

 食後のデザートとして,ココナッツアイスとスリランカの紅茶が提供されました。

 ココナッツアイスには,甘くて濃厚なマンゴーソースがかけられていました。

 こうした甘いデザートや紅茶は,カレーの辛さを中和し,整えてくれる効果があります。

 辛いカレーと甘いデザート・ドリンクはセットでいただいてこそ,それぞれの良さがわかるものだと実感しました。

 スリランカのやさしい香りがする紅茶をゆっくりといただきながら福岡の街を眺め,しばし食後の余韻を楽しみました。


ハウス食品 選ばれし人気店シリーズ「ツナパハ スリランカカリー」

 ハウス食品から「選ばれし人気店」シリーズとして,福岡「ツナパハ」のスリランカカリーがレトルトカレーで販売されています。

(ツナパハ・スリランカカリー(ハウス食品)パッケージ)
Photo_20211114150901

 広島市内のスーパーマーケットでたまたま見つけました。

 せっかくなので,この商品と一緒にビーフンも買い,自宅でヌードルカレーを作ってみました。

(ツナパハ・スリランカカリー(ハウス食品)で作ったヌードルカレー)
Photo_20211114151001

 ヌードルは乾麵のビーフンを茹で,油を敷いたフライパンで塩・こしょう,それに少量のケチャップを加えて炒めたものです。

 口に含んだ瞬間,福岡の「ヌワラエリヤ」でいただいたヌードルカリーの思い出がよみがえりました。

 辛さは「中辛」で,お店のカレーより若干マイルドな辛さに仕上げられています。

 今回御紹介したヌワラエリヤ・ツナパハのスリランカカリーがお手軽に味わえますので,御興味を持たれた方はお求めください。


スリランカのヌードルカレーの謎にせまる

 インドではあまりみられない,カレーと麵を組み合わせたスリランカのヌードルカレー。

 この料理がどういう流れで誕生したのか,その理由を知りたいと思いました。

 麵料理は,中国料理の影響を受けたものです。

 私がカンボジアを訪問した際にも,米粉麺の製造現場を見かけました。

 中国を起源とする麺料理は,華僑(華人)によって米を主食とする東アジア・東南アジア各国へ伝わり,その土地の食文化と融合して,韓国の「チャジャン麺」,タイの「カオソーイ」,シンガポールの「ラクサ」,ベトナムの「ブンチャー」・「フォー」などオリジナルの麵料理が次々と誕生しました。

 一方でカレーは,インドを中心に広まった料理です。

 南アジアに位置し,南インドの影響を強く受けているスリランカへ,インドを飛び越えて中国の麺食が伝わっていることが不思議です。

 スリランカのヌードルカレーは,近年,様々な食文化の交流がなされるようになった際に取り入れられた創作料理の1つではないかと一応の結論付けをしました。

 そんな中,2021年11月13日に「おいしいアジア料理の歴史を味わう 中国から日本,そして世界へ」というテーマのオンライントークイベントに参加させていただきました。

 「中国料理の世界史 美食のナショナリズムをこえて」という本をお書きになった慶応義塾大学教授の岩間一弘さんと,ジャーナリストで食文化研究者の森枝卓士さんから,食にまつわる様々な興味深いお話を伺うことが出来ました。

 中国料理の視点から世界史や世界の料理について研究されている岩間一弘さんと,世界の食文化,特に東南アジア料理やカレーにお詳しい森枝卓士さんがいらっしゃるとなれば,今回のスリランカのヌードルカレーの話も趣旨に沿っていると思いました。

 そこで私はお二人に質問させていただきました。

 (質問)
 「カレーと米の麺を一緒に食べるスリランカカレーも中国料理の影響を受けているでしょうか?」

 お二人とも米粉麵が使われるスリランカのカレーがあることは御存知で,突然の質問でも瞬時に質問の趣旨を理解されました。
 さすがです。

 お二人からは,「インドで麺食は常食とされていないため,スリランカ独自の料理ではないか」という御回答をいただきました。

 中国の麺文化と遠く離れたイタリアの麺(パスタ)文化がそれぞれ発展してきたのと同様に,根拠となる文献が乏しく,はっきりとした理由はわからないというのが現状のようです。

 50年前,100年前レベルの,料理としては意外と新しい料理もたくさんあり,ヌードルカレーもそうした料理の1つかも知れないとのお話でした。

 スリランカのカレーヌードル,意外と奥が深そうです。


 今回刊行された本を通じて中国料理の魅力を教えてくださった岩間一弘さんと,ジャーナリスト・食文化研究者そして写真家としても憧れを抱いている森枝卓士さんから直接お話を伺うことができ,とても有意義なひとときを過ごせました。

 岩間一弘さんの著作については,2021年11月13日付け朝日新聞朝刊の読書欄でも紹介されています。
  ※書評:藤原辰史さん(京都大学准教授・食農思想史)


 南インド料理のみならず,中国料理の影響を受けているスリランカのヌードルカレー。

 たった1つの料理でも,深く考えてみると,様々な食文化の物語が展開します。

 それが食文化を学ぶ大きな魅力だと言えるでしょう。


<関連サイト>
 「ヌワラエリヤ」(福岡市中央区赤坂1-1-5 鶴田けやきビル2F)
 「ハウス レトルトカレー 選ばれし人気店」(ハウス食品)

<関連記事>
 「スリランカ料理の特徴と主な料理1 -デビルチキン,デビル・悪魔風と名のつく料理の意味-
 「タイ料理の特徴と主な料理3 -カオソーイ-
 「シンガポール料理の特徴と主な料理 -チキンライス・バクテー・チリクラブ・マントゥ・フィッシュヘッドカリー・ラクサ-
 「ベトナム料理の特徴と主な料理 -バインセオ・ブンチャー・バインベオ・バインフラン・フォー-

<参考文献>
 岩間一弘「中国料理の世界史 -美食のナショナリズムをこえて」慶応義塾大学出版会
 「dancyu(スパイスとカレー 2021)」(2021年8月号)プレジデント社
 前田庸「ツナパハ ヌワラエリヤ スリランカカリーをつくろう」書肆侃侃房

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