食文化事例研究

2017年5月17日 (水)

広島のレモン菓子・レモンケーキ4 -広島市南区・安佐南区,尾道市瀬戸田町,呉市-

広島で売られているレモン菓子・レモンケーキを御紹介します。


カトルフィユ「広島レモーネ」

 広島市南区の西洋菓子「カトルフィユ」の「広島レモーネ」というレモンケーキです。

(カトルフィユ「広島レモーネ」(包装))
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 「大長みかん」で有名な呉市豊町(大崎下島)の大長で採れたレモンが使用されています。

(カトルフィユ「広島レモーネ」)
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 このレモンケーキの特徴は,何と言ってもその形です。

 一般的なレモンケーキは安定するよう底が平らになっていますが,カトルフィユのレモンケーキは,レモンの形そのままなのです。

 コロコロして安定はしませんが,リアリティあふれるレモンケーキに仕上がっています。

(カトルフィユ「広島レモーネ」(中身))
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 ケーキ生地が濃い黄色なのも特徴で,レモンチョコの白さと対照的です。

 レモンピールやレモンマーマレードも入っており,ケーキ生地の色からもおわかりのように,レモンの味・風味は強いです。

 しっとりときめ細かいケーキ生地や,白く上品なレモンチョコは,西洋菓子店ならではだと思います。

 
 「カトルフィユ」(広島市南区皆実二丁目5-1)


みしまや「れもんケーキ」

 広島県尾道市瀬戸田町にある老舗和菓子店「みしまや」の「れもんケーキ」です。

(みしまや「れもんケーキ」(包装))
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 老舗の伝統を感じる黄色い包装です。

(みしまや「れもんケーキ」)
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 長さ約5.5cm,幅約4cm,高さ約3cmと小ぶりなサイズです。

 包装やサイズが,同じ広島県尾道市瀬戸田町にある向栄堂の「瀬戸田レモンケーキ」(「広島のレモン菓子・レモンケーキ1 -和菓子から生まれた日本独自の洋菓子-」参照)とよく似ており,レモンケーキの本場,瀬戸田ではこの大きさが1つの標準サイズとして受け継がれているのかも知れません。

(みしまや「れもんケーキ」(中身))
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 レモンチョコは,底も含めてケーキ生地全体が薄くコーティングされています。

 レモンピールはありませんが,その分,バター風味よりもレモン風味が重視されています。

 ケーキ生地が白くきめ細かいのが特徴で,やわらかくて口の中で溶けるような食感です。


 「みしまや」(広島県尾道市瀬戸田町沢209-17)


本田屋「レモンケーキ」

 広島県呉市本通四丁目にあるカステラで有名な和洋菓子店「本田屋」の「レモンケーキ」です。

(本田屋「レモンケーキ」(包装))
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 キャンディーのようにねじられた包装となっています。

 包装紙の中も写真奥のようにアルミホイルで包まれており,どこか懐かしさを感じるレモンケーキです。

(本田屋「レモンケーキ」)
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 長さ約6cm,幅約5cm,高さ約4.5cmと大きめのサイズです。

 レモンチョコは表面にまんべんなく,厚めにかけられています。

(本田屋「レモンケーキ」(中身))
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 断面を御覧いただくと,レモンチョコのコーティングが厚めであることが御理解いただけるかと思います。

 レモンピールはありませんが,キルシュワッサー(さくらんぼの蒸留酒)入りのしっかりしたケーキ生地で,レモンのさわやかな風味が口いっぱいに広がります。

 このお店では,このレモンケーキのほかにも,カステラや「ロシアケーキ」と呼ばれるメレンゲとジャムがのせられたクッキーなど,昔ながらの洋菓子も売られています。


 「本田屋」(広島県呉市本通4丁目8-3)


粉麦「レモンケーキ」

 広島市安佐南区沼田町吉山。

 広島市中心地から車で約30分という近さにある里山で,採れたて野菜や加工品のマルシェ,自然食レストラン,パン屋,洋菓子屋などが点在する,広島で今注目されている食の発信地です。

 その地区にある焼菓子と家具の店「粉麦(こなむぎ)」の「レモンケーキ」です。

(粉麦「レモンケーキ」)
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 直径約6cm,高さ約3.5cmの小さなクグロフ型のレモンケーキで,表面にピスタチオとレモン果汁入りの砂糖(アイシング)がかかっています。

(粉麦「レモンケーキ」(中身))
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 ケーキ生地の材料に発酵バターやきび砂糖,アーモンドプードルが使われていることから,濃いめの色のしっかりとした生地に仕上がっており,バターやアーモンドのコクも感じられます。

 このレモンケーキの特徴は,表面の砂糖(アイシング)にレモンの風味や酸味が強く感じられることで,ケーキ生地と一緒にいただくことで,レモンケーキだと実感することができます。


 「粉麦」(広島市安佐南区沼田町吉山246-2)


 以上,レモン菓子・レモンケーキを購入される際の参考になれば幸いです。


<関連リンク>
レモンのお菓子」(「chibiaya日記」)
chibiayaさんが,関東で販売されているレモンケーキを中心に,レモンケーキの情報を詳しく紹介されています。

<レモンケーキ関連記事>
レモンケーキとブランデーケーキ -レモンケーキが今も支持されている理由-

広島のレモン菓子・レモンケーキ1 -和菓子から生まれた日本独自の洋菓子-

広島のレモン菓子・レモンケーキ2 -レモンケーキの分類方法-

広島のレモン菓子・レモンケーキ3 -尾道市瀬戸田町,広島市南区・佐伯区・西区,廿日市市-

2017年3月25日 (土)

あずきの研究12 -なぜ冬に水ようかんを食べる地方があるのか-

福島県会津若松市の水ようかんと湯の花羊羹

 石川県輪島市の水ようかん(「石川の冬・正月を代表するお菓子 -水ようかん・福梅-」を参照)をお読みいただいた読者の方から,「地元(福島)にも大きな水ようかんがある」との情報をいただき,興味を持って取り寄せてみました。

 私はこれまで,福井や石川など北陸地方の水ようかんや,三重県伊賀上野市の「丁稚ようかん」と呼ばれる水ようかんをいただいたことがあるのですが,福島で水ようかんが食べられているという話は初耳で,京都や金沢など和菓子で有名な都市からも離れた場所にあるということにも興味を持ちました。

 今回取り寄せたのは,福島県会津若松市の東山温泉にある「松本家」の「水ようかん」と「湯の花羊羹」です。

【「松本家」の「水ようかん」】

 注文の品が届けられたので,早速「水ようかん」から箱を開けてみました。

(松本家「水ようかん」(箱))
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 やはり1本1本が大きいです。

 輪島の水ようかんよりも大きいように感じました。

 写真の水ようかんは,5本入のものですが,このほかにも7本入,10本入が販売されているので,さらに大きな水ようかんが売られていることとなります。

(松本家「水ようかん」(1本))
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 1本の水ようかんの形です。

 大きさを測ってみると,長さ約15.5cm,幅と高さはいずれも約2.5cmありました。

(松本家「水ようかん」(計測))
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 輪島の水ようかん1本の長さが約13cmですから,やはり一回り大きいものとなっています。

 水ようかんはさらりとした食感を味わえるこしあんのものが多いのですが,この水ようかんは,こしあんをベースに,粒あんも入っています。

 したがって,こしあんのさらりとした食感と粒あんの持つ小豆本来の味・食感の両方を味わうことができます。

【「松本家」の「湯の花羊羹」】

 続いて,水ようかんと一緒に取り寄せた「湯の花羊羹」です。

 地元では丸ようかんとも呼ばれているようで,電話でお店の方に「『丸ようかん』と言うようかんはありますか。」と尋ねると,「ああ,『湯の花羊羹』ですね。」と教えてくださいました。

(松本家「湯の花羊羹」(箱))
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 練りようかんが竹の皮で筒状に包装されています。

 「東山名物」,「少年白虎」などと記されており,昔から会津地方,東山温泉の名物だったことが読み取れます。

(松本家「湯の花羊羹」(1本))
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 水ようかんと比べると小さいように感じますが,長さは約12cmあります。

 こちらは小豆粒がない本煉ようかんで,しっかりとした甘味とコクがあります。

 ようかんの煉り具合や甘さが絶妙で,ファンが多いのも納得の一品でした。


水ようかんが田舎羊羹や丁稚ようかんと呼ばれる理由

 水ようかんは,別名「田舎ようかん」とか「丁稚(でっち)ようかん」とも呼ばれています。

 「田舎ようかん」と呼ばれる理由については,

 (1)寒天を使い,本練ようかんに比べてかさを増して作られていること
 (2)粒あん(小豆粒)で作られ,素朴な味わいが残されていること

 などが挙げられます。

 また,「丁稚ようかん」と呼ばれる理由については,

 (1)甘さが控えめ(贅沢な砂糖の使用量が控えめ)なこと
 (2)京や大坂の商家に住み込みの丁稚が盆や正月の里帰りの際のお土産として買える値段のようかんだったこと
 (3)煉りようかんを作った後に残ったようかんを水に混ぜて作ったこと
 (4)丁稚でも簡単に作れるようかんだったこと

 など諸説あるようです。


冬に水ようかんを食べる地方がある理由

 では,なぜ冬に水ようかんを食べる地方があるのでしょうか。
 私なりに考察してみました。


1 本煉ようかんは贈答用,水ようかんは自家用

 水ようかんは,本煉ようかんに比べて,同じ小豆あんの量だと,より多くの量を作ることができます。

 ということは,その分,菓子店は多くの量のようかんを安価に提供することが可能ですし,消費者も自家用として購入しやすいのです。

 また,本煉ようかんとは異なり,水ようかんは家庭でも比較的容易に作ることができるので,自家用に適した菓子だとも言えるでしょう。


2 水ようかんは和菓子文化が栄えた都市周辺に多い

 古くから宮廷文化や武家文化とともにお茶や和菓子文化が栄えた都市(京都,金沢,松江など)では,茶道のお茶菓子や贈答用として本煉ようかんが使われたことでしょう。

 一方で,お茶や和菓子文化が栄えた都市周辺では,人々の交流によって本煉ようかんの存在や技法は知られていたとしても,それは高嶺の花だったに違いありません。

 そこで,本煉ようかんに近く,より気軽に食べられるようかんとして水ようかんが好まれるようになったのではないでしょうか。

 今回御紹介した会津若松の水ようかんも,京都や金沢から伝えられたものと思います。


3 水ようかんは夏場に日持ちしない

 水ようかんと呼ばれるぐらいなので,本煉ようかんと比べ,水ようかんの方が水分を多く含んでいる訳ですが,水分を多く含むということは,それだけ日持ちしないことも意味します。

 これが夏場であれば,なおさらです。

 お茶や和菓子文化が栄えた都市なら,夏場に涼を呼ぶ菓子として,菓子職人がその日に作った水ようかんを客に提供できる菓子店は多く存在したことでしょう。

 しかし,冷蔵庫もない時代に,このような提供は一般的な話ではないのです。

 水ようかんの保存まで考えると,暑い夏よりは寒い冬に用意し,食べる方が理に適っているのです。


 以上のような理由から,お茶や和菓子文化が栄えた都市周辺の地方で,年末年始など家族が集まった時に,赤い小豆を用いためでたい水ようかんをみんなで食べることが定着し,今日に至っていると考えられます。

2017年3月18日 (土)

新幹線車内でレモンケーキを味わう -山陽新幹線・東北・北海道新幹線・さかたやのレモンケーキ-

 レモンケーキに興味を持ち,これまでいろんなレモンケーキを味わってきましたが,近くで販売されていながら,なかなか味わうことのできなかったレモンケーキがあります。

 山陽新幹線(新大阪-博多間)の車内販売限定のレモンケーキです。

 広島市内に住んでいるので,新幹線が行き来する姿はいつでも見ることができますが,その車内でしか売られていないレモンケーキを買うためには,実際に新幹線に乗車する必要があるのです。

 この度,新幹線に乗る機会があり,そのレモンケーキなどを購入して車内で味わうことができたので,御紹介します。


山陽新幹線車内販売限定「瀬戸内レモレーヌ」

 朝,広島から東京に向かう東海道・山陽新幹線「のぞみ」の車内。

 私はワゴンサービスが来るのを楽しみにしていました。

 実は,以前にもこのレモンケーキを買うべく,車内販売で注文したのですが,夜遅かったため売り切れていました。

 こうした経験があったので,朝の車内販売なら期待大だと思ったのです。

 広島を出て程なく,ワゴンサービスが来られ,今回は無事購入出来ました。

 早速,新幹線の席の後方にある机を出して写真撮影です。

(山陽新幹線「瀬戸内レモレーヌ」(包装))
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 これが「瀬戸内レモレーヌ」です。

 「株式会社ジェイアール西日本フードサービスネット」が販売している山陽新幹線車内販売限定のスイーツです。

 製造は,「アンデルセン」グループのパン製造メーカー「タカキベーカリー」です。

 ちなみに「レモレーヌ」は,「レモンケーキ」と「マドレーヌ」を掛け合わせたオリジナルネームとなっています。

 オリジナルのビニール袋や車内販売メニューのパンフレットもいただきました。

(オリジナル袋・車内販売パンフレット)
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 新幹線の車内から沿線各地のものづくりの魅力を発信する「走る日本市」プロジェクトによる車内限定商品も多数用意されていました。

 お菓子・おつまみでも,この「瀬戸内レモレーヌ」をはじめ,「チップスター(海の精)」や「柿の種と黒大豆」など,山陽新幹線オリジナル商品が用意されていました。

(山陽新幹線車内販売メニュー)
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 普段,あまりワゴンサービスを利用しない人でも,このような車内限定商品であれば買ってみようと思う人も増えることは間違いなく,いろいろと工夫されておられるなと思いました。

(山陽新幹線「瀬戸内レモレーヌ」(中身))
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 ナイフがないので,手でレモンケーキを半分に分けました。

 車内でも食べやすいように,プラスチックの中皿と厚紙が入っています。

 実際にいただいてみました。

 ケーキ生地がレモン風味豊かで,しっとりしています。

 原料のレモンは,広島県呉市豊町の「大長(おおちょう)レモン」が使われています。

 バター風味は控え目で,レモンの酸味やさわやかさを前面に出したケーキ生地となっています。そして,中にはレモンピールも入っています。

 このレモンピールは,レモンマーマレードによるもので,これが特長だと言えるでしょう。

 レモンチョコはかかっていませんが,ケーキ生地のレモン風味がとても豊かで,レモンマーマレードも入っているので,これならレモンチョコは不要だと思いました。

 山陽新幹線に乗車されたら,ぜひとも味わっていただきたいと思います。

 ちなみに,車内販売限定となってはいますが,株式会社ジェイアール西日本フードサービスネットのサイトで通信販売もされているようなので,御興味を持たれた方はどうぞ。


東北・北海道新幹線「米粉レモンケーキ」

 続いて,朝,東京から盛岡に向かう東北新幹線「やまびこ」の車内でいただいたレモンケーキを御紹介します。

 東北新幹線「やまびこ」です。

(東北新幹線「やまびこ」E2系)
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仙台駅のホームで撮影

 上野を出発したあたりで,何気なく座席の網ポケットに用意されていた「東北・北海道新幹線車内販売メニュー」を手に取ると,東北・北海道新幹線でもレモンケーキが車内販売されていたので驚きました。

 ワゴンサービスが来られた直後に判明しただけに,「しまった」と思いつつ,少し不安になりながら次のワゴンサービスを待ちました。

 ワゴンサービスは,郡山の手前で再び来られました。
 私はホッと胸をなでおろし,このレモンケーキを購入しました。

(東北・北海道新幹線「米粉レモンケーキ」(包装)とメニュー)
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 「株式会社日本レストランエンタプライズ」の東北・北海道新幹線車内販売スイーツです。

 新潟県十日町市にある同社の食品工場「十日町すこやかファクトリー」で製造されています。

 瀬戸内産レモンのマーマレードと魚沼産コシヒカリの米粉が使用されていることが売りです。

 コーヒーとのお得なセットが用意されているところも山陽新幹線と同じです。

(東北・北海道新幹線「米粉レモンケーキ」(中身))
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 米粉レモンケーキの中身です。

 トンネルを出たり入ったりする度に窓からの光量が変わり,多少の揺れもあるので,アップでの写真は撮りづらかったです(笑)。

 実際にいただいてみると,しっかりと焼き上げられた米粉の香ばしさとバターケーキのコクが感じられました。

 「瀬戸内レモレーヌ」と同様,レモンのマーマレードが入っており,レモンピールの食感も楽しめました。


「のもの上野店」のさかたや「レモンケーキ」

 JR上野駅構内の「のもの上野店」へ行きました。

 「のもの」は,東日本各地域の食品などの地産品を紹介・販売している地産品ショップです。

 そこで売られていたのが新潟県長岡市の「さかたや」のレモンケーキです。

 レモンケーキにお詳しい埼玉在住のchibiayaさんの記事で知りました。
 chibiaya日記「さかたやのレモンケーキ

 広島の人間から見ると,新潟でレモンケーキを製造されるのは珍しいなと思いますが,よく考えれば,前述の「十日町すこやかファクトリー」の「米粉レモンケーキ」も新潟で作られたレモンケーキです。

 新潟もレモンケーキが人気なのではと思いながら,帰りの新幹線の中でいただくこととしました。

 東京から東海道・山陽新幹線「のぞみ」博多行きに乗車し,姫路付近でレモンケーキを開封していただきました。

 私は3列シートの窓側の席だったのですが,前後,隣とも席が埋まり,トイレに行くことすらためらいを感じる状況でした。

 このように身動きの取れない状況の中,私はおもむろに机を引き出し,レモンケーキを写真撮影しました。

(さかたや「レモンケーキ」(包装))
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 新幹線車内でレモンケーキ3個目ともなると,さすがに周りの目を気にせず,余裕すら感じられる振る舞いができるようになります(笑)。

(さかたや「レモンケーキ」(中身))
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 東京のホテルでいただいたプラスチックのナイフとフォークを使い,レモンケーキを優雅に切っていただきました。

 このレモンケーキは,レモンチョコがコーティングされています。(新幹線車内の人の熱気でレモンチョコが溶けており,レモンケーキを取り出すのが大変でした(笑))

 ケーキ生地は,ふわふわで軽めです。
 レモンピールはありませんが,レモンの風味を感じるレモンケーキでした。

 食べ終えたあと,ウェットティッシュで机を拭いて元の位置に納め,何事もなかったかのように再び旅を楽しみました。


 このように,新幹線「のぞみ」に乗車するからには,車内での食事もスマートで紳士的な態度で「のぞみ」たいものです。

2017年2月26日 (日)

パンの研究 -コッペパンの基礎知識と給食のコッペパン-

戦後の救世主 コッペパン

 コッペパンと言えば,学校給食を思い出される方も多いかと思いますが,日本でパンと牛乳が一般家庭に普及したのは,戦後,学校給食で子供達がコッペパンと脱脂粉乳に親しむようになってからのことです。

 戦後の厳しい食糧難のなかで,1954(昭和29)年に「学校給食法」が制定され,アメリカから大量のメリケン粉(小麦粉)が運ばれたこともあって,コッペパンは戦後の学童の成長・健康を支える食べ物として重要な役割を果たしてきたのです。

 まさに戦後の救世主とも言えるべきコッペパンですが,現代に至るまで,シンプルなコッペパンだけでなく,ジャムやクリームがはさまれた「菓子パン」や,焼きそばやコロッケなどがはさまれた「調理パン」など,様々な商品が販売されています。

 岩手県盛岡市の「福田パン」や福岡県福岡市の「コココッペ」のように,多くの種類の具材から自分の好みの具材を選んで食べられることで人気を得ているコッペパン専門店もあります。

 今回はこのコッペパンについてお話ししたいと思います。


コッペパンはクッペから


 コッペパンは日本発祥とされていますが,その原形・お手本はフランスパンの一種「クッペ」とされています。

 パンに切れ目を入れることをクープと言いますが,「クッペ」は,そのクープが1本入ったフランスパンの名称です。

(クッペ)
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 写真は「ドンク」のクッペです。

 「クラム(パンの中身,やわらかい部分)が多い小型フランスパン」と説明書きがありました。

 確かに,そのずんぐりとした形や大きさなどが,コッペパンそっくりですし,「クッペパン」が「コッペパン」に呼ばれるようになったというのも自然な流れのようにも思えます。


日本各地の給食コッペパン

 今この記事をお読み皆さんはコッペパンというと,どんなコッペパンを想像されるでしょうか。

 ここでは,このブログの読者の皆様から事前にお寄せいただいた情報を中心に,学校給食で出されたコッペパンを御紹介したいと思います。

 主に1980年代~2000年代に給食を召し上がった皆様からいただいた情報です。


(日本各地の給食コッペパン)

青森…リンゴ入り
岩手…クルミ入り
宮城…プレーン
秋田…甘く煮た細かい人参入り
山形…プレーン
茨城…プレーン(マーガリン,ジャム,マーマレード),揚げパン,干しぶどう入り,黒糖入り,ミルクパン
福島…プレーン(イチゴジャム,マーマレード),黒糖入り
群馬…チーズ入り
埼玉…プレーン(ジャム,マーガリン),揚げパン(きなこ)
神奈川…干しぶどう入り,プレーン(はちみつ)
石川…プレーン,揚げパン
静岡…リンゴ入り
愛知…干しぶどう入り
岡山…サツマイモ入り,干しぶどう入り(細長バージョン)
広島…プレーン(マーガリン,マーマレード),黒糖入り,パイナップル入り
福岡…黒糖入り,干しぶどう入り,ケチャップ味のソーセージ(真ん中割れバージョン)

 などがあったようです。


 このほか,給食のコッペパンではありませんが,「名古屋めし」として全国的な知名度を持つようになった「小倉マーガリン」や,滋賀県長浜市の「サラダパン」(「つるやパン」)と呼ばれる,たくわん漬け入りのコッペパンなど,地域の個性的なコッペパンもあり,その地域の人々の好みに合わせて様々なコッペパンが作られてきた様子が伺えます。

 情報をお寄せいただいた読者のみなさんに,この場をお借りして深くお礼申し上げます。


昔のコッペパンと現代のコッペパンの違い

 昔のコッペパンと現代のコッペパンの違いについて考えてみました。

 昔のコッペパンの方が大きいという違いがあるかも知れません。今と違って,コッペパンの食事量に占める割合が高かっただろうと想定されるからです。

 ただ私はそれ以上に,コッペパンの生地に違いが生じているのではないかと思っています。

 これはコッペパンに限った話ではありませんが,昔のパン生地はバターやクリームといった油脂の含有量が少ないため,パサパサで,食べたらパンくずがたくさん落ちていたように思います。

 それもあって,私が小学生の時は,給食のトレーに個人で持参したナプキンを敷いていました。

 現代のパンはどうでしょう。

 日本人の好む食感(テクスチャ)が「もちもち」,「しっとり」ということもあり,パンくずがこぼれて困るという現象は,一部のこだわりを持って作られたハード系パンを除いて,あまりみられなくなったのではないでしょうか。

 豊かな食生活が送れるようになるにつれ,パン生地も,砂糖や油脂を多く含み,それだけで食べても十分おいしいリッチ系のパンが多くを占めるようになりました。

 このことは,コッペパンにおいても例外ではないでしょう。

 ただ,最近では,素材の穀物そのものの味や,健康面を重視したハード系(リーン系)のパンも注目を浴びるようになっており,パンの世界も多様な展開をしています。


私の給食の思い出とコッペパン

 私の地元・広島では,給食に出されるコッペパンについては,コッペパンと呼ばれるより,「パン」,「給食パン」または「味付けパン」と呼ばれることの方が多かったように記憶しています。

 また,低学年の時は,先生と児童でコッペパンの大きさが異なり,先生用のコッペパンには包装用ビニール袋の上にマジックで黒丸がされていたのが印象的でした。

 プレーンのほかに,黒糖入りや角切りのドライパイナップルが入ったコッペパンもあったように思います。

 ただ,私は今も昔も牛乳が飲めないことが原因で,給食には全くいい思い出がありません。

 牛乳が必ず付く給食が嫌いで仕方ありませんでした。

 牛乳が体に良いからと,私に無理矢理飲ませようとする先生,それに従い,飲めない私に何とか飲ませようと励ますクラスメイト。

 牛乳が飲めないからと楽しいはずの学校行事にも参加させてもらえず,午後からの授業が開始されても,私だけ机の上には食べられない給食がずっとある状態でした。

 放課後,皆が帰った後も,私だけ帰らせてもらえず,じっと給食と向き合ったまま。

 やっと帰れても,残したパンやおかずを今度は家に持って帰って食べろとビニール袋に詰め込まれる始末でした。

 そもそも食べられずに困ってたのですから,帰り道にポーンと捨てて帰ってましたが…。

 ビン入り牛乳に底から高さ1cmだけ牛乳を残した状態で,「今日はこれだけ飲みなさい」と先生から言われるのですが,口をつけても吐くだけで,どうしても飲めませんでした。

 そこで,早く解放されたいが一心に,コッペパンに牛乳を浸み込ませ,飲んだと先生に報告したこともあります。

 そうすると,先生は気を良くし,翌日に「今日は高さ1.5cmまで牛乳を飲みましょう」とさらにハードルが高くなるという悪循環(笑)。

 牛乳が飲めない理由を調べに医者へ行けと言われ,親と一緒に泣きながら病院に行ったこともあります。

 今だったら問題になるかも知れませんね。

 今の私の知識を持ってすれば,当時の先生の主張程度なら論破することは容易だと思います。

 そもそも私は小学生の時点で,牛乳を飲まなくても,身長がかなり高かったのですから(笑)。

 牛乳以外の乳製品は美味しく食べられるのですが…。

 もうとっくの昔の話ですので,この記事をもとに問題点を騒ぎ立てるようなことはしないでくださいね。


コッペパンの新たな魅力を求めて

 食の世界に興味を持ち,食べる物を強制されることのない身になった現在。

 改めてコッペパンの世界を探訪し,これまで見逃していたコッペパンの魅力を再発見できればと思っております。

(「黒コッペ」)
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 フジパンの「黒コッペ」です。

 黒糖入りコッペパンにクリームがはさみこまれています。

 昭和30年代のヒット商品が再現されたものです。

 黒糖の香ばしい香りやコクと,中身のクリームがうまく調和し,どこか懐かしさを感じさせる仕上がりとなっています。

 結構大きいのですが,シンプルな美味しさで,軽く1本食べられます。


 私はこのほかにも,クリーム入りのチョコがけや,バナナクリーム入りのコッペパンも好きです。


 皆さんはコッペパンにどんな思い出があり,どんなコッペパンがお好きでしょうか。


<参考文献>
岡田 哲『明治洋食事始め』講談社学術文庫
北岡正三郎『物語 食の文化』中公新書

2017年2月13日 (月)

チョコレートの新しい潮流2 -ハイカカオと機能性チョコレート,発酵の重要性-

ハイカカオ(高カカオチョコレート)とは

 「ハイカカオ」とは,チョコレートの原料であるカカオマスが60~70%以上含まれているチョコレートのことを言います。

 前回御紹介した「ビーントゥバー(Bean to bar)」(「チョコレートの新しい潮流1 -ビーントゥバー(Bean to bar)-」参照)に続き,今回はこのハイカカオについて御紹介したいと思います。

ハイカカオのメリットとデメリット,今後の可能性

 ハイカカオのメリットは,純粋なカカオの風味が楽しめることと,カカオマスに含まれる機能性成分をより多く摂取できることにあると言えるでしょう。

 カカオマスの主な機能性成分としては,ポリフェノール,リグニン,テオブロミンの3つが挙げられます。

 ポリフェノールには「抗酸化作用」(体内を酸化(サビ)させる活性酸素を抑える働き)が,リグニンには不溶性食物繊維による「整腸作用」が,テオブロミンには「集中力向上効果」や「疲労回復効果」が期待できるのです。

 一方で,カカオマスの含有量が多いということは,それに含まれる脂肪分も多く摂取することとなりますので,砂糖やミルクの割合が低くなることだけに注目することのないよう留意する必要がありそうです。

 毎日新聞(2017年2月9日)に,ハイカカオに関する注目すべき記事が掲載されていました。

 内閣府の脳に関する研究チームと株式会社明治の共同研究の中間報告で,「高カカオチョコレート(ハイカカオ)を4週間以上続けて食べると大脳皮質の量が増え,脳の若返りの可能性がある」と発表されたのです。

 成人男女30人を対象にした限定的な調査のため,今後精度を高めていく必要がありますが,高齢化の進む中,注目に値する報告だと思います。


広島市植物公園のチョコレート講演会

 2017年2月11日に「バレンタインフェスティバル」が開催されている広島市植物公園へ行きました。

(広島市植物公園「バレンタインフェスティバル」フラワーデコレーション)
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 広島市植物公園は,中国地方で唯一カカオの木がある植物園です。

 現在,大温室が大規模改修中で,従来あったカカオの木は寿命のために処分されましたが,代わりにカカオ豆から育てられたカカオの木がすくすくと人間の背丈ほどの高さにまで成長しています。

(カカオの木(広島市植物公園))
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 植物公園の講堂で,広島大学の佐藤清隆先生によるチョコレートの講演会「チョコレートのサイエンスロマン」を聴講しました。

 数年前から毎年バレンタインデーの時期に開催されているイベントです。

 その講演会の中で,話題となっている「ビーントゥバー(Bean to bar)」や「ハイカカオ」についてもお話がありました。


ハイカカオに期待される効果

 ハイカカオについて興味深かったお話を御紹介したいと思います。

 チョコレートメーカー「ハーシー社」の調査では,カカオの香りの成分は約1500種類から成り立っており,人工的に合成して作ることはかなり困難なのだそうです。

 その魅力的なカカオの香りには,「アロマテラピー(芳香療法)」としてのリラクゼーション・ストレス軽減効果があるとのお話でした。

 ハイカカオは芳香性が強いことから,より高い効果が期待できそうです。

 「失恋にチョコレート」と言われるのも,こうした理由があってのことなのです。

 また,国際スポーツ栄養学会誌の論文には,ダークチョコレート(ハイカカオ)を食べたサイクラー(自転車乗り)は,食べなかったサイクラーに比べ酸素消費量が低減し,走行距離もアップしたという報告もあるようです。


機能性チョコレートとハイカカオ

 カカオ豆に不足している栄養素はビタミンCで,そのビタミンCを補うためには,イチゴとチョコレートの組み合わせがおすすめなのだそうです。

 また,こうした食べ物の組み合わせで栄養を補う方法のほかに,最近は「機能性チョコレート」と呼ばれる,健康に配慮したチョコレートも数多く売られるようになったと紹介されました。

 講演会の後,私はスーパーマーケットのチョコレート売場に行ってみました。
 売場には,機能性チョコレートのコーナーが設けられ,様々な商品が売られていました。

(ロッテ「スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ」)
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 ロッテの「スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ」は,乳酸菌をチョコレートで包むことにより,乳酸菌が生きたまま腸に届けることができるチョコレートです。

 株式会社ロッテと日東薬品工業株式会社の共同開発商品です。

 チョコレートなので,常温で持ち運べ,手軽に摂取できることが利点です。


(森永製菓「ビフィズス菌チョコレート」)
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 こちらは,森永製菓の「ビフィズス菌チョコレート」です。

 森永製菓株式会社と森永乳業株式会社の共同開発商品です。

 ロッテの乳酸菌ショコラと同じく,ビフィズス菌をチョコレートで包むことにより,ビフィズス菌を生きたまま腸に届けることができるチョコレートです。

 1箱あたり「ビフィズス菌BB536」が100億個も配合されており,常温でいつでも手軽に摂取できることが利点となっています。


 以上御紹介した機能性チョコレートは,いずれもハイカカオ(ビターチョコレート)であることにも注目すべきだと思います。

 ハイカカオに乳酸菌やビフィズス菌を配合することで,より健康面でのメリットを高めたチョコレートとなっているのです。


チョコレートの製造工程に欠かせない発酵

 話を講演会に戻します。

 講演会の終わりに,質問コーナーが設けられました。
 せっかくの機会なので,私も質問させていただきました。

私:「チョコレートの製造には,カカオ豆の発酵→乾燥→ローストといった工程がありますが,発酵なしでチョコレートを作ったらどんな味になるのでしょうか。人間がカカオ豆を発見した当初から,カカオ豆は発酵させる必要があると認識していたとは思えないのですが。」

佐藤先生:「インドネシアのカカオ豆を入手し,発酵なしのチョコレートを作って食べてみたことがありますが,全く味がないチョコレートになりました。発酵した方がよいという発想は,カカオ豆を外に放っておいたか何かから生まれた偶然の産物なのでしょうが,発酵を経てこそチョコレートになるのです。バナナの葉に包むなどの方法でカカオ豆を発酵するのですが,それはバナナの葉に存在する菌の力を借りているのです。」

私:「ならば,日本で大豆を藁に包んで納豆を作るのと同じ発想・方法ですね。」

佐藤先生:「そのとおりです。熱帯地方のバナナの葉にいる菌と日本の藁などにいる菌は異なるため,日本にいる菌でカカオ豆を発酵させようとしてもなかなかうまくいかないのです(笑)。ちなみに,カカオ豆を包み込んでいるカカオパルプの糖分が発酵を促しています。」

私:「勉強になりました。ありがとうございました。」


 カカオパルプは,カカオポッド(カカオの実)を割った時に出てくる,中のカカオ豆を包み込んでいる白いワタのような果肉のことです。

(カカオポッド(実))
Photo_6

 写真は会場に展示されていたカカオポッドの模型ですが,左の割ったカカオの中心部にある白い雲のようなものがカカオパルプです。

 このカカオパルプの中にカカオ豆が入っています。

 ちなみにこのカカオパルプ,味はアケビに似ているとのことです。


 佐藤先生は株式会社明治が誇るビーントゥバー(bean to bar)チョコレート「明治 ザ・チョコレート」の開発にも協力しておられます。

 最近では,世界初のチョコレート作り専用石臼(ショコラミル)を「石の三徳」(広島県東広島市)や「井上石材」(岡山県矢掛町)と共同開発され,話題となっています。

 株式会社明治・大阪工場からは,佐藤先生を通じて,毎年手作りチョコレート用のカカオニブを提供していただいており,参加者はチョコレートやカカオ酒などを作って味わうことができます。

(明治・大阪工場直送のカカオニブ)
Photo_7

 このカカオニブは,ガーナ産です。

 近年,カカオニブは製菓・輸入食品店などでも販売されるようになりました。

 御興味を持たれた方は,カカオニブから世界に1つだけのチョコレートを作ってみられてはいかがでしょうか。


まとめ

 このように,チョコレートの世界には,「ビーントゥバー(bean to bar)」や「ハイカカオ(高カカオチョコレート)」といった新しい潮流が生まれています。

 チョコレートを味わって食べる時代,単なるお菓子から健康食品として食べる時代へと,チョコレートは進化し続けていることがお分かりいただけたかと思います。


<関連記事>
カカオ豆とチョコレート」(2014年2月16日)
自家製チョコレート」(2014年2月23日)

<関連サイト>
広島市植物公園
http://www.hiroshima-bot.jp/
「ショコラミル」(「石の三徳」運営サイト)
http://www.chocolat-mill.jp/

<参考文献>
『Hanako特別編集 ハイカカオBOOK』マガジンハウス
『ニュートン別冊 食品の科学知識』ニュートンプレス
『毎日新聞 ヘルシーリポート(2017年2月9日)』毎日新聞社
佐藤清隆『チョコレートのサイエンスロマン(広島市植物公園講演会)』資料

2017年2月12日 (日)

チョコレートの新しい潮流1 -ビーントゥバー(Bean to bar)-

ビーントゥバー(Bean to bar)とは

 ビーントゥバー(Bean to bar)とは,チョコレートの原料であるカカオ豆(bean)の選別・焙煎から,板チョコレート(bar)までの全ての工程を一括して行うという意味です。

 私は,広島市植物公園で実施された広島大学の佐藤清隆先生による講演会「チョコレートのサイエンスロマン」を聴講した際に初めてこの言葉を知りました。

(Bean to barの特徴)
Bean_to_bar
(広島大学佐藤清隆名誉教授作成・配付資料・一部加工)

 以前,「自家製チョコレート」の記事で,カカオニブから自家製チョコレートを作り,その味に感動したことを御紹介しましたが,これがまさにビーントゥバーだった訳です。

 そのビーントゥバーのチョコレートを味わえるお店が尾道にあることを知り,実際に伺ってみました。

 広島県尾道市向島に,カカオ豆の仕入れからチョコレートの製造・販売までを行っておられるチョコレート工場「ウシオチョコラトル(USHIO CHOCOLATL)」があります。

(ウシオチョコラトル外観)
Usio_chocolatil

 立花自然活用村という施設の2階にあります。

(入口の看板)
Usio_chocolatil_2

 ストレートな案内ですね(笑)。

 店内はカカオの香ばしい香りが漂っており,チョコレートに魅せられた男性陣が奥の厨房でチョコレートを作られていました。

 カカオ豆の仕入れからチョコレートの製造・販売までを3人の男性が行っておられるだけでもすごいことですが,ここでは更に一歩進んで,カカオ豆と砂糖だけでチョコレートを作られていることに驚きました。


カカオ豆と砂糖だけでチョコレートを作ることの難しさ

 カカオ豆と砂糖だけでチョコレートを作れば,それだけ純粋に各カカオ豆の特徴を味わい,比較することができます。

 カカオ豆と砂糖だけで作るというのは,一見シンプルで簡単そうですが,カカオ豆(カカオニブ)に含まれる脂肪分(約55%)だけでは,十分ななめらかさが出ず,扱いが難しいため,通常はココアバターや植物油脂が加えられています。

 実際,私がカカオニブからチョコレートを作った時も,サラダ油を加えました。

 ウシオチョコラトルのチョコレートは,こうした追加の脂肪分なしで作られているわけですが,この場合,精練(コンチェ)したり,成形することがとても難しくなるらしく,大量生産用の機械では無理だと伺いました。

 このほかにも,カカオ豆の皮を取り除く際に,農機具である唐箕を使われていること,パプアニューギニアのカカオ豆など産地から直接取引されている原材料もあることなど,興味深いお話をたくさんしていただき,盛り上がりました。


チョコレートで世界を巡る

 チョコレートはどれも似たような味なのではないかと思いつつも,ガーナ,トリニダードトバコ,パプアニューギニアという3種類のタブレットを購入し,実際に食べ比べてみました。

 今回購入した3種類のタブレットです。

(ウシオチョコラトルのチョコレート)
Usio_chocolatil_4


 現代のカカオ産地と今回のチョコレートの産地を御確認ください。

(現代のカカオ産地と今回のチョコレートの産地)
Photo
(武田尚子『チョコレートの世界史』から引用。一部加工)


ガーナ

(ガーナ)
Usio_chocolatil

(ガーナ説明文)
Usio_chocolatil_3

 慣れ親しんでいる日本のチョコレートの香り・味がします。

 ハイカカオチョコレートのイメージです。

 深いコクとほろ苦さがありますが,酸味は少ないように感じました。


トリニダード・トバコ

(トリニダード・トバコ)
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(トリニダード・トバコ説明文)
Usio_chocolatil_6

 ガーナに比べ苦味は弱く酸味が少し強いです。

 ガーナ特有の焦げ臭はなく,洋酒,ハーブのような気品のある香りがしました。


パプアニューギニア

(パプアニューギニア)
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(パプアニューギニア説明文)
Usio_chocolatil_8

 フルーツ,ナッツの香りがします。

 苦味や酸味が少なく,口あたりが軽いのが特徴です。

 アーモンドペースト入りのチョコレートような甘い香りでコクのあるチョコレートです。


ビーントゥバーのメリットとデメリット

 ビーントゥバーの最大のメリットは,産地のカカオ豆のフレーバーや味を純粋に楽しめることにあると思います。

 実際,今回の3種類のチョコレートは,食べ比べてみると味や香りに明確な違いがあることがよくわかりました。

 チョコレートをカカオニブから作ったり,今回御紹介したような純粋なチョコレートを味わってみたりすると,ひと味違ったチョコレートの魅力を感じることができると思います。

 一方で,ビーントゥバーのデメリットと言えば,カカオ豆の入手経路が限られていること,入手できてもそれをチョコレートにするまでに技術や手間暇がかかること,こうした事情から値段が高価であること,などが挙げられるでしょう。


 世界各地のカカオ豆を使ったチョコレートを食べ,世界旅行の気分を味わってみるのも楽しいと思います。


 「チョコレートの新しい潮流2 -ハイカカオと機能性チョコレート,発酵の重要性-」も御覧いただければ幸いです。


<関連記事>
カカオ豆とチョコレート」」(2014年2月16日)
自家製チョコレート」(2014年2月23日)

<関連サイト>
ウシオチョコラトル
http://ushio-choco.com/

<参考文献>
佐藤清隆『チョコレートのサイエンスロマン(広島市植物公園講演会)』資料
武田尚子『チョコレートの世界史』中公新書

2017年1月17日 (火)

広島のレモン菓子・レモンケーキ3 -尾道市瀬戸田町,広島市南区・佐伯区・西区,廿日市市-

 広島で売られているレモン菓子・レモンケーキを御紹介したいと思います。


瀬戸田 梅月堂「すっぱい瀬戸田レモンケーキ」

 尾道市瀬戸田町の洋菓子店「瀬戸田 梅月堂」の「すっぱい瀬戸田レモンケーキ」です。

(瀬戸田 梅月堂「すっぱい瀬戸田レモンケーキ(包装)」)
Photo

 瀬戸田産のエコレモンと呼ばれるノーワックスで,防腐剤・防カビ剤不使用のレモンが使われています。

(瀬戸田 梅月堂「すっぱい瀬戸田レモンケーキ」)
Photo_2

 横約7cm,幅約4cm,高さ約3.5cmのやや小さめのレモンケーキです。

 レモンチョコはかけられていません。

 ケーキ生地にレモンピールのミンチが練り込まれています。

 また,果汁100%のレモンジェルが入れられているのが,特長となっています。


(瀬戸田 梅月堂「すっぱい瀬戸田レモンケーキ」(中身))
Photo_3
 断面を見ると,中央下部に濃い色をした部分があるのがわかると思いますが,これがレモンジュレです。

 レモンジュレがかなり酸っぱく,レモンケーキの良いアクセントとなっています。

 ケーキ生地,レモンピールそしてレモンジュレと,小さいながらレモンの味と風味をダブル,トリプルで味わえるレモンケーキとなっています。


パティスリー サンガ「しまなみレモンケーキ」

 広島をはじめ全国で飲食業を中心に展開されている「インスマート」が経営する「パティスリー サンガ」の「しまなみレモンケーキ」です。

 全国展開されている「STICK SWEETS FACTORY」と同じ会社です。

(パティスリー サンガ「しまなみレモンケーキ」(包装))
Photo_4

 横約8cm,幅約5cm,高さ約4.5cmと,高さのある大きめのレモンケーキです。

(パティスリー サンガ「しまなみレモンケーキ」)
Photo_5

 レモンチョコが全体的に厚めにコーティングされています。

 レモンチョコは濃い黄色をしており,繊細で溶けやすいのですが,その分,レモンの酸味や香りを強く感じます。

(パティスリー サンガ「しまなみレモンケーキ」(中身))
Photo_6

 ケーキ生地にはレモン果汁が多く使われ,レモンピールも入っているため,レモンのほろ苦さまで感じられるほど,全体的にレモンの味が強く,風味豊かなケーキに仕上げられています。


バッケンモーツァルト「広島レモンケーキ」

 広島を中心に展開する洋菓子店「バッケンモーツァルト」の「プレミアム広島レモンケーキ」です。

(バッケンモーツァルト「プレミアム広島レモンケーキ」(包装))
Photo_7

 レモンを想像させる鮮やかな黄色い包装です。

(バッケンモーツァルト「プレミアム広島レモンケーキ」)
Photo_8

 レモンチョコのコーティングは浅めです。
 レモンの香りが強いレモンチョコとなっています。

(バッケンモーツァルト「プレミアム広島レモンケーキ」(中身))
Photo_9

 ケーキ生地はきめ細かく,しっとりとしています。
 甘めでレモンの風味豊かな生地で,レモンピールも入っています。

 標準的なレモンケーキの要件を満たしたレモンケーキと言えるでしょう。

 なお,同社からは,この「プレミアム広島レモンケーキ」のほかに,「広島檸檬ケーキ」という角型のレモンケーキも販売されています。

 「この酸っぱさは恋」と説明されているこちらのケーキも注目したいところです。


朝日堂「檸檬ケーキ瀬戸美人」

 広島市佐伯区の和洋菓子店「朝日堂」の「檸檬ケーキ瀬戸美人」です。

(朝日堂「檸檬ケーキ瀬戸美人」(包装))
Photo_10

 レモンケーキではおなじみの包装紙です。

(朝日堂「檸檬ケーキ瀬戸美人」)
Photo_11

 標準的な大きさですが,白いレモンチョコが印象的です。

 レモンチョコのコーティングは浅めです。

(朝日堂「檸檬ケーキ瀬戸美人」(中身))
Photo_12

 ケーキ生地にはレモンミンチが入っています。
 甘さ控えめで,バターケーキとしてのバターの風味が強いケーキとなっています。


宝屋製菓「広島レモンケーキ」

 広島市西区の和洋菓子店「宝屋製菓」の「広島レモンケーキ」です。

(宝屋製菓「広島レモンケーキ」(包装))
Photo_13

 標準的な大きさのレモンケーキです。

(宝屋製菓「広島レモンケーキ」)
Photo_14

 浅い黄色のレモンチョコで,コーティングは浅めです。

(宝屋製菓「広島レモンケーキ」(中身))
Photo_15

 ケーキ生地にはレモンピールが入っています。
 かなりしっとりした甘いケーキ生地で,バターとレモンの風味がバランスよく配合されています。


 以上,レモン菓子・レモンケーキを購入される際の参考になれば幸いです。


<関連リンク>
 「レモンのお菓子」(「chibiaya日記」)
 chibiayaさんが,関東で販売されているレモンケーキを中心に,レモンケーキの情報を詳しく紹介されています。

<レモンケーキ関連記事>
 「レモンケーキとブランデーケーキ -レモンケーキが今も支持されている理由-

 「広島のレモン菓子・レモンケーキ1 -和菓子から生まれた日本独自の洋菓子-

 「広島のレモン菓子・レモンケーキ2 -レモンケーキの分類方法-

2016年12月14日 (水)

広島のレモン菓子・レモンケーキ2 -レモンケーキの分類方法-

 広島で売られているレモン菓子・レモンケーキを御紹介したいと思います。

 併せて,私の考えたレモンケーキの分類方法についてもお話ししたいと思います。


アンデルセン「瀬戸田レモンケーキ」


 全国展開されている広島のパン屋「アンデルセン」で販売されている「瀬戸田レモンケーキ」です。

(アンデルセン「瀬戸田レモンケーキ(包装)」)
Photo

 白い半透明の袋に入れられ,プラスチックのトレーに上品に乗せられています。

(アンデルセン「瀬戸田レモンケーキ」)
Photo_2

 開封した瞬間,レモンのさわやかな香りが広がりました。

 白いレモンチョコが印象的です。

(瀬戸田レモンケーキ(中身))
Photo_3

 きめ細かいケーキ生地で,レモンピールも入っています。

 上品なレモンケーキに仕上げられています。


ボストン「レモンケーキ」

(ボストン「レモンケーキ」(包装))
Photo_4

 広島の洋菓子店「ボストン」で販売されている「レモンケーキ」です。

(ボストン「レモンケーキ」)
Photo_5

 黄色っぽいレモンチョコが浅めにコーティングされています。

(ボストン「レモンケーキ」(中身))
Photo_6

 ケーキ生地はしっとりとしたスフレチーズケーキのような食感です。

 バターの風味よりはレモンの風味を重視したきめ細かい生地で,レモンピールも練り込まれています。


パティスリー イマージュ「瀬戸内レモンケーキ」

(パティスリー イマージュ「瀬戸内レモンケーキ」(包装))
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 広島の洋菓子店「パティスリー イマージュ」で販売されている「瀬戸内レモンケーキ」です。

(パティスリー イマージュ「瀬戸内レモンケーキ」)
Photo_8

 レモンチョコが上品にコーティングされています。

 底がカステラのような焼き色,やわらかさとなっています。

(パティスリー イマージュ「瀬戸内レモンケーキ」(中身))
Photo_9

 レモンチョコが厚めにコーティングされており,レモン風味も強く感じました。

 生地には米粉が使われており,しっとりときめ細やかなバターケーキに仕上げられています。そして,レモンピールも入っています。


天光堂「広島産直便 広島レモン」

(天光堂「広島産直便 広島レモン」(包装))
Photo_10

 広島の和菓子店「天光堂」の「広島産直便 広島レモン」です。

(天光堂「広島産直便 広島レモン」)
Photo_11

 しっとりやわらかな皮の洋風の饅頭です。

(天光堂「広島産直便 広島レモン」(中身))
Photo_12

 中に白いんげん豆をベースにしたレモンあんが入っています。

 ソフトクッキーのような饅頭の皮と,ねっとりとしてレモンの酸味が強いレモンあんが特徴です。


パンフルート「広島ピースレモンケーキ」

(パンフルート「広島ピースレモンケーキ」(包装))
Photo_13

 広島の洋菓子店「パンフルート」の「広島ピースレモンケーキ」です。

(パンフルート「広島ピースレモンケーキ」)
Photo_14

 サイズが大きめで,長さが約8cm,横幅・高さが約4cmあります。

(パンフルート「広島ピースレモンケーキ」(中身))
Photo_15

 レモンチョコのコーティングが厚めで,レモンの黄色も強調されています。

 ケーキ生地は,甘めで,バターの風味豊かな仕上がりとなっています。


レモンケーキの分類方法

 
レモンケーキをいくつか食べてみると,同じ形・味なようで,意外と違いがあることに気付きました。

 そこで,レモンケーキの特徴をとらえるための分類方法を考えてみました。


 分類するための項目としては,

 (1)レモンケーキの形・大きさ

 (2)レモンチョコのコーティングの程度(コーティングなし,ケーキ上部,ケーキ表面全体,ケーキ底まで全て)

 (3)レモンチョコのコーティングの厚み

 (4)レモンチョコの色(白色,黄色)

 (5)ケーキ生地の種類(スポンジケーキ系,バターケーキ系,焼菓子系)

 (6)ケーキ生地の風味(レモン風味重視,バター風味重視) 

 (7)レモンピールの有無

 (8)レモンジャムの有無


 などが挙げられるかと思います。

 レモンケーキをまとめて何種類か購入し,こうした観点からレモンケーキを比較してみるのも楽しいかと思います。


<関連リンク>
レモンのお菓子」(「chibiaya日記 」)
 chibiayaさんが,関東で販売されているレモンケーキを中心に,レモンケーキの情報を詳しく紹介されています。

<レモンケーキ関連記事>
レモンケーキとブランデーケーキ -レモンケーキが今も支持されている理由-

広島のレモン菓子・レモンケーキ1 -和菓子から生まれた日本独自の洋菓子-

2016年11月19日 (土)

昆虫食の研究3 -岐阜県恵那市「くしはらヘボまつり」ヘボの甘露煮とヘボ・蚕のロースト-

 これまで「くしはらヘボまつり」の「ヘボの巣コンテスト」(「昆虫食の研究1 -岐阜県恵那市「くしはらヘボまつり」ヘボの巣コンテスト-」参照)と「ヘボ五平餅とヘボ飯」(「昆虫食の研究2  -岐阜県恵那市「くしはらヘボまつり」ヘボ五平餅とヘボ飯-」参照)について御紹介しましたが,今回は「くしはらヘボまつり」の会場で販売されていたヘボの甘露煮やスナック菓子などを御紹介したいと思います。

※昆虫が苦手な方にも御覧いただけるよう,写真の一部を縮小して表示しています。御理解・御了承ください。


ヘボの甘露煮

 農事組合法人「くしはら田舎じまんの会」の販売ブースで販売されていた「ヘボの甘露煮」です。

(ヘボの甘露煮(パッケージ))
Photo

 70g入り(2,000円)と140g入り(4,000円)の2種類が用意されていました。

 昼前に販売コーナーに行ったのですが,すでに70g入りと140g入りがそれぞれ1個ずつ残るのみとなっていました。

 私はこの残りの2個を購入し,そのうち70g入りは,当日お世話になったスズメバチ研究者の山内博美さんにお礼として差し上げました。


(ヘボの甘露煮)※クリックすると拡大します。
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 さすが140g入りだけあって,ヘボ(クロスズメバチ,シダクロスズメバチ)がずっしりと詰め込まれています。

 原材料は,「ヘボ(恵那市串原産),醤油,砂糖,酒,みりん」と表記されています。

 ヘボの幼虫,さなぎ,成虫すべてが入っている,贅沢な甘露煮です。

 ヘボの巣からこうした様々な成長過程にあるヘボが取り出されたのでしょう。
 

(ヘボの甘露煮(拡大))※クリックすると拡大します。
Photo_5

 味についてですが,幼虫やさなぎは,弾力があり,小粒ながら濃厚なうまみがありました。よく煮詰められているからか,見た目もそんなに気になりませんでした。

 一方,成虫は煮詰めることで殻までやわらかくなっていました。殻に覆われた体全体のパリッとした食感を楽しめると言えます。

 いずれも,甘露煮にすることでやわらかくなっており,クセもないので,食べやすかったです。

 味が濃いので,ご飯のおかずとしてもおいしくいただけると思います。しじみやいかなごの佃煮を食べる感覚とよく似ています。

 ただ1つ,成虫を食べていて,気になることがありました。

 ヘボに刺されたからかも知れませんが,成虫を食べている最中,「舌など口の中を毒針に刺されるのではないか」と思ったのです。

 スズメバチの毒針はメスの産卵管が発達してできたものであり,まだ巣にから出ていない未熟な成虫に十分な毒針は備わっていないでしょうし,毒針がある成虫の場合でも,加熱することによってその機能は失われるでしょうから,何も問題はないと頭では理解しているつもりなのですが・・・。


ヘボ・蚕のロースト

 会場内で,ヘボや蚕をローストしたスナック菓子が販売されていました。

(ヘボ・蚕のロースト販売の様子)
Photo_6
写真提供:山内博美 氏

 ヘボは,甘露煮と同様,幼虫から成虫まで様々な成長過程のヘボをローストしたものが販売されていました。
 これには,かぼちゃの種のローストも一緒に詰められていました。

 一方,蚕の方は,さなぎをローストしたものが袋詰めされていました。

(ヘボ・蚕のロースト(包装))※クリックすると拡大します。
Photo

 「甘いのと塩味とどちらにされますか」と尋ねられ,どっちもよくわからないなと思いつつ,おつまみ風に塩味のローストを購入しました。

(ヘボのロースト)※クリックすると拡大します。
Photo

 ヘボのローストですが,幼虫は見た目や食感は松の実に似ているように思いました。よく乾燥しており,幼虫の濃厚なうまみが凝縮されていました。

 成虫は全体的に殻がパリパリしており,干し海老のような味・食感でした。

 いずれもクセがないので,ヘボの甘露煮と同様,食べやすかったです。


(蚕のロースト)
Photo_2

 蚕のさなぎのローストです。

 試食をすすめられた際,御一緒いただいた山内さんは少し苦手な様子でしたが,先入観のない私は,試食の段階ではすんなり食べられたので,購入して帰りました。

 しかしながら,自宅に帰り,封を開けて改めて観察すると,蚕のさなぎが,芋虫のローストのような,グロテスクな食べ物に見えてきました。

 食事の際,一緒に出されると少し抵抗を覚えます。

 実際に食べてみると,しっかりローストされているので,サクサクと食べられるのですが,クワの葉などの植物を食べて育っているからか,若干青臭さや泥臭さも感じられました。

 青臭いにおいも感じました。

 そして何より,見た目のハードルが高いように感じました。


松浦軒本舗の「カステーラ」

 せっかくの機会ですので,明智鉄道沿線の名菓も御紹介したいと思います。

 恵那土産として有名な松浦軒本舗の「カステーラ」です。

(カステーラ(包装))
Photo_3

 帰り際に,山内さんからお土産としていただいたものです。

 銅板造りの小釜を使い,風味をそのままに,1本1本念入りに焼き上げるという江戸時代の長崎でのカステラの技法を今に伝えるカステラです。

(カステーラ)
Photo_4

 カステーラの表面には「松浦軒」という文字の焼印がされています。

 市販のカステラに比べ,一回り小さいのですが,その分,生地にしっかりとした弾力があります。
 そして,卵のコクと砂糖や和三盆糖の甘味など,カステラ本来の風味が楽しめる仕上がりとなっています。

 古き良き農村景観や町並みが残る恵那らしいお土産だと思います。


まとめ

 岐阜県恵那市「くしはらヘボまつり」に参加したことで,ヘボとふれあい,ヘボとともに暮らしてきた人々の文化を知り,ヘボ料理などの昆虫食を味わい,スズメバチ研究者の山内博美さんとも出会うことができました。

 そして何より,私自身がヘボに刺されたことが,一番の体験であり,そのことから学んだことは多かったように思います。

 まさに体を張っての食文化事例研究の旅となりました。


<参考文献>
山内博美『都市のスズメバチ』中日出版社
松浦 誠『スズメバチを食べる-昆虫食文化を訪ねて』北海道大学図書刊行会

<関連リンク>
ヘボの巣コンテスト2016」(「都市のスズメバチ」山内博美氏のホームページ)

2016年11月12日 (土)

昆虫食の研究2 -岐阜県恵那市「くしはらヘボまつり」ヘボ五平餅とヘボ飯-

 「昆虫食の研究1 -岐阜県恵那市「くしはらヘボまつり」ヘボの巣コンテスト-」に続き,今回は「くしはらヘボまつり」で味わったヘボ料理(クロスズメバチ,シダクロスズメバチの料理)を御紹介します。

 併せて,今回のイベントでの出来事や思い出にも触れたいと思います。


代表的なヘボ料理

 ヘボは,昔から串原をはじめ,日本各地で食用とされ,様々な料理が伝承されて現在に至っています。

 会場に代表的なヘボ料理が紹介されていました。

(「ヘボを食べる」)
Photo_13

 「ヘボは,主に幼虫やさなぎを巣から抜き,煮物,混ぜご飯,すしの具や五平餅のたれに使うなどの方法で食されます。」と説明されており,各料理の写真が掲載されています。

 さらに,右下に「宮崎県ではオオスズメバチをすき焼きやそうめんのダシにします。」という説明書きもあるのですが,スズメバチを出汁にして果たして美味しいのかどうか,興味のあるところです。


ヘボ五平餅

 ヘボの巣コンテストの会場から少し離れたところに,ヘボ料理をはじめとする飲食物の販売会場が用意されていました。

 ヘボ料理を味わい,串原の食文化を知ることを目的に訪問したので,私にとってはこちらがメイン会場でした。

(飲食物販売会場)
Photo_2

 この会場で,一番の人気商品は「ヘボ五平餅」です。

 ヘボ五平餅を買い求める人で長蛇の列ができていました。

 スズメバチ研究者の山内博美さんに会場を案内していただきながら,ヘボ五平餅を購入するため,私も列に並びました。

 途中,岐阜県立恵那農業高等学校の生徒さん達がヘボや昆虫食についてのアンケート調査をされていたので,私も協力しました。

 「ヘボは幼虫と成虫どちらが好きですか」といった具体的な設問となっていたので,ヘボの食文化を理解するための貴重なデータが仕上がることと思います。

 五平餅は,ご飯をすりつぶし,竹や木の棒に練り付け,ぞうりや小判の形に成形して一度素焼きをし,表面に甘めの味噌だれや醤油だれを塗って,さらに香ばしく焼き上げた中部地方の郷土料理です。

(五平餅の素焼き)
Photo_3


 五平餅とヘボ五平餅の違いは,味噌だれの中に軽くすりつぶされたヘボ(蜂の子)が混ぜられているかどうかにあります。

(五平餅にヘボ入り味噌だれを塗る様子)
Photo_4

 写真で味噌だれに黒い粒々があるのが確認できるかと思いますが,これこそがヘボなのです。


(ヘボ五平餅を焼く様子)
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 なぜわざわざヘボを混ぜる必要があるのかと思いますが,ヘボを混ぜることにより,ヘボの捕獲を祝い,日常の五平餅がとびきりのごちそうになる効果があるからではないかと思います。


 購入後,ビニール袋に入ったヘボ五平餅を持ち歩いていると,生きたヘボが味噌だれの甘さに誘惑されて近づいてきました。

(ヘボ五平餅に近づくヘボ)
1

 おーい,共食いになるぞ(笑)。


ヘボ飯

 続いては「ヘボ飯」です。

(「へぼ御飯」(包装))
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 醤油,酒,みりんなどで調味された炊き込みご飯なのですが,その具としてヘボの幼虫や蜂の子が入れられています。

(「へぼ御飯」)
Photo_7

 ご飯の中の茶色いのが幼虫,黒いのが蜂の子です。

 幼虫や蜂の子が入っている様子を拡大した写真も掲載しておきますので,御興味のある方は写真をクリックして御覧ください。

(「へぼ御飯」の幼虫・蜂の子)※クリックすると拡大します。
Photo_9

 食べた感想ですが,炊き込みご飯自体にヘボの風味があると感じられる程ではないのですが,幼虫は柔らかく,濃厚でクリーミーな食感を,蜂の子は殻がパリッとした食感を楽しむことができ,いずれもクセがなくて食べやすかったです。

 幼虫や蜂の子の見た目さえ気にならなければ,普通に炊き込みご飯として美味しくいただけると思います。

 こちらも,五平餅と同様,ごちそうとして食べられたのでしょう。


ヘボに刺される

 ヘボまつりの会場をひととおり回った後,会場近くの産直施設に入り,産直野菜やお土産品などを見て回りました。

 外で飛び回るヘボのことなどすっかり頭になかったその時,急に左手が痛み始めました。

 何事だろうと左手を上げた瞬間,目に飛び込んできたのは,私の手のひらを刺しているヘボでした。

 自分が刺されていることはわかっているのに,どうすべきなのか全く頭が働かなくなりました。

 その間,ヘボはおしりを上下させて,「グイ,グイ,グイッ」と手のひらをじわじわと刺してきました。

 触覚が短いので,刺す可能性のあるメスだということは理解できました。

 本当はすぐ払いのけるべきなのですが,しばらくの間,スローモーションで目の前の出来事が進み,手が出せずに成り行きを見守っていました。

 しばらくして,ふと我に返り,御一緒いただいた山内さんに助けを求めました。

 ヘボを払いのけ,施設内の洗面所に駆け込み,患部をつまんで毒を絞り出すようにして流水で洗い流しました。

(ヘボに刺された左手)
Photo_10

 その後,応急処置を受けに救護所へ行きました。

 ピンセットで蜂の針を抜いてもらい,「インセクトポイズンリムーバー」で毒液を絞り出してもらった後,軟膏を塗ってもらって,とりあえず一件落着です。

 この時,もし私のそばにスズメバチにお詳しい山内さんがおられなかったら,私はその後の旅行を断念して,広島に戻っていたかも知れません。

 迅速に対応していただき,精神的支えにもなってくださった山内さんに心から感謝申し上げます。


ヘボに刺された原因と症状

 ヘボに刺された原因は,私の油断と無知によるものだと思います。

 産直施設内に居たことで,まさかヘボが一緒にいたとは思わず,油断していました。

 また,当日の身なりが黒いジャンパーに黒いジーンズ姿,そして無帽の黒髪,黒い靴,黒いリュックサック,黒いカメラとまさに全身黒一色だったのですが,後で山内さんの本『都市のスズメバチ』を読むと,「スズメバチはいずれの種も黒色に対して激しく攻撃する」とはっきり書かれており,ゾッとしました。

(黒いジャンパーに止まっているヘボ)
Photo_14

 私の黒いジャンパーに止まっているヘボです。

 袖口が開いており,ヘボがこの袖の中に入ってくることもあるので,今となって考えると,非常に危険な服装です。

 このヘボがずっと私についてきて,最後に刺したのかもしれません…。 


 その後,約1日,手に太い釘を刺されたような痛さが続きました。

 その日の晩,あまりにも痛いので,旅先で鎮痛剤を買い,何とかしのぎました。

 ちなみにその日の夕飯は昼に買ったヘボ飯。

 食べるのを楽しみにしていた気持ちはすっかり失せ,痛みに耐えながら,長野市内のホテルの一室で,もくもくとヘボ飯を食べたのでした…。


病院で診察してもらう

 生まれて初めてスズメバチに刺された私は,痛みは治まったとは言え,一抹の不安があったので,2日後に広島市内の皮膚科へ行き,診察してもらうこととしました。

 診察前にあらかじめ「クロスズメバチに刺された」旨を記入し,受付窓口に提出しました。

 名前を呼ばれ,診察室に入ると,医師から開口一番「あんた1か月後には命ないかもよ」と言われ,蜂に刺されたことよりもはるかにショックを受けました。

医師:「どこでクロスズメバチに刺されたの。」

私:「岐阜県恵那市でクロスズメバチの巣を競い,その料理が味わえるイベントがあり,興味があって行ってきたのですが,そこで刺されました。」

医師:「なんでそんな所へ行ったの。私なら絶対行かない。」

私:「だって面白そうじゃないですか。ヘボ料理は広島では食べられませんし。」

医師:「・・・。これから1か月ぐらい経てば抗体ができます。その後に刺された場合,下手すればドッガーンとショックを受けるかも知れません。不安であれば,血液検査を受けに来てください。」

私:「・・・。」

 こうして,半ば脅されながら,抗ヒスタミン薬と最も強力な軟膏を処方してもらい,一件落着しました。


まとめ

 ヘボに刺されるという思わぬ事態にも巻き込まれた今回のイベント。

 でもその経験があったからこそ,スズメバチのことを深く勉強する機会にも恵まれました。

 会場行きのバスの中で偶然出会ったスズメバチ研究者の山内博美さんには,私が広島から1人で来ていたこともあり,御親切に会場を案内してくださり,ヘボをはじめとするスズメバチについても,いろいろと教えていただきました。

 山内さんと一緒に芝生に座って食べた「ヘボ五平餅」や「へぼ御飯」は1人で食べるよりずっと美味しく感じ,明智鉄道・中央本線の車内や喫茶店でスズメバチや鉄道話をはじめとする会話を楽しんだことも,旅の良き思い出となりました。

(明智鉄道明智駅と列車)
Photo_11

 ちなみに,この明智鉄道は,グルメや鉄道ファンが注目すべき鉄道でもあります。

 「おばあちゃんのお花見弁当」,「おばあちゃんの山菜弁当」,「寒天列車」,「きのこ列車」,「じねんじょ列車」,「枡酒列車」など,様々なグルメ列車が運行されているのです。

 こうした魅力いっぱいの岐阜県恵那市。

 お越しになると実感できると思います。
 恵那は「え~な」と。


<参考文献>
山内博美『都市のスズメバチ』中日出版社

<関連リンク>
都市のスズメバチ」(山内博美氏のホームページ)

 このサイトの中で,山内さんも今回の「くしはらヘボまつり」について執筆しておられます。
 ほぼ一緒に行動させていただいたので,似たようなアングルでの写真も掲載されており,あわせてお読みいただくと面白いと思います。
 もっとも,写真や文章のレベルは私のものとは比較にならないので,お恥ずかしい限りですが・・・。

ヘボの巣コンテスト2016


 次回は「くしはらヘボまつり」で購入したヘボの甘露煮,ヘボ・蚕のローストなどを御紹介したいと思います。
 (「昆虫食の研究3 -岐阜県恵那市「くしはらヘボまつり」ヘボの甘露煮とヘボ・蚕のロースト-」)

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