食材と味の探究

2016年10月12日 (水)

ポポ -なぜ「幻の果物」と呼ばれるのか-

 JA広島市の産直市で「ポポ」(※)と呼ばれる果物が売られていました。
 ※ほかに「ポポー」,「ポーポー」などとも呼ばれています。

(ポポ(外観))
Photo

 外皮は,黄色~黄緑色~緑色をしており,大きさは様々ですが,いずれもアケビによく似た形をしています。

 「幻の果物」と呼ばれるほど,流通量が少ないようです。

 今回は,このポポを御紹介します。


ポポとはどんな果物か

(ポポ(説明文))
Photo_2

 果物コーナーに掲示されていた説明文です。

 その内容は次のとおりです。

○ポポとは
 南国系の香りをただよわせる栄養価の高い幻の果物で,「森のカスタード」とも呼ばれる。

○味
 マンゴーとバナナとパイナップルを足して3で割ったような,クリーミーな味!

○美味しい食べ頃の見分け方
 食べ頃になると独特の強い芳香を放つ。
 この香りが十分に出ていて,軽く押さえた時に少し弾力を持って凹む位になれば食べ頃。

○美味しい食べ方
 2つに割ってレモン汁を多めにかけて,スプーンでいただく。
 レモン汁をかけるとエグ味が消えてより美味しくなる。

 早速購入し,ポポについて理解を深めることとしました。


ポポについて

 ポポを縦半分にしてみました。

(ポポ(種あり))
Photo_3

 確かにバナナとパイナップルを合わせたような,強烈な南国系果物の香りがします。

 中には,大きな黒い種がたくさんあります。

 種の周りは厳密にはワタなのでしょうが,その周りの果肉と大差がありません。


(ポポの種とワタ)
Photo_4

 黒くて固い種と,種の周りのワタです。

 種は柿の種のような感じで,周りにワタがまとわり付いています。

 ワタはあまり繊維質がなく,果肉と遜色ありません。


(種とワタを取り除いた様子)
Photo_5

 種とワタをスプーンで取り除くと,濃い黄色をしたクリーミーな果肉が残りました。

 果肉がとてもやわらかく,なおかつ外の皮は大変薄いので,スプーンなどで果肉をすくい取りながら食べるのがよいと思います。


(ポポの果肉)
Photo_6

 ポポの果肉です。

 まるでスクランブルエッグのようです。

 果肉は,バナナとそっくりの味,食感がします。

 かなり大雑把な表現ですが,見た目はマンゴー,香りはパイナップル,味と食感はバナナだと想像していただければ,大きな間違いはないでしょう。


なぜ「幻の果物」と呼ばれるのか

 南国系果物なので,日本では栽培できないのではと思いましたが,ネットでポポを調べると,日本でも畑や庭などで,農薬を使うことなく比較的容易に栽培できる果物のようです。

 かつては自宅の庭で自家用に栽培されていた方も多かったようですが,現在では,栽培される方がほとんどいない状況です。

 このようにポポは現在,出荷用にまとまった量が栽培されている訳ではなく,個人の方が細々と栽培されたものが産直市などに出荷される程度にとどまっているため,流通量の絶対的少なさから「幻の果物」と言われているのです。

 しかし,南国系果物を思わせるポポの香り・味・食感はとてもよいので,本腰を入れて一定の量を栽培し,食べやすく加工して商品化すれば,新たなスイーツとしてブームを巻き起こす可能性は十分にあると思います。

 実際,島根県美郷町では,ポポを使った地域おこしが行われています。

 今後の動向に注目したい果物です。

(関連サイト)
「ひのみやスタイル」(島根県美郷町地域おこし協力隊比之宮事務所)
http://shimanex.jp/~hinomiya/index.html

2016年6月 1日 (水)

コリコリ -イカに似た牛のホルモン-

 広島市内のホルモン専門店で,「コリコリ」というホルモンが売られていました。

 白い肉で,「コリコリ」という名称から,コリコリした軟骨ではないかと思い,お店の方に尋ねてみると,「牛の血管(大動脈)です。」と教えていただきました。

 さらに,「名前のとおりコリコリした食感が特徴で,肉自体の味はあまりないので,主に食感を楽しむホルモンです。」とも教えていただきました。

 珍しいので,買って食べてみることにしました。

(コリコリ(生))
Photo

 写真左が外側から見た様子,右が内側から見た様子,上が側面から見た様子です。

 外側はクリーム色でつやがあります。
 一方,内側は白色でひだ状になっており,若干脂肪も残っています。
 また,側面から見ると,厚みがあることもわかります。

 次に,この生のコリコリを焼き,実際に食べてみることとしました。

 コリコリ自体の味を確かめるため,味付けはシンプルに塩,こしょう,にんにくのみとしました。

 フライパンで焼いてみたのですが,馴染み深いホルモン(小腸や大腸)に比べて,内側に脂肪がほとんどないため,肉に付いた脂を利用して焼くことはできませんでした。

 これが肉を焼いた後の様子です。

(コリコリ(焼肉))
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 焦げ色はつくものの,肉は白色で,見た目はイカそっくりです。

 ミノ(牛の第一胃,白肉)ともよく似ています。

 実際にいただいてみると,確かにコリコリとした食感を楽しむことができました。

 歯応えのよいコリコリ感ではなく,キュッキュッと固いイカかガムあるいはナタデココを噛みしめるような弾力のあるコリコリ感です。

 これは血管の肉の特性と言えるでしょう。

 こういうホルモンで,私が一番気になるのは,噛み切れる肉かどうかなのですが,噛む回数を多く必要とするものの,何とか噛み切ることが可能な肉でした。

 手元の本では,別称を「タケノコ」,「ハツモト」とも呼ばれると説明されていますが,確かに筍にも似たコリコリした食感があり,「ハツモト」(心臓の付け根)の部分にあるホルモンでもあります。

 味は,お店の方のお話のとおり,そんなに強い味がある訳ではなく,淡泊なミノ(白肉)の味に近いと思いましたが,逆に言うと,ホルモンには珍しく,くせのない肉だとも言えます。

 また,食べ応えがある割には脂肪がほとんどなく,よく噛んでゆっくり食べる必要があるので,ダイエット中でもお腹いっぱい焼肉を食べたいという人にも向いている肉だと思います。

 最近は用意されている焼肉店もあるとのことなので,興味を持たれた方はぜひお試しください。

2015年9月23日 (水)

色が食欲に与える影響と食品マーケティング -倉敷のデニムまん-

デニムストリートのデニムまん

 倉敷は国産ジーンズ発祥の地として有名です。

 その倉敷に,デニムと同じ藍色の生地で作られた肉まんが売られていることを知り,倉敷美観地区にある「デニムストリート」を訪問しました。

 デニムストリートには,確かにデニムまんなどが売られているテイクアウトのコーナーがあり,行列ができていました。

(メニュー)
Photo

 デニムまん以外にも,藍色のソフトクリーム「デニムソフト」や,バンズが藍色の「デニムバーガー」など,普段見かけない色の食べ物が売られていました。

 早速気になっていたデニムまんを買ってみました。

(デニムまん販売の様子)
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 「食欲をなくす色 No 1 それは青色です」と堂々と書かれたコピーが印象的です。

 肉まんにしては割高で,見た目も食欲を削ぐ色となっており,一見すると商品としてはマイナス要素の方が大きく思えます。
 しかし,ここまでマイナス要素ばかりが揃った商品は珍しいので,私を含め,逆に好奇心から購買意欲がかきたてられる方が多いのも事実でしょう。

 自宅に持ち帰り,実食です。

(デニムまん)
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 自宅で改めて取り出すと,やはり強烈なインパクトのある色です。

(デニムまんの中身)
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 中のあんは他の一般的な肉まんと同じものだと思います。

 実際にいただいてみると,「見た目を除けば,市販の肉まんとほぼ同じ」だと思いました。


色が食欲に与える影響

 
色と食欲の関係について,幕内秀夫氏は『子どもが野菜嫌いで何が悪い!』という著書の中で,「子どもが緑黄色野菜を好まないのは,緑や青,紫色の食べ物が,植物の未熟さ,毒性を示すことを直感的に判断するから」であり,そのことを逆手に取って,「子どもが口にしてほしくない洗剤やタバコなどは緑や青,紫色のパッケージが多い」と述べています。

 経験を積んだ大人は,色以外にも多くの判断材料を持っているので,食べ物の良し悪しを総合的に判断するようになりますが,人間の持つ生理的な判断材料として,緑や青などの寒色系より赤や黄色など暖色系の方がおいしそうに見えるのは,疑いようのない事実です。


デニムまんのマーケティング

 今回のデニムまん1つを取っても,地域の特産を食べ物に生かしたアイデア,観光地であることを踏まえた絶妙な価格設定,そして,あえて真逆の食欲をなくす色を使うことで好奇心から食欲を掻き立てる手法など,既存の枠にとらわれない,でも緻密に計算されたであろうマーケティング手法を垣間見ることができます。

 エンターテイメントの要素が強い食べ物だと思いました。

2015年9月22日 (火)

エディブルフラワー -食べられる花-

エディブルフラワー

 山口県柳井市の農産物直売所で,エディブルフラワー(edible flower,食用花)が売られていました。

 同市内には「やまぐちフラワーランド」もあることから,観賞用だけでなく,食用の花にも力を入れておられるのではと思い,興味を持って購入してみました。

 陳列コーナーには,エディブルフラワーについての説明がありました。

(お花の取り扱い方について)
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 意外といろんな花が食べられるようです。
 ただ,同じ種類の花でも,観賞用に育てられた花には,人体に有毒な農薬や化学肥料が使われている可能性があるので,食用に育てられた花以外は避ける必要があるでしょう。

(食べられるお花の利用法の提案)
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エディブルフラワーの利用法

 
花を使った料理というと,刺身のつまなどに用いられる食用菊や,あんパンにのせられた桜の塩漬け,洒落たレストランなどで出されるサラダなどを思い出しますが,ほかにも,お菓子の生地やバターに練り込んだり,砂糖漬けにするなどの利用法があるようです。


エディブルフラワーの実食

 今回購入したエディブルフラワーは,様々な花の詰合せパック(200円)です。

 皿に出してみました。

(エディブルフラワー)
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 観賞用でも十分通用するほど,きれいな花が並んでいます。
 実際,観賞用に留めておいた方が…という気もしましたが,そのままでいただいてみました。

 エディブルフラワーだからと言って,ほかの花と違って甘いとか,食べやすいというものでもなさそうです。

 当然ながら,香りは花そのものですし,雄しべ,雌しべ,緑色の茎の部分は少し苦味がありますし,口の中で花粉も感じます。
 抵抗なく食べられるのは,花びらの部分だけと言えるかも知れません。

 でもやはり,花の香り,見た目の美しさ,鮮やかさ,彩りの良さから,サラダや前菜,デザートなど,料理やお菓子のアクセントとして利用すると,料理のグレードが飛躍的にアップすることは間違いありません。

 エディブルフラワーをうまく利用すれば,何気ない料理もひと味違った料理に変化させることができるので,作る楽しみや食べる楽しみも増えるように思います。

2015年7月12日 (日)

お好み焼もち -お好みソース・もち入り饅頭-

 広島市内のデパートで,ふと目に留まるお菓子を見つけました。

 「お好み焼もち」(平安堂梅坪)です。

 広島のお好み焼に使われる「オタフクお好みソース」を使ったお菓子で,広島のお土産コーナーに箱詰めやバラ売りで販売されていました。

(お好み焼もち(包装))
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 「お好み焼もち」は,お好みソースが入った餡を求肥(もち)で包み,それを更に饅頭の皮で包んだ3層構造となっています。

 饅頭の皮の茶色と,上にかけられたアオサ,そしてこの層構造によって,(広島風)お好み焼が表現されています。

(お好み焼もち)
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 この饅頭の皮は,しっとり,少しもっちりとした食感で,甘く,わずかにお好みソースが入っているかもと思わせるような味です。玉子を使ってつやが付けられており,これがお好み焼の生地にあたると思います。

 はさまれた求肥は,甘くやわらかいもちですが,これはお好み焼に入っているうどんやそば,またはもちの見た目や食感を表現されているのではないかと思います。
 広島のお好み焼は,トッピングでもちを加えることができるので,もちそのものを入れた様子だとも言えます。

 そして真ん中の餡ですが,これが見た目からも想像できるとおり,お好みソース入りとなっています。元の餡は白いんげん豆を使った白餡で,それにお好みソースなどを少し加えて作られた餡だと思います。これがお好み焼のソースに該当するのでしょう。
 白餡の味に,ほんのわずかにお好みソースの色,甘さ,しょっぱさ,スパイシーさが加えられ,独特なコクも生まれています。

 こうした皮,もち(求肥),餡が口の中で上にかけられたアオサと共に一体化し,「お好み焼もち」の味が仕上げられています。

 ネーミングからは,お好みソースが練り込まれた甘辛いスナック・おつまみ系のもちや,みたらし団子のしょうゆだれのように,お好みソースの甘辛いたれが中に入ったもちを想像したのですが,実際は,「その風味からお好み焼を連想させる,求肥入りの程よい甘さの饅頭」という表現が近いように思います。

 以前,昆布の佃煮の味付けにお好みソースを使った「ソース昆布」(ヒロツク)を御紹介しました(「ソース昆布 -お好みソース入り昆布の佃煮-」参照)が,佃煮にせよ,今回のもち入り饅頭にせよ,お好みソースの甘みやコクを生かせることから生まれた商品だと思います。

 特にオタフクのお好みソースはデーツ(ナツメヤシの実)が用いられているので,他のお好みソースに比べて甘みやコクが強いことが特徴となっています。

 そして…偶然かも知れませんが,それぞれの会社が目と鼻の先の御近所さんというのも共通しています。近い分,共同開発がしやすいというメリットがあったのかも知れません。
 ※オタフクソース,ヒロツク,平安堂梅坪いずれも広島市西区商工センター七丁目に会社があります。

 お好みソースの味と言うよりは,その風味を生かし,程よい甘さのもち入り饅頭として美味しく仕上げられた「お好み焼もち」。
 

 お茶受けの菓子に最適な,広島土産のニューフェイスです。

2015年4月12日 (日)

ソース昆布 -お好みソース入り昆布の佃煮-

 広島市内のスーパーで「ソース昆布」という食品が販売されていました。
 「こもち昆布」など昆布の佃煮で有名な広島のメーカー「ヒロツク」が,広島のお好みソース「オタフクソース」を使って作られた新しい昆布の佃煮です。

(ソース昆布パッケージ)
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 佃煮の味付けと言えば,醤油と砂糖が中心となりますが,その醤油の代わりにお好みソースを使ったら,いったいどんな味になるのだろうかと興味を持ち,購入しました。

 「のりのりそば -広島の生海苔と新潟の布海苔(ふのり)-」の記事で,広島では天ぷらやフライにお好みソースをかけて食べる人も多いことに触れましたが,ほかにも,カレーやおでんの隠し味に利用されたりと,お好みソースは様々な料理に活躍しています。

 ですが…今回の「ソース昆布」は,いかに広島の人間がお好みソース好きとは言え,正直な話,少し先を行き過ぎなのではないだろうかという気持ちもありました。

 茹でた昆布にお好みソースをかけた味を想像しながら,いただきました。

(ソース昆布)
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 驚いたことに,見た目・香り・味いずれも,一般的な昆布の佃煮とほぼ一緒でした。強いて言えば,フルーティーな香りや甘味が少し強いかなと思う程度です。

 確かによく考えてみると,普通,昆布の佃煮の味付けは,醤油,砂糖,みりん,酒,酢などの調味料で行いますが,オタフクソースの原材料にも,醤油,砂糖,酢,昆布が入ってます。
 さらに,ソースの要の原材料である野菜や果実(トマト,デーツ,玉ねぎ,りんごなど)は,濃厚な甘味やとろみを持っていますが,これらがみりんに代わって甘味やとろみを持たせ,佃煮をより豊かな味にする役割を果たしているのでしょう。

 
 また,ソース昆布とは言え,お好みソースだけではなく,醤油も使われているので,一般的な昆布の佃煮にお好みソースを加えて,より豊かな味の佃煮に仕上げられているという説明が適切なのかも知れません。

 この考えを進めれば,家庭で昆布の佃煮を作る際にも,お好みソースを隠し味として加えてみるのもよいのではと思いました。

 ヒロツクのCMソング「ヒロツクの~こもち昆布」は,地元広島ではとても有名なフレーズですが,「ソース昆布」でも口ずさめそうです。

2015年4月 1日 (水)

クワスの研究 -ライ麦パンからクワスを作る(後編)-

 「クワスの研究 -ライ麦パンからクワスを作る(前編)-」では,クワスの材料の仕込みから,約12時間後までの様子をまとめました。後編では,約20時間経過した段階の様子からをまとめてみます。

(20時間後の容器内の様子)
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(20時間後の液体の様子)
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 これぐらい経てば,もう少し褐色になるかと期待していましたが,途中で少し水を加えたこともあってか,むしろ澄んだ黄色になりました。口あたりが更によくなり,炭酸も液体に溶け込んで馴染んでおり,クワスらしくなってきました。

(1日後の容器内の様子)
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(1日後の液体の様子)
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 褐色になる様子もなく,むしろ濁ってきて,これ以上発酵させると,アルコール分が強くなるばかりではないかと思い,ここで終了としました。

 パンをすくい上げてみると,ふにゃふにゃ,ぼろぼろになっています。このクワスの「もろみ」を金ざるで漉して,液体を絞り出しました。

(金ざるでもろみを漉す様子)
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完成した絞りたてのクワスです。

(自家製クワス[絞りたて])
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 クワスの状態で容器に入れ,冷蔵庫で寝かせると,液体の中の澱(おり,クワスを絞った白色の残りかす)が底に溜まり,透明度が増してきました。

(36時間後のクワスと沈殿して底に溜まった澱)
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 絞ってから1日寝かせ,透明度の高いクワスが完成しました。

(自家製クワス[冷蔵庫で1日寝かせた後])
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 日本ユーラシア協会広島支部で売られていたクワスが褐色だったので,今回もトーストしたライ麦パンの色のような褐色の液体になることを予想していたのですが,若干のとろみと炭酸のある黄色っぽい液体に仕上がりました。
 果たしてこれが本場のクワスに近いのかどうか,よくわかりませんが,クワスが作られる大まかな流れは理解出来たように思います。

 ロシアの人々は,今回のレーズンを加えた「パンクワス」のほかにも,柑橘類を加えた「酸味クワス」,紅茶を加えた「紅茶クワス」など,様々なクワスを作って楽しんでいるようです。


ビールは「飲むパン」


 小麦や大麦をパンに加工する技術は,古代エジプトで発達しました。大麦の麦芽で作られたパンがビールの発酵のために利用され,そのビールの酵母がパン種として利用されたのです。このことから,ビールが「飲むパン」と呼ばれるようになりました。
 実際,中世の頃のビールは,今のビールよりもずっと濃い,ドロドロとした麦の発酵汁のようなものだったようで,栄養価も高く,あたかもパンを食べるかのようにビールが飲まれたということです。


クワスこそ「飲むパン」

 現在のビールは,主に麦芽の煎じ汁に,ホップやビール酵母を加えて発酵させて作られており,わざわざパンを作ってビールを発酵させることは行われていないようです。
 それに対し,今回のクワスは,ライ麦パンを用いて発酵させて作りましたので,この飲料こそ,「飲むパン」と言えるのではないでしょうか。


再びパンに…

 魚柄仁之助氏のアイデア料理に,「パン粉パン」というのがあります。パンの耳を乾燥させてパン粉にし,そのパン粉にスキムミルクを加えて平たく固めたものをフライパンで焼くとクッキー風のパンになるという料理ですが,今回,もろみを金ざるで濾してクワスを絞り出した後の「クワス粕」を焼けば,「パン粉パン」のように再びパンのような食べ物になるのではないかと妙なことを思いつきました。

 クワス粕は,ライ麦パン,レーズン,りんごが原料なので,発酵してどろどろになっているとは言え,焼けばフルーツパンらしく再生するのではないかと期待しながらフライパンで焼いてみました。

(クワス粕を焼いたもの)
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 形にはなったものの,半生のガレットのような仕上がりになりました。
 見た目はそんなに悪くはないのですが,イーストや果物による発酵臭や酸味が強くなっており,味もそのままで食べるより随分痛んだ味になっていました。中まで十分焼けば,それでも食べられないことはありませんでしたが,半生だとさすがの私もギブアップしてしまいました。
 

 ましてや…これを人に「クワス」勇気などありません。

2015年3月26日 (木)

オランダせんべい -北海道・根室のお菓子-

 デパートの北海道展で「オランダせんべい」という珍しい名前のお菓子があったので,購入してみました。
 直径約15cmの平べったいせんべいが4枚入っており,税込で約300円でした。その大きさや見た目からは,せんべいというより,ミニワッフルのような感じがします。

(オランダせんべい・包装表)
Photo


味・食感


 「そのまま食べるのが一番」とあるので,まずはそのままいただきました。しっとりした生地で,かなりの弾力があるので,見た目以上に,手で引きちぎったり,噛み切るのに力が要ります。
 

 食感から想像される似たような食べ物は,湿めらせた「炭酸せんべい」や,アイスによってふやけた「ワッフルコーン」です。黒棒に似た,黒砂糖のほのかな香りと甘みがあり,この控え目な甘みが後を引く美味しさとなっています。

(オランダせんべい・包装裏面)
Photo_2

 続いて,包装袋裏面に「レンジやオーブン等で温めて,バターやはちみつをつけて食べるのも美味です。」とあるので,電子レンジで少し温めて食べてみました。多少温める程度だと,しっとり感が増す程度ですが,多少カリカリになるぐらい温めると,香ばしい香りがし,食べやすくなります。ワッフルのように,バターやはちみつをつけて食べると美味しいというのも理解出来ます。

原材料に沖縄・鹿児島の黒砂糖

 原材料は,「小麦粉,砂糖,黒砂糖,植物油,塩,重曹」となっています。
 原材料に,沖縄や鹿児島が主産地の黒砂糖が使われているのは不思議に思いました。江戸から明治にかけ,北海道(蝦夷地)から大坂,薩摩,琉球,中国(清)に至る「こんぶロード」での交易の際,昆布と黒砂糖が交換され,黒砂糖を用いる食文化が生まれたのでしょうか。

名前の由来について推測

 そもそも,名前が珍しいと思って買ったお菓子です。名前の由来について,色々と推測してみました。

(1)オランダからもたらされた南蛮菓子がルーツであるため
(2)ダッチ(オランダ)ブレッドのように,表面がひび割れているようなせんべいのため
(3)オランダで食べられるストロープワッフル(シロップ入りの薄い円形ワッフル)に似ているため
(4)オランダの干拓地又は風車に似ているため

(オランダせんべい)
Photo_3

 先入観を排除するため,これまで何の前知識もなしに,思いや感想を述べましたが,ここで改めてオランダせんべいの販売元「端谷菓子店」のウェブサイトを拝見し,確認してみることとします。

(端谷菓子店ウェブサイトより)
 「昭和40年頃から販売され,当初はパリパリした食感の煎餅でしたが,お客様のご要望などにより,現在のような少々やわらかめになりました。」
 「根室を語ると必ずオランダせんべいの話が出てきます。」

 以上のような説明がありますが,なぜオランダなのかについての説明はありませんでした。

 続いて,ウィキペディアに掲載されていたので,こちらを見ると,

 「江戸時代初期にオランダ商館が置かれていた長崎県平戸市に「オランダ煎餅」,「おらんだ焼き」という菓子があり,これが名前の由来ではないかとされている。」とあり,「模様の由来を,オランダ人の靴跡をデザインしているから,と言い伝えられて」おり,「平戸から日本海北上ルートの富山・函館・根室と同じものが伝わって」いる記録があるとのことです。

 私の推測で言えば,ストレートな(1)が正解に近いようです。

感想

 「やみつきになるおいしさ」とありますが,確かにシンプルな飽きのこない味はいくらでも食べることができ,北海道展でないと簡単に入手できないと思い,後日,再びデパートで購入しました。

 それにしても…。私は「お客様のご要望」によりやわらかくされた煎餅を,わざわざ電子レンジでカリカリにし直して食べていたようです。なぜやわらかい食感なのかも含め,機会があれば,根室に行き,地元の方と「根室を語って」みたいです。

2015年3月15日 (日)

クワスの研究 -ライ麦パンからクワスを作る(前編)-

 サンドリヨン(山形県北秋田市)のライ麦パン(黒パン)を使って,クワス(※)を作ってみることにしました。

 ※クワスについては,「ロシア料理の特徴と主な料理3 -ライ麦パン・クワス・サモワール-」を御参照ください。

 ライ麦パンが発酵して飲料となる様子を観察してみたいと思ったからです。材料はあるものを使い,分量は様子を見ながら適量を加えました。

(材料)
ライ麦パン(約150g)
ドライイースト(約3g)
レーズン(オイルコーティングなし,適量)
りんご(冷凍,適量)
はちみつ(適量)
砂糖(適量)

 まずライ麦パンをオーブンで焼きました。焦げ目がつくぐらいしっかり焼くよう心掛けました。

(トーストしたライ麦パン)
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 ドライイーストは人肌程度のお湯に溶かし,予備発酵させました。

(ドライイースト予備発酵の様子[発酵開始])
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(ドライイースト予備発酵の様子[予備発酵完了])
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 漬物容器に材料を入れて作ってみることにしました。人肌程度にさましたお湯を容器に注ぎ,その中にライ麦パンを入れます。その後,レーズン,りんご,はちみつ,砂糖を適量入れ,最後に予備発酵させておいたドライイーストを混ぜて,蓋をしました。

(材料を全て入れた状態の容器)
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(材料を全て入れ,蓋をした状態の容器)
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 そして約2時間後に確認してみると,水分が増え,発泡して,容器に耳を近づけるとプツプツという音まで聞こえるようになりました。これは予想以上でした。

(約2時間後の容器内の様子)
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 その後,数時間経過しても,勢いは弱まったものの,発泡は続いたので,しばらく様子を見ることにしました。

 発酵は,糖がアルコールと炭酸に分解されることですが,今回の場合は,レーズン,りんご,はちみつ,砂糖に含まれる糖がドライイーストにより発酵し,発泡するようになっています。

 インターネットでクワスの作り方を検索してみると,発酵時間は半日から3日程度とかなりばらつきがあります。そこで,定期的に出来具合を確かめてみることとしました。

(6時間後の容器内の様子)
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(6時間後の液体の様子)
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 黄色を帯びた液体となり,舌がチリチリする程度に炭酸も含まれました。依然として発泡は続いています。

(12時間後の容器内の様子)
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(12時間後の液体の様子)
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 口あたりがまろやかになり,わずかながらアルコール臭も感じられます。アルコール分が1%以上になると,密造酒を作ったことになり,酒税法違反となりますので,念のため,少しだけ,沸騰して冷ました水を加えておくこととしました。酒ができるのは,そもそも酒が飲めない私には本意ではありません。本格的な微炭酸の清涼飲料水クワスを作るべく,邁進するのみです。

クワスの研究 -ライ麦パンからクワスを作る(後編)-

(今回の記事について)
 この記事により,酒を作ったのではないかと疑われるリスクも考え,掲載をためらう気持ちもありました。しかし,今回のクワス作りは,様々な食文化を知り,理解を深めることを第一の目的としており,なおかつ微炭酸の清涼飲料水を作ることを前提に作ったものですので,問題はないと判断し,掲載しました。

2015年3月 8日 (日)

タスマニアビーフタンシチュー

 トップバリュ「セレクト」のタスマニアビーフで作られたタンシチューが精肉コーナーで売られていたので,購入しました。

 タスマニアビーフカレー,タスマニアビーフハンバーグと,トップバリュ「セレクト」シリーズはタスマニアビーフに力を入れておられます。

(タスマニアビーフタンシチューのパッケージ)
Photo

大きめ牛タンと濃厚ソースが売りとなっています。

価格比較

 今回のタンシチューは150gで税込537円でした。
 同シリーズのタスマニアビーフカレーが220gで税込278円,タスマニアビーフハンバーグが170gで税込398円です。
 私の記事でお馴染みの100gあたりの価格にすると,次のとおりとなります。

 ビーフカレー 約126円/100g
 ビーフハンバーグ 約234円/100g
 タンシチュー 358円/100g

 ビーフカレーについては,具のかたまりはタスマニアビーフのみですが,野菜や小麦粉などが溶け込んだルーの重量もあること,また,ハンバーグについては,約7割がタスマニアビーフという贅沢な割合ですが,肉のかたまりだけではないことなどを考慮すると,牛タンのかたまりとソースだけで構成されている今回のタンシチューの価格が他の商品と比べて高くなっていることは一応理解できます。

内容

 袋のままお湯であたため,開封してみました。

(タスマニアビーフタンシチュー)
Photo_2

 たて横が各3~5cm,厚さ1~2cmぐらいの牛タンのかたまりが2個入っていました。写真はかなり接近して撮影しているのですが,パッケージや写真から想像した大きさよりは小さく感じました。

感想

 実際にいただいてみると,牛タンのかたまりはとてもやわらかくなるまで煮込まれていました。脂肪も程よくのっており,しっとりとやわらかな食感でした。
 タン先ほど固くなく,タン元ほど脂肪がのってはいないので,クラウンカットと呼ばれる牛タンの中間部分だと思われます。(精肉店などで,牛タンを1本買ってきて,切り分けて食べてみると,脂肪のあるなしで味わいややわらかさに差があることがよく理解出来ます。)

 ソースには,ワインやソテーオニオン,トマトペーストなどが使われていて,本格的なビーフシチューの味わいに仕上げられていると思いました。

 ただ,欲を言えば,もう少し価格と量の設定を考慮した方がよい気がしました。
 値段の割には,食事のメインディッシュにするには量的に若干少なく感じたのです。思い切って,もう少し贅沢に切って,とびきりの御馳走用として売るとか,逆に小さ目に切って,シチューの要素を強くし,その分もう少し安く売るなどの工夫があった方が,よりニーズが高いのではないかと思いました。

(メモ)
ミルポワ
 
ソースにミルポワ(ペースト)が使われています。
 ミルポワ(mirepoix)とは,フォン(fond,出し汁)などを作るための香味野菜(人参,玉ねぎ,セロリなど)そのもの,またはその香味野菜の角切りのことを言います。
 実際に料理をされる方は,よく御存知だと思いますが,このミルポワを炒めるだけですでに,カレーかシチューを作っているような香りが立ち込めてきます。西洋料理の出し汁の基礎となる,必要不可欠な野菜と言えるでしょう。

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