各国料理の特徴と主な料理

2023年5月14日 (日)

フィンランド料理の特徴と主な料理3 -カルヤランピーラッカ・ムナボイ・ロソッリ・キノコソテー・スモークサーモン・ラスキアイスプッラ-

フィンランドの食文化

 北欧に位置するフィンランド。

 フィンランドの人々は自分の国を「スオミ(Suomi)」と呼びますが,このスオミには「湖の国」という意味があるようです。

 シベリウス作曲の「フィンランディア」にある「フィンランディア賛歌」にも「スオミ」と歌われますが,これはフィンランドの国を意味します。

 18万8千もの湖と広大な森,そして海とともに生活するフィンランド人は,その自然環境から魚(カワカマス,サーモン,ニシンなど),きのこ,果実(コケモモ,ビルベリー,ラズベリーなど),肉(鹿,トナカイなど)の食料を得て食文化を形成してきました。

 一般的な主食は全粒穀物のパンやジャガイモです。

 冬が長く,寒さが厳しいため,魚,肉,野菜,果物などを塩漬け,燻製,ジュース,ジャムなどに加工する,保存食作りも盛んに行われています。


フィンランドの朝ごはんプレート

 東京・外苑前の「World Breakfast Allday」(ワールド・ブレックファスト・オールデイ)を訪問しました。

 2023年2月から3月までの期間のスペシャルメニューは,「フィンランドの朝ごはん」でした。

 今回は,この「フィンランドの朝ごはん」を御紹介します。

(フィンランドの朝ごはんプレート)
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 フィンランドの代表的な料理がワンプレートに盛られています。

 それでは,それぞれの料理を御紹介します。


【カルヤランピーラッカ・ムナボイ】

 「カルヤランピーラッカ」は,ミルク粥をライ麦粉の生地で包んで焼いたフィンランド東部・カレリア地方の伝統料理で,「カレリアパイ」とも呼ばれています。

(カルヤランピーラッカとムナボイ)
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 ゆで卵を潰してバターを混ぜた黄色い「ムナボイ」がのせられています。

 外側の生地は,ライ麦粉を薄くのばして焼き上げたもので,全粒粉のクレープ(ガレット)に似ています。

 中のミルク粥はゆるい「ポテトサラダ」のイメージ,ムナボイは塩気の効いた「たまごサンドの具」のイメージです。

 オープンサンドイッチのような,食べ応えのあるパンです。


【ロソッリ】

 「ロソッリ」は,茹でたビーツやジャガイモをサワークリームで和えたサラダです。

(ロソッリ)
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 ディルが添えられています。ふりかけられているのはオールスパイスだと思います。

 ビーツの鮮やかな赤色が特徴で,クリスマスの時期に食べられます。

 サワークリームのさわやかな酸味と,ビーツとジャガイモの異なる食感を楽しめました。


【キノコソテー】

 森の恵み,きのこのソテーです。

(キノコソテー)
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 ジロール(アンズ茸),ブナピー,ブナシメジ,ヒラタケのソテーです。

 様々なきのこを味わうことができました。


【スモークサーモン】

 フィンランドではサーモンがよく食べられています。

(スモークサーモン)
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 サーモンを燻製にしたスモークサーモンは,フィンランドの代表的な保存食であり,オープンサンドイッチの具としても活躍します。


【ラスキアイスプッラ】

 デザートとして「ラスキアイスプッラ」を注文しました。

 キリスト教には,イースター(復活祭)前に40日間の断食期間(四旬節)を設ける慣習があります。

 ラスキアイスプッラは,その四旬節に入る前日(告解の火曜日)に食べられる伝統菓子です。

 隣のスウェーデンから伝わったお菓子(スウェーデンでは「セムラ」と呼ばれます)だと言われています。

(ラスキアイスプッラ)
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 卵・牛乳・バターを使ったふかふかのパン「プッラ」の中心をくり抜き,中に生クリームとベリージャムがたっぷり詰められています。

 このお菓子がスウェーデンからフィンランドに伝わった際には,アーモンド(アーモンドペーストやマジパン)が使われていましたが,アーモンドが高価だったため,フィンランドではアーモンドの代わりにジャムも使われるようになりました。

(ラスキアイスプッラ(中身))
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 生クリームの奥に,甘いベリージャムがたっぷり詰められていました。

 断食に入る前に贅沢なもの,豪華なものを食べておきたいという願望から生まれたお菓子パンなのでしょう。

 この考えは,断食期間(四旬節)に入る前に行うお祭り「謝肉祭(カーニバル)」と相通じるものがあります。

 ショートケーキのような,リッチな気分になれるフィンランドの伝統菓子です。


<関連リンク>
 「World Breakfast Allday」(外苑前店・東京都渋谷区神宮前3-1-23-1F ほか)

<関連記事>
 「フィンランド料理の特徴と主な料理1 -日本フィンランド外交関係樹立100周年・ムーミンバレーパーク・フィンランドフェア-
 「フィンランド料理の特徴と主な料理2 -ムーミンビスケット・サルミアッキ・ソルティッド リコリス・チョコレート リンゴンベリー-
 「東京都渋谷区恵比寿・世界のパン「パダリア」-コンチャ,カルヤラン・ピーラッカ,ムナボイ,ハチャプリ-

<参考文献>
 「フィンランド」(「World Breakfast Allday」リーフレット)
 地球の歩き方編集室「世界のグルメ図鑑」(学研プラス)
 「大使館の食卓 おうちで簡単レシピ集」(産経新聞出版)

2023年4月23日 (日)

東京都渋谷区恵比寿・世界のパン「パダリア」-コンチャ,カルヤラン・ピーラッカ,ムナボイ,ハチャプリ-

ヱビスビールと恵比寿

 東京都渋谷区・恵比寿(えびす)を訪問しました。

(JR恵比寿駅)
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 恵比寿と言えば,サッポロビールの「ヱビスビール」が思い浮かびます。

 JR恵比寿駅の発車メロディーで,エビスビールのCMソングでもある「第三の男」が流されているからでもありますが(笑)

(「El Tercer Hombre(Remastered)」(第三の男・リマスター版)

 (YouTube「アントーン・カラス -トピック」)

 まさに恵比寿駅の発車メロディー(笑)

 「恵比寿,恵比寿,御乗車ありがとうございます。次は渋谷にとまります」と駅のアナウンスまで聞こえてきそうです。

 「恵比寿駅」や地名の「恵比寿」は,「ヱビスビール(恵比寿ビール)」にちなんだ名称です。

 1901(明治34)年,この地域に「恵比寿ビール」を輸送するための停車場が作られますが,この停車場の名称が「恵比寿ビール」の「恵比寿」の名を冠した「恵比寿停車場」となり,現在の恵比寿駅に引き継がれているのです。

 その後,1928(昭和3)年には「恵比寿(恵比寿通り一丁目・二丁目)」という地名も誕生しました。

 こうした歴史もあってか,恵比寿の街を歩くと,居酒屋やバーなどの飲酒店を多く見かけました。

 恵比寿駅から北西方向に少し歩くと,恵比寿神社があります。

(恵比寿神社(東京都渋谷区))
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 そしてもう少し北に向かって歩いたところに,今回御紹介するお店「パダリア」があります。


世界のパンが味わえる店「パダリア」

 「パダリア」は世界各地のパンを販売されているお店です。

 世界の朝食が味わえる「WORLD BREAKFAST ALLDAY(ワールドブレックファーストオールデイ)」の姉妹店として,2022年11月28日にオープンしました。

(「パダリア」店舗)
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 ショートケーキを買う時のようにケースの中のパンを選び,お店の方に欲しいパンを伝えて購入するスタイルです。

 世界各地のパンが用意されているので,知らないパンもありますが,お店の方に尋ねると親切に教えていただけます。

 パンのほかにスープやコーヒーなども用意されていて,カウンター席のイートインスペースでいただくこともできます。

 私はパンをいくつか購入し,自宅でいただきました。

 今回私が購入したパンを御紹介したいと思います。


コンチャ

 メキシコのパン「コンチャ(CONCHA)」を御紹介します。

 コンチャはスペイン語で「貝殻」の意味で,貝殻を模した縞模様が施されたパンです。

(コンチャ)
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 バニラとチョコレート,2種類のコンチャが用意されていました。

 この写真はバニラのコンチャです。

 お店でコンチャの特徴を記した紹介カードをいただきました。

(「コンチャ」紹介カード)
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 この紹介カードは,それぞれのパンに用意されており,パダリアならではのサービスとなっています。

 コンチャは,表面が甘くてサクサクのビスケット生地で包まれており,見た目も味も日本のメロンパンとそっくりなパンです。

 このコンチャをほかのお店で「メロンパン」として販売されていても,おそらく誰も違和感はないでしょう。

 日本のメロンパンは,スペインからメキシコ(かつてのスペインの植民地)へコンチャの製法が伝わり,それが米国移民を通じて日本へ伝わったという説があります(※)。

 ※第一次世界大戦で日本に捕虜として連れてこられたドイツ人が,ドイツパンの1つ「シュトロイゼルクーヘン」を日本各地に広め,それが後の日本のメロンパンにつながったとする説もあります。

 今回いただいたコンチャは,ほのかに甘いバニラ風味を楽しめました。

 メキシコで定番の菓子パンで,本国ではコーヒーなどのドリンクと一緒に食べられることが多いようです。


カルヤラン・ピーラッカ

 続いては,フィンランドのパン「カルヤラン・ピーラッカ(KARJALANPIIRAKKA)」を御紹介します。

 カルヤラン・ピーラッカは,ミルク粥をライ麦粉の生地で包んで焼いたカレリア地方の伝統料理です。

 お店の方から「このパンは別売りの「ムナボイ」と一緒に召し上がっていただくのをおすすめしております」とお話があり,カルヤラン・ピーラッカとムナボイについて教えていただきました。

 そして紹介カードもいただきました。

(「カルヤラン・ピーラッカ」紹介カード)
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 「ムナボイ」はゆで卵とバターを混ぜた具材のようです。

 そこでカルヤラン・ピーラッカとムナボイをセットで購入しました。

(カルヤラン・ピーラッカとムナボイ)
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 写真左がカルヤラン・ピーラッカ,写真右がムナボイです。

 カルヤラン・ピーラッカにムナボイをのせ,少し温めてみました。

(ムナボイをのせたカルヤラン・ピーラッカ)
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 こちらがムナボイをのせたカルヤラン・ピーラッカです。

 カルヤラン・ピーラッカの生地は,ライ麦粉に水分を加えてクレープのように薄く伸ばし,香ばしく焼き上げたものです。

 中のミルク粥は,ゆるいポテトサラダのような仕上がりでした。

 これにゆで卵とバターを混ぜたムナボイをのせると,適度な塩気とコクが加わり,より一層美味しくいただけました。


ハチャプリ

 最後にジョージアの代表的なパン「ハチャプリ(HACHAPURI)」を御紹介します。

 「ハチョ」がチーズ,「プリ」がパンという意味で,舟形のパンの中心にチーズと半熟の卵黄がのせられているのが特徴です。

 こちらも紹介カードをいただきました。

(「ハチャプリ」紹介カード)
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 パダリアで販売されているハチャプリは,黒海沿岸・アジャラ地方のものだそうです。

(ハチャプリ)
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 舟形の大きめのパンの中心に,卵黄とたっぷりのチーズがのせられています。

 フライパンでパンを温めました。

 卵黄が焼き固まらないよう注意しながら…。

(ハチャプリ(リベイク))
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 温めると,中のチーズがトロトロに溶けました。

(ハチャプリ(溶けたチーズと玉子))
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 卵黄を崩し,パンに卵黄と溶けたチーズをまぶしながらいただきました。

 モチモチとしてやわらかいピザ生地のようなパンに,チーズの濃厚なコクと程良い塩気,そして卵黄のうま味が加わりました。

 大きめのパンでしたがあっという間に食べてしまいました。


まとめ

 パダリアには,世界各国のパンが用意されています。

 また一部の商品は,オンラインストアでも販売されています。

 このお店にしかないような珍しいパンもありますので,御興味を持たれた方は味わってみてください。


<関連サイト>
 「パダリア」(東京都渋谷区恵比寿西1-17-2-103)
 「ヱビスビール ブランドヒストリー」(サッポロビール株式会社)
 「WORLD BREAKFAST ALLDAY」(外苑前店・東京都渋谷区神宮前3-1-23-1F ほか)

<関連記事>
 「ドイツ・ウィーン菓子の特徴と主な菓子1 -シュトロイゼルクーヘン・レープクーヘン・バウムクーヘン-
 「ジョージア(グルジア)料理の特徴と主な料理 -クヴェヴリワイン・ハルチョー・サラダ・チュルチヘラ・アジカ・ハチャプリ-

<参考文献>
 東嶋和子「メロンパンの真実」講談社文庫
 島村菜津・合田泰子・北嶋裕「ジョージアのクヴェヴリワインと食文化」誠文堂新光社

2023年3月 5日 (日)

ルーマニア料理の特徴と主な料理 -チョルバ,ファソーレ・バトゥータ,ママリガ,スムントゥーナ,ムラトゥーリ,パパナッシ-

ルーマニアとルーマニアの食文化

 東ヨーロッパに位置するルーマニア。

 その国名は「ローマ人の国」という意味で,かつてローマ帝国の属州だったことに由来すると言われています。

 ルーマニアはヨーロッパ有数の農業国で,穀物自給率が高く,その中でもトウモロコシの生産はウクライナに次いでヨーロッパ第2位を誇っています。

 また牧畜業も盛んで,精肉や乳製品(チーズ・サワークリームなど)も充実しています。

 食文化においては,トルコから影響を受けた「サルマーレ」(ロールキャベツ,トルコ料理名「ラハナサルマス」)や「ミティティ」(ハンバーグ,トルコ料理名「キョフテ」),オーストリアから影響を受けた「シュニッツェル」(薄く伸ばした肉のカツレツ),ハンガリー料理から影響を受けた「グヤーシュ」(牛肉とパプリカなどで作る煮込み料理)など,ルーマニア近隣の国々から影響を受けた料理が多々みられます。

 日本では,2019年にコカ・コーラのブランド「ファンタ」の「世界のおいしいフレーバー」シリーズで,「ソカタ(SOCATA)」というエルダーフラワーの炭酸ドリンクが発売されましたが,これもルーマニアの国民的飲料です。

 あとルーマニアと言えば,(吸血鬼)ドラキュラが有名ですが,これはルーマニアに実在した人物(ヴラド3世)がモデルとなっており,彼の生家ではドラキュラ料理が味わえるようです。

 「ドラキュラ料理」,聞くだけで血が騒ぎます(笑)


ルーマニアの朝ごはんプレート

 東京・外苑前の「World Breakfast Allday」(ワールド・ブレックファスト・オールデイ)を訪問しました。

 2022年12月から2023年1月の期間のスペシャルメニューは,「ルーマニアの朝ごはん」でした。

 今回は,この「ルーマニアの朝ごはん」を御紹介します。

 注文してしばらくすると,作りたての「ルーマニアの朝ごはん」プレートが運ばれてきました。

(ルーマニアの朝ごはんプレート)
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 様々なルーマニアの料理がワンプレートに盛られています。

 それでは,それぞれの料理を御紹介します。


【チョルバ】

 「チョルバ」は,レモンやサワークリームで酸味を効かせた具だくさんのスープです。

(チョルバ)
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 今回のチョルバは,鶏の挽き肉,にんじん,玉ねぎなどで作られた鶏団子が入っており,ディルなどのハーブも使われていました。

 鶏団子のうま味が溶け込んだ酸味のあるスープで,すっきりとした味わいは,日本の味噌汁と同様,どんな料理にもよく合いました。


【ファソーレ・バトゥータ】

 「ファソーレ・バトゥータ」は,白いんげん豆のペーストです。

(ファソーレ・バトゥータ)
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 パンの上にのせられ,玉ねぎ入りのトマトソースがかけられています。

 茹でたヒヨコ豆を潰してペーストにした「フムス」とよく似た味・食感で,薄くスライスしたパンやトマトソースとよく合いました。


【ママリガ】

 「ママリガ」は粗めに挽いたトウモロコシに塩や水分を加えてフツフツと煮た食べ物で,ルーマニアではパンと並んだ主食となっています。

 イタリアの「ポレンタ」と同じ食べ物です。

(ママリガとソーセージ)
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 もったりとした粘りとコクがある穀物食です。

 ご飯(ライス)のように,ソーセージやほかの料理と一緒にいただくと,より一層美味しくいただけました。


【スムントゥーナ】

 「スムントゥーナ」はヨーグルトに似たサワークリームで,ルーマニア料理に欠かせない付け合わせです。

(スムントゥーナ)
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 塩気のあるフェタチーズ(山羊乳や羊乳を使った塩分の強いフレッシュチーズ)も加えられており,ママリガやソーセージに添えていただきました。

 さわやかな酸味とほのかな塩気があり,料理に添えるとフワッと軽くなって,食が進みました。


【ムラトゥーリ】

 「ムラトゥーリ」は,野菜をビネガー,ハーブ,ニンニクなどで漬けたピクルス(酢漬け)です。

(ムラトゥーリ)
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 漬物大国,トルコ料理の影響も受けているように思います。

 パプリカ,プチトマト,カリフラワー,キュウリのムラトゥーリをいただきました。

 酢漬けにすることにより,それぞれの野菜の色がより鮮やかに出て,彩りも良くなり,食欲を増進させる効果があります。


【パパナッシ】

 デザートとして「パパナッシ(パパナシ)」を注文しました。

 パパナッシは,揚げドーナツに似たルーマニアの伝統菓子です。

(パパナッシ)
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 お正月の鏡餅のような形をした揚げドーナツに,スムントゥーナ(サワークリーム)と甘いベリーソースがたっぷりとかけられています。

 生地は,小麦粉は少なめで,その分カッテージチーズ(脱脂乳で作られるフレッシュチーズ)がたっぷりと使われます。

 このパパナッシには,生地の約3分の2の量のカッテージチーズが使われているそうです。

 そのため,油で揚げると,外はカリカリ,中はモチモチした食感になります。

 温かいドーナツに冷たいサワークリームとベリーソース,外はカリカリで中はモチモチ。

 こうした対比も楽しむことができました。

 油で揚げられていますが,サワークリームを添えることでさっぱりとした味わいとなり,あっという間に食べてしまいました。

 ルーマニアでは通常2個以上で提供されるようですが,確かにたくさん食べたくなるお菓子です。

 もっちり感は,ブラジルのチーズパン「ポンデケージョ」に似ているようにも思いました。

 チーズやサワークリームが好まれるルーマニアならではのお菓子です。


<関連リンク>
 「World Breakfast Allday」(外苑前店・東京都渋谷区神宮前3-1-23-1F ほか)

<関連記事>
 「ブラジル料理の特徴と主な料理1 -ポンデケージョ・フェイジョアーダ・シュラスコ・アサイードリンク・ガラナ・シェレッタ-
 「ブラジル料理の特徴と主な料理4 -群馬県大泉町・ブラジルのパン-

<参考文献>
 「ルーマニア」(「World Breakfast Allday」リーフレット)
 地球の歩き方編集室「世界のグルメ図鑑」(学研プラス)
 「大使館の食卓 おうちで簡単レシピ集」(産経新聞出版)

2022年11月20日 (日)

レバノン料理の特徴と主な料理2 -マヌーシェ・アエージェ・マクドゥース・ラブネ・フモスバリラ・ハルミチーズ・ナス・ケッベ-

 東京で世界の朝食が味わえるお店「World Breakfast Allday(ワールド・ブレックファースト・オールデイ)」。

 私はこれまで外苑前店と原宿店を利用したことがありますが,しばらく経って原宿店は閉店となり,現在は外苑前店に加えて吉祥寺店と銀座店がオープンしています。

 2022年10月・11月限定の朝ごはんは「レバノンの朝ごはん」です。

 この料理を味わうため,2022年10月16日の朝,久しぶりに外苑前店を訪問しました。


レバノンの朝ごはん

 レバノンは,シリアやイスラエルと国境を接する,広さ約1万平方メートル(岐阜県とほぼ同じ面積),人口約526万人の小さな国です。

 オスマン帝国(トルコ)やフランスの支配下だった時代もあることから,レバノン料理はアラブ料理を基本に,これらの国々の食文化の影響も受けています。

 今回「World Breakfast Allday」で御用意されたレバノンの朝ごはんプレートがこちらです。

(レバノンの朝ごはんプレート)
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 プレートの中心に大きなパンがデーンとのせられており,ボリューム満点です。

 レバノン料理の特徴は,野菜やオリーブオイル,ヨーグルト,スパイスやハーブを使った料理が多いことです。

 中東で最も洗練された料理とも言われています。

 それでは,今回いただいた料理を個別に御紹介します。


【マヌーシェ】

 プレートにのせられた大きく平たいパンは「マヌーシェ」です。

(マヌーシェ)
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 弾力のあるパンの上には「ザータ(ザータル)」と呼ばれる中東のスパイス,そして白ゴマがたっぷりとかけられています。

 「ザータ(ザータル)」はタイム,スマック(赤シソに近い風味のスパイス)などを配合したミックススパイスです。

 辛さはなく,さわやかな香りのスパイスが配合されたミックススパイスなので,様々なパンやおかずに合わせることができます。

 目覚めの朝食にふさわしい,鮮烈でさわやかな香りのパンでした。


【アエージェ】

 「アエージェ」は,ズッキーニなどの野菜に,ミントやパセリなどのハーブを加えた平たいオムレツです。

(アエージェ)
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 ニラ玉のような感じで,ごはんにも合うこと間違いなしの玉子料理でした。


【マクドゥース】

 「マクドゥース」は,茹でた小ぶりのナスにパプリカやクルミ,ニンニクなどを詰めてオイル漬けにした料理です。

(マクドゥース)
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 見た瞬間は,パプリカの詰め物かと思いました。

 オイル漬けでやわらかくなったナスやパプリカに,コリコリしたクルミの食感と香ばしさがよいアクセントになっていました。

 中東では定番の保存食とのことです。


【ラブネ】

 「ラブネ」は水切りヨーグルトです。

 今回は,きゅうりのサラダとともに盛り付けられていました。

(ラブネとサラダ)
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 市販のプレーンヨーグルト(無糖)に似ていますが,少し塩気があるので料理の付け合わせとしてもよく合います。

 サラダだけでなく,平たいパン「マヌーシェ」にもつけていただきました。

 サラダには,オリーブの実とザクロが添えられており,細かいところまで中東料理をよく再現されているなと感心しました。


【フモス バリラ】

 「フモス バリラ」は,茹でたひよこ豆をレモン・ニンニク・オリーブオイルで和えたサラダです。

(フモス バリラ)
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 クミンが加えられているため,カレーのような風味に仕上がっていました。

 中東には「フムス」と呼ばれる,ひよこ豆を潰してのばしたディップがありますが,ひよこ豆は中東の人々に欠かせない食材となっています。


【ハルミチーズとナスのグリル】

 ハルミチーズは,ヤギ乳と羊乳を混ぜて作られる塩漬けチーズです。

(ハルミチーズとナスのグリル)
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 鶏のササミのような,シコシコ・モギュモギュとした食感の白いチーズです。

 当ブログのトルコ料理の記事(「ヘリムチーズ焼」)やギリシャ料理の記事(「サガナキ」)でも御紹介していますが,もともとはトルコの南に位置するキプロス発祥のチーズです。

 適度な塩気と弾力があり,焼くだけでも十分美味しいチーズです。

 ナスのグリルとの相性も抜群でした。


【ケッベ】

 レバノンの朝ごはんプレートに加え,単品で「ケッベ」も注文しました。

 「ケッベ」はスパイスで味付けした挽き肉をオーブンで焼いた料理です。

(ケッベ)
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 クリーム,ザクロ,松の実,ミントが添えられており,見た目はショートケーキのようですが(笑),挽き肉料理です。

 挽き肉に「ブルグル」と呼ばれる「ひき割り小麦」が混ぜ込まれており,軽い食感に仕上げられていました。

 この「ケッベ」はレバノン移民とともにブラジルに渡り,ブラジルでは「キッビ」という名で,スナックとして親しまれています。


 今回御紹介した料理だけでも,トルコ,ギリシャ,キプロス,ブラジルと様々な国の料理との関わりがあり,各国の食文化は他国との交流も含めて研究する必要があることがよくわかります。


<関連サイト>
 「World Breakfast Allday」(東京都渋谷区神宮前3-1-23-1F(外苑前店)ほか)

<関連記事>
 「レバノン料理の特徴と主な料理1 -ラップサンド-
 「トルコ料理の特徴と主な料理2 -神戸・「ケナン」のトルコ料理(前編)-
 「ギリシャ料理の特徴と主な料理1 -サガナキ・ホリアティキ・スブラキ・ムサカ・マスティクア-
 「ブラジル料理の特徴と主な料理3 -群馬県大泉町 キッビ,エスぺト・ミスト,フェイジョン-
 世界の料理については,当ブログ「食文化関連記事一覧表・索引」の「各国料理の特徴と主な料理」も御参照ください。

<参考文献>
 「World Breakfast Allday」レバノン料理紹介リーフレット
 マガジンハウス「ブルータス」(「日本で味わう,48の国と地域の食文化 世界が恋しくなる料理」・2022年4月15日号)

2022年7月 3日 (日)

デンマーク料理の特徴と主な料理5 -フーゴ・フレスケスタイ・赤キャベツのピクルス・スメアブロ・ニシンのマリネ・エーベンチュアケー-

アンデルセンの「デンマークフェア」と広島アンデルセン

 2022年6月1日から30日までの期間,アンデルセンの各店舗で「デンマークフェア」が開催されました。

 デンマークのパン・料理・ドリンク・食材・雑貨などの販売や,デンマーク関係のセミナー・パーティーの開催など,デンマークの魅力を知り,味わい,楽しむことができる盛りだくさんのイベントが実施されました。

 アンデルセンの旗艦店である広島アンデルセンの玄関には,デンマーク名誉領事館の看板が掲げられています。

(広島アンデルセン入口(デンマーク名誉領事館看板))
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 アンデルセンとデンマークのつながりは,アンデルセンの創業者・高木俊介氏が,デンマークでデニッシュの製法を学び,日本で最初にデニッシュを紹介されたことに始まります。

 こうした縁もあって,広島アンデルセンの建物の中にデンマーク名誉領事館が設置されているのです。

 私は,この広島アンデルセンの2階にあるアンデルセンキッチンで「デンマークビュッフェ」を楽しみました。

 今回はデンマークフェアで提供されたデンマーク料理やお菓子を中心に御紹介したいと思います。


アンデルセンキッチンの「デンマークビュッフェ」

 「デンマークビュッフェ」では,通常の料理に加え,様々なデンマーク料理が用意されていました。


【フーゴ】

 デンマークフェアで私の一番のおすすめは,エルダーフラワーシロップで作られるドリンク「フーゴ」です。

(フーゴ(エルダーフラワードリンク))
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 ライチやマスカットに似たフルーティーな風味が楽しめ,初夏の訪れを感じることができるドリンクです。


【フレスケスタイと赤キャベツのピクルス】

 フーゴでのどを潤した後,料理をいただきました。

(フレスケスタイ(クリスピーデニッシュポーク))
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 フレスケスタイ(クリスピーデニッシュポーク)です。

 注文すると,大きな肉の塊をその場で切り分けていただけました。

 フレスケスタイは,表面の皮の部分に「ハモの骨切り」のように包丁で細かく切り込みを入れ,その切れ目に塩・ローリエ・クローブなどの調味料やスパイスをすり込んで下味をつけ,オーブンで焼いた料理です。

 パリパリで塩気のある皮とジューシーな肉を一度に味わうことができます。

 赤キャベツのピクルスと一緒にいただきました。

 デンマークでは,お祝いの日に食べられる特別な料理なのだそうです。


【スメアブロ】

 スメアブロは,薄く切ったパンにバターを塗り,様々な具を彩りよく盛り付けたオープンサンドイッチです。

 トレコンブロート(ゴマのパン)を一口サイズにカットして作られたスメアブロが数種類用意されていました。

(スメアブロとフレスケスタイ)
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 ゆで卵と海老,フレスケスタイと赤キャベツのピクルス,マリネサーモンのスメアブロです。

 トレコンブロートはどっしりとした生地のパンなので,薄くスライスしたものでも,具材をしっかりと受け止めることができます。

 オープンサンドにすることで,それぞれの具材をより一層美味しくいただくことができました。


【ニシンのマリネ】

(フレスケスタイ・ニシンのマリネ・スメアブロ)
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 スメアブロにニシンのマリネも加えてみました。

 ニシンのマリネは,弾力のある「しめ鯖」のような食感・味でした。

 ビュッフェですから,トレコンブロートにニシンのマリネをのせてスメアブロでいただくのもありですね。


【鴨のロースト(ベリーソース)】

(鴨のロースト(ベリーソース)とニシンのマリネ)
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 ベリーソースを添えた鴨のローストとニシンのマリネです。

 鴨肉にはベリーソース,赤ワインソース,オレンジソースといった甘いソースがよく合います。

 ニシンのマリネは好きなのでおかわりをし,ケイパーを添えていただきました。


【茹で海老・蒸し鶏とトマトソース】

 パンと一緒に,茹で海老やトマトソースを添えた蒸し鶏もいただきました。

(茹で海老・蒸し鶏とトマトソース・ニシンのマリネ)
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アンデルセンキッチンの人気・定番メニュー

 デンマーク料理のほかに,アンデルセンキッチンの人気・定番メニューもいただきました。

【高原黒牛のビーフシチュー】

(高原黒牛のビーフシチュー)
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 人気メニューの1つ,ビーフシチューです。

 注文すると,鉄鍋に入った熱々のビーフシチューが供されました。

 分厚い牛肉がやわらかくトロトロに煮込まれていました。

【サーモンのムニエル・ハーブバターソース】

(サーモンのムニエル・ハーブバターソース)
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 こちらはサーモンのムニエルです。

 ハーブバターソースは酸味の効いたマヨネーズソースのような味わいで,サーモンのムニエルとよく合いました。


【広島熟成どりのクラブハウスサンド】

(広島熟成どりのクラブハウスサンド)
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 やわらかい蒸し鶏,ベーコン,ゆで卵,トマト,レタス,レッドキャベツなどをパンで挟んだクラブハウスサンドです。

 パンは軽くトーストされていました。

 アンデルセンのサンドイッチなら間違いないだろうと注文しましたが,そのとおりの一品でした。


【クリームブリュレ・ティラミス・プリン】

 デザートにクリームブリュレ・ティラミス・プリンをいただきました。

(クリームブリュレ・ティラミス・プリン)
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 こういう欲張りなチョイスができるのもビュッフェならではの楽しみです。

 クリームブリュレは注文を受けてからブリュレ(表面焼き)されます。

 プリンは上品な仕上がりで,カスタードはクリームブリュレの方が濃厚でした。


 アンデルセンキッチンの定番メニューも含め,デンマークビュッフェをお腹いっぱい堪能しました。


エーベンチュアケー

 広島アンデルセン1階のベーカリーショップで,「エーベンチュアケー」というデンマークのお菓子を購入しました。

(エーベンチュアケー)
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 「童話のケーキ」という意味を持つデンマークの焼菓子です。

 直径約6cmで,大福ぐらいの大きさです。

(エーベンチュアケー(中身))
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 クッキー生地の中に,アーモンドベースのマジパンと細かく刻んだドライフルーツがぎっしり詰め込まれていました。

 ドライフルーツはオレンジピール,レーズン,サクランボ,パインアップル,レモンピールです。

 サクサクのクッキー生地の中に,しっとりとしたマジパンとドライフルーツの「あん」が入っており,ドライフルーツたっぷりのカントリーマアムのようなお菓子でした。


まとめ

 冬の長いデンマークでは,夏至を迎える6月はお家から出て太陽のある暮らしを楽しむ季節のようです。

 私はアンデルセンで「デンマークフェア」が開催される時期になると初夏の訪れを感じ,フーゴ(エルダーフラワードリンク)が恋しくなります。

 日本の年中行事で言えば,冬至に近いクリスマスの方がビッグイベントとなっていますが,今後は初夏や夏至の訪れを祝う北欧・デンマークの考えやイベントについても積極的に取り入れ,盛り上がればいいなと思います。


<関連サイト>
 「広島アンデルセン」(広島市中区本通7-1)
 「サービスエリアに行く。(ニクラスさんのルバーブとゆずのデニッシュ)」(「chibiaya日記」)
 「アンデルセンのデンマークチーズとレモンのマフィン。」(「chibiaya日記」)

<関連記事>
 「デンマーク料理の特徴と主な料理1 -なぜオープンサンドイッチが伝統料理なのか-
 「デンマーク料理の特徴と主な料理2 -デンマークバター・ソフトカーネラグブロート・ダンスクウールブロート・スモーブロー-
 「デンマーク料理の特徴と主な料理3 -フリカデラ・赤キャベツのピクルス・フレスケスタイ・フーゴ,デンマークとドイツの食文化-
 「デンマーク料理の特徴と主な料理4 -クランセケーフィンガー-
 「ルバーブの特徴を知る(2) -ルバーブジャム・ルバーブパイ・ルバーブとゆずのデニッシュ-

<参考文献>
 「Denmark Fair」アンデルセン広報誌
 「ブレッド図書館 デニッシュ」(2022年5月28日放送・NHK Eテレ)

2022年6月19日 (日)

ひろしま国際プラザ「難民の故郷の味フェア」 -チキンのレモン煮・麻婆豆腐・アメリカンドッグ・ブロッコリーライス・チルカーノ・アスウィットサラダ・ケニア紅茶-

6月20日は世界難民の日

 毎年6月20日は「世界難民の日」(World Refugee Day)です。

 難民の保護と支援に対する世界的な関心を高めることを目的に,2000年12月4日の国連総会で決議されました。

 日本でも,全国各地で「世界難民の日」にちなんだイベントが行われています。

 今回は,そのイベントの1つ,「ひろしま国際プラザ」で開催された「難民の故郷の味フェア」について御紹介したいと思います。


ひろしま国際プラザ(HIP)

 広島県東広島市鏡山には,試験・研究機関が集積する「広島中央サイエンスパーク」があります。

(広島中央サイエンスパーク)
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 そしてこの「広島中央サイエンスパーク」内に「ひろしま国際プラザ」があります。

(ひろしま国際プラザ)
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 「ひろしま国際プラザ」(HIP:Hiroshima International Plaza)は,「広島県立広島国際協力センター(HICC:Hiroshima International Cooperation Center)」と「国際協力機構(JICA)中国センター」が一体化した複合施設です。

(レストラン「ラコルト」と宿泊棟)
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 手前の丸い建物がレストラン「ラコルト」,奥が海外からの研修員などが宿泊・滞在する宿泊棟です。

 私はJICA中国やHICCの職員の方とインドネシアへ出張したり,このHIPで中国・四国地方各県の海外研修員の皆さんと交流事業を企画・実施したことがあるので,HIPにはとても親しみがあります。

 懐かしさで胸が一杯になりつつ,ひろしま国際プラザに入館し,「難民の故郷の味フェア」が開催されている施設内のレストラン「ラコルト」を目指しました。


「難民の故郷の味フェア」

 「難民の故郷の味フェア」は,「世界難民の日」にちなみ,2022年6月14日から27日までの期間限定で開催されているイベントです。

(難民の故郷の味フェア)
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 「食」を通じて難民問題を知ることを目的に,難民を多く輩出している国の料理(ウクライナ風ボルシチ,ワッタッカー(スリランカ風かぼちゃのカレー),アダスィー(イランのレンズ豆スープ),いんげん豆と野菜の炒めもの(エチオピア),チキンカラヒ(パキスタン風チキンカレー)など)が提供されるイベントです。

(レストラン「ラコルト」)
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 レストラン「ラコルト」の入口です。

 ランチは定額制(750円)でバイキング形式となっています。

 レストラン利用者向けに使い捨てのビニール手袋が用意されるなど,衛生管理を徹底されていました。

 レストラン内に世界のスパイスの紹介コーナーがありました。

(世界のスパイス紹介コーナー)
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 世界の様々な国から広島を訪問・滞在されている研修員・留学生向けの食事に,こうしたスパイスを活用した料理が作られています。

 セルフサービスで料理を皿に盛り,席に着くと,テーブルに難民の紹介文がありました。

(難民の紹介文(コマネチ))
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 難民として,ルーマニアの体操選手・コマネチさん,インテルのCEO・アンドルー・グローヴさん,科学者・アインシュタインさんなどが紹介されていました。

 レストランが,世界の食や難民問題を学ぶ場にもなっていました。

 それではランチで味わった料理を御紹介します。

(2022年6月18日のランチ)
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 私が訪問した2022年6月18日のランチです。

 世界各国の料理が日替わりで提供され,それにご飯・野菜カレー・フレッシュサラダ・ドリンク(コーヒー・紅茶・ウーロン茶・お茶)・デザート(今回はぶどうゼリー)が付きます。

 続いて,それぞれの料理を御紹介します。

(チキンのレモン煮・麻婆豆腐・アメリカンドッグ・ブロッコリーライス)
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 写真左上から時計回りに,チキンのレモン煮,麻婆豆腐,アメリカンドッグ,ブロッコリーライスです。

【チキンのレモン煮】
 「チキンのレモン煮」はモロッコの料理です。
 一口サイズに切った鶏肉をレモンと一緒に煮込んだものです。
 レモンで煮込むことで,皮付きの鶏肉がさっぱり・スッキリとした仕上がりになっていました。
 カレーに欠かせないターメリックやクミンも使われており,さわやかなチキンカレーのような料理でした。

【麻婆豆腐】
 中国料理として,麻婆豆腐が提供されていました。
 マイルドな辛さで,豆腐と挽き肉がたっぷりの麻婆豆腐でした。

【アメリカンドッグ】
 アメリカ料理として,ミニアメリカンドッグが提供されていました。
 ソーセージ入りの揚げパンに似ている,日本でもお馴染みの定番スナックです。
 久しぶりに食べ,その味を楽しみました。

【ブロッコリーライス】
 「ブロッコリーライス」はブラジルの料理です。
 米とブロッコリーを炊いた(または炒めた)料理です。
 きちんと長粒米(インディカ米・ジャスミンライス)が使われていました。
 細かくやわらかくなったブロッコリーとご飯の相性が良く,主食としてもおかずとしても味わえる一品でした。

【チルカーノ】
 「チルカーノ」はペルーのスープです。

(チルカーノ)
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 スープの具として,タラやカボチャが入っていました。
 タラのうま味を生かしたシンプルな味のスープでした。
 なお,ペルーにはこのチルカーノにちなんだ同名のカクテルもあり,こちらも人気があるようです。

【アスウィットサラダ】
 「アスウィットサラダ」はスーダンの料理です。
 「難民の故郷の味フェア」で,難民を多く輩出している国の料理として提供された料理です。

(アスウィットサラダ)
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 焼いたナスをペースト状にのばした料理です。
 焼きナスの香ばしさとともに,さわやかな酸味を感じました。
 これはサワークリームかヨーグルトによる酸味だと思います。

(アスウィットサラダとレタス)
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 美味しかったので,レタスとともにおかわりをしました。

【野菜カレーとご飯】
 レギュラーメニューの野菜カレーとご飯もいただきました。

(野菜カレー・ご飯)
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 肉は入っていませんでしたが,これは誰でも食べられるように配慮されているからだと思います。

【ケニア紅茶】
 ドリンクコーナーにケニア紅茶のティーバッグがあったので,お湯を注いでケニア紅茶をいただきました。

(ケニア紅茶)
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 ケニアは紅茶の生産国として有名で,茶葉を細かく砕いたCTC製法の紅茶が広く流通しています。

 食後に紅茶をいただきながら,このレストランをイベント会場にして,中四国各県に派遣された海外研修員・留学生と一緒に食事したり,けん玉(広島県廿日市市が発祥)で遊んだことを思い出しました。

 訪問した日も多くの研修員・留学生が食事しておられ,国際色豊かな環境での食事となりました。

 食事を済ませてレストランを後にする際,「MEAL for Refugees(ミールフォーリフュージーズ:難民への食事)」の一環として募金箱が設置されていたので,わずかながら募金させていただきました。


ひろしま国際プラザ館内見学

 ひろしま国際プラザ館内を見学しました。

 「世界難民の日」にちなんで,世界の難民の状況を紹介するコーナーがありました。

(世界の難民の状況)
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 世界の避難民は1億人以上おられること,ロシアによるウクライナ侵攻で難民が急激に増加したこと,日本の難民認定率は1%未満と極めて少ないことなどを学びました。

 ロビーには外国人向けの様々なガイドブックがあったのですが,その中にベジタリアン向け・ムスリム向けのガイドブックがありました。

(ベジタリアン向け・ムスリム向けガイドブック(広島版))
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 ベジタリアンやムスリムの人が安心して利用できる広島の食事店などが紹介されているガイドブックです。

 そして玄関には,世界の方向看板がありました。

(世界の方向看板)
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 看板がありすぎて,とても複雑になっています(笑)

 世界のファッションや楽器が展示されているコーナーもありました。

(世界のファッション展・ペルーの衣装)
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 カラフルなペルーの衣装です。


 新型コロナウイルス感染症の影響で海外旅行が難しい状況となっていますが,お近くの国際交流・国際協力施設を活用すれば,世界の国々と交流し,国際協力活動ができるチャンスはいくらでもありますよ!

<関連サイト>
 「ひろしま国際プラザ(HIP)」(広島県東広島市鏡山3-3-1 広島中央サイエンスパーク内)
 「国際協力機構(JICA)中国センター」(広島県東広島市鏡山3-3-1)
 「難民支援協会(JAR)」(東京都千代田区西神田2-5-2 TASビル4階)
 「世界難民の日」(UNHCR(国連難民高等弁務官事務所))
 「ヨコハマぶらぶら40 みなとみらいのXmas?レレレノンかサルトルか〜♫
 (「なーまんのEye-Level」・JICA横浜「ポートテラスカフェ」)

<関連記事>
 「アルバニア料理の特徴と主な料理 -ペシュク・ネ・フーレ,トゥルリ・ペリメシュ,ミシュ・メ・ラク,ラバーニ-
 (JICA関西「JICA関西食堂」)
 「ケニア料理の特徴と主な料理3 -アフリカフレンドシップウィークのビリヤニ(後編)-
 (ケニア紅茶)

2022年4月17日 (日)

イタリア料理の特徴と主な料理7 -パスクアの伝統菓子・コロンバ(コロンバ・パスクアーレ)-

イースターについて

 イースター(復活祭)は,磔刑に処されたイエス・キリストが復活し,神の子として人々の前に姿を現したことを記念する日です。

 そのため,キリスト教のイースターは,クリスマス(降誕祭),ペンテコステ(聖霊降臨祭)と並ぶ三大祝日の1つとなっています。

 イースターの日付の定義は「春分後最初の満月の後に訪れる日曜日(※)」とされていて,毎年変わる「移動祝日」となっています。
 ※東方正教会の場合はユリウス暦を採用しているため日付が異なります。

 2022年は,今日(4月17日)がイースターです。


パスクアで食べられるイタリアの代表的なお菓子

 イースターは,イタリアでは「パスクア(Pasqua)」と呼ばれています。

 パスクアの際には,イタリア各地で様々なお菓子が作られ,食べられています。

 代表的なお菓子として,「ウオーヴォ ディ チョッコラート(Uovo di Cioccolato)」(卵の形をしたチョコレート)や,「パスティエラ(Pastiera)」(小麦粉・リコッタチーズなどで作られるタルト),「カッサータ(Cassata)」(リコッタチーズやドライフルーツを使ったケーキ),「コロンバ(Colomba)」(鳩の形をした発酵菓子)などがあります。

 今回は,そんなパスクアで食べられるイタリアの代表的なお菓子の1つ,「コロンバ」を御紹介します。


コロンバ

 「コロンバ(Colomba)」は,イタリア語で「鳩(はと)」を意味します。

 お菓子の「コロンバ」は,その名のとおり,鳩の形をした発酵菓子です。

 「コロンバ」は,鳩が復活の象徴であり,平和のシンボルであり,幸せを告げる鳥であることにあやかったパスクアの伝統菓子です。

 そのため,「コロンバ・パスクアーレ(Colomba Pasquale)」(パスクアのコロンバ)とも呼ばれます。

 鳩が平和のシンボルであることは,広島市民である私にもよく理解できます。

 そのコロンバが,「ドンク」の店舗で期間限定で販売されていました。

(コロンバ案内看板(ドンク))
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 毎年,イースター(パスクア)の時期に販売されているようです。

(コロンバ)
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 こちらが「ドンク(サンレモ)」のコロンバです。

 鳩の形をした紙容器に生地を詰め,焼き上げられています。

 表面には白い「あられ糖(砂糖の粒)」がトッピングされています。

(コロンバ(中身))
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 コロンバの中身(断面)です。

 バターと卵がたっぷり使用された生地に,大粒のオレンジピールがたくさん混ぜ込まれています。

 いただいてみました。

 ふんわり・しっとりして粘りがあり,ケーキよりはパンに近い食感でした。

 イタリアのクリスマスの伝統菓子「パネトーネ(Panettone)」にも似ています。

 「♪オレンジの香り~ほのかにただよい~♪」と,思わず「帰れソレントへ」の歌詞を口ずさんでしまうほど,オレンジの香りが口の中いっぱいに広がり,幸せな気持ちになりました。

 ふんわりとしたパンに近いのですが,あられ糖をトッピングすることにより,白い鳩をイメージさせるお菓子となっています。

 オレンジの風味が豊かな美味しいお菓子で,いただくと元気が湧き,疲れた体が復活しました。


<関連サイト>
 「ドンク」(「三宮本店」神戸市中央区三宮町2-10-19 ほか)

<関連記事>
 「イースター(復活祭)を基準としたキリスト教行事 -なぜ卵とウサギが一緒なのか-

<参考文献>
 辻調理師専門学校監修/近藤乃里子・合田達子・正戸あゆみ著「イタリア料理基本用語」柴田書店

2022年2月27日 (日)

美術館とカフェ・レストランの魅力3 -ポーラ美術館の企画展コースメニュー「アイスランドへの旅」-

 2021年12月末に箱根へ行ってきました。

 その一番の目的は,ポーラ美術館を訪問することでした。

 ポーラ美術館には,印象派を中心とする西洋絵画をはじめ,日本の絵画,現代アート,東洋陶磁,ガラス工芸,化粧道具など多彩な芸術作品が所蔵されています。

 そうした美術作品をいつか観賞したいと思っていたのですが,今回,レストランの期間限定メニューがアイスランドにまつわる料理だと知り,どうしても味わってみたいという気持ちになって,訪問することを決めました。

 JRで小田原駅まで行き,小田原駅からは箱根登山電車に乗って箱根湯本駅へ向かいました。

(小田原駅・箱根湯本行き箱根登山電車)
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 箱根湯本駅で電車を乗り換えました。

(箱根湯本駅・強羅行き箱根登山電車)
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 箱根は初めてだったので,「同じ路線なのに,なぜ箱根湯本でわざわざ電車を乗り換えなければならないのだろう」と思いながら強羅(ごうら)行きの電車に乗り換えたのですが,その電車に乗ってみてわかりました。

 箱根湯本駅を出発してしばらくすると,電車は「こんな急な坂を電車が走るのか」と驚くほど急な勾配を走行し始めたからです。

 最大の勾配は80パーミル(1000分の80)で,この勾配は日本一,世界でも第2位を誇ります。

 イメージとして,車両2両だと前後で2m40cm,車両3両だと前後で3m60cmもの高低差ができるそうです。

 このレベルの勾配になると,車両に相当なパワーが必要となるだけでなく,進行方向をジグザグに「スイッチバック走行」をしたり,レールの摩耗を防ぐため車両の散水タンクからレールに水をまきながら走行する必要も出てきます。

 途中,電車は「キーキー」とレールをきしませながら走りました。

 以前,南海電鉄高野線に乗って高野山(和歌山県)へ行く途中にも聞こえた,登山列車ならではのレール音です。

 また,途中に半径30mという急カーブの箇所もあります。

 こうした条件をクリアする電車は特別仕様となるため,箱根湯本で一般的な電車と乗り換える必要があるのです。

 強羅駅に着き,ここからは箱根登山バス(観光施設めぐりバス)でポーラ美術館を目指しました。

 「いざ,ゴーラからポーラへ!」


ポーラ美術館

 「ポーラ美術館」バス停で下車すると,目の前にポーラ美術館が見えました。

(ポーラ美術館・正面入口)
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 箱根の森の中に溶け込むように,ポーラ美術館の建物がありました。

(ポーラ美術館入口・佐藤忠良「カンカン帽」と小塚山)
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 エントランスに佐藤忠良さんの彫刻「カンカン帽」が展示されており,バックには小塚山が見えました。

(ポーラ美術館・館内)
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 建物が森の斜面に沿って作られているため,2階がエントランスで,そこからエスカレーターで1階,地下1階…と降りながら進んでいく構造となっています。

(カフェチューン)
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 地下1階のカフェ「チューン」の全景です。

 都会風のおしゃれで先進的なイメージのカフェです。

 このあと,様々な美術作品を鑑賞しました。


ポーラ美術館・企画展コースメニュー「アイスランドへの旅」

 館内では,企画展「ロニ・ホーン 水の中にあなたを見るとき,あなたの中に水を感じる?」(会期:2021年9月18日~2022年3月30日)が開催されていました。

 ロニ・ホーンさんはニューヨークに住む芸術家で,アイスランドを主な舞台に,写真・彫刻・ドローイング(デッサン)・本など様々な芸術作品を生み出されています。

 展示場に色とりどりの丸く平べったいガラスの器が並べられた作品や,モノクロ写真に写った川の表情(渦,泡立ち,濃淡など)1つ1つに名前を付けて物語を書き記した作品など,時間をかけてゆっくり丹念に鑑賞したい作品ばかりでした。

 ひととおり作品を鑑賞した後,ロニ・ホーンさんが芸術活動の拠点とされたアイスランドにちなんだ料理を味わうため,館内のレストラン「アレイ」へ向かいました。

(レストランアレイ店内と小塚山)
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 私は窓側の庭や小塚山が眺められるテーブル席を御用意いただきました。

(ポーラ美術館ロゴマーク入りシュガー)
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 テーブルに整然とポーラ美術館のロゴマーク入りシュガーが並べられていました。

 シュガー1つにもアートが演出されていました。

 企画展コースメニュー「アイスランドへの旅」を注文し,やや緊張して待っていると,しばらくしてオードブルが運ばれてきました。

 オードブルは「オニテナガエビのポワレとビスクの盛り合わせ」です。

(オニテナガエビのポワレとビスクの盛り合わせ)
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 軽くポワレされたオニテナガエビに,チコリやパセリなどの野菜,レモン,薄切りバゲットをカリカリに焼いたトーストが添えられていました。

 「ビスク」は甲殻類を殻ごと炒めて香味野菜と一緒に煮込み,甲殻類のうま味を濃縮させたポタージュです。

 レモンを軽く絞って海老にかけ,ビスクをつけていただきました。

 プリプリの食感の海老にビスクを加えることで海老のうま味がグンと増しました。

 濃厚なビスクは,海老はもちろん,野菜やトーストにもよく合いました。


 続いてメインディッシュが用意されました。

 メインディッシュは「仔羊もも肉のロースト」です。

(仔羊もも肉のロースト スパイス香る白いんげん豆の煮込みを添えて)
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 香草でマリネした仔羊もも肉のローストと白いんげん豆の煮込みです。

 プレートに盛られた料理の配置や配色なども立派なアートだなと思いながら眺めていて,ふと思いました。

 「このプレートは,ロニ・ホーンさんのガラスの器の作品が表現されているのでは」

 広々とした展示会場にポツン,ポツンと置かれた色とりどりの丸く平べったいガラスの器の作品があったのですが,それがこのプレートに表現されているのではないかと思いました。

 この写真のイメージです。

(ロニ・ホーン「ウェル・アンド・トゥルーリー」ブレゲンツ美術館)
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 ポーラ美術館企画展パンフレット「Roni Horn(ロニ・ホーン)」から一部引用

 「ロニ・ホーンさん,当たってますか?」
 「ピン・ホーン」…なーんておっしゃるわけないか(笑)

 アイスランドは牧羊が盛んで,ブランド化された良質なラム肉(仔羊肉)が世界各国に輸出されています。

 そのアイスランドを代表する食材の1つ,仔羊が使われたメイン料理です。

 仔羊のローストは,肉がとてもやわらかく,独特のにおいやクセも感じられない,美味しい肉でした。

 これにマスタード入りのソースを添えていただきました。

 白いんげん豆の煮込みはクミンなどの豊かなスパイスの香りを感じ,肉料理やパンとよく合う一品でした。


 デザートは「ブルーベリーのコンポートと2種のチーズを使ったガトー」です。

(ブルーベリーのコンポートと2種のチーズを使ったガトー)
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 マスカルポーネとクリームチーズの2種類のチーズケーキを重ねたケーキ(ガトー)でした。

 バニラアイスも添えられていました。

 口当たりの軽いフレッシュなチーズケーキに,ブルーベリーコンポートの甘味と酸味がよく合いました。

 その後,小塚山を眺めながらポットの紅茶をいただき,しばらく食事の余韻を楽しみました。


まとめ

 アイスランドの代表的な食材として,今回の料理では仔羊(羊肉)が登場しましたが,このほかにも,魚(タラ(干しダラ),サーモン,カレイなど)や「スキール(スキル)」と呼ばれるヨーグルトに似た乳製品が挙げられます。

 「スキール」は2020年春から日本でも発売され,気軽にアイスランドの伝統食を味わうことが出来るようになりました。

 今回のポーラ美術館訪問では,ロニ・ホーンさんの芸術の世界に触れ,その舞台となったアイスランドやアイスランドの料理についても理解を深めることが出来ました。

 ポーラ美術館のコレクションのうち,私はルノワールの「レースの帽子の少女」という作品も鑑賞したかったのですが,残念ながら今回は展示されていなかったので,こちらは次回のお楽しみとなりました。

 そして次回訪問時も館内のレストランやカフェに寄り,芸術作品にまつわる食についても舌でじっくり味わいたいと思います。


<関連サイト>
 「ポーラ美術館」(神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285)
 「イーセイ スキル」(日本ルナ株式会社)

<参考文献>
 地球の歩き方編集室「世界のグルメ図鑑」学研プラス
 佐原秋生・大岩昌子「食と文化の世界地図」名古屋外国語大学出版会
 池上英洋監修「マンガでわかる『西洋絵画』の見かた」誠文堂新光社
 企画展パンフレット「Roni Horn(ロニ・ホーン)」ポーラ美術館

2022年1月11日 (火)

イギリス料理の特徴と主な料理5 -タンノックのミルクチョコレートキャラメルウェハース-

タンノックのミルクチョコレートキャラメルウェハース

 仕事帰りに職場の後輩から,イギリス(スコットランド)のお菓子をいただきました。

 タンノック社(Tunnock's)のミルクチョコレートキャラメルウェハースです。

 イギリスを旅行した際に現地で食べてとても気に入ったお菓子なのだそうです。

 イギリスではスーパーマーケットなどでも簡単に入手でき,帰国後のお土産にもなるので気に入ったらしいのですが,日本国内では売られていないため,通信販売で購入したとのことでした。

 タンノック社(スコットランド・グラスゴー)のウェブサイトによると,タンノック・ミルクチョコレートキャラメルウェハースは,トーマス・タンノックさん(ベーカリーショップ・ティールームの創業者)の息子さんのアーチーさんが,お店で販売するケーキよりも日持ちするお菓子を作ろうと,ウェハースとキャラメル,チョコレートを使って開発されたお菓子なのだそうです。

(タンノック・ミルクチョコレートキャラメルウェハース(パッケージ))
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 タンノックのミルクチョコレートキャラメルウェハースのパッケージです。

 このパッケージの中にミルクチョコレートキャラメルウェハースが8本詰められています。

 そのうちの2本をいただきました。

(タンノック・ミルクチョコレートキャラメルウェハース(パッケージ・裏面))
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 こちらはパッケージの裏面です。

 日本語で記載された食品表示シールがないのは,個人輸入ならではです。

(タンノック・ミルクチョコレートキャラメルウェハース(個包装))
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 個包装の様子です。

 それでは中身を取り出してみます。

(タンノック・ミルクチョコレートキャラメルウェハース)
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 ウェハースがミルクチョコレートでコーティングされています。

 ウェハースの中には,溝を埋めるようにキャラメルがサンドされています。

 いただいてみました。

 キャラメルがウェハースと交互に薄く何層にもサンドされており,キャラメルの粘りがあります。

 その粘りを軽いウェハースが受け止め,チョコレートも薄くコーティングされているので,思ったよりもずっと軽い食感でした。

 キットカットを膨らませて軽い食感に仕上げたようなチョコレート菓子です。

 チョコレートとキャラメルとウェハース,それぞれ異なる食感が口の中で一緒になり,溶け合う楽しみがあります。

 とても甘いチョコレートバーではないかと少し構えていましたが,実際にいただいてみると,チョコレートとキャラメルの甘さを,香ばしくてサクサクのウェハースがうまく受け止め,ちょうど良い甘さでした。

 ウェハースを美味しく味わうためのチョコレート菓子だと思いました。

 ちょっとしたおやつやティータイムにぴったりのお菓子です。


スコットランドとウェハース

 イギリス北部に位置するスコットランドは,ウェハースとの関わりが密接な地域です。

 その理由として,寒冷なスコットランドで栽培される主要穀物「オーツ麦(エンバク・カラス麦)」とスコットランドの伝統食「オーツ・ケーキ(オーツ麦のビスケット)」の存在があります。

 オーツ麦はグルテンの含有量が少ないため,焼いてもパンのように膨らまず,ウェハースのように平たく焼き上がります。

 チョコレートでコーティングされたビスケット・ウェハースは,イギリス北部・スコットランドで好まれる傾向にあるのですが,「チョコレートの世界史」の著者・武田尚子さんはその理由として,「ウェハースがオーツ・ケーキを日常的に食べるブリテン島北部の消費者の好みに合っていたからでは」とまとめられています。

 タンノック社の「ミルクチョコレートキャラメルウェハース」は,イギリスのロウントリー家・キャドバリー家・フライ家を中心としたココア・チョコレート製造業の発達と,「オーツ・ケーキ」を伝統食とするスコットランドの食文化を背景に生まれたお菓子だと言えるでしょう。


<関連サイト>
 「Tunnock's」(34 Old Mill Road, Uddingston, Glasgow, United Kingdom)

<関連記事>
 「イギリス料理の特徴と主な料理1 -キットカット-

<参考文献>
 武田尚子「チョコレートの世界史」中公新書

2021年12月 5日 (日)

アルバニア料理の特徴と主な料理 -ペシュク・ネ・フーレ,トゥルリ・ペリメシュ,ミシュ・メ・ラク,ラバーニ-

アルバニアについて

 アルバニアはバルカン半島南西部に位置する国です。

 西はアドリア海に面し,陸域ではモンテネグロ,コソボ,北マケドニア,ギリシャと接しています。

 面積は約28,700平方キロメートルで四国の約1.5倍,人口は約284万人(2021年)です。

 今回私は「JICA関西食堂」でアルバニア料理を味わいました。

 その料理の紹介を通じて,アルバニアについての理解を深めたいと思います。


JICA関西

 日本の政府開発援助(ODA)を通じて開発途上国への国際協力を行っておられる国際協力機構(JICA・ジャイカ)。

 私も過去に国際協力の業務を担当したことがあり,海外からの研修員受け入れや,インドネシア出張など,JICA職員の方と一緒に楽しくお仕事をさせていただきました。

 そのJICAの関西の拠点が「JICA関西」で,神戸市中央区にあります。

 この度,JICA関西の食堂で,月替わりで世界各国の料理が提供されていることを知り,興味を持って訪問しました。

 大阪・梅田から阪神電車を利用して阪神岩屋駅で下車し,駅から徒歩でJICA関西を訪問しました。

(JICA関西・全景)
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 建物の海(南)側から撮影したJICA関西です。

 海外からの研修員の宿泊施設もある大きくて立派な建物です。

(JICA関西・玄関)
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 こちらは,大通りに面した山(北)側から撮影したJICA関西の玄関です。

 JICA関西食堂の案内板もありました。

(JICA関西食堂・案内板)
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 「食べることからはじまる国際協力」

 確かに各国の料理を食べることで,その国の認識が深まり,国際協力に取り組むきっかけにもなると思います。

 食堂は,年末年始を除いて年中無休で営業されていますが,これは宿泊している研修員の食事を提供する役割もあるためです。

 食べることからはじめるため,一直線にJICA関西食堂へ向かいました。


JICA関西食堂のアルバニア料理

 JICA関西食堂は,施設の1階にあり,誰でも利用することが出来ます。

(JICA関西食堂)
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 入口に「月替わりエスニック料理」の案内板がありました。

(月替わりエスニック料理案内(アルバニア料理))
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 11月(2021年11月16日~12月11日)の月替わりエスニック料理はアルバニア料理です。

 アルバニアの独立記念日が11月28日(1912年11月28日)であることにちなんで提供されています。

 この料理をいただくことにし,レジで食券を購入しました。

 厨房で食券をお渡しし,アルバニア料理を御用意いただきました。

 私は見晴らしの良い窓側の席で食事させていただきました。

 食堂にはオープンテラス席もあり,そちらでお食事されている方もいらっしゃいました。

(JICA関西食堂・アルバニア料理)
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 こちらがアルバニア料理のセットです。

 写真右側のメインプレートには,魚のマリネ,野菜蒸し煮,ライスが盛り付けられています。

 写真左下の赤いスープは,キャベツのスープです。

 そして写真左上のお菓子は,ヨーグルトのケーキです。

 メインプレートは日本の家庭料理のような印象を受けました。

 それぞれの料理を簡単に御紹介します。

【魚のマリネ(ペシュク・ネ・フーレ / Peshk ne Furre)】
 白身魚を香草とオリーブオイルでマリネし,蒸し焼きにした料理です。
 魚は鰆(サワラ)でした。
 ほどよく塩味がきき,ハーブがほんのりと香る,日本人にも馴染みやすい魚料理でした。

【野菜蒸し煮(トゥルリ・ペリメシュ / Turli Perimesh)】
 カボチャ,ジャガイモ,人参,玉ねぎ,パプリカなどの野菜を蒸し煮にした料理です。
 見た目は日本のカボチャの煮物のようです。
 ライスとの相性も抜群でした。

【キャベツスープ(ミシュ・メ・ラク / Mish me Lakra)】
 キャベツ,鶏肉,人参,パプリカなどの具で煮込まれたスープです。
 チリペッパー(赤唐辛子)やパプリカパウダー(粉末)が入っており,スープが赤色になっています。
 辛味の効いたキャベツスープでした。

 食後にヨーグルトのケーキとコーヒーをいただきました。

 ドリンクはセルフサービスで,水・お茶・紅茶・コーヒーが御用意されていました。

(ラバーニとコーヒー)
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【ヨーグルトのケーキ(ラバーニ / Revani)】
 見た目も味もベイクドチーズケーキのようなケーキです。
 しっかりとした甘味があり,コーヒーや紅茶によく合うお菓子です。

 食事後,コーヒーをおかわりし,窓越しに庭を眺めながら,ゆったりとした午後のひとときを楽しみました。


JICAプラザ関西

 JICA関西食堂で食事を済ませ,1階のロビー展示コーナーや広報展示室を見学させていただきました。

 ロビー展示コーナーには,各国ゆかりの物が展示品されていました。

(ロビー展示品(アゼルバイジャン))
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 続いて広報展示室へ行くと,世界の食べもの紹介のコーナーがありました。

(世界の食べもの紹介(モロッコのクスクス・マラウイのシマ))
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 「クスクス」はデュラム小麦をもろもろの粒状にした食べ物で,モロッコが発祥とされています。

 一方,「シマ」はトウモロコシ粉をのり状にしたマッシュポテトのような食べ物で,マラウイ人の主食となっています。

 このような感じで世界各国の食べものが紹介されており,とても興味深く見学させていただきました。


まとめ

 JICAの拠点施設では,国際協力を中心とした世界各国の情報を得ることが出来ます。

 また,JICA関西やJICA中国(広島県東広島市)のように,世界の料理を用意され,広く一般の方も利用できる食堂が併設されている施設もあります。

 こうした施設を利用すれば,国内にいながら,気軽に世界旅行気分を味わうことが出来ますよ。


<関連サイト>
 国際協力機構「JICA関西」(神戸市中央区脇浜海岸通1-5-2)

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