各国料理の特徴と主な料理

2024年4月 7日 (日)

ポーランド料理の特徴と主な料理2 -ラツーシュキ・プラツキ・トファルク・トマト入りスクランブルエッグ・キェウバサ・シャルロトカ-

ポーランドの朝ごはんプレート

 東京・外苑前の「World Breakfast Allday」(ワールド・ブレックファスト・オールデイ)を訪問しました。

 2024年2月・3月のスペシャルメニューは、「ポーランドの朝ごはん」です。

(ポーランドの朝ごはんプレート)
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 今回は、この「ポーランドの朝ごはん」を御紹介します。


【ラツーシュキ】

 ポーランドの代表的な果物としてリンゴが挙げられます。

 「ラツーシュキ」は、そのリンゴが入った甘いパンケーキです。

(ラツーシュキ)
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 表面はサクサク、中はフワフワのパンケーキです。

 パンケーキの中には、角切りのリンゴが入っており、おやつ感覚でいただきました。


【プラツキ】

 ポーランドの代表的な食材の1つにジャガイモがあります。

 「プラツキ」は、すりおろしたジャガイモをフライパンで焼いたパンケーキです。

(プラツキ)
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 ハッシュドポテトのようなザクザク感が楽しめました。

 塩気と酸味のあるサワークリームを添えると、より一層美味しくいただけました。


【トファルク】

 「トファルク」は、生乳を軽く発酵させて作られる、酸味の効いた白いフレッシュチーズ(カッテージチーズ)です。

 今回は、ラディッシュや白ネギを混ぜ、パンにのせた状態で提供されました。

(トファルクとパン)
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 軽く黒コショウを振り、ディルが添えられています。

 さっぱりとして、ほのかに塩気と酸味が感じられるフレッシュチーズで、野菜やパンとの相性も抜群でした。


【トマト入りスクランブルエッグ】

 プレートにトマト入りのスクランブルエッグがありました。

(トマト入りスクランブルエッグ)
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 トマトの旨味が加わった、トロトロのスクランブルエッグでした。


【キェウバサ】

 「キェウバサ」は、ポーランド語で「ソーセージ」を意味します。

(キェウバサ)
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 今回は、ソフトな食感の粗挽きソーセージが提供されました。

 ソーセージと言えばドイツをイメージしますが、ポーランドでも数多くのソーセージが食べられています。


シャルロトカ

 食後のデザートとして、「シャルロトカ」を注文しました。

 「シャルロトカ」は、ポーランドのリンゴケーキです。

(シャルロトカ)
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 バニラアイスとミントが添えられています。

 表面はホロホロのクランブル(※)、中はリンゴを褐色になるまで煮詰めたコンポート(リンゴジャム)、底はサクサクのタルト生地で、アップルクランブルタルトに似たお菓子でした。
 ※小麦粉、バター、砂糖などをそぼろ状に混ぜ合わせた生地。シュトロイゼル。

 ポーランドは「セルニク(セルニック)」と呼ばれるチーズケーキも有名で、セルニクとシャルロトカがポーランドの代表的なケーキとなっています。


<関連リンク>
 「World Breakfast Allday」(外苑前店・東京都渋谷区神宮前3-1-23-1F ほか)

<関連記事>
 「ポーランド料理の特徴と主な料理1 -ピエロギ・ビゴス風スープ・チョコとベリーのケーキ,食の多様化と食堂車-

<参考文献>
 沼野恭子編「世界を食べよう!東京外国語大学の世界料理」(東京外国語大学出版会)

2024年1月14日 (日)

国立科学博物館特別展「和食」-日本にある料理と「和食」の違い・「和食」とはどんな料理なのか-

国立科学博物館特別展「和食」

 東京・上野公園にある国立科学博物館で、「特別展「和食」-日本の自然、人々の知恵-」が開催されています。(2023年10月28日~2024年2月25日)

(国立科学博物館特別展「和食」パンフレット)
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 私は「和食の日」にあたる2023年11月24日(11(いい)24(にほんしょく)の日)に国立科学博物館を訪問しました。

(国立科学博物館)
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 特別展「和食」は、国立科学博物館の地球館・特別展示室で開催されています。

(特別展「和食」・会場MAP)
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 こちらは会場マップです。

 「「和食」とは?」という問いかけから始まり、「日本列島の食材の紹介」、「和食の成り立ち」、「和食の真善美」、「わたしの和食」、「和食のこれから」(特設ショップ)という構成となっています。


特別展「和食」会場の様子

 展示会場では、和食に関する様々な事例が紹介されています。

 その一部を御紹介したいと思います。


【和食が育む食材】

 食材の展示コーナーに、和食の原点となる「日本の水」の紹介コーナーがありました。

 そこでは「硬水(こうすい)」と「軟水(なんすい)」(※)について触れられており、日本は総じて「軟水」の国だと説明されていました。
 ※ミネラル成分(カルシウム・マグネシウム)が多く含まれる水を「硬水」、少ない水を「軟水」といいます。

 各都道府県別の水道水(原水)の硬度マップを見ると、沖縄と熊本、そして関東南部の硬度が高く、逆に山形、宮城、愛知、広島の硬度が低いことがわかりました。

 硬度が高い地域は、石灰岩などを多く含む地質(琉球石灰岩、阿蘇火山による溶結凝灰岩、関東ローム層など)が影響していますが、国土が狭く降雨量が多い日本では、総じて軟水地域が多いのが特徴です。

 西条(広島)は、灘(兵庫)や伏見(京都)と並ぶ「日本三大酒処」として有名ですが、それは三浦仙三郎さんが広島で初めて製造が難しいとされる軟水を使った酒造に成功し、その技術が全国に伝えられたからです。

 「なぜ広島は全国指折りの軟水地域なのか」と思いつつ会場を歩いていると、「あっ、これか」とわかる展示がありました。

(花崗岩と塊状石灰岩)
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 花崗岩(かこうがん)と塊状石灰岩(かいじょうせっかいがん)の展示なのですが、花崗岩は「水の硬度を上げにくい地質試料」として、塊状石灰岩は「水の硬度を上げる地質試料」として紹介されていました。

 広島はこの花崗岩が多いのです。

 和食料理人・平野 寿将(ひらの ひさま)さんが、だしをとるのに最適な水(軟水)を求めて、広島に来られた理由もわかりました。

 キノコのコーナーでは、興味深い標本が展示されていました。

(マツタケとバカマツタケ)
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 バカマツタケって…(笑)

 マツタケよりもこのバカマツタケを食べてみたいです。

 野菜のコーナーでは、次のような問いかけがありました。

 「ジャガイモのどこを食べてる?」
 「サツマイモのどこを食べてる?」

 ジャガイモは「茎」、サツマイモは「根」を食べているそうです。

 ジャガイモは土中の茎の先端に栄養を蓄えて太くなったもの、サツマイモは根が栄養を蓄えて太くなったものなのだそうです。

 ジャガイモのくぼみにあるのは芽で、サツマイモのくぼみから生えているのは細い根であることがその証拠です。

 栽培する際、ジャガイモは種芋を植え、サツマイモは茎を植えるのも、結局同じ茎の部分を植えているということなのですね。

 さらに歩くと、ダイコンが勢ぞろいしていました。

(多彩な地ダイコン)
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 ちなみに、ダイコンは地上に出た部分(青い部分)は「胚軸(はいじく)」、地下の部分(白い部分)は「根」と分けられるようです。

 魚のコーナーでは、マグロの仲間が展示されていました。

(マグロの仲間)
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 海の中にいるような気分になりました。

 続いて「発酵」に関する展示コーナーがありました。

(日本人が飼いならしたカビ コウジカビ)
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 コウジカビ(コウジ菌)は、遺伝子が部分的に壊れ、固体に生えると機能し、野外ではめったに見つからず、日本人が麹をつくる目的で飼いならしたものとのことです。

 コウジカビを使って作られる、日本酒、醤油、味噌などの原材料や製造工程の展示もありました。

(しょうゆの分類)
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 写真左側、色の濃い方から、再仕込みしょうゆ、たまりしょうゆ、濃口しょうゆ、淡口しょうゆ、白しょうゆです。

 「だしの科学」コーナーでは、「うま味」の資料として、池田菊苗博士が昆布から抽出したグルタミン酸(具留多味酸)が展示されていました。

(第一号抽出具留多味酸)
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 「うま味」は池田博士が命名した味覚の分類上の表現、「旨味」は美味しさの表現と区別されています。


【和食の成り立ち】

 和食の成り立ち(歴史)のコーナーでは、各時代の様々な料理が展示されていました。

(織田信長の饗応膳)
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 こちらは1582(天正10)年5月に、織田信長が安土城で徳川家康をもてなした時の料理を再現したものです。

 5つの膳で構成されている本膳料理です。

 当時は鶴(つる)、鴫(しぎ)、白鳥などの野鳥や、鮒(ふな)、鯉(こい)のような川魚がごちそうだったようです。

 江戸時代の屋台を再現したコーナーがありました。

(江戸時代の屋台(再現))
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 そば、寿司、天ぷらの屋台が展示されていました。

(江戸時代の寿司(再現))
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 寿司の屋台では、アナゴ、アユ、エビ、卵巻き、コハダ、白魚、マグロの握り寿司が紹介されていました。

 さらに時代は幕末へと進みます。

(ペリー提督の饗応膳)
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 こちらは幕末の1854(嘉永7)年、2度目の来日となるペリーを横浜の応接所でもてなした時の料理を再現したものです。

 江戸の料理屋「百川(ももかわ)」が料理を請け負いました。

 吸い物、刺身、煮物、なます…と、まさに当時の日本の贅を尽くした料理が用意されたようです。

 これらの料理について、アメリカ人のペリーがどう受け止めたのか興味深いところです。

 アメリカの民謡「ヤンキードゥードゥル」(※)を流しながら浦賀に登場したペリーと当時の日本では、文化の差がかなりあったことでしょうから。
 ※日本では「アルプス一万尺」の歌として親しまれています。

 明治以降、日本独自に発展した洋食も紹介されていました。

(ライスカレーなど洋食の紹介)
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 ライスの山のくぼみにカレーが注がれているライスカレーに、ひときわ興味を持ちました。


「和食」特別展記念料理・デザート

 特別展の展示をひととおり見学し、特設ショップで買い物をした後、地球館中2階のレストラン「ムーセイオン」でランチをいただきました。

 特別展「和食」の開催期間中は、記念メニューも用意されています。

(「和食」特別展記念メニュー(料理))
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 料理は「牛タンシチュー赤味噌仕立て 生海苔バターソース」と「イクラと紅鮭の和食丼 ばら海苔を添えて」の2種類です。

 バターソースに生海苔が使われていたり、サーモンではなく紅鮭(本当の親子丼!)が使われているところが大きな魅力です。

 どちらにするかとても悩ましいところですが、牛タンシチューを注文しました。

(牛タンシチュー・玉ねぎスープ・ライス)
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 玉ねぎスープとライス(又はパン)も付いています。

(牛タンシチュー赤味噌仕立て 生海苔バターソース)
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 赤味噌仕立てのデミグラスソースでじっくり煮込まれた厚切りの牛タンに、生海苔入りのバターソースが添えられています。

 オクラ、アスパラガス、ズッキーニなどの野菜も彩り良く盛り付けられていました。

 デミグラスソースに赤味噌を加えることで、コクと深みのあるシチューに仕上げられていました。

 また、牛タンに生海苔のバターソースを添えていただくと、さわやかな海苔の風味が口の中に広がり、味に変化と美味しさが加わりました。

 ライスとの相性も抜群でした。

 続いてデザートをいただきました。

 デザートも記念メニューが用意されています。

(「和食」特別展記念メニュー(デザート))
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 盆栽仕立ての和風ムースです。

(白あん黒蜜のムース 盆栽仕立て)
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 南天の葉やエディブルフラワーが添えられ、盆栽のように仕上げられています。

 バニラアイス、焼きさつまいも、抹茶わらびもち、黒蜜ソース、白あんムース、黒まめ、ワッフルコーンが使われています。

 ワッフルコーンの中にはイチゴが隠されています。

(ワッフルコーンとイチゴ)
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 和のテイストを生かしたデザートで、ボリュームのある洋食をいただいた後でもすんなりといただくことができました。


朝日新聞記念号外「特別展和食」と「科博寄席 on 和食の日」

 館内では、朝日新聞の記念号外も配布されています。

(朝日新聞記念号外「特別展和食」)
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 マンガ「サザエさん」の新聞記事も掲載されています。

(新聞記事「磯野家にみる食卓の変化」)
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 「サザエさん」は戦後から現代までの食卓の変化がマンガに反映されており、こうした視点から「サザエさん」を読むのも面白いと思います。

 午後は日本館2階の講堂で、「和食の日」にちなんだ寄席や手品を楽しみました。

(「科博寄席 on 和食の日」パンフレット)
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(「科博寄席 on 和食の日」案内と参加整理券)
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 三遊亭右左喜(さんゆうてい うさぎ)さんの「正しいラーメンの食べ方」と、三遊亭遊馬(さんゆうてい ゆうば)さんの「百川(ももかわ)」、そしてきょうこさんの「和妻(わづま)」(日本古来の手品)を観賞しました。


日本にある料理と「和食」の違い・「和食」とはどんな料理なのか

 2013年に「和食 日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを機に、和食は国内のみならず、世界からも注目される食文化となりました。

 その一方で、今の日本では、全国の食材・料理のみならず、世界各国の食材・料理まで入手し、味わえるようになっています。

 では、日本にある料理と「和食」の違いは何なのでしょうか。

 そして、そもそも「和食」とはどんな料理をいうのでしょうか。

 今回の特別展「和食」は科学的・歴史的な観点から和食にアプローチする展覧会ですが、この問いかけに対し、明確な回答が導き出されているわけではありません。

 世界各国から様々な料理を取り入れ、自国の料理に組み入れてきた日本は、伝統食である和食と、それ以外の料理を線引きすることがとても難しいからです。

 どこまでを「和食」ととらえるかは人によってまちまちで、主催者はその傾向を把握するためのアンケートまで実施されています。

(あなたにとっての「和食」アンケート回答結果(中国・四国地方))
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 すき焼き、あんパン、オムライス、照り焼きバーガー、焼き餃子などはいずれも日本の国民食ですが、「和食」だと思うかどうかは別であることがわかります。

 また、しょうゆ、味噌、うどんなど、多くの人が「和食」だと思う食べ物であっても、その原材料の多くが海外からの輸入品というケースも多いのです。

 一般的な「和食」の定義として、次のようなものが挙げられます。
・明治時代以降の「洋食」や「中華」に対する言葉
・日本人の伝統的な食文化
・油脂や肉食を排除した食文化
・米飯を中心とした食事(ご飯と副食(汁・おかず・漬物)で構成される食事)体系
・食材の持ち味を重視する料理(「料理しない料理」・「引き算の料理」)
・コウジカビ(コウジ菌)から展開する発酵食文化(しょうゆ、味噌、日本酒など)
・甘味、酸味、塩味、苦味に次ぐ第五の味「うま味」を重視する食文化

 そもそも「洋食」ですら、海外の料理を日本に取り入れ、日本人向けにアレンジされた料理なのですから、「和食」と呼ぶか「洋食」と呼ぶか「中華」と呼ぶか本国の「○○料理」と呼ぶかはとても難しく、人によって意見が分かれるのです。

 室町時代にポルトガルから伝来した「天ぷら」は「和食」だと思う人が多いのも、歴史が作り上げた1つの結果だと思います。

 人それぞれの思いが積み重なり、「和食」のイメージが形成されているのでしょう。

 「和食」とはどんな料理をいうのか、御興味のある方は特別展「和食」(今後、山形、宮城、長野、愛知、京都、熊本へ巡回予定)でヒントを探してみてください。


<関連サイト>
 公式ウェブサイト「国立科学博物館特別展 和食
 「国立科学博物館」(東京都台東区上野公園7-20)

<関連記事>
 「日本料理の特徴と主な料理1 -日本料理は引き算の文化-
 「日本料理の特徴と主な料理2 -料理人 平野寿将さんから熟成魚の魅力を学ぶ-
 「安芸津のじゃがいもと肉じゃが・杜氏と広島の日本酒 -広島県東広島市安芸津町-

<参考文献>
 公式ガイドブック「特別展 和食 日本の自然、人々の知恵」朝日新聞社
 朝日新聞記念号外「特別展和食」
 「時空をこえる本の旅50選」東洋文庫

2023年11月26日 (日)

モロッコ料理の特徴と主な料理 -バグリール・ムサンメン・ベルベルオムレツ・モロカンサラダ・ハリラ-

モロッコの食文化

 モロッコはアフリカ大陸の北西部に位置する国で、ジブラルタル海峡をはさんでスペインと向き合っています。

 首都はラバトで、アラブ人やベルベル人などの民族で構成されています。

 そして、モロッコ最大の商業・金融都市はカサブランカ(「白い家」という意味)です。

 モロッコ、アルジェリア、チュニジアの3か国は地理的区分で「マグレブ」とよばれ、これらの国々は食文化もよく似ています。

 このマグレブの代表料理が粒状のパスタ「クスクス」です。

 クスクスはアラブ人がやってくる前から存在したベルベル人の伝統料理で、専用の蒸し器で蒸され、野菜・肉・魚などのシチューをかけて食べられます。

 モロッコはそのマグレブにおける文化の中心地として栄え、食文化の分野でも、ベルベル人の伝統的な料理を基盤に、アラブの食文化が融合して発展してきました。

 代表的なモロッコ料理は、クスクスのほか、バステーラ(又はバスティラ、パイ料理)、タジン(三角錐の形をしたタジン鍋を使った煮込み料理)、カフタ(又はケフタ、挽き肉料理)、メシュイ(羊の丸焼き)、ハリラなどです。

 主な食材として、肉は羊・鶏・ラクダなど、野菜はトマト・パプリカ・豆類・玉ねぎ・オリーブなど、香辛料・ハーブは唐辛子・シナモン・クミン・サフラン・ターメリック・ミントなど、それにドライフルーツ(ナツメヤシ・ブドウなど)やナッツ(アーモンド)などが挙げられます。


モロッコの朝ごはんプレート


 東京・外苑前の「World Breakfast Allday」(ワールド・ブレックファスト・オールデイ)を訪問しました。

 2023年10月・11月のスペシャルメニューは,「モロッコの朝ごはん」です。

(モロッコの朝ごはんプレート)
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 今回は,この「モロッコの朝ごはん」を御紹介します。


【バグリール】

 バグリールは、セモリナ粉で作られた白いパンケーキです。

(バグリール)
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 甘いシロップと粉砂糖がかけられており、お菓子の感覚でいただきました。

 フワフワでもちもちした食感のパンケーキでした。


【ムサンメン】

 ムサンメンは層になるように折り重ねたクレープです。

(ムサンメン)
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 バグリールと同じセモリナ粉が使われているため、生地がもちもちしていますが、ムサンメンはクレープやインドのナンのように薄く平べったい形をしています。

 こちらも甘いシロップと粉砂糖がかけられており、そのままお菓子の感覚で食べたり、おかずと一緒に食べたりと、様々な方法でいただきました。


【ベルベルオムレツ】

 ベルベルオムレツは、トマトと玉ねぎを煮込み、上から卵を落としたモロッコのオムレツです。

(ベルベルオムレツ)
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 トマトと玉ねぎがよく煮込まれてトロトロになっており、それに卵の黄身や白身を添えていただきました。

 クミンや唐辛子などのスパイスもほどよく効いていました。

 そのままいただいたり、ムサンメンと一緒にいただいたりしました。

 昔からベルベル人に愛され続けてきた卵料理です。


【モロカンサラダ】

 モロカンサラダは、トマト・キュウリ・玉ねぎ・オリーブなどを細かく刻み、クミンやコショウなどのスパイスを加えて、オリーブオイルで和えたサラダです。

(モロカンサラダ)
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 様々な種類の生野菜を一度に美味しく食べられ、パンやおかずにも合わせやすい万能サラダです。


ハリラ

 単品で「ハリラ」を注文しました。

 「ハリラ」は、豆や肉などを具にしたトマトベースのスープに、極細のショートパスタを加えて煮込んだスープです。

(ハリラ)
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 穏やかな味で、この一皿で様々な具が一度に摂取できるため、ラマダン(断食)期間の断食明けにもよく食べられます。

 皿に添えられたレモンをキュッと絞ってスープに加えると、酸味の効いた口当たりの軽いスープとなりました。


まとめ

 モロッコと言えば、私はタコが思い浮かびます。

 魚屋さんや鮮魚コーナーで販売されているタコは、モロッコ産かモーリタニア産が多いからです。

 あと、最近、産直市や産直野菜コーナーなどで「モロッコインゲン」をよく見かけるようになりました。

 ちょっとした煮物や炒め物を作る時に重宝する野菜ですが、この「モロッコ」はモロッコが原産という意味ではなく、どうやら日本の種苗会社のネーミングのようです。

 いずれにせよ、モロッコは日本と親しみ深い国であると言えるでしょう。


<関連リンク>
 「World Breakfast Allday」(外苑前店・東京都渋谷区神宮前3-1-23-1F ほか)

<関連記事>
 「マグレブ料理の特徴と主な料理 -ハリラ・クスクス・チキンの煮込み・ヒヨコ豆の煮込み・モロッコにんじん-

<参考文献>
 「モロッコ」(「World Breakfast Allday」リーフレット)
 石毛直道「世界の食べもの 食の文化地理」講談社学術文庫
 地球の歩き方編集室「世界のグルメ図鑑」(学研プラス)
 「大使館の食卓 おうちで簡単レシピ集」(産経新聞出版)

2023年9月10日 (日)

メキシコ料理の特徴と主な料理 -ウェボスディボルシアドス・トルティーヤ・トマティーヨ・フリホーレス・ワカモレ・チョリソ・チチャロン-

メキシコの食文化

 メキシコ料理は、マヤ文明やアステカ文明など先住民から受け継がれてきた食文化と、スペインの征服によって持ち込まれたスペインの食文化が融合して形成されています。

 メキシコはトウモロコシ、トマト、アボカド、ピーマン、唐辛子などの食材の原産地で、これらの食材はスペインを通じて世界に広まりました。

 メキシコの代表的な料理として、トウモロコシを使ったパンや料理(「トルティーヤ」(トウモロコシの平焼きパン)、「タコス」(トルティーヤに肉や刻み野菜をはさんだ料理)、「エンチラーダ」(トルティーヤに炒めた肉や野菜を詰め、ソースやチーズをかけてオーブンで焼いた料理、「ポソレ」(豚肉とトウモロコシのスープ)など)、サボテンを使った料理、豆・唐辛子・トマトなどを使ったスープ、トマト・玉ねぎ・唐辛子などで作られる調味料「サルサ」、カカオや唐辛子を砕いて作られる「モレ(ソース)」、アボカドのディップ「ワカモレ」などがあります。

 お酒では、リュウゼツランから作られる蒸留酒(テキーラ・メスカルなど)やビール(コロナ・エキストラなど)が有名です。


メキシコの朝ごはんプレート

 東京・外苑前の「World Breakfast Allday」(ワールド・ブレックファスト・オールデイ)を訪問しました。

 2023年8月・9月のスペシャルメニューは,「メキシコの朝ごはん」です。

 今回は,この「メキシコの朝ごはん」を御紹介します。


【ウェボス・ディボルシアドス】

 今回のプレートのメイン料理は「ウェボス・ディボルシアドス」です。

(ウェボス・ディボルシアドス)
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 お店のリーフレットによると、「ウェボス・ディボルシアドス」は、メキシコの朝ごはんの定番「ウェボス・ランチェロス(※)」の一種で、直訳すると「離婚した卵」という意味を持つ料理なのだそうです。
 ※トルティーヤに卵と赤いサルサ(サルサ・ランチェラ)をかけた料理。「牧場の卵」という意味。

 トルティーヤに赤いサルサと緑のサルサがかけられているのが特徴です。

 日本の赤いきつねと緑のたぬきを一度に味わうような贅沢感があります(笑)

 赤と緑はメキシコの国旗にも採用されている、メキシコを象徴する色でもあります。

 写真左側はトウモロコシを原料とした濃い紫色のトルティーヤと赤いサルサの組合せ、写真右側はトウモロコシ粉や小麦粉を原料とした白いトルティーヤと緑のサルサの組合せです。

 赤いサルサ(サルサ・ロハ)はトマト・玉ねぎ・ニンニク・唐辛子などで、緑のサルサ(サルサ・ベルデ)はトマティーヨ(ほおずきトマト)・玉ねぎ・ニンニク・緑色の唐辛子などで作られています。

(トマティーヨ)
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(「World Breakfast Allday Mexico」紹介リーフレットから一部抜粋・引用)

 「トマティーヨ」は、見た目も呼び名も緑色のトマトを連想させますが、食用ホオズキの一種です。

 半熟卵の黄身をくずし、トルティーヤやサルサにまぶしていただきました。

(ウェボス・ディボルシアドス(目玉焼きの黄身をくずした様子))
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 トルティーヤの生地がサルサや卵でやわらかくなっており、フランスのガレットに似た料理だと思いました。

 プレートの中央には、2種類のトルティーヤの仲を取り持つように「フリホーレス」(塩茹でしたいんげん豆を炒めたペースト状の料理)がかけられ、その上に2種類のトルティーヤチップスが飾られていました。

(フリホーレスとトルティーヤチップス)
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 フリホーレスは、粘りとコクがあるいんげん豆のペーストで、トルティーヤチップスに添えたり、サルサと共にトルティーヤにまぶしたりしていただきました。

 また、プレート上部にはアボカドのディップ「ワカモレ」や挽き肉と唐辛子を炒めた「チョリソ」、「赤玉ねぎのピクルス」が盛り付けられており、こちらもトルティーヤやトルティーヤチップスと一緒にいただきました。

(ワカモレ)
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 こちらは「ワカモレ」です。

 アボカドに細かく刻んだトマトや玉ねぎなどを加え、ライム(レモン)と塩で味を調えたディップ(浸しソース)で、アボカドの濃厚なコクと旨味を楽しむことができました。


チチャロン

 単品で「チチャロン」を注文しました。

 「チチャロン」は、豚皮を油でカリカリに揚げた「豚皮せんべい」です。

 スペイン発祥のスナックなので、メキシコだけでなく、ペルーやフィリピンにも似た名称のスナックが存在します。

(チチャロン)
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 お皿にドサッと大量に盛られていました。

 中心部はトマト・玉ねぎ・ハーブ・唐辛子などを細かく刻み、ビネガー(酢)をベースに調味したサルサです。

 一瞬、「油で揚げた豚皮をこんなにたくさん食べられるだろうか」と思いましたが、豚皮の存在を感じさせないほど軽く、中国・東南アジアの海老せんべいのようなパリッとした食感で、スナック菓子感覚でいただけました。

 ビネガーベースのサルサを添えると、さっぱりとしてより一層美味しくいただけました。


 今回いただいたメキシコ料理は、いずれも酸味や辛さが生かされており、サルサやディップを添えることにより、多様な味を楽しむこともできました。

 「ビバ メキシコ!」(メキシコ万歳!)


<関連リンク>
 「World Breakfast Allday」(外苑前店・東京都渋谷区神宮前3-1-23-1F ほか)

<参考文献>
 「メキシコ」(「World Breakfast Allday」リーフレット)
 地球の歩き方編集室「世界のグルメ図鑑」(学研プラス)
 「大使館の食卓 おうちで簡単レシピ集」(産経新聞出版)

2023年8月13日 (日)

アイヌの食文化研究2 -トノト・チタタプ・オハウ・チポロシト・鮭(ルイベ)・ヒグマ・合鴨・エゾシカ・プクサ・シケレペ・エント-

札幌・すすきの

 札幌市の繁華街・すすきのを訪問しました。

(すすきの)
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 ニッカウヰスキーのネオン看板などがある「すすきの交差点」です。

 大阪・道頓堀(戎橋)のネオン看板と同様に、記念撮影する観光客の方がたくさんおられました。

 今回はすすきのにある北海道郷土料理・アイヌ料理店「海空のハル」でいただいたアイヌ料理を御紹介します。


アイヌ料理

 お店に入り、予約している旨をお伝えして、席を御案内いただきました。

 席には毛筆で私の名前とともに「イランカラプテ(こんにちは)」と書かれたメッセージカードが用意されており、その温かいおもてなしに感動しました。

 代表的なアイヌ料理が揃った「アイヌ創作料理セット」をいただきました。

(アイヌ創作料理セット)
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 木製の皿や器、笹の葉などにアイヌ料理が美しく盛り付けられています。


【トノト】

 まずは食前酒として「トノト」をいただきました。

(トノト)
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 「トノト」はお酒のことですが、「殿様の乳」に由来する言葉だそうです。

 「ピヤパ(ひえ)」と「カムタチ(麹)」を混ぜて作られたお酒です。

 ドロッとした口あたりで、ほのかに甘みも感じる、甘酒に似た飲みやすいお酒でした。


【チタタプ】

 続いては「チタタプ」です。

(チタタプ)
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 こちらは鮭のチタタプです。

 「チタタプ」は、鮭などを細かく刻んだ「たたき」のことです。

 アイヌの人々は、ナタや包丁で「チタタプ、チタタプ」と言いながら鮭などを細かくたたいて作られるそうです。

 鮭のチタタプは主にアラ(頭・エラ・中骨・ヒレ・白子・内臓など)を細かくたたいて作る料理ですが、今回御用意いただいたチタタプは食べやすさに配慮し、主に鮭の身を細かくたたいたものを御提供いただきました。

 ねっとりとした食感で、鮭の濃厚な旨味を楽しむことができました。

 ちなみに鮭の目玉はチタタプには入れず、子供の大切なおやつ(※)にされたようです。
 ※目玉を生のままくり抜き、あめ玉のようにしゃぶりながら食べられたようです。


【オハウ】

 「オハウ」は「汁物」のことです。

(オハウ)
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 このオハウは、野菜(ゴボウ、冬瓜、人参、フキ、インゲン、ネギなど)と焼き鮭が入っていました。

(オハウ(中身))
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 昆布と焼き鮭でだしをとり、塩で味を調えたシンプルな味付けの汁です。

 骨ごと焼いた鮭から香ばしさがにじみ出て、滋味深い味わいの汁でした。


【チポロシト】

 「チポロシト」です。

(チポロシト)
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 じゃがいもにデンプンを加え、油脂で揚げた「いももち」(エモシト)にイクラをのせた料理です。

 「チポロ」は「イクラ」、「シト」は「お餅、団子」という意味です。

 イクラをすり鉢ですりつぶしたものを「いももち」と一緒に食べるのが伝統的な食べ方だと教えていただきました。

 「いくらなんでも、イクラをすりつぶすなんてもったいない…」と思いましたが、すりつぶすとねっとりとして美味しさが増すのだそうです。

 モチモチしたじゃがいものお餅に、ほんのり塩気の効いたイクラがとてもよく合っていました。


【鮭の塩焼き】

 「鮭の塩焼き」です。

(鮭の塩焼き)
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 鮭はアイヌ語で「カムイチェプ(神の魚)」と呼ばれることからもわかるように、アイヌ料理には欠かせない食材の1つです。

 ほんのりと塩味が効いた、厚切りの鮭の塩焼きでした。


【北海道ジビエ(ヒグマ・合鴨・エゾシカ)】

 北海道ジビエの低温調理ロースト3種盛り(ヒグマ・合鴨・エゾシカ)です。

(北海道ジビエ(ヒグマ・合鴨・エゾシカ))
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 写真左から、ヒグマ、合鴨、エゾシカです。

 ヒグマは、肉に適度な弾力があり、赤身の美味しさを堪能できました。
 新鮮だからか、獣臭さが全くないのが不思議でした。

 合鴨は赤身がやわらかくクリーミーで、脂身は口の中で溶けてその甘みとコクを楽しめました。

 エゾシカは、やわらかくきめ細かい赤身が印象的で、ヒグマと同様に臭みは全く感じられませんでした。

 3種のジビエは、いずれも新鮮で肉がやわらかく、そのレベルの高さに驚きました。

 お店の看板メニューの1つに違いないと思いました。

 ヒグマや鮭を堪能したところで、ふと目の前の置物に目が留まりました。

(熊と鮭の置物)
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 熊が鮭を食べ、その両方を私が嬉しそうに食べている…。

 カムイ(神)は私をどう御覧になっているでしょうか(笑)

 「ヒンナヒンナ(感謝、感謝)」


【鮭のルイベ】

 続いて、単品料理をいくつかいただきました。

(鮭のルイベ)
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 鮭の身を凍らせ、厚く切った刺身です。

 昆布エキスを抽出した「海水醤油」という透明な調味料でいただきました。

 半解凍状態でひんやり冷たく、シャリッ、もちっとした食感を楽しめました。


【プクサ(行者ニンニク)の醤油漬け】

 アイヌ料理の代表的な食材の1つに「プクサ(行者ニンニク)」があります。

(プクサ(行者ニンニク))
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 (藤村久和監修「自然の恵み アイヌのごはん」デーリィマン社 p80の一部を引用)

 「キト」、「キトビロ」とも呼ばれる山菜で、ニンニクのような強い香りを持っています。

 私は石川県能登地方でいただいたことがあります。

 お店のメニューに、このプクサ(行者ニンニク)の料理があったので注文しました。

(プクサ(行者ニンニク)の醤油漬け)
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 「プクサ(行者ニンニク)の醤油漬け」です。

 シャクシャクした食感で甘味があり、「わけぎ」に似ていると思いました。


【シケレペ茶】

 シケレペを使ったお茶が御用意されていたので注文しました。

(シケレペ茶(茶器))
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 「シケレペ」はミカン科の樹木で、和名は「きはだ」です。

 茶器のフタを開けて中の様子をのぞいてみましょう。

(シケレペ茶(中身))
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 湯気とお湯でよくわかりません…(笑)

 しばらく抽出させて、カップに注ぎました。

(シケレペ茶)
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 シケレペ茶は、しょうが茶のような刺激のあるお茶でした。

 シケレペの実を取り出してみました。

(シケレペの実)
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 見た目(色・大きさ・形)は黒い粒コショウのようです。

 このシケレペの実について、お店の方から教えていただいたことは、
①たくさん食べるとお腹の調子が悪くなる可能性があるので、食べるなら少量に留めること
②実に「当たりはずれ」があり、ピリピリと辛味を感じる実も混じっていること
でした。

 シケレペの実を食べてみると、甘くて柑橘の風味を感じましたが、たまにピリピリと山椒の実のような辛い実がありました。

 その辛い実に当たると舌や口の中がしびれ、その状態がしばらく続くことになります。

(ラタシケプとエモシト)
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 これは国立アイヌ民族博物館に展示されている「ラタシケプ」と「エモシト」のサンプルですが、このラタシケプ(カボチャの和え物)にポツポツと見える黒い点がシケレペです。

 シケレペはアイヌ料理に欠かせない食材とされていますが、人によって好き嫌いが分かれるため、最近ではシケレペを使わないケースもあるそうです。


【エントプリン・エント茶】

 「エント(なぎなたこうじゅ)」はシソ科の植物で、花が咲いている時に採取し、乾燥保存させ、主にお茶として利用されます。

(エント(なぎなたこうじゅ))
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 (藤村久和監修「自然の恵み アイヌのごはん」デーリィマン社 p98の一部を引用)

 この「エント」から作られた「エントプリン」と「エント茶」のセットをいただきました。

(エントプリンとエント茶)
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 エント茶は上品な香りがするハーブティーでした。

 また、エントプリンには「ほうじ茶プリン」のような香ばしさも感じられました。


まとめ

 今回のお店や北海道白老町の「ウポポイ」でたくさんのアイヌ料理を味わい、アイヌの食文化を学ぶことができました。

 そこでわかったことは、アイヌの人々は自然の恵み(山菜・果実・魚・肉(ジビエ)・穀物など)をそのまま受け入れ、様々な工夫をして無駄なく食べておられることです。

 その根底には、自然の恵みをもたらすカムイ(神)への尊敬や感謝の気持ちがあるでしょう。

 アイヌ料理を通じて、北海道の自然の恵みを味わうことができました。


<関連サイト>
 「海空のハル」(札幌市中央区南4条西5丁目8 F-45ビル地下1F)
 「ウポポイ(民族共生象徴空間)」(北海道白老郡白老町若草町二丁目3)

<関連記事>
 「アイヌの食文化研究1 -北海道白老町「ウポポイ」のクンネチュプ・パピリカパイ・ペネイモぜんざい-

<参考文献>
 藤村久和監修「自然の恵み アイヌのごはん」デーリィマン社
 萩中美枝・畑井朝子・藤村久和・古原敏弘・村木美幸「聞き書 アイヌの食事」農山漁村文化協会

2023年7月16日 (日)

アイヌの食文化研究1 -北海道白老町「ウポポイ」のクンネチュプ・パピリカパイ・ペネイモぜんざい-

北海道白老町訪問

 苫小牧駅から室蘭行き普通列車に乗って、白老(しらおい)駅へ向かいました。

(室蘭本線・室蘭行き普通列車(苫小牧駅ホーム))
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 途中、車窓越しに馬が見え、乗車していた子供たちも喜んで眺めていました。

 白老町には競走馬の牧場があるのです。

 やがて列車は白老駅に到着しました。

(JR白老駅)
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 JR白老駅です。

 駅の南側には商店街・住宅街が、北側には観光商業ゾーンが広がっていました。

 観光商業ゾーンには白老町の情報発信拠点施設「ポロトミンタラ」があり、白老町交流促進バス(ぐるぽん)も活躍していました。

(白老町交流促進バス(ぐるぽん))
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 今回は、白老駅北側にあるアイヌ文化施設「ウポポイ(民族共生象徴空間)」とそのショップ・カフェで味わったアイヌ料理を御紹介したいと思います。


ウポポイ(民族共生象徴空間)・国立アイヌ民族博物館

 「ウポポイ」は白老駅から約500m(徒歩10分)の場所にあります。

 ウポポイの入口付近に紺色でアイヌ文様がデザインされた郵便ポストがありました。

(ウポポイ施設内の郵便ポスト)
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 郵便ポストに記載されている「イランカラプテ」はアイヌ語で「こんにちは」という意味です。

(トゥレッポんとエントランス棟)
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 ウポポイのエントランスでは、PRキャラクター「トゥレッポん」が出迎えてくれました。

 「トゥレッポん」は「トゥレプ(オオウバユリ)」をモチーフにしたキャラクターです。

 年頃の女の子で、やがてイルプ(でんぷん)になったり、さらに美味しい料理に変身するそうです。

 アイヌの人々にとって「トゥレプ」は鹿や鮭に並ぶ貴重な食料となっています。

(トゥレプ)
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(萩中美枝・畑井朝子・藤村久和・古原敏弘・村木美幸「聞き書 アイヌの食事」農山漁村文化協会 口絵の一部を引用)

(デンプンとオントゥレプ・オントゥレプ入りサヨ)
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(萩中美枝・畑井朝子・藤村久和・古原敏弘・村木美幸「聞き書 アイヌの食事」農山漁村文化協会 口絵の一部を加工・引用)

 こちらはトゥレプからとれたデンプンとその残りの「デンプンかす」で作られた団子「オントゥレプ」(写真右側)、そしてそのオントゥレプ入りのサヨ(おかゆ)(写真左側)です。

 「トゥレッポん」はこんな風に変身するのですね(笑)

 施設に入場しました。

(体験交流ホールと国立アイヌ民族博物館)
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 写真左の円形の建物が「体験交流ホール」、写真右端の建物が「国立アイヌ民族博物館」です。

(伝統的コタンとポロト湖)
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 こちらは国立アイヌ民族博物館から眺めた伝統的コタン(集落)(写真右上)とポロト湖(写真左上)の様子です。

 国立アイヌ民族博物館も見学しました。

(トゥキとイクパスイ)
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 こちらは「カムイノミ(神々への祈り)」の儀式で使われる「トゥキ(高杯)」と「イクパスイ(酒箸)」です。

 祭りや「カムイ(神)」への祈りの際には、「ピヤパ(ひえ)」や「ムンチロ(あわ)」、に「カムタチ(麹)」を混ぜて「トノト(酒)」が作られます。

(ラタシケプとエモシト)
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 こちらはアイヌ料理「ラタシケプ」と「エモシト」のサンプルです。

 「ラタシケプ」は「和え物」のことで、その代表格がカボチャのラタシケプです。

 このラタシケプは、カボチャにいんげん豆やシケレペ(きはだの実)が混ぜ込まれています。

 「エモシト」は「エモ(ジャガイモ)」で作った「シト(団子)」、つまり「いも団子」です。

 シト(団子)は、祝い事や先祖供養などの儀式の際に作られます。

 タレにつけたり、粥に入れたりして食べられました。

 館内は展示品だけでなく、設備にもアイヌの言葉が併記されています。

(国立アイヌ民族博物館内の消火栓)
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 こちらは館内の消火栓ですが、こうした設備からもアイヌ文化に触れることができます。


「ななかまど イレンカ」のクンネチュプとパピリカパイ

 続いて、ウポポイにあるショップ・カフェでいただいたアイヌの料理・お菓子を御紹介します。

 「歓迎の広場」にあるスイーツショップ「ななかまど イレンカ」で「クンネチュプ」と「パピリカパイ」を購入しました。

(クンネチュプ(カップチーズケーキ))
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 「クンネチュプ」はカップ入りのチーズケーキです。

 「クンネチュプ」はアイヌの言葉で「月」を意味しますが、その名のとおり満月のような色・形のチーズケーキです。

 原材料には北海道産のクリームチーズと白老産の卵が使われています。

 クリームチーズとスフレ生地の二層構造のチーズケーキでした。

 続いては「パピリカパイ」です。

(パピリカパイ(白老牛と鹿肉のカレーパイ))
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 白老牛と鹿肉のカレーソースが包まれたパイです。

(パピリカパイ(白老牛と鹿肉のカレーパイ)(中身))
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 カレー味のミートパイと呼びたいほど、カレーの中に白老牛と鹿肉がゴロゴロと入っていました。

 「パピリカ」とはアイヌの言葉で「豊作」を意味し、豊かな食材で美味しいパイ製品を作っていきたいというお店の方の思いが込められているそうです。


「カフェリムセ」のペネイモぜんざい

 続いて「カフェリムセ」に伺いました。

(カフェリムセ(店舗))
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 「オハウ(汁物)」も味わってみたかったのですが、お昼時に売り切れたとのことでした。

 そこで「ペネイモぜんざいセット」を注文しました。

(ペネイモぜんざいセット)
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 ペネイモぜんざいに漬物と薬草茶がセットになっています。

 「ペネイモ(ペネエモ)」は、ジャガイモを雪の中で繰り返し凍結・解凍させ、発酵させ、アクを取り除き、臼と杵でついて団子にした食べ物です。

(雪に覆われたエモ(ジャガイモ))
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(藤村久和監修「自然の恵み アイヌのごはん」デーリィマン社 p101の一部を引用)

 ジャガイモを繰り返し凍結・解凍させて作る製法は、アンデス山脈の保存食「チューニョ」とよく似ています。

(発酵した春先のジャガイモ)
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(藤村久和監修「自然の恵み アイヌのごはん」デーリィマン社 p77の一部を加工・引用)

 手間暇かかる食べ物ですが、「チューニョ」と同様、必要な時に食べられる保存食としてペネイモが作られ、食べられたのでしょう。

(ペネイモぜんざい)
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 里芋をすりつぶして団子にしたような、ニチャニチャした食感の団子でした。

 「そばがき」にも似ているように思いました。

 甘めのぜんざいとよく合いました。


まとめ

 白老町の「ウポポイ」で、アイヌの文化・料理を学ぶことができました。

 アイヌの食では、穀物(あわ、ひえ、きびなど)、山菜(トゥレプ(オオウバユリ)、プクサ(行者ニンニク))、野菜(エモ(ジャガイモ)、カンポチャ(カボチャ)、キミ(トウモロコシ)など)、果実(シケレペ(きはだの実)、ハツ(やまぶどう)など)、魚(カムイチェプ(鮭)、カジカ、ニシン、タラ、ワカサギなど)、肉(ユク(鹿)、キムンカムイ(熊)など)、そして各種豆類などの自然の恵み豊かな食材が使われていることがわかりました。

 「カムイチェプ(鮭)」、「キムンカムイ(熊)」、「カムイトノト(アイヌ伝統酒)」など、「カムイ(神)」が使われた言葉も多く、神への信仰心の強さも感じられました。

 白老駅から札幌方面へは特急北斗を利用しました。

(特急北斗(白老駅ホーム))
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 いつか特急カムイ(函館本線・札幌-旭川)にも乗りたいです(笑)


<関連サイト>
 「ウポポイ(民族共生象徴空間)」(北海道白老郡白老町若草町二丁目3)

<関連記事>
 「北海道の食文化探訪1 -北広島市と広島のつながり・「くるるの杜」の農村レストラン・農畜産物直売所-
 「北海道の食文化探訪2 -小樽「美園」のアイスクリーム・札幌「日曜日のクッキー。」・札幌「ノースマン」-
 「北海道の食文化探訪3 -札幌グランドホテル ノーザンテラスダイナーの「北海道朝食」とザ・ベーカリー&ペイストリーの「レモンケーキ」-

<参考文献>
 藤村久和監修「自然の恵み アイヌのごはん」デーリィマン社
 萩中美枝・畑井朝子・藤村久和・古原敏弘・村木美幸「聞き書 アイヌの食事」農山漁村文化協会

2023年5月14日 (日)

フィンランド料理の特徴と主な料理3 -カルヤランピーラッカ・ムナボイ・ロソッリ・キノコソテー・スモークサーモン・ラスキアイスプッラ-

フィンランドの食文化

 北欧に位置するフィンランド。

 フィンランドの人々は自分の国を「スオミ(Suomi)」と呼びますが,このスオミには「湖の国」という意味があるようです。

 シベリウス作曲の「フィンランディア」にある「フィンランディア賛歌」にも「スオミ」と歌われますが,これはフィンランドの国を意味します。

 18万8千もの湖と広大な森,そして海とともに生活するフィンランド人は,その自然環境から魚(カワカマス,サーモン,ニシンなど),きのこ,果実(コケモモ,ビルベリー,ラズベリーなど),肉(鹿,トナカイなど)の食料を得て食文化を形成してきました。

 一般的な主食は全粒穀物のパンやジャガイモです。

 冬が長く,寒さが厳しいため,魚,肉,野菜,果物などを塩漬け,燻製,ジュース,ジャムなどに加工する,保存食作りも盛んに行われています。


フィンランドの朝ごはんプレート

 東京・外苑前の「World Breakfast Allday」(ワールド・ブレックファスト・オールデイ)を訪問しました。

 2023年2月から3月までの期間のスペシャルメニューは,「フィンランドの朝ごはん」でした。

 今回は,この「フィンランドの朝ごはん」を御紹介します。

(フィンランドの朝ごはんプレート)
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 フィンランドの代表的な料理がワンプレートに盛られています。

 それでは,それぞれの料理を御紹介します。


【カルヤランピーラッカ・ムナボイ】

 「カルヤランピーラッカ」は,ミルク粥をライ麦粉の生地で包んで焼いたフィンランド東部・カレリア地方の伝統料理で,「カレリアパイ」とも呼ばれています。

(カルヤランピーラッカとムナボイ)
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 ゆで卵を潰してバターを混ぜた黄色い「ムナボイ」がのせられています。

 外側の生地は,ライ麦粉を薄くのばして焼き上げたもので,全粒粉のクレープ(ガレット)に似ています。

 中のミルク粥はゆるい「ポテトサラダ」のイメージ,ムナボイは塩気の効いた「たまごサンドの具」のイメージです。

 オープンサンドイッチのような,食べ応えのあるパンです。


【ロソッリ】

 「ロソッリ」は,茹でたビーツやジャガイモをサワークリームで和えたサラダです。

(ロソッリ)
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 ディルが添えられています。ふりかけられているのはオールスパイスだと思います。

 ビーツの鮮やかな赤色が特徴で,クリスマスの時期に食べられます。

 サワークリームのさわやかな酸味と,ビーツとジャガイモの異なる食感を楽しめました。


【キノコソテー】

 森の恵み,きのこのソテーです。

(キノコソテー)
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 ジロール(アンズ茸),ブナピー,ブナシメジ,ヒラタケのソテーです。

 様々なきのこを味わうことができました。


【スモークサーモン】

 フィンランドではサーモンがよく食べられています。

(スモークサーモン)
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 サーモンを燻製にしたスモークサーモンは,フィンランドの代表的な保存食であり,オープンサンドイッチの具としても活躍します。


【ラスキアイスプッラ】

 デザートとして「ラスキアイスプッラ」を注文しました。

 キリスト教には,イースター(復活祭)前に40日間の断食期間(四旬節)を設ける慣習があります。

 ラスキアイスプッラは,その四旬節に入る前日(告解の火曜日)に食べられる伝統菓子です。

 隣のスウェーデンから伝わったお菓子(スウェーデンでは「セムラ」と呼ばれます)だと言われています。

(ラスキアイスプッラ)
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 卵・牛乳・バターを使ったふかふかのパン「プッラ」の中心をくり抜き,中に生クリームとベリージャムがたっぷり詰められています。

 このお菓子がスウェーデンからフィンランドに伝わった際には,アーモンド(アーモンドペーストやマジパン)が使われていましたが,アーモンドが高価だったため,フィンランドではアーモンドの代わりにジャムも使われるようになりました。

(ラスキアイスプッラ(中身))
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 生クリームの奥に,甘いベリージャムがたっぷり詰められていました。

 断食に入る前に贅沢なもの,豪華なものを食べておきたいという願望から生まれたお菓子パンなのでしょう。

 この考えは,断食期間(四旬節)に入る前に行うお祭り「謝肉祭(カーニバル)」と相通じるものがあります。

 ショートケーキのような,リッチな気分になれるフィンランドの伝統菓子です。


<関連リンク>
 「World Breakfast Allday」(外苑前店・東京都渋谷区神宮前3-1-23-1F ほか)

<関連記事>
 「フィンランド料理の特徴と主な料理1 -日本フィンランド外交関係樹立100周年・ムーミンバレーパーク・フィンランドフェア-
 「フィンランド料理の特徴と主な料理2 -ムーミンビスケット・サルミアッキ・ソルティッド リコリス・チョコレート リンゴンベリー-
 「東京都渋谷区恵比寿・世界のパン「パダリア」-コンチャ,カルヤラン・ピーラッカ,ムナボイ,ハチャプリ-

<参考文献>
 「フィンランド」(「World Breakfast Allday」リーフレット)
 地球の歩き方編集室「世界のグルメ図鑑」(学研プラス)
 「大使館の食卓 おうちで簡単レシピ集」(産経新聞出版)

2023年4月23日 (日)

東京都渋谷区恵比寿・世界のパン「パダリア」-コンチャ,カルヤラン・ピーラッカ,ムナボイ,ハチャプリ-

ヱビスビールと恵比寿

 東京都渋谷区・恵比寿(えびす)を訪問しました。

(JR恵比寿駅)
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 恵比寿と言えば,サッポロビールの「ヱビスビール」が思い浮かびます。

 JR恵比寿駅の発車メロディーで,エビスビールのCMソングでもある「第三の男」が流されているからでもありますが(笑)

(「El Tercer Hombre(Remastered)」(第三の男・リマスター版)

 (YouTube「アントーン・カラス -トピック」)

 まさに恵比寿駅の発車メロディー(笑)

 「恵比寿,恵比寿,御乗車ありがとうございます。次は渋谷にとまります」と駅のアナウンスまで聞こえてきそうです。

 「恵比寿駅」や地名の「恵比寿」は,「ヱビスビール(恵比寿ビール)」にちなんだ名称です。

 1901(明治34)年,この地域に「恵比寿ビール」を輸送するための停車場が作られますが,この停車場の名称が「恵比寿ビール」の「恵比寿」の名を冠した「恵比寿停車場」となり,現在の恵比寿駅に引き継がれているのです。

 その後,1928(昭和3)年には「恵比寿(恵比寿通り一丁目・二丁目)」という地名も誕生しました。

 こうした歴史もあってか,恵比寿の街を歩くと,居酒屋やバーなどの飲酒店を多く見かけました。

 恵比寿駅から北西方向に少し歩くと,恵比寿神社があります。

(恵比寿神社(東京都渋谷区))
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 そしてもう少し北に向かって歩いたところに,今回御紹介するお店「パダリア」があります。


世界のパンが味わえる店「パダリア」

 「パダリア」は世界各地のパンを販売されているお店です。

 世界の朝食が味わえる「WORLD BREAKFAST ALLDAY(ワールドブレックファーストオールデイ)」の姉妹店として,2022年11月28日にオープンしました。

(「パダリア」店舗)
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 ショートケーキを買う時のようにケースの中のパンを選び,お店の方に欲しいパンを伝えて購入するスタイルです。

 世界各地のパンが用意されているので,知らないパンもありますが,お店の方に尋ねると親切に教えていただけます。

 パンのほかにスープやコーヒーなども用意されていて,カウンター席のイートインスペースでいただくこともできます。

 私はパンをいくつか購入し,自宅でいただきました。

 今回私が購入したパンを御紹介したいと思います。


コンチャ

 メキシコのパン「コンチャ(CONCHA)」を御紹介します。

 コンチャはスペイン語で「貝殻」の意味で,貝殻を模した縞模様が施されたパンです。

(コンチャ)
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 バニラとチョコレート,2種類のコンチャが用意されていました。

 この写真はバニラのコンチャです。

 お店でコンチャの特徴を記した紹介カードをいただきました。

(「コンチャ」紹介カード)
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 この紹介カードは,それぞれのパンに用意されており,パダリアならではのサービスとなっています。

 コンチャは,表面が甘くてサクサクのビスケット生地で包まれており,見た目も味も日本のメロンパンとそっくりなパンです。

 このコンチャをほかのお店で「メロンパン」として販売されていても,おそらく誰も違和感はないでしょう。

 日本のメロンパンは,スペインからメキシコ(かつてのスペインの植民地)へコンチャの製法が伝わり,それが米国移民を通じて日本へ伝わったという説があります(※)。

 ※第一次世界大戦で日本に捕虜として連れてこられたドイツ人が,ドイツパンの1つ「シュトロイゼルクーヘン」を日本各地に広め,それが後の日本のメロンパンにつながったとする説もあります。

 今回いただいたコンチャは,ほのかに甘いバニラ風味を楽しめました。

 メキシコで定番の菓子パンで,本国ではコーヒーなどのドリンクと一緒に食べられることが多いようです。


カルヤラン・ピーラッカ

 続いては,フィンランドのパン「カルヤラン・ピーラッカ(KARJALANPIIRAKKA)」を御紹介します。

 カルヤラン・ピーラッカは,ミルク粥をライ麦粉の生地で包んで焼いたカレリア地方の伝統料理です。

 お店の方から「このパンは別売りの「ムナボイ」と一緒に召し上がっていただくのをおすすめしております」とお話があり,カルヤラン・ピーラッカとムナボイについて教えていただきました。

 そして紹介カードもいただきました。

(「カルヤラン・ピーラッカ」紹介カード)
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 「ムナボイ」はゆで卵とバターを混ぜた具材のようです。

 そこでカルヤラン・ピーラッカとムナボイをセットで購入しました。

(カルヤラン・ピーラッカとムナボイ)
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 写真左がカルヤラン・ピーラッカ,写真右がムナボイです。

 カルヤラン・ピーラッカにムナボイをのせ,少し温めてみました。

(ムナボイをのせたカルヤラン・ピーラッカ)
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 こちらがムナボイをのせたカルヤラン・ピーラッカです。

 カルヤラン・ピーラッカの生地は,ライ麦粉に水分を加えてクレープのように薄く伸ばし,香ばしく焼き上げたものです。

 中のミルク粥は,ゆるいポテトサラダのような仕上がりでした。

 これにゆで卵とバターを混ぜたムナボイをのせると,適度な塩気とコクが加わり,より一層美味しくいただけました。


ハチャプリ

 最後にジョージアの代表的なパン「ハチャプリ(HACHAPURI)」を御紹介します。

 「ハチョ」がチーズ,「プリ」がパンという意味で,舟形のパンの中心にチーズと半熟の卵黄がのせられているのが特徴です。

 こちらも紹介カードをいただきました。

(「ハチャプリ」紹介カード)
Photo_20230423110002

 パダリアで販売されているハチャプリは,黒海沿岸・アジャラ地方のものだそうです。

(ハチャプリ)
Photo_20230423110001

 舟形の大きめのパンの中心に,卵黄とたっぷりのチーズがのせられています。

 フライパンでパンを温めました。

 卵黄が焼き固まらないよう注意しながら…。

(ハチャプリ(リベイク))
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 温めると,中のチーズがトロトロに溶けました。

(ハチャプリ(溶けたチーズと玉子))
Photo_20230423110401

 卵黄を崩し,パンに卵黄と溶けたチーズをまぶしながらいただきました。

 モチモチとしてやわらかいピザ生地のようなパンに,チーズの濃厚なコクと程良い塩気,そして卵黄のうま味が加わりました。

 大きめのパンでしたがあっという間に食べてしまいました。


まとめ

 パダリアには,世界各国のパンが用意されています。

 また一部の商品は,オンラインストアでも販売されています。

 このお店にしかないような珍しいパンもありますので,御興味を持たれた方は味わってみてください。


<関連サイト>
 「パダリア」(東京都渋谷区恵比寿西1-17-2-103)
 「ヱビスビール ブランドヒストリー」(サッポロビール株式会社)
 「WORLD BREAKFAST ALLDAY」(外苑前店・東京都渋谷区神宮前3-1-23-1F ほか)

<関連記事>
 「ドイツ・ウィーン菓子の特徴と主な菓子1 -シュトロイゼルクーヘン・レープクーヘン・バウムクーヘン-
 「ジョージア(グルジア)料理の特徴と主な料理 -クヴェヴリワイン・ハルチョー・サラダ・チュルチヘラ・アジカ・ハチャプリ-

<参考文献>
 東嶋和子「メロンパンの真実」講談社文庫
 島村菜津・合田泰子・北嶋裕「ジョージアのクヴェヴリワインと食文化」誠文堂新光社

2023年3月 5日 (日)

ルーマニア料理の特徴と主な料理 -チョルバ,ファソーレ・バトゥータ,ママリガ,スムントゥーナ,ムラトゥーリ,パパナッシ-

ルーマニアとルーマニアの食文化

 東ヨーロッパに位置するルーマニア。

 その国名は「ローマ人の国」という意味で,かつてローマ帝国の属州だったことに由来すると言われています。

 ルーマニアはヨーロッパ有数の農業国で,穀物自給率が高く,その中でもトウモロコシの生産はウクライナに次いでヨーロッパ第2位を誇っています。

 また牧畜業も盛んで,精肉や乳製品(チーズ・サワークリームなど)も充実しています。

 食文化においては,トルコから影響を受けた「サルマーレ」(ロールキャベツ,トルコ料理名「ラハナサルマス」)や「ミティティ」(ハンバーグ,トルコ料理名「キョフテ」),オーストリアから影響を受けた「シュニッツェル」(薄く伸ばした肉のカツレツ),ハンガリー料理から影響を受けた「グヤーシュ」(牛肉とパプリカなどで作る煮込み料理)など,ルーマニア近隣の国々から影響を受けた料理が多々みられます。

 日本では,2019年にコカ・コーラのブランド「ファンタ」の「世界のおいしいフレーバー」シリーズで,「ソカタ(SOCATA)」というエルダーフラワーの炭酸ドリンクが発売されましたが,これもルーマニアの国民的飲料です。

 あとルーマニアと言えば,(吸血鬼)ドラキュラが有名ですが,これはルーマニアに実在した人物(ヴラド3世)がモデルとなっており,彼の生家ではドラキュラ料理が味わえるようです。

 「ドラキュラ料理」,聞くだけで血が騒ぎます(笑)


ルーマニアの朝ごはんプレート

 東京・外苑前の「World Breakfast Allday」(ワールド・ブレックファスト・オールデイ)を訪問しました。

 2022年12月から2023年1月の期間のスペシャルメニューは,「ルーマニアの朝ごはん」でした。

 今回は,この「ルーマニアの朝ごはん」を御紹介します。

 注文してしばらくすると,作りたての「ルーマニアの朝ごはん」プレートが運ばれてきました。

(ルーマニアの朝ごはんプレート)
Photo_20230305070601

 様々なルーマニアの料理がワンプレートに盛られています。

 それでは,それぞれの料理を御紹介します。


【チョルバ】

 「チョルバ」は,レモンやサワークリームで酸味を効かせた具だくさんのスープです。

(チョルバ)
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 今回のチョルバは,鶏の挽き肉,にんじん,玉ねぎなどで作られた鶏団子が入っており,ディルなどのハーブも使われていました。

 鶏団子のうま味が溶け込んだ酸味のあるスープで,すっきりとした味わいは,日本の味噌汁と同様,どんな料理にもよく合いました。


【ファソーレ・バトゥータ】

 「ファソーレ・バトゥータ」は,白いんげん豆のペーストです。

(ファソーレ・バトゥータ)
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 パンの上にのせられ,玉ねぎ入りのトマトソースがかけられています。

 茹でたヒヨコ豆を潰してペーストにした「フムス」とよく似た味・食感で,薄くスライスしたパンやトマトソースとよく合いました。


【ママリガ】

 「ママリガ」は粗めに挽いたトウモロコシに塩や水分を加えてフツフツと煮た食べ物で,ルーマニアではパンと並んだ主食となっています。

 イタリアの「ポレンタ」と同じ食べ物です。

(ママリガとソーセージ)
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 もったりとした粘りとコクがある穀物食です。

 ご飯(ライス)のように,ソーセージやほかの料理と一緒にいただくと,より一層美味しくいただけました。


【スムントゥーナ】

 「スムントゥーナ」はヨーグルトに似たサワークリームで,ルーマニア料理に欠かせない付け合わせです。

(スムントゥーナ)
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 塩気のあるフェタチーズ(山羊乳や羊乳を使った塩分の強いフレッシュチーズ)も加えられており,ママリガやソーセージに添えていただきました。

 さわやかな酸味とほのかな塩気があり,料理に添えるとフワッと軽くなって,食が進みました。


【ムラトゥーリ】

 「ムラトゥーリ」は,野菜をビネガー,ハーブ,ニンニクなどで漬けたピクルス(酢漬け)です。

(ムラトゥーリ)
Photo_20230305072301

 漬物大国,トルコ料理の影響も受けているように思います。

 パプリカ,プチトマト,カリフラワー,キュウリのムラトゥーリをいただきました。

 酢漬けにすることにより,それぞれの野菜の色がより鮮やかに出て,彩りも良くなり,食欲を増進させる効果があります。


【パパナッシ】

 デザートとして「パパナッシ(パパナシ)」を注文しました。

 パパナッシは,揚げドーナツに似たルーマニアの伝統菓子です。

(パパナッシ)
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 お正月の鏡餅のような形をした揚げドーナツに,スムントゥーナ(サワークリーム)と甘いベリーソースがたっぷりとかけられています。

 生地は,小麦粉は少なめで,その分カッテージチーズ(脱脂乳で作られるフレッシュチーズ)がたっぷりと使われます。

 このパパナッシには,生地の約3分の2の量のカッテージチーズが使われているそうです。

 そのため,油で揚げると,外はカリカリ,中はモチモチした食感になります。

 温かいドーナツに冷たいサワークリームとベリーソース,外はカリカリで中はモチモチ。

 こうした対比も楽しむことができました。

 油で揚げられていますが,サワークリームを添えることでさっぱりとした味わいとなり,あっという間に食べてしまいました。

 ルーマニアでは通常2個以上で提供されるようですが,確かにたくさん食べたくなるお菓子です。

 もっちり感は,ブラジルのチーズパン「ポンデケージョ」に似ているようにも思いました。

 チーズやサワークリームが好まれるルーマニアならではのお菓子です。


<関連リンク>
 「World Breakfast Allday」(外苑前店・東京都渋谷区神宮前3-1-23-1F ほか)

<関連記事>
 「ブラジル料理の特徴と主な料理1 -ポンデケージョ・フェイジョアーダ・シュラスコ・アサイードリンク・ガラナ・シェレッタ-
 「ブラジル料理の特徴と主な料理4 -群馬県大泉町・ブラジルのパン-

<参考文献>
 「ルーマニア」(「World Breakfast Allday」リーフレット)
 地球の歩き方編集室「世界のグルメ図鑑」(学研プラス)
 「大使館の食卓 おうちで簡単レシピ集」(産経新聞出版)

2022年11月20日 (日)

レバノン料理の特徴と主な料理2 -マヌーシェ・アエージェ・マクドゥース・ラブネ・フモスバリラ・ハルミチーズ・ナス・ケッベ-

 東京で世界の朝食が味わえるお店「World Breakfast Allday(ワールド・ブレックファースト・オールデイ)」。

 私はこれまで外苑前店と原宿店を利用したことがありますが,しばらく経って原宿店は閉店となり,現在は外苑前店に加えて吉祥寺店と銀座店がオープンしています。

 2022年10月・11月限定の朝ごはんは「レバノンの朝ごはん」です。

 この料理を味わうため,2022年10月16日の朝,久しぶりに外苑前店を訪問しました。


レバノンの朝ごはん

 レバノンは,シリアやイスラエルと国境を接する,広さ約1万平方メートル(岐阜県とほぼ同じ面積),人口約526万人の小さな国です。

 オスマン帝国(トルコ)やフランスの支配下だった時代もあることから,レバノン料理はアラブ料理を基本に,これらの国々の食文化の影響も受けています。

 今回「World Breakfast Allday」で御用意されたレバノンの朝ごはんプレートがこちらです。

(レバノンの朝ごはんプレート)
Photo_20221120094101

 プレートの中心に大きなパンがデーンとのせられており,ボリューム満点です。

 レバノン料理の特徴は,野菜やオリーブオイル,ヨーグルト,スパイスやハーブを使った料理が多いことです。

 中東で最も洗練された料理とも言われています。

 それでは,今回いただいた料理を個別に御紹介します。


【マヌーシェ】

 プレートにのせられた大きく平たいパンは「マヌーシェ」です。

(マヌーシェ)
Photo_20221120094501

 弾力のあるパンの上には「ザータ(ザータル)」と呼ばれる中東のスパイス,そして白ゴマがたっぷりとかけられています。

 「ザータ(ザータル)」はタイム,スマック(赤シソに近い風味のスパイス)などを配合したミックススパイスです。

 辛さはなく,さわやかな香りのスパイスが配合されたミックススパイスなので,様々なパンやおかずに合わせることができます。

 目覚めの朝食にふさわしい,鮮烈でさわやかな香りのパンでした。


【アエージェ】

 「アエージェ」は,ズッキーニなどの野菜に,ミントやパセリなどのハーブを加えた平たいオムレツです。

(アエージェ)
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 ニラ玉のような感じで,ごはんにも合うこと間違いなしの玉子料理でした。


【マクドゥース】

 「マクドゥース」は,茹でた小ぶりのナスにパプリカやクルミ,ニンニクなどを詰めてオイル漬けにした料理です。

(マクドゥース)
Photo_20221120095701

 見た瞬間は,パプリカの詰め物かと思いました。

 オイル漬けでやわらかくなったナスやパプリカに,コリコリしたクルミの食感と香ばしさがよいアクセントになっていました。

 中東では定番の保存食とのことです。


【ラブネ】

 「ラブネ」は水切りヨーグルトです。

 今回は,きゅうりのサラダとともに盛り付けられていました。

(ラブネとサラダ)
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 市販のプレーンヨーグルト(無糖)に似ていますが,少し塩気があるので料理の付け合わせとしてもよく合います。

 サラダだけでなく,平たいパン「マヌーシェ」にもつけていただきました。

 サラダには,オリーブの実とザクロが添えられており,細かいところまで中東料理をよく再現されているなと感心しました。


【フモス バリラ】

 「フモス バリラ」は,茹でたひよこ豆をレモン・ニンニク・オリーブオイルで和えたサラダです。

(フモス バリラ)
Photo_20221120100601

 クミンが加えられているため,カレーのような風味に仕上がっていました。

 中東には「フムス」と呼ばれる,ひよこ豆を潰してのばしたディップがありますが,ひよこ豆は中東の人々に欠かせない食材となっています。


【ハルミチーズとナスのグリル】

 ハルミチーズは,ヤギ乳と羊乳を混ぜて作られる塩漬けチーズです。

(ハルミチーズとナスのグリル)
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 鶏のササミのような,シコシコ・モギュモギュとした食感の白いチーズです。

 当ブログのトルコ料理の記事(「ヘリムチーズ焼」)やギリシャ料理の記事(「サガナキ」)でも御紹介していますが,もともとはトルコの南に位置するキプロス発祥のチーズです。

 適度な塩気と弾力があり,焼くだけでも十分美味しいチーズです。

 ナスのグリルとの相性も抜群でした。


【ケッベ】

 レバノンの朝ごはんプレートに加え,単品で「ケッベ」も注文しました。

 「ケッベ」はスパイスで味付けした挽き肉をオーブンで焼いた料理です。

(ケッベ)
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 クリーム,ザクロ,松の実,ミントが添えられており,見た目はショートケーキのようですが(笑),挽き肉料理です。

 挽き肉に「ブルグル」と呼ばれる「ひき割り小麦」が混ぜ込まれており,軽い食感に仕上げられていました。

 この「ケッベ」はレバノン移民とともにブラジルに渡り,ブラジルでは「キッビ」という名で,スナックとして親しまれています。


 今回御紹介した料理だけでも,トルコ,ギリシャ,キプロス,ブラジルと様々な国の料理との関わりがあり,各国の食文化は他国との交流も含めて研究する必要があることがよくわかります。


<関連サイト>
 「World Breakfast Allday」(東京都渋谷区神宮前3-1-23-1F(外苑前店)ほか)

<関連記事>
 「レバノン料理の特徴と主な料理1 -ラップサンド-
 「トルコ料理の特徴と主な料理2 -神戸・「ケナン」のトルコ料理(前編)-
 「ギリシャ料理の特徴と主な料理1 -サガナキ・ホリアティキ・スブラキ・ムサカ・マスティクア-
 「ブラジル料理の特徴と主な料理3 -群馬県大泉町 キッビ,エスぺト・ミスト,フェイジョン-
 世界の料理については,当ブログ「食文化関連記事一覧表・索引」の「各国料理の特徴と主な料理」も御参照ください。

<参考文献>
 「World Breakfast Allday」レバノン料理紹介リーフレット
 マガジンハウス「ブルータス」(「日本で味わう,48の国と地域の食文化 世界が恋しくなる料理」・2022年4月15日号)

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