各国料理の特徴と主な料理

2018年8月12日 (日)

スリランカ料理の特徴と主な料理 -デビルチキン,デビル・悪魔風と名のつく料理の意味-

スリランカの食文化

 スリランカはインドの南東に位置する島国です。

 周りが海に囲まれているため,日本と同じく魚介類の料理が多く,魚のカレーが代表的な料理の1つとなっています。

 地理的条件からみると,南インドに近いことから,南インド料理との共通点が多いと言えます。

 また,ヨーロッパや北西アフリカから中東,インド,東南アジア,東アジアを結ぶ海の商業ルート上に位置していることから,これらの国々の食文化の影響も受けています。

 さらに歴史的背景から,ポルトガル,オランダ,イギリスによる植民地時代があったため,これらの国々の食文化の影響も受けています。

 つまりスリランカの食文化は,スリランカ独自の食文化に幅広い様々な国の食文化が組み込まれて成り立っていると言えるのです。


デビルチキン

 スリランカ料理店で面白い名前の料理を見つけました。

 デビルチキンです。

(デビルチキン)
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 鶏とトマトと野菜のチリソース炒めです。

 鶏肉,トマト,玉ねぎ,ピーマンなどを一口大のザク切りにし,甘辛いチリソースで炒めた料理です。

 今回味わった料理は,甘辛いというよりは甘酸っぱい味付けでした。

 見た目も味も中国料理の「酢豚」に近いと感じました。

 ただ,お店の人にお話を伺うと,酢は使っていないとのことでしたので,甘味や酸味は主にトマトによるものなのでしょう。

 デビルチキンと一緒にライスやパパダン,アチャールをいただきました。

(デビルチキンとジャスミンライス・パパダン・アチャール)
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 写真右上の皿にライス,そして時計回りにパパダン,アチャール2種です。

 長細いチップスかパスタのような食べ物がパパダンです。

 パパダンは豆の粉末や小麦粉から作られるパリパリしたせんべいのような食べ物で,焼いたり油で揚げたりしてカレーなどと一緒に食べられます。

 インドのパパドとよく似ています。

 一方,アチャールは野菜や果物の漬物のことです。

 カレーの付合せとして食べられるもので,インドやネパールなどにも同名の漬物があります。

 写真のアチャールはターメリックで漬けた大根とオクラのアチャールです。

 これらの食べ物は,日本の食事で例えると,主菜につくご飯と漬物のようなイメージでしょう。


デビル・悪魔風と名のつく料理の意味

 「デビルチキン」とは何ともインパクトの強いネーミングですが,料理名に「デビル」,「悪魔風」,「ディアボラ風(イタリア料理)」などと名のつく料理は,次のいずれかに該当する場合だと思います。

 (1)味付けをチリソースなどで辛くしている料理
 (2)見た目が赤く燃え上がるような色をした料理
 (3)形がマントを広げた悪魔のように見える料理
 (4)仕上げに残酷な悪魔を想像させる焼き目を付けた料理

 今回の「デビルチキン」は主に(1)や(2)の意味で,イタリアの鶏料理の場合は主に(3)や(4)の意味でネーミングされています。


 どんな料理にも言えますが,作ったり味わったりする際,一歩踏み込んで,その料理の名前の意味や歴史的背景なども調べてみると,その料理の基本や本質をつかむ手助けとなり,やがて応用もきくようになると思います。


<関連記事>
 「ネパール料理の特徴と主な料理3 -アルアチャール・マルプア・チャイ-

2018年7月 7日 (土)

デンマーク料理の特徴と主な料理3 -フリカデラ・赤キャベツのピクルス・フレスケスタイ・フーゴ,デンマークとドイツの食文化-

 広島アンデルセンで開催された「デンマークフェア」で販売されていたデンマークゆかりの食を御紹介したいと思います。


フリカデラと赤キャベツのピクルス ラズベリー風味

 フリカデラは豚の挽き肉で作られるハンバーグやミートボールに似た料理で,デンマークの代表的な料理の1つです。

(フリカデラと赤キャベツのピクルス ラズベリー風味)
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 フリカデラにラズベリー風味の赤キャベツのピクルスを添えてみました。

 今回のフリカデラは,アグー豚の挽き肉のほかに,細かく刻まれたじゃがいもも入っており,豚肉のうまみとともに,じゃがいものホクホク感も楽しめました。

 そして写真手前の紅生姜のような食べ物が,赤キャベツのピクルスです。

 レッドキャベツを砂糖,りんご酢,ラズベリーピューレ,食塩で漬け込んだもので,フルーティーでとても甘いピクルスでした。

 赤キャベツをイチゴ味の氷みつに漬けたような味です。

 単品で食べると,まるでお菓子のような食べ物なのですが,このピクルスをフリカデラと一緒にいただくと,不思議なことにとてもよく合います。

 肉団子を甘酢あんでいただくような感じがしました。

 デンマークのフリカデラとラズベリー風味のピクルス,オーストリアのウィンナーシュニッツエルとベリーソース,アメリカのローストターキーとクランベリーソースなど,肉料理と甘いベリーソースは実はとても相性がよい組合せなのだと実感しました。


フレスケスタイ(クリスピーデニッシュポーク)

 「フレスケスタイ」はローストポークのことです。
 
 今回のフェアでは「クリスピーデニッシュポーク」という名称で販売されていました。

 フレスケスタイの特徴は豚の皮も一緒に食べることです。

 豚の皮の部分に「ハモの骨切り」のように包丁で細かく切り込みを入れ,その切れ目に塩・ローリエ・クローブなどの調味料やスパイスをすり込んで下味をつけ,オーブンで焼いた料理です。

(フレスケスタイ)
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 写真のこんがりと焼けた表面の皮の部分を御覧いただくと,切れ目が入っているのがおわかりいただけるかと思います。

 この皮の部分がカリカリで,塩味とスパイスの味がしっかりと効いています。

 一方,肉の部分はやわらかくジューシーで,豚肉本来のうま味があります。

 このカリカリの皮と肉を一緒に食べることで,味のバランスがとれたローストポークを楽しむことができるのです。

 ただ,豚の皮をローストした料理なので,若干ですが,焼いた豚足や豚耳に似た独特なにおいも感じられます。

 このにおいについては好みが分かれそうですが,フレケスタイには欠かせない要素であることは間違いありません。


フーゴ

 フーゴは,甘くさわやかなエルダーフラワーシロップの入った微炭酸のソフトドリンクです。

 お店の方から,デンマークで初夏に飲まれるドリンクだと伺いました。

(フーゴ)
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 実際いただいてみると,すっきりとした甘さで,ミントの爽快感も感じられました。

 エルダーフラワーは花の一種ですが,ライチやマスカットに似たフルーティーな風味を感じました。

 暑い日は,フーゴで「スコール(乾杯)!」


デンマークとドイツの食文化における共通点

 デンマークとドイツは,ユトランド半島の北側がデンマーク,付け根にあたる南側がドイツと隣国同士の関係になります。

(ユトランド半島とデンマーク・ドイツ周辺の地図)
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(国土地理院の電子地形図(タイル)に国名・地名等を追記して掲載)
※地図をクリックすると拡大します。

 そのため,食文化においても次のような共通点が見い出せます。

(1)両国ともニシン料理が有名だが,これはユトランド半島の付け根に位置するドイツの都市リューベックとハンブルクが中心となって発展した商業同盟「ハンザ」の存在と,「ハンザ」のニシン漁を主にデンマークの漁師が担っていたことに由来している。

(2)両国とも豚肉やじゃがいもを多く食べる。

(3)デンマークには「フリカデラ」,ドイツ・ハンブルクには「フリカデレ」(のちにアメリカに渡り,ハンブルクを英語読みした「ハンバーグ」という名称となる)と,共通した豚の挽き肉料理がある。

(4)パンが重視され,伝統的なライ麦パン(黒パン)を中心にパンの種類が豊富にある。

(5)「デンマークビール」,「ドイツビール」と呼ばれるように,両国ともビール大国である。

 これらの共通点は代表的な事例で,実際にはもっとたくさんの共通点があることでしょう。


 日本ではまだあまり馴染みのないデンマーク料理ですが,ドイツ料理まで視野を広げてみると,より深く理解できるのではないかと思います。


<関連サイト>
 「広島アンデルセン」(広島市中区紙屋町2-2-2)

<関連記事>
 「デンマーク料理の特徴と主な料理1 -なぜオープンサンドイッチが伝統料理なのか-
 「デンマーク料理の特徴と主な料理2 -デンマークバター・ソフトカーネラグブロート・ダンスクウールブロート・スモーブロー-

2018年6月28日 (木)

デンマーク料理の特徴と主な料理2 -デンマークバター・ソフトカーネラグブロート・ダンスクウールブロート・スモーブロー-

 今年も広島アンデルセンで「デンマークフェア」が開催されました。

 フェア開催中だけに販売される食品もいくつかあり,デンマークゆかりの食を味わえる貴重なイベントです。

 このデンマークフェアで販売されていたデンマークゆかりの食品をいくつか御紹介したいと思います。


デンマークバター

 デンマークから取り寄せられた「LURPAK(ルアパック)」のバターです。

(デンマークバター「ルアパック」(包装))
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 デンマークで生乳から作られた発酵バターです。

(デンマークバター「ルアパック」)
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 このフェアでは,有塩バター・無塩バターとも販売されており,パンとともに両方試食させていただいたのですが,発酵バターでとてもクリーミーなので,有塩バターだけでなく,無塩バターとパンの組み合わせでも美味しくいただけました。

 やわらかく伸びがよいので,パンに塗りやすいのが特徴です。

 生クリームのように口どけがよく,風味豊かなバターです。

 パンはもちろん,料理やお菓子にも幅広く使えます。


ソフトカーネラグブロート

 ソフトカーネラグブロートは,パン生地にライ麦,丸麦,ひまわりの種がぎっしりと詰められ,表面にたっぷりとゴマがまぶされた黒パンです。

(ソフトカーネラグブロート)
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 デンマークでは,気候的な条件もあって,ライ麦などの雑穀が使われた,いわゆる「黒パン」がよく食べられていますが,ここまで豊富に雑穀が入っていると,現代においてはこうしたパンの方がよっぽど贅沢な気がします。

 ライ麦パン独特のサワー種の酸味,少しボソボソとした歯応えが楽しめます。

 あわせて,ひまわりの種やゴマの香ばしさやコクも味わうことができます。

 そのままでも十分おいしいのですが,このパンにたっぷりとバターを塗ったり,好きな具をのせれば,よりおいしくいただけます。

(ソフトカーネラグブロートとルアパックバター)
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 デンマークバターの伸びがよく,表面に凹凸があるソフトカーネラグブロートにもきれいに塗ることができました。


ダンスクウールブロート

 ダンスクウールブロートは,黒ビールを使った生地で焼かれたパンです。

 デンマークの「アンデルセン」で人気のパンをお手本に作られているそうです。

(ダンスクウールブロート)
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 クラム(パンの中身)は,水分を含んでモチモチしており,黒ビールのほのかな香りを楽しめます。

 一方,クラスト(パンの皮)は,米粉が使われていることもあって薄くてパリパリとしており,その香ばしさを楽しむことができます。

 このクラムとクラストの食感の違いが大きいのですが,そこがこのパンの魅力でもあります。

 このパンを厚めに切って,オープンサンドイッチで味わうのもおすすめです。


スモーブロー(デンマーク風ポテトサラダ・スモークサーモン)

 「スモーブロー」の「スモー」はバター,「ブロー」はパンを意味し,転じてオープンサンドイッチを意味します。

 デンマークが世界に誇る伝統料理です。

 美味しいパンとバターが揃ったので,私もスモーブローを作ってみました。

(スモーブロー)
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 パン(ダンスクウールブロート)にデンマークバターを塗り,その上にデンマーク風ポテトサラダ(写真手前)とスモークサーモン(写真奥)をのせてみました。

 デンマーク風ポテトサラダはデンマークフェアで惣菜として販売されていたもので,じゃがいも,人参,ブロッコリー,セロリ,赤玉ねぎをサワークリームなどの調味料で和えたものです。

 じゃがいもはデンマーク料理の中心的役割を果たす食材の1つです。

 オープンサンドイッチはたくさんの具をパンの上にのせることができますが,その分,土台となるパンにしっかりと支える力が要求されるので,ライ麦パン(黒パン)や厚みのあるパンが適しています。

 自分の好きな具をのせて,おなかいっぱい食べられることがスモーブローの魅力と言えるでしょう。


<関連サイト>
 「広島アンデルセン

<関連記事> 
 「デンマーク料理の特徴と主な料理1 -なぜオープンサンドイッチが伝統料理なのか-
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2018年6月17日 (日)

デンマーク料理の特徴と主な料理1 -なぜオープンサンドイッチが伝統料理なのか-

バイキングとデンマーク料理

 デンマーク(Denmark)という地名は,北ゲルマン民族の「デーン人(Dane)」が7,8世紀ごろスカンジナビア半島南部からこの地(フランク王国との境界・国境を意味するマーク(Mark))に移動し,ジュート人を追い出して定住したことに由来しています。

 そして北ゲルマン人たちは,のちにバイキング(Viking,入り江の人々という意味)と呼ばれるようになります。

 バイキング独特のオードブル料理のことを「スモ―ガスボード(スミョールボイド)」と呼びますが,時代は下って1957年,日本の帝国ホテルの犬丸徹三さんが北欧視察の際にスモ―ガスボードの食べ放題に興味を抱き,食べ放題を「バイキング」と命名した逸話は興味深いところです。

 酪農業や水産業が盛んで,肉や魚は塩漬け・マリネ・薫製に加工して貯蔵され,年間を通じて豊かな食生活が送れるよう工夫されています。

 冬が長く厳しい環境にあるので,寒さに強いじゃがいも・ライ麦を使った料理やパン(黒パン)が中心となります。


スモ―ガスボード

 「スモ―ガスボード」の「スモ―ガス」はバター付きのパン,「ボード」はテーブルの意味で,合わせると「パンとバターの食卓」という意味となります。

 この意味が転じて,様々な料理を各自の好みで(オープンサンドイッチで)食べるビュッフェ形式の食事を指す言葉となりました。

 デンマーク料理のレストランで,スモ―ガスボードの前菜「スモ―ガスプレート」を味わう機会がありましたので,御紹介します。

(「スモ―ガスプレート」)
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 写真上から時計回りに,デンマークキャビア,フレッシュノルウェーサーモン,ポークパテ,ニシンの酢漬けです。

 デンマークキャビアは,じゃがいものパンケーキと刻んだ玉ねぎの上にたっぷりとのせられており,贅沢な気分になりました。

 フレッシュノルウェーサーモンにはイクラやケイパー,ディルが添えられており,脂がのって身も厚く,食べ応えがありました。

 ポークパテにはピクルスやレタスが添えられており,このプレート唯一の肉の冷菜でした。

 そして特筆すべきはニシンの酢漬けです。

 ニシンは独特のクセがあり食べにくいイメージを持っていたのですが,このニシンには全くクセがなく,身が厚く,脂ものっていて,とても美味でした。

 冒頭でバイキングとはもともと「入り江の人々」という意味だと御紹介しましたが,その入り江で暮らす人々の主要な食料源は魚類であり,とりわけニシンやタラが重要な役割を果たしました。

 バイキングの移動は,北海・バルト海のニシンの回遊コースと一致していたという説もあるほどです。

 こうした歴史的背景もあり,ニシンはスモ―ガスボードに必要不可欠な食材となっています。


 スモ―ガスボードには,今回御紹介した料理のほか,肉類(牛肉・鶏肉・野鳥肉など),ローストビーフ,ハム,ソーセージ,牛タン,レバーペースト,小エビ,アンチョビ,ウニ,ウナギの燻製,鯖の燻製,タラの卵,チーズ,ピクルス,果物など多彩な料理があります。

 スモ―ガスボードの特徴は,(1)魚介料理が多い,(2)塩漬け(ハム,ソーセージなど),酢漬け,薫製,マリネなど長期保存可能な常備菜が多い,(3)酒と一緒に楽しむ「おつまみ(オードブル)」の要素も強い,とまとめることができるでしょう。


デンマークの食材から食文化を考える

 デンマークの食文化を「小麦」の視点からアプローチしてみたいと思います。

 北欧に位置するデンマークは,その気候条件から小麦の収穫がままならず,代わりにライ麦,大麦,じゃがいもなどの穀物に頼ることとなりました。

 パンにおいては,小麦粉を多用することができないため,ライ麦パン(黒パン)にしたり,小麦粉よりも酪農で得られるバターの割合を多くした「デニッシュ」(※)にするなどの工夫がなされています。
 ※ウイーン由来とされるため,デンマークではデニッシュではなく「ヴィエナーブロート(ウィーンのパン)」と呼ばれている。

 ライ麦パンはずっしりと重厚感があるため,たくさんの具をのせてもしっかりと受け止められるというメリットもあります。

 一方,酒においては,じゃがいもで作られた蒸留酒アクアビットや大麦で作られたビールなどが中心となります。

 それにスモ―ガスボードのような保存食中心の料理が加わるとどうでしょう。

 自然と,酒とスモ―ガスボードを組み合わせたビュッフェ,そしてライ麦パンにバターを塗りスモ―ガスボードの料理をのせたオープンサンドイッチ(スモーブロー)にたどり着くのです。

 スモ―ガスボードがオープンサンドイッチ(スモーブロー)も意味する言葉となっている理由は,こうした経緯もあるからでしょう。

 デンマークのオープンサンドイッチ店に行くと,巻物のようなメニュー表から多種多様な具材を選ぶことができるようですが,これも多種多様なスモ―ガスボードの流れを汲んでいるからだと説明できます。

 つまり,オープンサンドイッチはスモ―ガスボードを源流とするデンマークの食文化そのものを表現した料理であり,だからこそデンマークの名物料理になっていると説明することができるのです。

 日本で言えば,主食のご飯の上に多種多様な具をのせて楽しむ「丼」とよく似ていますね。


<関連サイト>
 「レストラン スカンディヤ」(横浜市中区海岸通り1-1)

<関連記事>
 「デンマーク料理の特徴と主な料理2 -デンマークバター・ソフトカーネラグブロート・ダンスクウールブロート・スモーブロー-
 「デンマーク料理の特徴と主な料理3 -フリカデラ・赤キャベツのピクルス・フレスケスタイ・フーゴ,デンマークとドイツの食文化-

<参考文献>
 21世紀研究会編「地名の世界地図」文春新書
 岡田哲「食文化入門」東京堂出版
 岡田哲「世界の味探究事典」東京堂出版
 玉村豊男「パンとワインとおしゃべりと」中公文庫
 越智敏之「魚で始まる世界史 ニシンとタラとヨーロッパ」平凡社新書

2018年2月24日 (土)

台湾料理の特徴と主な料理 -燜齋鴨(素食北京ダック)と菜食主義(ベジタリアン)-

 台湾料理は,中国全土の料理が揃っていると言われています。

 海の幸や山の幸にも恵まれており,日本の料理の影響も受けているため,日本人にもなじみやすい料理が多いのも特徴です。

 中国料理がベースなので,当然ながら,肉(特に豚肉)料理や海鮮料理がメインとなります。

 しかし一方で,医食同源の思想や宗教上の理由から,菜食主義者(ベジタリアン)も多く,「素食(料理)」(菜食主義者向け(料理)という意味)と表記された食品・料理(店)も多く存在しています。

 今回は,そんな素食の1つ,「燜齋鴨」(素食北京ダック)の缶詰を御紹介します。

(「燜齋鴨」(漢字表記))
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 「燜齋鴨」の「燜」がシチュー(煮込み),「齋」が菜食,「鴨」がアヒルという意味です。

 上側の「良友牌」という表記は,「コンパニオンフーズ」という会社名に由来する「コンパニオンブランド」という意味でしょう。

(「燜齋鴨」(英語表記))
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 缶詰の下部に「Peking Vegetarian Roast Duck(Braised Gluten)」(ベジタリアン向け北京ローストダック(蒸し煮のグルテン))と表記されています。
 「燜齋鴨」はおそらく「ムンチャイア」と読むのでしょうが,自信がないので間違えていたらお許しください。

(「純素食」のマーク)
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 缶詰の一部に「純素食」と書かれたマークがありました。

 英語で「100% Vegetarian」とあることからも,「完全なベジタリアン向け食品」と言った意味でしょう。

 その下に控え目な字で「imitation」(イミテーション,もどき)とも表記されていますね。

(「燜齋鴨」(食品表示))
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 食品表示を見てみると,「素鴨(アヒルもどき,グルテン,遺伝子組み換えでない)」,「水」,「黄豆油(大豆油)」,「醤油」(天然発酵),「糖」,「盬(塩)」とあります。

 つまり,小麦粉のグルテンが持つ粘着性と弾性をうまく利用して,アヒルの肉のような食感を作り出し,その肉もどきを醤油や砂糖,塩などで味付けした食べ物なのです。

 缶詰の写真にある北京ダックほどではないでしょうが,どこまで北京ダックに似た食べ物が出てくるのか,興味深く缶詰の蓋を開けました。

(「燜齋鴨」)
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 なるほど。見た目が鳥の肉や皮とそっくりです。

 ただ色合いについては,北京ダックというよりは鶏肉の醤油煮のような印象を持ちました。

 電子レンジで少し温めて,実際にいただいてみました。

 味付けは醤油と砂糖が中心で,甘辛い味に仕上げられています。

 そして,確かに淡泊な鶏肉のような弾力,歯応えがあります。

 この食感を可能にしているのは,薄く伸ばしたグルテンの板を何層にも重ねて肉の形に成形されているからなのでしょう。

(「燜齋鴨」(断面))
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 この幾重にも重なるグルテンの層が肉のような食感を生み出しているのです。

 味は,北京ダックまでには至りませんが,鶏肉の醤油煮だと言われて出されると,まぁそうとも言えるかなというレベルです。

 ただ,この肉もどきをゴボウや里芋などの根野菜と一緒に煮て,筑前煮だと言われて出されたら,鶏肉だと信じてしまうような気がします。

 それにしても,グルテンを使って,ここまでの代用肉を作り上げる台湾の方々の執念には脱帽です。


東アジアとインドの菜食主義(ベジタリアン)の違い

 今回,北京ダックもどきの食品を御紹介しましたが,こうした「肉もどき」の食品・料理は主に中国やその影響を受けた台湾・日本など東アジアの国や地域で多くみられるものです。

 日本でも,豆腐や野菜で作られる精進料理の「がんもどき」が「肉もどき」食品として有名ですね。

 しかしながら,菜食主義(ベジタリアン)の本場と言われるインドでは「肉もどき」を作るという発想がありません。

 なぜなら,インドの菜食主義者の間では,肉が食べ物であるという考え自体がないからです。

 そもそも肉に執着心がない以上,肉に憧れることもなく,したがって「肉もどき」を作ってまで菜食主義を貫こうなどと思うこともないのです。

 普段の暮らしの中で肉や魚を食べる習慣があるかないかによって,菜食主義(ベジタリアン)でも発想の違いがあるのです。

 このことを踏まえると,日本を含め,肉や魚を食べる習慣がある国や地域で菜食主義(ベジタリアン)を貫き通すことがいかに難しく大変なことかを御理解いただけるかと思います。


<参考文献>
 森枝卓士(ジャーナリスト・食文化論)『食べてはいけない!』白水社

<関連リンク>
 「コンパニオンフーズ(良友牌)」(英語表記)
 菜食レストラン&カフェ「菜食健美」(広島市西区己斐上4丁目32-2,「燜齋鴨」販売店)

2018年1月19日 (金)

イタリア料理の特徴と主な料理5 -マロッキーノ-

 広島の百貨店「福屋八丁堀本店」で開催された「イタリア展」へ行ってきました。

 その会場に東京都目黒区にあるイタリアンバール「LoSPAZIO(ロ・スパッツイオ)」のバールコーナーがあったので,お邪魔しました。

 その店のメニューにあった「マロッキーノ(marocchino)」というドリンクを飲んでみたいと思ったからです。

 マロッキーノは,チョコレート,泡立てたミルク(フォームドミルク),エスプレッソコーヒー,ココアパウダーで作られるドリンクです。

 カウンターに座り,私が「マロッキーノを」と注文すると,バリスタから「飲み慣れてらっしゃるようですね」と言っていただき,すっかりいい気持ちになりながら,バリスタの技を拝見しました。

 耐熱グラスの底に,まず液体のチョコレートソースを全体の約1割程度注ぎ,その上から静かに温かいフォームドミルクを全体の約6割注ぎます。

 その上から,ゆっくりとエスプレッソコーヒーを全体の約3割注ぐと,白いフォームドミルクと混ざった部分がカプチーノのように変化します。

 仕上げに表面にココアパウダーをかければマロッキーノの完成です。

(マロッキーノ)
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 コップの底の黒い液体がチョコレートソース,その上の薄い褐色がフォームドミルクとエスプレッソが混ざったところ,グラス上部の白い層がフォームドミルク,表面の茶褐色がココアパウダーです。

 きれいに層を成しているのがお分かりになるかと思います。

 さてこれをどうやって飲むのか。
 飲み慣れてない私は戸惑いました(笑)。

 バリスタに伺ったところ,スプーンでかき混ぜて飲むとよいとのお話でしたので,少しもったいない気もしましたが,かき混ぜていただきました。

 実は私はミルクが苦手なので,正直なところ飲めるかどうか不安もあったのですが,実際にいただいてみると,チョコレート風味のカプチーノで,とても飲みやすく仕上がっていました。

 チョコレートソースとココアパウダーによるダブルのチョコレート風味と,フォームドミルクによりマイルドになったエスプレッソの相性が抜群です。

 カウンターでマロッキーノをゆっくり味わいながら,バリスタとの会話を楽しみました。

 マロッキーノはピエモンテ州(トリノなど)やロンバルディア州(ミラノなど)で人気のドリンクで,「モロッコ風の,モロッコ人の」という意味があるそうです。

 その呼び名の理由は,トッピングのチョコレートの褐色がモロッコ(人)を想像させるからではないかとおっしゃっていました。

 日本ではまだまだ知名度が低く,メニューにあるカフェ(バール)も少ないようですが,コーヒーチェーンで言えばドトールコーヒー系の「エクセシオールカフェ バリスタ」や「illy(イリー)」などで味わえるようです。

 興味を持たれた方は,ぜひお近くのバール,イタリア料理店,コーヒーチェーンなどで味わってみてください。


<関連リンク>
 「LoSPAZIO(ロ・スパッツイオ)」(東京都目黒区鷹番3-3-5ハーデンビル1F)
 「エクセシオールカフェ バリスタ」(店舗メニュー)
 「illy(イリー)」(店舗メニュー)

<参考文献>
 辻調理師専門学校監修/近藤乃里子・合田達子・正戸あゆみ著「イタリア料理基本用語」柴田書店

2017年12月17日 (日)

日本料理の特徴と主な料理2 -料理人 平野寿将さんから熟成魚の魅力を学ぶ-

「引き算の料理」

 日本料理は「引き算の文化」です。

 「引き算の文化」とは,必要以上に手を加えないこと,本当に必要なものだけを用いること,そして素材そのものの味を引き出すことを良しとする文化のことです。

 引き算しても美味しい料理に仕上げるためには,産地や仕入先を厳選し,食材を新鮮な状態で入手し,その食材の最高の部位を用い,食材の味を引き立てる水・だし・調味料などにこだわり,瞬時に料理することが求められます。

 今回は,こうしたことを実践され,自らの料理を「引き算の料理」とおっしゃる和の料理人 平野寿将(ひらのひさま)さんの世界を御紹介したいと思います。


「馳走啐啄一十」での平野寿将さんとの出会い

 今回,知人の紹介で広島の日本料理店へ行く機会がありました。

 「馳走啐啄一十」(ちそうそったくいと)という,料理人 平野寿将さんが手がけておられるお店です。

 日本に住んでいながら,日本料理は高級で敷居が高いというイメージがあり,なかなか味わえる機会がなかっただけに,今回はあらゆることを勉強させていただこうと思いつつ,お店を訪問しました。

(「馳走啐啄一十」玄関)
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 「馳走啐啄一十」は一流の日本料理店なので,私が訪問すると知った瞬間,周囲の人達からは,「品良く」,「気の利いた話を」,「恥ずかしくない服装で」…など,親切に「御指導」いただきました(笑)。

 あまりに言われると,普段の私はその逆なのかと思ったりもしましたが,食事の際のマナーは自分のためではなく,店内のほかのお客さん達,お店の人々,そして同伴の人に対する敬意と気遣いだと心得ていますので,それなりの服装で訪問しました。

 お店の入口に,ワインセラーのような昆布の貯蔵庫「昆布セラー」が設置されていました。

(「昆布セラー」)
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 福井県敦賀市「奥井海生堂」の蔵囲(くらがこい)昆布です。

 1年以上蔵で寝かされた昆布で,ワインと同様,「ビンテージもの」として取り扱われています。

 昆布の旨味成分であるグルタミン酸の白い粉が浮いているのがわかります。

 これは期待できます。

 開店時刻少し前の店内に入ると平野さんが厨房で調理の準備をされていました。

 「あ,あの有名な平野さんだ」と思ったのもそこそこに,開口一番,私が平野さんにお話ししたのは,「あのーすみません,トイレに行かせてください。」でした。

 「品良く」,「気の利いた話を」…あの周りからのアドバイスは一体何だったのでしょう(笑)。

 最初に手を洗い,落ち着いてじっくり味わうのが私の流儀なのです。

 でも,これで場は一気に打ち解け,私は平野さんの調理台の真正面のカウンター席に案内していただきました。

 あの有名な平野さんと1対1でお話しが出来るとは何と言う幸運!
 緊張よりも嬉しさで一杯になりました。

 誘ってもらった隣席の知人に心から感謝しました。

 平野さんはとても気さくな方で,平野さんからいろいろ話しかけてくださったこともあり,会話が弾みました。

 冒頭,私は平野さんに「今回フランスの美食ガイドブック『ゴ・エ・ミヨ(Gault & Millau)』の日本版第2号にお店が紹介されることとなり,心からお祝い申し上げます。」とお話ししました。

 この話を皮切りに,広島の軟水とだしの話,広島の牡蠣養殖の話,生の刺身と熟成魚の違い,仕入れ先への並々ならぬこだわりの話など,いろんな興味深いお話を伺うことができ,とても勉強になりました。

 お菓子にも使われるほど甘味のある加賀蓮根の料理が出された際,私は金沢の料亭「大友楼」で味わった郷土料理の治部煮が頭に浮かびました。

 そこで,治部煮などに用いられる加賀野菜「金時草(きんじそう)」のお話をしました。

 すると平野さんの料理される手が一瞬止まり,常連の知人に向かって「(連れてきた彼は)詳しいねえ。」と言っていただけました。

 一流の和の料理人からそう言っていただけたことがとても嬉しかったです。

 その後,隣の知人からは「彼は食の知識はあるけど,それを発揮できる場がないから(笑)」と余計な事まで言われましたが…(笑)。

 終始和やかな雰囲気で接してくださった平野さんも料理を作る姿は真剣勝負そのものでした。

 料理が一品一品出されるたびに,一瞬ピーンと張りつめた緊張感を感じるのです。

 いただく私も全身全霊を料理に傾け,平野さんの料理に込めた思いを少しでも感じ取れるよう努力しました。


平野寿将さんの料理の世界

 今回味わった料理を御紹介します。

(加賀蓮根のすり身)
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 先程御紹介した加賀蓮根のすり身です。

 加賀蓮根はお菓子に使われているぐらい甘味の強い蓮根で,蓮根そのものの味を自慢のだしと一緒に堪能しました。

(香箱ガニの甲羅盛り)
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 香箱ガニは,北陸地方でとれる雌のズワイガニのことで,小ぶりながらカニの身,卵,カニ味噌がぎっしり詰まっていることが特徴です。

 写真左上が厚岸の雲丹,その下側には「内子(うちこ)」と呼ばれるカニ味噌,中心に白いカニの身,右上が「外子(そとこ)」と呼ばれるカニの卵で,カニ酢に合うよう彩り豊かなキュウリや食用菊も添えられています。

 カニの身や卵はそのままで飲めるほどすっきりした極上ポン酢をかけていただきました。

 雲丹は昆布や海藻を餌とするため,良質な昆布が採れる海には良質な雲丹がいることになります。

 広島に居ながら,その極上の昆布(だし)も雲丹もいただけるのですから,贅沢の極みですね。

(蕪のすり流し椀)
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 お店での正式名称は「広島の竹原市の湧水蔵囲い26年度収穫の船泊浜産天然利尻昆布がベースの蕪のすり流し椀」と長い名前となっています。

 お吸い物にすりおろした京都の蕪(かぶ)が入ったいわゆる「おろし汁」で,とてもシンプルな料理なだけに,水やだしの真価が問われることとなります。

 極められた昆布だしの旨味を直球勝負で味わえる一品でした。

(焼き白子と瀬戸内蛸の煮物)
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 備長炭で焼いた佐渡の鱈の白子と瀬戸内海で採れた蛸の煮物です。

 蛸がとてもやわらかかったのですが,これは香川県寄りの瀬戸大橋近くの海に生息する蛸だからこその食感だと教えていただきました。

 これとは別に,白子ポン酢で生の白子もいただきました。

 そしていよいよ,お店自慢の熟成魚の刺身です。

 熟成魚とは,釣った魚を「脳殺」→「放血」→「神経締め」→「氷結」といった手順で手当てした後,低温で寝かせ,釣ったばかりの魚の刺身よりも,一層香りと旨味を引き立たせた魚のことです。

(カワハギと鯛)
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 最初に72時間熟成のカワハギと58時間熟成の鯛の刺身が出されました。

 小皿には,刺身の調味料として27年継ぎ足している極上ポン酢,醤油,粗削りの塩の3種類が用意されていました。

 余分な水分は抜け,透き通ってプリプリした身になっていました。

(シマアジ)
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 こちらは五島列島で採れた30日間熟成のシマアジです。
 これ一切れで1,000円するそうです。

(クエ)
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 平野さんから,「これはねぇ,ヤバいよぉ。」と威勢よく出していただいた,長崎で採れた幻の高級魚クエの刺身です。
 そう言われると落ち着いてクエません(笑)。

(イシガキダイ 生ハムのせ)
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 22日間熟成のイシガキダイです。イベリコ豚の生ハムがのせられています。

 不思議な組み合わせに見えましたが,いただいてみるとその理由がすぐに理解できました。

 熟成したイシガキダイの刺身がまるでチーズのようにねっとりとしていて,チーズに生ハムを合わせる感覚でいただくことができるのです。

 平野さんが,カウンター越しの私の真正面で,見事な包丁さばきで切られた刺身をその都度「はい,これ食べてみて!」と自信たっぷりに出していただけたので,料理人と客との一体感が感じられました。

 御紹介した刺身のほかにも,金目鯛,ヒラマサ,カンパチなどいろんな熟成魚の刺身を味わうことができました。

 お店の奥にある魚の熟成用冷蔵庫を見せていただきました。

(熟成用冷蔵庫)
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 庫内温度は3.8℃となっていました。
 魚にきちんとした処理を施し,温度管理を行うことで,生の魚でも驚くほど日持ちさせることができるのだなと感心しました。

(源助大根・里芋・水菜の煮物)
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 こちらは,加賀野菜の源助大根と里芋・水菜の煮物です。おぼろ昆布がのせられています。

 この煮物の決め手は,やはり「だし」です。
 少々お行儀が悪いですが,平野さんにお許しを得た上で,だし汁も飲み干しました。
 でもこれは私から平野さんへの最高の敬意でもありました。

(ローストビーフと椎茸旨煮)
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 意表を突いて刺身のようなローストビーフと椎茸旨煮が出されました。

 わさびと和からしでいただきます。

 椎茸は岡山県美作市「ムサシ農園」の天然水かけ流しで作られた肉厚の椎茸で,アワビのような食感でした。そして調味料なし,水で煮ただけなのが信じられないほど旨味を強じました。

 添え野菜は「ハマボウフウ(浜防風)」と呼ばれる海岸に面した砂地に自生している珍しい植物です。

 そしていよいよシメのご飯となりました。これがサプライズでした。

(トリュフといくらの炊き込み御飯)
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 何とご飯にたっぷりのいくらと刻まれたトリュフがのせられているのです。

 これはいくら何でも文句のつけようがありません。

 あらかじめ米の中にトリュフを入れておき,米にトリュフの香りを浸み込ませておいたり,包丁で微妙に角度を変えながら刻むなど,トリュフの風味を最大限引き出すための工夫が施されています。

 また黒の秋トリュフと冬トリュフが使われており,トリュフの味の違いも楽しめました。

 さらに,山梨・甲府産の溶いた生卵をかけ,刻んだトリュフの香りを卵で閉じ込めた卵かけご飯もいただきました。

(トリュフといくらの炊き込み御飯(卵かけ))
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 お客様に今日の食事が忘れられない思い出となり,感動を味わっていただきたいという平野さんの気持ちが込められた料理でもあるのです。

 その後,小豆アイスの上に抹茶ムースがのせられたデザートも堪能しました。

 平野さんとの楽しい会話とともに,素材と技を極めた数々の美味しい料理を堪能させていただき,思い出に残る食事となりました。

 広島にお越しになられた際には,「広島の水は世界一」・「日本料理は水の料理」とおっしゃる平野寿将さんの料理を味わい,広島の味を堪能していただくのもよろしいかと思います。


熟成魚の魅力

 日本料理は,鮮度が重視され,生食が好まれる傾向にあります。

 日本人に刺身が好まれることは,その最たる例でしょう。

 ならば,「わざわざ魚を熟成させることなく,新鮮なうちに刺身で食べるとよいのでは」という考えもあるでしょう。

 その考えは正しいですし,実際私たちが刺身として食べているのは,そのほとんどが新鮮なうちに食べる刺身です。

 では手間暇かけて熟成魚にすることのメリットは何なのでしょうか。

 その一番のメリットは熟成させることでうま味成分(イノシン酸)を増加させることにあります。

 日本料理は,発酵や熟成によって「うま味」を強め,肉に代わるうまさを追及してきた料理でもあるのです。

 取ってきた魚を活け締めにすることで,なるべく新鮮な状態を継続しつつ,熟成させる(寝かせる)ことによってうま味を増加させるのが熟成魚の目指すところです。

 したがって,熟成魚には,魚を活け締めにし,保存・熟成させ,鮮度と熟成度のバランスがとれた時期を見極められる高度な技術,知識,経験や勘が求められることになります。

 熟成肉に比べ,熟成魚を売りにする料理店が少ないのも,こうした半端ないレベルの高さが1つの理由なのでしょう。

 魚が持つ本来のうま味を極限まで引き出したものが熟成魚であり,その熟成魚の刺身こそ,日本料理の特徴である「引き算の文化」を象徴する料理の1つなのです。


<関連リンク>
 「馳走啐啄一十」(広島市中区富士見町5-1 随木ビル1階)
 「hisama.net」(平野寿将さんの公式ウェブサイト)
 「Gault & Millau」(「ゴ・エ・ミヨ」)

<関連記事>
 「日本料理の特徴と主な料理1 -日本料理は引き算の文化-

2017年12月10日 (日)

日本料理の特徴と主な料理1 -日本料理は引き算の文化-

日本料理の特徴

 日本料理というと,少しかしこまった表現ですが,日常の食事から料亭の料理まで,多種多用な料理があります。

 日本料理の特徴を列挙してみますと,

(1)季節感を大切にした目で楽しむ料理であり,全体的に淡泊で繊細な味付けが中心となっている。

(2)食材の鮮度を重視し,素材の持ち味を生かした料理が多い。

(3)海に囲まれており,長く肉食禁止とされていたため,米・野菜・魚中心の食文化が形成されてきた。

(4)世界でも稀な,乳製品や動物性脂肪に頼らない食生活を送ってきたため,それに代わる良い「水」,だしなどの「うま味」,(もち)米のような粘り気のある「もちもち感」が求められる。

(5)生の魚を切って盛り付ける刺身や,昆布・鰹節・いりこなどから一瞬にして作られる「だし」など,調理には時間よりも調理人の技が問われる。

(6)刺身,生卵,生野菜など生食を好む傾向がある。

(7)温暖湿潤な気候であることから,発酵食品(日本酒・味噌・食酢・醤油・納豆・鰹節・漬物など)が数多く作られ,食生活の基本となっている。

(8)長い歴史の中で主体性がなかったために,逆に世界中の食を受け入れて同化させている。(てんぷら・カレーライス・とんかつ・パン食など。)

 以上,いろいろと挙げてみましたが,世界の料理と比べて,日本料理はかなり特殊な料理であることは間違いありません。


日本料理は「引き算の文化」

 日本料理は,よく「引き算の文化」と表現されます。

 これに対し西洋料理,インド料理,中国料理などは,様々な食材を加え,スパイスやハーブを加え,乳製品や油脂を加え,熱を加え…と「足し算の文化」であると表現されます。

 日本料理の「引き算の文化」について刺身を例に御説明すると,魚に熱を加えず生のままで,血抜きをし,余分な部位を取り除き,形を揃え,そのたった何切れかを皿にのせ,盛り付けには皿の余白を重んじ,スパイスなどで味付けせず醤油や塩などシンプルな調味料のみで,素材そのものの味を楽しむ…というように常に「引く」ことが良しとされているのです。

(刺身と調味料)
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 写真の刺身は熟成させたカワハギと鯛の刺身です。
 調味料は左からポン酢,醤油,粗削りの塩で,とてもシンプルな構成です。

 煮物においても,昆布や鰹節,いりこなどからだしを引き,素材そのものの味をいかに引き出すかが問われます。

 日本酒も良い例です。

 特に純米大吟醸酒などは,原材料は米,米麹,水だけで,アルコールすら添加されません。
 酒米は雑味をなくすために丸い玉のようになるまで削られますし,米や水そのものの味や杜氏の技術力で日本酒の出来栄えが決まってしまいます。

 このように,日本料理には必要以上に手を加えないこと,本当に必要なものだけを用いること,そして素材そのものの味を引き出すことを良しとする「引き算の文化」があるのです。

 この文化は,日本においしい水が豊富にあるからこそ可能だったとも言えます。


まとめ

 現在,世界各国の様々な料理が流入している日本ですが,それらの料理によって日本人の食の価値観,嗜好,好まれる食感(テクスチャ)などまで大きく変化させられるわけではないと思います。

 それゆえに,こうした日本料理の基本的な特徴を理解しておけば,日本料理そのものだけでなく,日本の食に関係するあらゆる分野・業種で,研究やビジネスのヒントとなることでしょう。


<参考文献>
 石毛直道・鄭大聲 編「食文化入門」講談社
 岡田 哲「食の文化を知る事典」東京堂出版

2017年12月 3日 (日)

ベトナム料理の特徴と主な料理 -バインセオ・ブンチャー・バインベオ・バインフラン・フォー-

ベトナム料理の特徴

 東南アジア,インドシナ半島東部に位置するベトナムは,地理的に大国の中国やインドに近く,中国やフランスそしてアメリカに統治されてきた歴史も有しています。

 そのため,食文化についても,東南アジアの伝統的な料理(「ニョクマム」などの魚醤,パクチーをはじめとする各種ハーブ類,ココナッツミルクなどを用いた料理)を守りつつも,中国料理,フランス料理,アメリカ料理そしてインド料理(香辛料などを多用する料理)の影響も強く受けたものとなっています。

 中国や欧米の食文化の影響を受けていることもあり,食の制約(タブー)はゆるやかです。

 稲作が盛んなことから米食が中心で,米はご飯だけでなく,米粉を加工したライスヌードル(フォーなど)やライスペーパー(生春巻など)としてもよく食べられています。

 また,海岸線が長いので海の幸にも恵まれています。

 味で言えば,ベトナム料理は,タイ料理の特徴である5つの味覚(辛味,酸味,甘味,塩味,旨味)が複雑に絡み合った味と同じ傾向にあると言えるでしょう。

 ただ,タイ料理ほどそれぞれの味が強く主張していません。

 また,中国料理ほど油を多く使わず,フランス料理の洗練された調理法も取り入れられているため,比較的マイルドな味付けになっており,日本人にも食べやすい料理が多いと言えます。


バインセオ

 広島に本格的なベトナム料理店がオープンしたとの情報を得たので,訪問してみました。

 アラカルトでの注文だったので,ベトナムを代表する料理を選んでみました。

(バインセオとライスペーパー)
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 ベトナムの代表的な料理の1つ「バインセオ」です。

 もやし,豚肉,海老などを一緒に炒め,炒めた具をオムレツのように皮で包んだ料理です。

 皮は米粉・ココナッツミルク・ターメリックなどを混ぜた生地を薄く伸ばして焼いたものです。

 お店の方から,「ライスペーパーにバインセオをのせ,パクチーやレタスなどの野菜を添えて,それらを包み,つけダレをつけて召し上がってみてください。」と食べ方を教えていただきました。

(バインセオとヌクチャム)
Photo_2

 つけダレはニョクマム,酢,ニンニク,レモンなどで作ったタレに人参や大根の千切りを加えたもので,「ヌクチャム」と呼ばれます。

 日本の「紅白なます」とよく似た味がしました。

 弾力のあるライスペーパー,パリパリの皮,シャキシャキのもやし,豚肉や海老の旨味,アクセントとなるパクチーを1つにまとめ,甘酸っぱいヌクチャムをつけていただくと,様々な味や食感を一度に楽しむことができました。

 バインセオは,クレープやお好み焼とよく似ていますが,この発想は,フランスのそば粉や小麦粉を使ったガレットやクレープにも相通じるところがあるように思いました。


ブンチャー

 数あるベトナム料理の中で,ぜひ一度味わってみたいと思っていた料理が「ブンチャー」です。

 ベトナムを旅行されたKhaawさんのブログ記事を読んで知りました。

 お店のメニューにブンチャーがあったのですが,平日のランチセットだけの料理となっていたため,訪問した日曜日のメニューにはありませんでした。

 でも,そこで簡単に諦めないのが私流(笑)。

 ブンチャーを味わってみたい旨をお店の方にお話しすると,こころよく応じてくださいました。

(ブンチャー)
Photo_3

 大皿にボリュームたっぷりのブンチャーが用意されました。

 「ブン」はそうめんのような細い米粉麺(ビーフン),「チャー」は豚肉という意味だそうです。

 どっさり盛られたそうめんのようなブン,その上には炭火焼きの豚バラ肉がのせられています。

 さらに挽き肉・人参・春雨などの具が入った揚げ春巻や,パクチー・レタスなどの野菜も皿に盛られていました。

 そしてよく見ると,つけダレの甘酸っぱいヌクチャムの中にも炭火焼きのつくねが3つも入っていました。

(ブンチャー(ヌクチャム))
Photo_4

 魚醤で味を調えた汁気の多い紅白なますのようなタレの中に,ビーフン,焼肉,つくね,野菜などを入れ,つけ麺としていただくイメージです。

 日本のそうめんのような食べ方ですが,肉があるので,もっと豪快でボリュームがあります。

 お店の方が,このブンチャーは,アメリカのオバマ前大統領がベトナムで召し上がったものと同じものだと自慢しておられました。

 韓国の「プデチゲ」やインドネシアの「ナシゴレン」・「ミーゴレン」など,少し前までマイナーな存在だった海外の料理が,日本で徐々に知られ,人気を得るようになった事例は多々ありますが,この「ブンチャー」も同様に今後日本で紹介され,ヒットする可能性は十分にあるように思いました。


バインベオ

 「バインベオ」は,米粉を蒸した餅料理・餅菓子のことで,ベトナム中央部に位置するフエの宮廷料理の1つです。

(バインベオ)
Photo_5

 米粉を水で溶いた生地を型に流し,蒸して餅のように固められています。

 上にのせられた黄色いものは,小豆に似た豆を蒸したものだそうです。

 仕上げに餅の周りにココナッツミルクがかけられています。

 もっちりと仕上がった米粉の餅には,ほんのりと甘味が感じられ,ココナッツミルクや豆と一緒にいただくと,より美味しくいただけました。

 今回のバインベオは甘いデザートとして用意されていましたが,海老や豚肉をのせて料理の前菜やおやつとして食べられることも多いようです。

 ココナッツミルクは東南アジアの代表的な食材ですが,米粉を使って「蒸す」という調理法は中国から受けた調理法だと思います。


バインフラン(ベトナム風プリン)

 デザートは一品だけで済ませる予定でしたが,お店の方からいろんなお話を伺ううちに,プリンが一押しだと伺ったので,追加でいただくことにしました。

 ベトナムではプリンのことを「バインフラン」と呼ばれているようです。

(バインフラン(ベトナム風プリン))
Photo_6

 卵の白身は使わず,黄身だけで作られたカスタードプリンなので,とても濃厚な,これぞカスタードプリンの王道と言えるような味がしました。

 残った白身は,まかないで出されているという涙ぐましいお話まで伺いました(笑)。

 併せて,ベトナムでプリンがよく食べられているのは,フランスがベトナムを統治していた時代に,フランスのお菓子としてもたらされたからだと教えていただきました。

 フランス料理には,卵や牛乳などの液体を型に入れて蒸し,プリンのように仕上げた「フラン」と呼ばれる料理・菓子があります。

 今回御紹介したベトナムのお菓子「バインフラン」の「フラン」も,このフランスの「フラン」と関連性があると思います。

 では頭に付く「バイン」はどういう意味でしょうか。

 次に,この「バイン」について少し整理しておきたいと思います。


ベトナム料理には「バイン」という名の料理・菓子が多い

 ベトナム料理には,今回御紹介した「バインセオ」,「バインベオ」,「バインフラン」をはじめ,「バインミー」(バゲット(フランスパン)のベトナム風サンド),「バインクオン」(ベトナム風水餃子),「バインスー」(シュークリーム)など,頭に「バイン」と付く料理やお菓子が数多く存在します。

 「バイン(bánh)~」はベトナム語で「餅,粉もの,お菓子」といった意味があり,漢字では「餅」と表現されます。

 これは中国の「餅(ビン)」という言葉に由来しているようです。

 中国では「麺(ミエン)」は穀物の粉の総称,「餅(ビン)」はその「麺」の中でも小麦粉食品を指す言葉として用いられています。

 その意味が派生して,ベトナムでは「餅,粉もの,お菓子」に「バイン」が使われるようになったのでしょう。

 ただ,ベトナムでの「粉もの」は小麦粉よりは米粉が中心となります。

 小麦粉ではなく米粉が中心となっているのは,ベトナムの米食中心の食事文化が反映されているからでしょう。

 こうして「バイン」という言葉は,ベトナムの米粉を中心とする様々な料理や菓子を表現する言葉として広く用いられるようになったのです。


食文化のオリジナリティとは

 中国での元来の意味からかけ離れてしまっている現象は興味深いですが,それは日本でもみられます。

 日本では「麺」と言えば(穀物の粉ではなく)粉ものを細長く加工したそばやうどん,ラーメンなどを言いますし,「餅」と言えば(小麦粉ではなく)もち米から作られるお餅を言うことが一般的ですよね。

 だから日本から見れば,逆に中国での意味の方が間違っているように思えるわけです(笑)。

 こうした現象がみられる一方で,当然ながら,中国での意味と同じ意味で用いられているベトナム料理もあります。

 その代表例が「フォー」(米粉の麺)です。

(フォー)
Photo_9

 中国では米粉の麺を「粉」と表現しますが,フォーは,この「粉」のベトナム語での発音「ファン」が変化して「フォー」と呼ばれるようになったという説が有力です。

 今回御紹介した「ブンチャー」の「ブン」も「ビーフン(米粉)」の「粉」からそう呼ばれるようになったのでしょう。


 他の地域や国の食材,調理法,言語,文化などを受け入れる際には,一旦その地域や国で都合がよいように組み換え・加工がなされた上で受け入れられ,オリジナリティを持たせていることがよくわかる事例だと思います。


<関連記事>
 「ベトナムのつけ麺 ブンチャー Bun cha; Vietnamese noodle with pork soup
 (Khaawさんのブログ「-彩雲たなびく天使の街/City of angel under cloud iridescence-」)

<関連リンク>
 「HANOI PHO(ハノイ・フォー)」(広島市中区白島北町3-1 河瀬ビル101)

<参考文献>
 石毛直道『世界の食べ物 食の文化地理』講談社学術文庫
 沼野恭子編『世界を食べよう!東京外国語大学の世界料理』東京外国語大学出版会

2017年9月17日 (日)

イギリス料理の特徴と主な料理4 -ヴィクトリアケーキ-

 イギリスのヴィクトリア女王(即位1837~1901年)は,イギリスが工業化の最先進国となり,政治・経済・社会の面で繁栄期となった時代(「パクス・ブリタニカ(イギリスの平和)」)を象徴する女王です。

 1837年,18歳にして大英帝国の女王に即位しました。

(若き日のヴィクトリア女王)
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(谷川稔・北原敦・鈴木健夫・村岡健次『世界の歴史22 近代ヨーロッパの情熱と苦悩』中公文庫から引用)

 初々しいヴィクトリア女王です。

 イギリスで有名なバッキンガム宮殿は,このヴィクトリア女王が即位して以降,イギリス王室の公式な宮殿となりました。

 即位後,64年の長きにわたってイギリスの王座に君臨し,政治に深く関わりました。

 そして孫にドイツ皇帝ヴィルヘルム2世(長女の子)やロシア皇后アレクサンドラ(ニコライ2世妃・次女の子)をもつなど,婚姻を通じてヨーロッパ王室のゴットマザーとなりました。

(ヴィクトリア女王)
Photo_3
(玉村豊男『ロンドン 旅の雑学ノート』新潮文庫から引用)

 「こわそうな顔をしている」…って玉村さん(笑)。
 でも…確かにこの風格と凄みのある女王に抵抗しようという人や国はなかったことでしょう(笑)。

 ヴィクトリア女王と夫のアルバート公(現在のドイツ出身)は,ともに勤勉,真面目で,家族団らんを重視したことから,上流階級ではなく,むしろ中流階級の家庭像の模範を世に示したと言われています。

 そんなヴィクトリア女王の名を冠したイギリスのケーキがあります。

 その名も「ヴィクトリアケーキ」です。

(ヴィクトリアケーキ)
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 小麦粉,バター,卵,砂糖,ベーキングパウダーなどの材料で焼き上げたシンプルなケーキ生地に,ラズベリージャムをはさんで作られるケーキで,サンドイッチのようにジャムをはさむことから「ヴィクトリアサンドイッチケーキ」とも呼ばれています。

 ベーキングパウダーが使われているので,ふわふわ,サクサクした食感となっています。

 シンプルな味のケーキ生地なので,中の甘酸っぱいラズベリージャムとの相性が抜群です。

 確かに厚切りのジャムサンドという表現がぴったりです。

 このヴィクトリアケーキ,一説によると,最愛の夫アルバート公を亡くし,悲しみのまっただ中にあったヴィクトリア女王をなぐさめ,元気付けるためにティーパーティーで出されたのが始まりで,ヴィクトリア女王がとても気に入られたことから女王の名前が付けられたとか。

 ちなみに,イギリスはアフタヌーン・ティーが有名ですが,この習慣はヴィクトリア女王の時代に始まったものです。

 こうしたお話を踏まえて,もう一度ヴィクトリア女王の肖像画を御覧ください。

 一見こわそうにも見えますが(笑),その奥に,最愛の夫を亡くし,その後の生涯を喪服で過ごしたヴィクトリア女王の優しさ,さみしさ,ひたむきさ,包容力までもが表現されているように感じられないでしょうか。

 このような言い伝えのあるヴィクトリアケーキは,その後またたく間に人々に広まり,今もなおイギリスのティータイムに欠かせない定番のお菓子となっています。


<参考文献>
 谷川稔・北原敦・鈴木健夫・村岡健次『世界の歴史22 近代ヨーロッパの情熱と苦悩』中公文庫
 『詳説 世界史図録』山川出版社
 玉村豊男『ロンドン 旅の雑学ノート』新潮文庫
 沼野恭子編『世界を食べよう!東京外国語大学の世界料理』東京外国語大学出版会

<関連サイト>
 「パディントン」(広島県福山市沖野上町5-6-12)
 「サンドイッチケーキのレシピ」(NHK教育テレビ「グレーテルのかまど」ウェブサイト)

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