小田巻蒸し(おだまきむし)-小田巻蒸しの由来と「道頓堀今井」の小田巻むし-
「小田巻蒸し」について
今回は寒い季節にぴったりの料理「小田巻蒸し(おだまきむし)」を御紹介します。
小田巻蒸しは,簡単に言えば「うどん入り茶碗蒸し」です。
大阪・船場(せんば)が発祥とされています。
「漫画版 朝日新聞 記憶の食」でも,寒い冬の夜に受験勉強をする娘のために,お母さんが夜食に「小田巻蒸し」を作って食べさせるシーンがあります。
※長崎のお話なので,長崎弁での会話となっています。
(記憶の食「小田巻蒸し」小田巻蒸しの夜食)
(朝日新聞社・フジヤマヒロノブ「漫画版 朝日新聞 記憶の食」少年画報社 p46の一部を引用)
娘:「今晩は寒か…(ハァーッ,ハァーッ)」
母:「京子」
娘:「なに?」
母:「これ(小田巻蒸し)食べんね?」
(記憶の食「小田巻蒸し」小田巻蒸しの作り方)
(朝日新聞社・フジヤマヒロノブ「漫画版 朝日新聞 記憶の食」少年画報社 p47の一部を引用)
娘:「これなんね!? 大きな茶碗蒸し?」
母:「小田巻蒸しというんだよ」
娘:「小田巻蒸し?」
母:「鶏肉にニンジン」,「シイタケと青ねぎをきざんで」,「うどんの入った丼に生地を流し込んで蒸すの」
茶碗蒸しだけでも嬉しいのに,中にうどんまで入っているとは,寒い季節にぴったりの料理です。
「小田巻蒸し」と「苧環(おだまき)」
「小田巻蒸し」の「小田巻」は「苧環(おだまき)」の当て字だと言われています。
「苧環」は紡いだ麻糸を丸く巻いたもので,かつてはその巻き糸から織物「倭文(しつ)」が作られました。
これに関して「伊勢物語」に次のような古歌があります。
「いにしへの しづのおだまき 繰りかへし 昔を今になすよしもがな」
現代語訳では「倭文の苧環(しづのおだまき・糸巻き)のように,もう一度(楽しかった昔に)時を巻き戻すことができたら」という意味になります。
また,その古歌を踏まえて静御前(しずかごぜん)は,
「しづやしづ しづのおだまき 繰りかへし 昔を今になすよしもがな」
という歌を詠んでいますが,これは現代語訳で「源義経が私を「しづ(静)」と呼んでくれたようにもう一度(楽しかった昔に)時を巻き戻すことができたら」という意味が込められています。
このように「おだまき」はグルグル巻かれた糸巻きのことで,歌の世界では,その「おだまき」に昔の世界までも巻き戻してほしいという願いが込められたようです。
「小田巻(蒸し)」の場合は,この「倭文の苧環(しづのおだまき)」のように,丼のうどんがグルグル巻きに見えたことに由来するのでしょう。
かつては大阪を中心に多くのお店で出されていた「小田巻蒸し」。
いつか味わってみたい,それが無理なら自分で作ってみたいという思いが,おだまきのように繰り返すのでした。
小田巻蒸し
大阪市中央区道頓堀にやってきました。
道頓堀筋を歩いていると,昔の道頓堀を彷彿とさせる,何とも味わい深い小路がありました。
(浮世小路)
「一寸法師」の物語も,ここから始まったようです。
「今晩は寒か…」と思いつつ,ふと隣のお店の案内板を見ると…。
(小田巻むしの案内)
「小田巻むし!」
今月(11月)のおすすめ品として「小田巻むし」の案内がありました。
「昭和30年頃までは,この季節になると浪速の町のあちこちのうどん屋さんの店先では「小田巻むし」が入った大きなセイロが湯気をシュンシュンと上げていたそうです。「小田巻むし」は簡単に言うとうどんの入った茶碗むしです。蒸し上がるのに15分程かかりますが,何かとせわしない時代に一杯やりながら,ゆっくりと小田巻むしを待つのもおつなものでは?」
なるほど。
やっと小田巻蒸しに出会えました。この感動を私も歌で一句。
「これやこれ めしのおだまき あったがな なにわの味やで 知らんけど」
私が通りすがりのお店に入ることは珍しいのですが,「小田巻むし」をむしすることはできず,巻き込まれるようにお店に入りました。
(道頓堀今井(店舗))
のれんをくぐり…
私:「邪魔すんで~」
店員:「邪魔すんやったら帰ってや~」
私:「あいよ~って,なんでやねんな!」
ということはなく(笑),実際はとても親切で丁寧な応対・サービスをしていただけるお店でした。
道頓堀は人が多くとても賑やかな街ですが,店内は落ち着いた雰囲気で,ゆっくり過ごすことができました。
「小田巻むし(お寿司付き)」を注文し,お茶を一杯やりながらゆっくり待ちました。
しばらくして,私の席に小田巻むしが運ばれてきました。
(小田巻むし)
見た目は大きな茶碗蒸しです。
具は,茶碗蒸しだと中に入っていますが,この小田巻むしは見栄えよく上側に盛り付けられています。
(小田巻むしと鯛笹まきずし)
鯛の切り身と山椒の葉をのせた笹まきずしとセットでいただきました。
茶碗蒸しを崩すのがもったいないと思いつつ,箸で中のうどんを取り出しました。
(小田巻むしのうどん)
太めのもっちりとした,熱々のうどんでした。
「うん,これは確かに温まる。寒い季節にぴったりの料理だ」と思いました。
(小田巻むしの具とうどん)
こうしてみると,中心の具がぐるっと一回転するように盛られ,中のうどんも糸のようにまとめられているので,確かに糸巻き(おだまき)のように見えます。
具は鶏肉,サワラの切り身,アナゴ,かまぼこ,椎茸,ぎんなん,みつば,柚子の皮で,1つ1つが大きくて食べ応えがありました。
そして旨味と香りが凝縮されただし汁もたっぷり入っていました。
心も体も温まる美味しいうどん料理でした。
<関連サイト>
「道頓堀今井」(大阪市中央区道頓堀一丁目7-22)
「道頓堀筋・浮世小路」(道頓堀商店会)
<参考文献>
朝日新聞社・フジヤマヒロノブ「漫画版 朝日新聞 記憶の食」少年画報社
古川のり子「昔ばなしの謎 あの世とこの世の神話学」角川ソフィア文庫
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