2025年7月13日 (日)

秋田の食文化探訪2 -比内地鶏・ハタハタ・がっこ・あねっこ漬け・ばっけ・きりたんぽ鍋・秋田産枝豆のコロッケ・秋田産りんごジュース-

 2025年3月7日、山形県鶴岡市の鶴岡駅から「特急いなほ」に乗り、秋田県秋田市を訪問しました。

(特急いなほ7号・秋田駅到着)
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 秋田駅に到着した「特急いなほ7号」です。

 秋田駅から秋田市の繁華街「川反(かわばた)通り」沿いにある郷土料理店「お多福」へ行き、秋田の郷土料理を堪能することとしました。

 こちらのお店は、約7年前に一度訪問したことがあり、その際に店主さんから秋田の郷土料理の話を中心にいろんなお話を伺うことができ、楽しいひとときを過ごした思い出があります。

 そのため、また秋田市へ行くことがあればぜひ再訪したいと思っていたのですが、それが今回実現しました。

 予約時間を迎え、少し緊張気味にお店に入りました。

(「お多福」店舗)
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 前回と同様、カウンター席に案内していただきました。

 店主さんと板前さんを前に、「実は約7年前にも来たことがあるのですが、その時もお二人とお話しさせていただきました。またお会いできて嬉しいです」とお話しすると、店主さんが笑いながら「ずっとこのメンバーですから」とおっしゃいました。

 緊張がほぐれ、また同じ雰囲気で食事ができることを幸せに思いつつ、料理をいただきました。

 それでは、今回味わった秋田の郷土料理を御紹介します。


トマトジュース

 飲み物として、トマトジュースをいただきました。

 トマトジュースはこどもの頃から苦手意識を持っていたのですが、塩無添加ということで注文してみました。

(トマトジュース(塩無添加))
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 「あっ、これなら甘くて美味しい」

 トマトの旨みと甘みが凝縮された濃厚なトマトジュースでした。


お通し三種

 「お通し」を御用意いただきました。

(お通し三種)
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 今回のお通しは「魚のマヨネーズ和え」、「なめ茸」、「糸こんにゃくのきんぴら」でした。

 糸こんにゃくのきんぴらには、魚卵がまぶされており、美味しくいただけました。


お造り盛り合わせ

 続いて、お造り(刺身)が用意されました。

(お造り盛り合わせ)
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 写真奥がソイ、手前右側がヒラメ(昆布漬け)、手前左側がシマアジです。

 ソイは北海道や東北の日本海側で多く漁獲される、高級白身魚です。

 脂がのって、プリプリとした食感の魚でした。

 ヒラメは昆布漬けで、淡白な味わいの中に、昆布と白身の旨みを感じました。

 シマアジは肉厚で、噛みしめるほどに旨みが口の中いっぱいに溶け出しました。


比内地鶏手羽焼き

 「比内地鶏」は、秋田県北部・比内地方で飼育されてきた「比内鶏」(国の天然記念物)にロードアイランドをかけ合わせた鶏で、日本三大地鶏(比内地鶏、名古屋コーチン、薩摩地鶏)の1つです。

 その比内地鶏の手羽焼きが提供されました。

(比内地鶏手羽焼き)
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 手羽先を塩こしょうで焼き、レモンを添えたシンプルな料理です。

 表面の皮がパリッとして、噛みしめると中の肉汁が飛び出してきました。

 肉は水っぽさがなく、弾力があって、旨みとコクが凝縮されていました。

 シンプルな料理・調味ほど、素材の良し悪しが影響しますが、この比内地鶏には余計な調理・調味は要らないと思いました。


ハタハタの塩焼き

 秋田を代表する食材の1つが「ハタハタ(鰰)」です。

 秋田県の県魚にも指定されています。

 そのハタハタの塩焼きを提供していただきました。

(ハタハタの塩焼き)
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 板前さんが丁寧に焼いてくださった一品です。

 その板前さんから「よかったら、こちらで骨をお取りしましょうか」とお話があったので、興味津々でお願いしました。

 骨抜きの作業をカウンター越しに見ると、菜箸でハタハタの胴体をお腹からしっぽに向けて軽くはさみ続け、徐々に身から骨を外しておられました。
 
 最後に中骨を手に取り、その中骨をスルスルと横にスライドさせると、ものの見事に中骨だけが取り除かれました。

(ハタハタの塩焼き(骨抜き))
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 長い菜箸を使いこなし、身を崩すことなく、中の骨だけを取り除く板前さんの姿に、うっとりと見とれてしまいました。

 しばらくしてハタと我に返り、ハタハタをいただきました。

 ハタハタは、その見た目よりはるかに脂ののった魚で、それが大きな魅力です。

 大根おろしが添えられているのも、脂がのった魚をさっぱりといただくためです。

 ハタハタ漁は、今シーズン(2024年冬から2025年春まで)記録的な不漁となり、店主さんも嘆いておられました。

 昔は、ハタハタの卵(ブリコ)が海岸を埋め尽くすほどたくさん獲れたそうですが、温暖化の影響で海水温が高くなり、ハタハタの産卵や成長にも影響が及んでいるようです。

 そうした中でも、ハタハタを御用意いただいたことに感謝です。


がっこ盛り合わせ

 お店の看板メニューの1つ、「がっこ(漬物)」です。

 秋田では漬物のことを「がっこ」と呼びます。

 この言い方は「香の物(=漬物)」を意味する「こうこ」や、「雅香」に由来するようです(その他諸説あります)。

 漬物が売りの郷土料理店というのも珍しいですが、美味しい「がっこ」が食べられるお店として有名です。

(がっこ盛り合わせ)
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 写真右上が「やたら漬け」、それから時計回りに「いぶりがっこ」、「さっと干し大根(柿漬け)」、「大根の赤紫蘇漬け」です。

 「やたら漬け」は、ありあわせの野菜を「やたら」めったら塩漬けし、味噌や醤油で調味した漬物です。

 「いぶりがっこ」は、大根をいったん燻(いぶ)し、その燻した野菜を米ぬかで漬けこんだ漬物です。

 大根を薫製にする理由ついては、「生のままだと大根が辛いため」とか、「漬物にする大根が寒さで凍ってしまうのを防ぐため」とか、「囲炉裏の上でいったん薫製にすると美味しかったため」といったものが挙げられています。

 私が最も納得している理由は、「冬場に大根を置いておくと中の水分が凍ってしまう(使い物にならなくなる)ので、家の囲炉裏で大根を燻製して水分を抜き、保存性を高めるため」というものです。

 今回御用意いただいた「いぶりがっこ」は、燻製と相性が良いクリームチーズがはさまれていました。

 「さっと干し大根(柿漬け)」は,さっと軽く干した大根に柿(酢)を加えて漬けたものです。

 「大根の赤紫蘇漬け」は、大根を赤紫蘇で漬けたもので、きれいなピンク色に仕上がっていました。


あねっこ漬け

 「あねっこ漬け」は、きゅうりや大根などの漬物を刻み、梅酢で色をつけたもち米と混ぜ合わせた漬物で、その見た目や食感が初々しい娘さんを想像させることから名付けられた漬物です。

(あねっこ漬け)
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 もち米で漬けられているので、ほんのり甘く、漬物というよりは「もち米入りの野菜料理」という印象を持ちました。


天ぷら(ばっけ・タラの芽)

 秋田の様々な「がっこ」を味わった後に、天ぷらが用意されました。

(天ぷら(ばっけ・タラの芽))
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 「ばっけ(ふきのとう)」と「タラの芽」の天ぷらです。

 いずれも春の訪れを告げる野菜です。

 ふきのとうは、先に訪問した山形県鶴岡市でも「ばんけ」と呼ばれ、甘い味噌と混ぜ合わせた「ばんけ味噌」をはじめとする料理で親しまれています。


きりたんぽ鍋

 続いて、秋田名物であり、このお店の看板料理でもある「きりたんぽ鍋」を御用意いただきました。

 「きりたんぽ」の語源は、粗くつぶしたご飯を棒に巻き付けて焼いた「たんぽ」を切って鍋に入れたことに由来します。

(きりたんぽ鍋)
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 写真手前がヒラタケ、中心の緑色の野菜がセリ、右上が白ねぎ、左上がセリの根です。

 セリやセリの根は、シャキシャキした食感と香りの良さに特長があり、鍋をはじめとする煮込み料理に最適な野菜です。

 東北地方の料理でよく使用される野菜です。

(きりたんぽ鍋(きりたんぽ))
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 醤油仕立ての具だくさん鍋で、食べ進めると、中にきりたんぽ、比内地鶏、糸こんにゃくが入っていました。

 きりたんぽは、焼いたごはんの香ばしさと、鍋のだし汁をたっぷり吸ったもちもち感を楽しむことができました。


滝川豆腐

 「滝川豆腐」は、豆腐を「ところてん突き」で押し出して、細長く仕上げた豆腐です。

(滝川豆腐)
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 全国的にみられる料理ですが、このお店の看板メニューの1つです。

(滝川豆腐(崩した様子))
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 生姜醤油でいただきました。

 食べやすく、つるんとしたのどごしの豆腐麺でした。


秋田産枝豆のコロッケ

 もう少し食べられると思い、板前さんにおすすめを聞いてみました。

 すると板前さんから「秋田産枝豆のコロッケはいかがでしょう」と御提案があったので、私は「あ、それをお願いします」と注文しました。

 秋田産の枝豆。

 鶴岡で「だだちゃ豆(※)」と呼ばれる枝豆があることを知ったのですが、「秋田では「だだちゃ豆」とは呼ばないのだろうな」と思いつつ、出来上がりを待ちました。
 ※「だだちゃ」は鶴岡の方言で「お父さん」という意味

 しばらくして、「はい、枝豆コロッケです」と料理が提供されました。

 「えっ!」

(秋田産枝豆のコロッケ)
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 ソーセージのような形をしたコロッケです。

 「枝豆の揚げ物」と呼んだ方がいいような一品です。

 板前さんが笑顔で「イメージと違うでしょ?」とおっしゃったので、「確かに…」とお答えしました。

 私はてっきり、ジャガイモと枝豆で作った小判形のコロッケが出てくるものと思っていました。

(秋田産枝豆のコロッケ(枝豆))
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 すりつぶした枝豆に海老のすり身を混ぜ合わせ、きめ細かいパン粉をまぶして油で揚げたコロッケです。

 枝豆のさわやかな風味と海老の旨みを堪能しました。

 1つ1つ、きめ細やかで丁寧な調理をされる板前さんらしさが表現された一品でした。


秋田産りんごジュース

 食事を終え、店主さん、板前さん、そしてカウンターの常連さんと一緒にいろんな話で盛り上がりました。

(秋田産りんごジュース)
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 お酒に弱い私は、無添加の秋田産りんごジュースやウーロン茶をいただきながら、会話を楽しみました。
 (アルコールを飲まない方が陽気でテンションが高いのです…)


まとめ

 店主さんとは、秋田の食文化だけでなく、旅行の話や飛行機(マイル)の話、さらに釣りの話などでも盛り上がりました。

 川に棲むヤマメが海へ出て、成長して再び川に戻ってくるとサクラマスとなるのですが、このサクラマスは警戒心が強く、釣り人が自然と一体化するぐらいでないと釣れないという話になりました。

 店主さんがこの話をされた時、私は「まさに「釣りキチ三平」の「石化け」じゃないですか!」とお応えしました。

 秋田県出身の漫画家・矢口高雄さんの漫画「釣りキチ三平」で、「石化け」と呼ばれる釣法が紹介されています。

 この釣法は、釣り人が渓流の石や岩と一体化するぐらい存在感を無くすことで魚の警戒心を取り除いて魚を釣る方法を言います。

 この話を地元秋田の方なら御存知ではないかと思ってお応えしたのですが、予想どおり皆さんも「釣りキチ三平」や「石化け」の話を御存知でした。

 板前さんとは、板前さんが休暇を利用し、(雪のないところを求めて、私の地元)広島県沿岸部へ来られた時の話で盛り上がりました。

 閉店時刻を過ぎても話が尽きることなく、前回の訪問時と同様に、アットホームでとても楽しいひとときを過ごすことができました。

 夜も更けてきたので、おいとますることにしました。

 会計を済ませ、女性の店員さんにお店の外までお見送りいただいた時、雪が降っていました。

 夜空を見上げた店員さんがぽつり、「なごり雪が舞ってます」とおっしゃいました。

 お店で楽しいひとときを過ごし、名残惜しく思っていた私は、その言葉が心に沁みました。

 時は3月、秋田ももうすぐ春。

 「♪春になれば 氷(すが)こもとけて どじょっこだの 鮒っこだの 夜が明けたと思うべな」
 (童謡「どじょっこ ふなっこ」)

 「またよろしくお願いします」とお礼申し上げ、お店を後にしました。


<関連サイト>
 「お多福」(秋田市大町四丁目2-25)

<関連記事>
 「秋田の食文化探訪1 -がっこ・なた漬け・きりたんぽ鍋・くじらかやき-

2025年7月 6日 (日)

山形の食文化の特徴4 -あんだま・いとこ煮・むしたまご・しそ巻き・いちじく甘露煮・笹巻き・鶴岡の笹巻きと東アジア・東南アジアの食文化-

 山形県鶴岡市は、その風土や歴史に育まれた豊かな食文化が認められ、2014年12月1日、日本で初めて「ユネスコ食文化創造都市」に認定された街です。

 そして、同市は日本の学校給食発祥の地でもあります。

 そんな豊かな食文化に恵まれた鶴岡市で見つけた、鶴岡の伝統料理・郷土料理(菓子)をいくつか御紹介したいと思います。


あんだま・いとこ煮

 羽黒山と鶴岡市街地を結ぶ「羽黒街道(山形県道47号)」沿いを歩いていると、和菓子屋がありました。

(田舎の餅や「謹栄堂」)
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 田舎の餅や「謹栄堂(きんえいどう)」です。

 どんなお菓子があるのかとお店に近づいてみると…

(謹栄堂のお菓子)
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 絹のまち鶴岡の「絹入りだんご」、「いとこ煮」、「むしたまご」、冬に食べる「水ようかん」。

 「水ようかん」を夏ではなく冬に食べる風習は、北陸地方(福井県・石川県など)でみられるのですが、鶴岡市にも同様の風習があることは1つの発見でした。

 また、鶴岡が「絹のまち(鶴岡シルクタウン)」として有名なことも知りました。

 地元・鶴岡ならではのお菓子を求めて、店内にお邪魔しました。

 店内に「あんだま」の販売コーナーがありました。

(あんだまの販売コーナー)
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 「鶴岡まつりの風物詩」
 「昔なつかしい、やさしい味」
 「屋台スイーツ」

 何やらワクワクするお菓子です。

 お店の人にお話を伺うと、昔からお祭りの時に食べられてきたお菓子とのことでした。

 この「あんだま」と、鶴岡のあずき菓子「いとこ煮」を購入しました。

(あんだま・いとこ煮)
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 「あんだま」のパックを開けてみました。

(あんだま)
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 一瞬「たこ焼き」かと思いました(笑)
 (つまようじがさしてあるところまでそっくり!)

 たこ焼きを食べる感覚でいただきました。

(あんだま(あんこ))
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 小麦粉生地に粒あんを入れて、たこ焼きのように球形に焼いた郷土菓子です。

 お祭りの時、屋台でたこ焼きを焼くかたわらで、タコの代わりに粒あんを入れて「おやつ」として提供されたのがはじまりではないかと思います。

 お手頃価格なのに、中にあんこがたっぷり入っていました。

 続いて、「いとこ煮」を開けてみましょう。

(いとこ煮(謹栄堂))
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 「いとこ煮」と言えば、小豆とカボチャを煮た料理がよく知られていますが、鶴岡では小豆ともち米を一緒に甘く炊いたものを言います。

 ゆるい赤飯のような仕上がりになっています。

(いとこ煮(ふろむ亭))
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 こちらは、「謹栄堂」近くの郷土料理店「ふろむ亭」の「いとこ煮」です。

 おはぎを崩したような仕上がりになっています。

 ふろむ亭の店主さんから「作る家庭・お店によって違いがある」と伺っていましたが、確かに小豆ともち米の割合、炊き方の程度、水分、甘さなどに違いがあることがわかりました。

 ちなみに、全国で広く「いとこ煮」と呼ばれている「小豆とかぼちゃの煮物」を鶴岡では何と呼ばれているのか気になるところですが、こちらは「冬至かぼちゃ」と呼ばれています。


むしたまご

 「むしたまご」は、溶き卵に砂糖を加えて蒸し固めた鶴岡のお菓子です。

(蒸し玉子)
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 (鶴岡食文化創造都市推進協議会「つるおかおうち御膳」(ウェブサイト)を一部引用)

 卵と砂糖以外に、牛乳や「甘だれ(砂糖・薄口醬油・みりん)」を加えられたものもあります。

 お店の「むしたまご」と書かれた短冊を見て、私は一瞬「虫たまご」というお菓子があるのかと勘違いしてしまいました(笑)


JA鶴岡ファーマーズマーケット「もんとあ~る」

 食材・食文化に富んだ鶴岡には、地元ならではの料理・お菓子が「もっとあ~る」のではないかと、JA鶴岡ファーマーズマーケット「もんとあ~る」駅前店へ行ってみました。

(「もんとあ~る」駅前店)
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 店内を見て回ると、やっぱり鶴岡ならではの食が「もんとある!」(※)
 (※庄内の方言で「山ほどある」という意味)

 鶴岡の料理・お菓子をいくつか購入しました。


しそ巻き

 「しそ巻き」は、大葉(しそ)に「味噌ダネ」(味噌に砂糖、ゴマ、クルミ、ピーナッツ、唐辛子などを加え、もち粉などで練り固めたもの)をのせてクルクル巻き、油で揚げた料理です。

(しそ巻き(パック))
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 今回購入した「しそ巻き」は、味噌にゴマと砂糖を加え、米粉で練り固めた味噌ダネを使った「ごまみそ」のしそ巻きです。

(しそ巻き)
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 串刺しにして売られていました。

 油でサクサクに揚げられた大葉と、甘辛でねっとりとした味噌ダネの組合せは、「よくぞこれを思いついた」と賞賛したくなる美味しさで、おかずにもおつまみにも最適な一品です。


いちじく甘露煮

 いちじくの甘露煮を購入しました。

(いちじく甘露煮(パック))
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 口が開く前のいちじくを砂糖と酸味(レモン・酢・クエン酸など)で飴色になるまで煮詰めた料理です。

(いちじく甘露煮)
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 いちじくを丸ごと味わえる、鶴岡の保存食です。


笹巻き

 「笹巻き」は、鶴岡の代表的な郷土菓子の1つです。

 「端午の節句」に出されるお菓子で、全国的には「粽(ちまき)」と呼ばれていますが、東北地方では「笹巻き」と呼ばれています。

(笹巻き(パック))
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 きな粉と黒蜜がセットになっています。

 笹の巻き方にも様々な方法があり、三角おにぎりのような「三角巻き」、握ったこぶしのような「こぶし巻き」、何枚もの笹の葉を使って巻き上げる「たけのこ巻き/祝い巻き」、鉈(なた)のような「なた巻き」などがあります。

(笹巻き(笹で包まれている様子))
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 こちらは「三角巻き」の笹巻きです。

 鶴岡(庄内地方南部)の「笹巻き」の特徴は、灰汁(あく)に浸したもち米を笹で巻いて煮ることにあります。

 強いアルカリ性の灰汁でもち米を煮ることで、もち米が黄変し、黄色いゼリー状の食べ物になります。

(笹巻き)
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 笹から取り出し、同梱のきな粉と黒蜜をかけてみました。

(笹巻き(青きな粉と黒蜜))
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 ゼリーとお餅の中間のような、やわらかくてプルンとした食感で、独特な香ばしさもあるので、甘いきな粉や黒蜜とよく合います。

 きな粉は青大豆で作られた「青きな粉」です。

 青きな粉は全国的にも珍しいのですが、庄内地方では、山形県庄内町を中心に昔から青大豆が栽培され、青きな粉が食べられてきました。

 私がこの青きな粉にピンときた理由は、私の住む広島市でもよく食べられており、「ザ・広島ブランド」に認証されている食品だからです。

 庄内と広島にこんな食文化の接点があったのかと嬉しく思いました。


鶴岡の笹巻きと東アジア・東南アジアの食文化

 鶴岡の笹巻きは、強いアルカリ性の灰汁でもち米を煮た食べ物ですが、同様の食べ物が「あくまき」という名で南九州(鹿児島・宮崎・熊本)にもあることから、南九州から伝えられたという説もあります。

 一方、私がカンボジア・コンポントム州郊外を訪問した際には、もち米に「クボン」と呼ばれる灰汁(凝固剤)を加え、笹の葉に包んで蒸した「ノムチャン」と呼ばれるお菓子があることを知りました。

(クボン(凝固剤))
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 「ノムチャン」にはパームシュガー(やし砂糖)をつけて食べるとのことでした。

 このお菓子は九州の「あくまき」そっくりだと思い、現地の方に通訳さんを通じて、日本にも同様の「あくまき」というお菓子があると紹介したところ、みんなが驚きました。

 今回、その食べ物が鶴岡にも「笹巻き」として伝承されていることを知り、またしても驚きました。

 灰汁でもち米を煮たり蒸したりする料理は、中国の粽が日本を含めた東アジア・東南アジアへ伝えられたものと思われます。

 これで、鶴岡の「笹巻き」、南九州の「あくまき」、カンボジアの「ノムチャン」、中国の「粽(粽子)」につながりがあることがわかりました。

 さらに、静岡県藤枝市岡部町朝比奈にもツバキの灰汁を使って作られる「朝比奈ちまき」があります。

 食のフィールドワークをする中で、ふと、こうした食文化のつながりがわかると、とても嬉しく、感動を覚えます。


まとめ

 鶴岡市中心部を徒歩やバスで移動しながら、様々な食と出会うことができました。

 夕方、鶴岡駅から「特急いなほ」に乗車し、秋田を目指しました。

(E653系いなほ号の看板)
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 「いなほ(稲穂)」という名称は、日本有数の米どころ新潟・山形・秋田を結ぶ特急の名称としてぴったりです。

(E653系いなほ号(ハマナス色)・鶴岡駅)
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 駅の看板とは異なる、濃いピンク色(ハマナス色)の「特急いなほ」がホームに入線しました。

(特急いなほ・秋田行・行先表示)
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 乗車し、窓から外を眺めると、白波が立つ日本海が広がっていました。

(車窓から眺めた日本海(遊佐駅-象潟駅間))
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 鶴岡駅近くの観光案内所・「つるおか食文化市場FOODEVER(フーデヴァー)」で購入した冊子「つるおかおうち御膳」で鶴岡の食文化を復習しながら秋田へ移動しました。

(「つるおかおうち御膳 改訂令和4年版」)
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 鶴岡で出会った食は、高級料理ではなく、見映えを意識した料理でもない、鶴岡の伝統的な日常料理ばかりでしたが、実はこうした料理が鶴岡の食文化の原点であり、魅力となっています。

 さらにもう一歩進んで、鶴岡が日本の食文化の根幹をなす、伝統的な日常料理が受け継がれている地域だととらえれば、鶴岡こそ「ユネスコ食文化創造都市」にふさわしい地域だと理解することができます。


<関連サイト>
 「田舎の餅や「謹栄堂」」(山形県鶴岡市大東町25-14)
 「もんとあ~る」(「駅前店」山形県鶴岡市日吉町3-3ほか)

<関連記事>
 「あずきの研究12 -なぜ冬に水ようかんを食べる地方があるのか-
 「カンボジア料理の特徴と主な料理8 -ライスプディング,クボン,ノムチャン,クロサンオ,カンボジアと日本の食文化の共通点-
 「山形の食文化の特徴3 -「つるおか食文化市場FOODEVER」と鶴岡の食文化(つや姫・昔ながらの郷土料理・いとこ煮)-
 「日本の学校給食史と山形県鶴岡市「学校給食発祥の地(大督寺)」訪問 -つや姫おにぎり・山形つや姫玄米茶-

<参考文献>
 「つるおかおうち御膳 改訂令和4年版」鶴岡食文化創造都市推進協議会

2025年6月29日 (日)

日本の学校給食史と山形県鶴岡市「学校給食発祥の地(大督寺)」訪問 -つや姫おにぎり・山形つや姫玄米茶-

日本の学校給食史

 日本の給食の始まりについては諸説あります。

 近世においては、1806年7月22日に、会津の藩校「日新館(にっしんかん)」で15歳以上の書生に昼食を提供したとの記録があり、これを日本給食史の発祥とする説があります。

 また、安政年間に、松下村塾で塾生に食事が出されていたという記録もあります。

 明治に入ってからは、1886年、小学校令が公布され(文部大臣:森有礼)、就学者を貧困層にも拡大する動きが高まりました。

 その直後の1889年10月、山形県西田川郡鶴岡町(現在の鶴岡市)の「大督寺(だいとくじ)」境内に、常念寺住職・佐藤霊山(さとうれいざん)を中心とする仏教各宗派連合の僧侶たちによって「私立忠愛小学校(ちゅうあいしょうがっこう)」が設立されました。

 大督寺周辺の貧困児童を収容して教育するために設立された学校で、運営資金は僧侶たちの托鉢によって得られたお金で賄われました。

 この小学校では、設立と同時に給食も無償で提供されました。

 通説では、この私立忠愛小学校の給食が「日本の学校給食の発祥」とされています。

 ちなみに、設立当初の給食の献立は、握り飯2つ、野菜(煮浸し・煮物)、魚(塩鮭などの塩干物)だったようです。

 この話を知り、私もいつか私立忠愛小学校のあった学校給食発祥の地・大督寺を訪問したいと思うようになりました。

 そして、できれば現地で握り飯を調達し、当時の学校給食の雰囲気を共有したいとも思いました。

 今回、鶴岡市訪問が実現できたので、学校給食発祥の地・大督寺へも伺えるようスケジュールを組みました。

 「どうすれば現地(学校給食発祥の地・大督寺)で握り飯を調達することができるか」

 お店のテイクアウトの利用など色々と考えた結果、1つ実現できそうなアイデアが思い浮かびました。


土鍋で炊いた「つや姫ごはん」で「握り飯」を作る

 鶴岡駅から歩いて、鶴岡市日出一丁目の「ふろむ亭」を訪問しました。

(ふろむ亭店舗)
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 こちらのお店で、「つや姫」を土鍋で炊いたごはんと、鶴岡の伝統的な御馳走が味わえる「ふるさと定食」をいただきました。

(ふるさと定食)
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 こちらが「ふるさと定食」の料理(おかず)です。

 高級料理ではなく、昔から地元・鶴岡で「日常の食事」として食べられてきた料理ばかりです。

 続いて御用意いただいたのが、土鍋で炊いた「つや姫ごはん」です。

(土鍋で炊いた「つや姫ごはん」)
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 土鍋でごはんが炊かれるため、「つや姫ごはん」は炊き上がりに約20分かかりますが、待つ価値がある美味しさです。

 この「ふるさと定食」で提供されている「つや姫ごはん」には、店主さんから次のようなメッセージがあります。

 「オーダーを受けてから炊き上げたつや姫を昔ながらの懐かしいごっつぉでお召し上がりください」
 「なお、食べきれなかった時は、塩結びにしてお持ち帰り下さい」
 「食べきれない時は声をかけてください(ラップとお塩をお持ちします)」

 「ふるさと定食」には、たくさんの美味しい「ごっつぉ」が用意されているので、土鍋のごはんも完食できたのですが、あえてごはんを半分ほど残し、おにぎりを作ることにしました。

 「握り飯」として学校給食発祥の地・大督寺へ持って行くためです。

 店主さんに「つや姫ごはん」をおにぎりにして持ち帰りたい旨をお伝えしたところ、ラップと塩(個包装)を用意していただきました。

(「つや姫ごはん」とラップ・塩)
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 「なるほど、ラップの上からごはんを握ることで、手を洗わなくてもおにぎりが作れるのか!」

(「つや姫ごはん」をラップの上に広げた様子)
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 ごはんをしゃもじで土鍋からラップの上に移し、ごはんに塩をふりかけました。

 そしてラップで包み込むようにごはんを握れば、「握り飯」の完成です。

(握り飯(つや姫おにぎり))
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 大きくて丸い、発祥当時に提供された形と思われる握り飯ができました。

 テイクアウトで、小豆ともち米を一緒に甘く炊いた鶴岡の甘味「いとこ煮」を購入しました。

(「いとこ煮」と握り飯(つや姫おにぎり))
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 店主さんに、「このおにぎりを持って給食発祥の地・大督寺へ行ってきます」とお話しすると、私の意図を理解してくださり、いろんな鶴岡の食文化の話をしてくださいました。

 そして、「鶴岡は昔からお米の一大産地で、米沢(山形県内陸部)が飢饉の時も、鶴岡では白い米を食べていた」、「鶴岡では(昔から白米が好まれ)玄米を食べる文化すらない」ことも教えていただきました。

 いつまでもお話を伺いたかったのですが、大督寺の訪問時間も確保する必要があったため、お店を出発することにしました。

 すると店主さんが「大督寺へは、お店を出てすぐの山形県道47号を西へ向かえば着きますよ」と教えてくださいました。

 私は店主さんにお礼申し上げ、握り飯といとこ煮をビニール袋に詰め、歩いて大督寺へ向かいました。


大督寺と「学校給食発祥の地」

 当日(2025年3月7日)の鶴岡市内は、日が照ったり、雪が降ったりと、不安定な天気でした。

 私が大督寺へ向かった時は、かなり雪が降り、風も強くて、傘を差して歩くのも大変でした。

 「♪雪の降るまちをー 雪の降るまちをー」とエンドレスで口ずさみながら頑張って歩きました。
 (この部分しか歌えないのですが…(笑))

 実はこの「雪の降るまちを」は、鶴岡で誕生した歌です。

 途中、通りがかった鶴岡公園には、「雪の降るまちを」メロディー発想の地 記念モニュメントがあります。

 雪の降るまちを歩き、ようやく大督寺に着きました。

(大督寺山門)
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 大督寺は、旧庄内藩主・酒井家の菩提寺(ぼだいじ・先祖代々のお墓があるお寺)です。

(石碑(「学校給食発祥の地」記念碑在所))
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 山門の近くに「学校給食発祥の地 記念碑在所」と記載された石碑がありました。

 その石碑の横には、藤沢周平さんの歴史小説「義民が駆ける」にゆかりのあるお寺であることを紹介した看板もありました。

 この小説は、経済的に豊かな(米の石高が多い)庄内藩の藩主が、幕府によって石高の少ない藩へ転封されることとなり、これに反対した庄内藩の領民たちが「義民」として反対運動(国替え運動)を起こすという物語です。

 この小説においても、庄内地方が「豊かな米どころ」として紹介されています。

 山門から中に入ると、真正面に本堂、左側に「学校給食発祥の地」記念碑がありました。

(大督寺本堂)
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 この本堂に向かって左側に「学校給食発祥の地」記念碑があります。

(「学校給食発祥の地」記念碑)
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 中心に、お椀のような台形の造形物があります。

(「学校給食発祥の地」説明碑)
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 手前には説明碑があり、
・明治22年10月、鶴岡の各宗寺院住職らにより、恵まれぬ家庭の子弟のために弁当を給した
・給食の提供は昭和20年まで継続した
・大督寺境内におろされた給食の種子は、その後全国で開花し、昭和29年6月には学校給食法として見事に結実した
・先賢の慈悲の心と達眼とをしのび、学校給食発祥の地に記念碑を建て、永くその徳を欽慕する
といった内容の文章が刻まれています。

 しーん静まり返った境内でぽつんと1人「学校給食発祥の地」記念碑と対峙していると、次第に感動が込み上げてきました。

 このタイミングで、持参した握り飯(つや姫おにぎり)を袋から取り出しました。

(「学校給食発祥の地」記念碑と握り飯(つや姫おにぎり))
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 「130年以上前にも、こどもたちがこの場所で、こんな感じの握り飯を食べていたのだろうか」と思いを馳せながら…

 ただ、結局私はこの場所では握り飯を食べませんでした。

 お寺の境内・記念碑の前で食事することはマナーに反するような気がして、たとえ食べたとしても、美味しく味わいながら食べることはできないと思ったからです。

 「寒すぎて外で食べる気が起こらなかった」というのも事実ですが(笑)

 今回の学校給食発祥のお話は、公益財団法人埼玉県学校給食会の動画でわかりやすくまとめられています。

(「学校給食の歴史」埼玉県学校給食会制作)

(埼玉県学校給食会)


つや姫おにぎり・山形つや姫玄米茶

 学校給食発祥の地・記念碑などをしばらく見学させていただいた後、「大督寺前」バス停から鶴岡市内循環バスに乗車し、鶴岡駅へ戻りました。

(鶴岡市内循環バス(鶴岡駅前バス停))
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 12人乗りのワゴン車は、バスというより大型送迎タクシーに乗っている気分でした。

 鶴岡駅からは特急「いなほ」に乗車し、秋田駅を目指しました。

 その車内で握り飯(つや姫おにぎり)をいただきました。

(握り飯(つや姫おにぎり)と「山形つや姫玄米茶」)
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 鶴岡で販売されていたお茶「山形つや姫玄米茶」と一緒にいただきました。

 握り飯(つや姫おにぎり)は、雪が舞う寒空の中ですっかり冷えてしまいましたが、冷めても米粒にハリ・ツヤ・もちもち感があり、噛みしめるほどに米の持つ甘みを感じました。

 冷めてこそ実力を発揮するお米があることを知り、感動しました。

 「山形つや姫玄米茶」も、香ばしいお米(つや姫玄米)の香りが楽しめ、つや姫おにぎりとの相性も抜群でした。


まとめ

 今回、私が山形県鶴岡市を訪問した目的は、「ユネスコ食文化創造都市」に認定された鶴岡の食文化について調査することと、学校給食発祥の地を訪問することでした。

 その鶴岡で、「つや姫」という山形のブランド米と出会い、鶴岡(藤島地域)をはじめとする庄内地方が昔から日本有数の米どころであることを知り、日本の学校給食発祥の地で学校給食の歴史を学ぶことができました。


<関連サイト>
 「学校給食の歴史~つるおかの給食~」(鶴岡市)
 「学校給食歴史館」(公益財団法人埼玉県学校給食会)
 「ふろむ亭」(山形県鶴岡市日出1-4-8)
 「山形つや姫玄米茶」(山形食品)

<関連記事>
 「パンの研究1 -コッペパンの基礎知識と給食のコッペパン-
 「山形の食文化の特徴3 -「つるおか食文化市場FOODEVER」と鶴岡の食文化(つや姫・昔ながらの郷土料理・いとこ煮)-

<参考文献>
 藤原辰史「給食の歴史」岩波新書
 松丸奨「給食の謎 日本の食生活の礎を探る」幻冬舎新書
 「つるおかおうち御膳 改訂令和4年版」鶴岡食文化創造都市推進協議会
 魚戸おさむ・北原雅紀「玄米せんせいの弁当箱」小学館ビッグコミックス

2025年6月22日 (日)

山形の食文化の特徴3 -「つるおか食文化市場FOODEVER」と鶴岡の食文化(つや姫・昔ながらの郷土料理・いとこ煮)-

広島空港から庄内空港へ

 2025年3月7日、山形県鶴岡市を訪問しました。

(空路案内(広島-羽田-庄内))
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 広島空港から飛行機を利用し、羽田空港経由で庄内空港へ向かいました。

 広島空港から羽田空港へ向かう途中、窓から富士山が見えました。

(ANA672便から眺めた富士山)
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 その後、飛行機は着陸態勢に入り、羽田空港に到着しました。

 庄内空港行きの乗り継ぎ時間は約1時間30分だったので、空港内のラウンジで過ごしました。

(ANA395便(羽田空港))
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 羽田空港発、庄内空港行きANA395便です。

 出発時刻となり、同便は庄内空港へ向けて離陸しました。

(ANA395便から眺めた東京都心部)
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 眼下に東京都心部を眺めつつ、北へ向かって飛行しました。

 早朝からの旅だったので、疲れてウトウトしていると、飛行機が着陸態勢に入るとのアナウンスがありました。

 ふと窓の外を眺めると…

(ANA395便から眺めた山形県山地・内陸部)
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 3月にもかかわらず、雪で覆われている光景に驚きました。

 「雪に慣れていないので困ったな…」と思っていると、やがて状況が一変し、田畑が広がる庄内平野に入りました。

(ANA395便から眺めた庄内平野)
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 羽田空港から約1時間(フライト時間は約40分)、あっという間に庄内空港に到着しました。

(ANA395便・庄内空港着)
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おいしい庄内空港

 庄内空港の愛称は「おいしい庄内空港」です。

 到着ロビーでマスコットキャラクターの「まめうさ」が出迎えてくれました。

(庄内空港ビルマスコットキャラクター「まめうさ」)
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 「まめうさ」は、口元にだだちゃ豆の「だだちゃさん」を付けたウサギです。

(おいしい庄内空港)
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 ターミナルビルの屋根は庄内米をデザイン化したものです。

 食に興味を持つ私は、空港名に「おいしい」と付く庄内空港の施設をゆっくり見学してみたかったのですが、庄内空港連絡バスのりばへ直行しました。

 なぜなら、この空港連絡バスは飛行機の到着時刻に合わせて出発し、出発の目安が到着の10分後と設定されているからです。

(庄内空港連絡バス(酒田行・鶴岡行))
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 写真手前の赤いバスが鶴岡行、奥の青いバスが酒田行です。

 鶴岡行きの連絡バスに乗車すると、ほどなくしてバスが出発しました。


観光・食文化情報発信拠点「つるおか食文化市場FOODEVER」

 連絡バスは約30分かけて鶴岡駅に到着しました。

(鶴岡駅と鶴岡市内循環バス)
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 鶴岡駅前を散策すると、目の前に観光案内所・「つるおか食文化市場FOODEVER(フーデヴァー)」の入口がありました。

(観光案内所・つるおか食文化市場FOODEVER入口)
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 駅前交差点側にも入口がありました。

(つるおか食文化市場FOODEVER入口)
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 中に入って、施設を見学させていただきました。

(世界のユネスコ食文化創造都市 鶴岡)
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 鶴岡は、その風土や歴史に育まれた豊かな食文化が認められ、2014年12月1日、日本で初めて「ユネスコ食文化創造都市」に認定されました。

(世界のユネスコ食文化創造都市)
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 (「つるおか食文化市場FOODEVER」展示資料)

 日本では、鶴岡市のほか、大分県臼杵市も「ユネスコ食文化創造都市」に認定されています。

(世界のユネスコ食文化創造都市 鶴岡のあゆみ)
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 ユネスコの認定を目指し、2010年から食文化関連のシンポジウム・フォトコンテスト・映画祭・フェスタなど様々なイベントが鶴岡で開催されました。

(情報発信スペース)
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 情報発信スペースでは、鶴岡の食文化を紡ぐ人々や食材が紹介されています。

(庄内の代表食材(野菜))
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 庄内地方の野菜を中心とした代表食材が紹介されているコーナーもありました。

 鶴岡では、カブ、ナス、ネギ、柿など、約60種類の在来種が栽培されています。

 ちなみに、希少な在来作物「藤沢かぶ」が栽培されている鶴岡市藤沢地区は、作家・藤沢周平のペンネームの由来となったことでも有名です。

(紅エビ・トラフグの紹介)
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 海に面した庄内地方は、紅エビやトラフグをはじめ、タラ、ハタハタ、真鯛、アンコウ、カナガシラ、スルメイカ、由良アナゴ、口細カレイ、サクラマス、岩のり、エゲシ(海藻)など海産物にも恵まれており、豊かな食文化が形成されました。

(飲食店舗)
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 館内には飲食店舗もあり、様々な料理やお酒を味わうことができます。

 「つるおか食文化市場FOODEVER」は、鶴岡の食文化の情報発信・交流拠点です。


ふろむ亭の「ふるさと定食」

 鶴岡のふるさと料理を求めて、同市日出一丁目の「ふろむ亭」を訪問しました。

 鶴岡駅から少し距離があったのですが、歩いてお店へ向かいました。

(切添大橋から眺めた新内川と金峰山)
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 途中、鶴岡の街並みや自然の風景を楽しむことができました。

(ふろむ亭店舗)
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 お店に着くと、「営業中」と掲げられているものの、のれんが玄関の中にあったので、「営業されていますように…」と祈る気持ちでお店のドアを開けました。

 すると店主さんが出て来られ、御案内いただけたので、ホッと一安心しました。

 外は風が強かったため、のれんは中に掲げられていたのでしょう。

 旅先で荷物が多かったこともあり、座敷席でゆっくり食事させていただくことにしました。

 注文するメニューはあらかじめ決めていました。

 鶴岡で誕生したお米「つや姫」を土鍋で炊いたごはんと、鶴岡の伝統的な御馳走が味わえる「ふるさと定食」です。

 土鍋でごはんが炊かれるため、この定食は注文してから約20分かかるのですが、その時間も旅行スケジュールに折り込み済みです。

 出来上がりに本当に20分程度かかったのですが、その間、店主さんとの会話も弾み、楽しく時間を過ごせました。

 まずは料理が運ばれてきました。

(ふるさと定食)
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 鶴岡の伝統的な御馳走をずらりと用意していただきました。

 高級料理ではなく、昔から地元・鶴岡で「日常の食事」として食べられてきた料理ばかりです。

 それぞれの料理を御紹介します。

(味噌汁)
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 味噌汁の具は、麩・厚揚げ・ネギ・大根・人参・レンコン・椎茸・しめじで、たっぷり具を入れることで、良い「だし」が出ていました。

(ヒラタケと鶏肉の煮物)
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 こちらは「ヒラタケと鶏肉の煮物」です。

 庄内地方はきのこや山菜も多く採れます。

(切り干し大根)
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 こちらはお馴染みの「切り干し大根」です。

(玉こんにゃくの煮物)
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 「玉こんにゃくの煮物」です。

 「玉こんにゃく」は、山形市の「山寺(宝珠山立石寺)」で精進料理として使われていたものが周辺住民にも広まっていったとされる、山形のご当地食材です。

(しそ巻き)
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 こちらは「しそ巻き」と呼ばれる、昔ながらの郷土料理です。

 大葉(しそ)に「味噌ダネ」(味噌に砂糖、ゴマ、クルミ、ピーナッツ、唐辛子などを加え、もち粉などで練り固めたもの)をのせてクルクル巻き、油で揚げた料理です。

(しそ巻き(味噌ダネ))
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 油でサクサクに揚げられた大葉と甘辛の味噌ダネのコンビネーションが最高で、おかずにもおつまみにも嬉しい一品です。

(冷奴(山ぶどう塩))
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 こちらは冷奴です。

 ざっくりとした食感の手作り豆腐が使われています。

 豆腐にかけられているピンク色のものは「山ぶどう塩」です。

 山ぶどうの風味・酸味が味わえる塩で、新潟県村上市の製塩業者から仕入れておられるそうです。

(赤魚の煮付け)
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 こちらは「赤魚の煮付け」です。

(大根の桜漬け)
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 大根を梅酢で漬けた「大根の桜漬け」です。

(ひじき煮)
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 こちらは「ひじき煮」です。

 海の幸・山の幸に恵まれた鶴岡で、昔から食べられてきた日常の料理を堪能しました。

 やがて炊き上がったごはんも運ばれてきました。

 土鍋のフタを開けると、炊きたての「つや姫」ごはんが登場しました。

(土鍋で炊いた「つや姫」ごはん)
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 「つや姫」という名のとおり、お米がつやつやと光り輝いていました。

 ごはんを茶碗によそって、いただきました。

 米粒は大きくて真っ白、食感はモチモチしてやわらかく、噛みしめるほどに甘みとうまみが感じられました。

 さらに、冷めてもモチモチで美味しいことがわかりました。

 むしろ冷めた時(おにぎりにした時)こそ本領を発揮するのが「つや姫」の特長なのです。

 「つや姫」は他のお米と比べて少し高価なのですが、それだけの価値があることが理解できました。

 店内には、山形のブランド米「つや姫」と「雪若丸」の登録証が掲げられています。

(「つや姫」と「雪若丸」の登録証)
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 山形県全体で「つや姫」と「雪若丸」の生産・販売・消費の拡大に取り組まれています。

 店主さんにお話を伺ったところ、「鶴岡は昔からお米の一大産地で、米沢(山形県内陸部)が飢饉の時も、鶴岡では白い米を食べていた」、「鶴岡では(昔から白米が好まれ)玄米を食べる文化すらない」とのことでした。

 さすがお米の本場。お米の美味しさを知ることができました。

 食後のデザートとして「いとこ煮」をいただきました。

 「いとこ煮」と言えば、小豆とカボチャを煮た料理がよく知られていますが、鶴岡では小豆ともち米を一緒に甘く炊いたものを言います。

(いとこ煮の紹介文)
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 最近では「いとこ煮」を作る家庭が減ってしまい、食べる機会が失われつつあるようです。

(いとこ煮)
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 こちらが鶴岡の「いとこ煮」です。

 おはぎを崩したような仕上がりになっています。

 店主さんのお話では、「作る家庭・お店によって違いがある」とのことです。

 また、「祖母に作ってもらった「いとこ煮」はかなり甘かったので、祖母の作り方を伝承しつつ、甘さは控えめに仕上げている」そうです。

 さらに、「作りたてより、少し寝かせた方が美味しさが増す」ことも教えていただきました。


 高級料理ではなく、見映えを意識した料理でもない、鶴岡の伝統的な日常料理ばかりですが、実はこうした料理が鶴岡の食文化の原点であり、魅力なのだと思いました。

 店主さんとの会話が盛り上がり、土鍋のごはんが何度も炊けるぐらいの時間を過ごしましたが(笑)、こうした番狂わせは大歓迎です。

 鶴岡の食文化の知識も深まり、とても有意義なひとときを過ごすことができました。


<関連サイト>
 「鶴岡食文化創造都市推進協議会」(事務局 鶴岡市食文化創造都市推進課)
 「つるおか観光ナビ 頂きます(グルメ)」(鶴岡ツーリズムビューロー)
 「ふろむ亭」(山形県鶴岡市日出一丁目4-8)
 「つや姫・雪若丸」(山形「つや姫」「雪若丸」ブランド戦略推進本部)

<関連記事>
 「山形の食文化の特徴1 -米沢の鯉料理と食用菊-
 「山形の食文化の特徴2 -芋煮,納豆汁,ひょう干し煮,あさつきの酢味噌和え,そば-

<参考文献>
 「つるおかおうち御膳 改訂令和4年版」鶴岡食文化創造都市推進協議会

2025年6月15日 (日)

美術館とカフェ・レストランの魅力10 -広島県立美術館「ダリ展」とコラボメニュー(スペイン・カタルーニャ地方の料理)・サルバドールダリとチュッパチャプスのロゴマーク-

特別展「生誕120周年 サルバドール・ダリ -天才の秘密-」とダリの特徴

 広島県立美術館で、特別展「生誕120周年 サルバドール・ダリ -天才の秘密-」が開催されました。(2025年4月15日~6月8日)

(広島県立美術館)
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 ダリの作品を鑑賞するため、広島市中区上幟町の広島県立美術館を訪問しました。

(サルバドール・ダリ)
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 サルバドール・ダリ(1904-1989)は、スペイン・カタルーニャ州フィゲラス生まれの芸術家です。

(スペイン・カタルーニャ州フィゲラス)
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 帝国書院ウェブサイト「白地図・ヨーロッパ」を一部引用・加工

 ダリは、絵画の世界では「抽象美術」・「シュルレアリスム」の画家として知られます。

 「シュルレアリスム(超現実主義)」は、人間の心の中や現実の背後にあるものを描くもので、理性を否定したニーチェや過去の芸術を否定した「ダダイズム」、無意識の世界を広めたフロイトらの思想が影響しています。

(「ダリ展」ポスター)
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 このダリ展のポスターで紹介されているダリの「ビキニの3つのスフィンクス」は、ビキニ諸島の核実験をもとにした作品で、人間の頭の形をした「きのこ雲」などが描かれています。

 ダリは広島・長崎に原爆が投下されたことに影響を受け、原子をテーマにした作品も描きました。

 ダリの特徴がよく表現されている作品が「ヴィーナスの夢」です。

(サルバドール・ダリ「ヴィーナスの夢」)
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 (サルバドール・ダリ「ヴィーナスの夢」広島県立美術館)

 ダリは自分が気に入った画題を度々作品に描いており、それがダリの絵の特徴となっています。

 ダリの作品には、燃えるキリン、柔らかい時計、ロブスター、チョウ、アリ、自動車などがよく登場します。

(柔らかい時計)
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 (サルバドール・ダリ「ヴィーナスの夢」の一部を抜粋)

 この柔らかそうな、ドロドロに溶けた時計は、ダリがカマンベールチーズが溶ける様子にヒントを得て描かれたと言われています。

(ロブスターとアリ)
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 (サルバドール・ダリ「ヴィーナスの夢」の一部を抜粋)

 ダリは、「かたい鎧(よろい)をまとっているけど中身は柔らかい」ロブスターが好物でした。

 また、「恐怖や不安を感じさせるもの」の象徴として群れをなす小さな黒アリもよく登場します。

 このほか、「自由の象徴」としてチョウを描いたり、「高級なものの象徴」として自動車(ロールスロイス)を描いたりと、影響を受けたもの、心の中にあるもの、小さな頃から記憶に残っているものを作品で表現しています。

 ダリの特徴をまとめると…
①常識にとらわれない天才肌の人物
②具体的なモノを組み合わせて、現実にはあり得ない世界を描いている
③1つの事象を様々な視点・角度で多面的に描き、様々な意味を持たせている
④人へもモノへも「こだわり」や「偏り」がみられる
⑤一見、簡単そうに描かれた絵でも、実はとても緻密で精巧に描かれている
⑥色彩感覚が優れている
⑦夢・無意識(な性欲)と人間の行動を結び付けたフロイトの思想との共通点がある
といったことが挙げられると思いました。

 シュルレアリスムは「現実離れした、常識では考えられない(理解できない)もの」というイメージがありましたが、ダリの作品を鑑賞して、「現実にはあり得ない組合せから新たな現実を作り、それには(理解可能な)何らかの意味・メッセージが込められている」ことがわかりました。


「ダリ展」コラボメニュー(ティールーム 徒夢創家)

 特別展の開催期間中、広島県立美術館内のカフェ・レストランで「ダリ展」コラボメニューが提供されました。

 ぜひ味わってみたいと思い、まずは「ティールーム 徒夢創家(トムソーヤ)」に伺いました。

(「ティールーム 徒夢創家」のメニュー)
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(「ダリ展」コラボメニュー(ティールーム 徒夢創家))
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 「ダリ展」のコラボメニューは、ダリの出身地スペインにちなんだ「ボガディージョ&ガスパチョセット」と「サングリア&チュロスセット」の2種類が用意されていました。

 いずれも1日10食限定で、「ボガディージョ&ガスパチョセット」はすでに売り切れでした。

 そこで「サングリア&チュロスセット」を注文しました。

(サングリア&チュロスセット)
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 「サングリア」は赤ワインに果物やスパイス、甘味料を加えたフレーバードワインです。

 今回のドリンクは、ぶどう果汁に輪切りのレモンを添えたノンアルコールでした。

(チュロス(チョコレート・抹茶))
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 チュロスはチョコレート(チョコレートソース入り)と抹茶(こしあん入り)の2種類をいただきました。

(チュロス(抹茶とこしあん))
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 チョコレートはまだしも、抹茶とこしあんを組合せたチュロスは、スペイン本国の人からみればシュールな食べ物だと思います(笑)

 すっきり、さわやかなサングリアと熱々のチュロスを美味しくいただきました。


「ダリ展」コラボメニュー(ゾーナ イタリア イン チェントロ)

 同日の夜、広島県立美術館内のレストラン「ゾーナ イタリア イン チェントロ」で、「ダリ展」とコラボしたディナーコースをいただきました。

(コース案内カード)
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 ダリの故郷であるスペイン・カタルーニャ地方の郷土料理のエッセンスを取り入れた料理・デザートで構成されたフルコースです。

 縮景園を眺めながらいただきました。


【鰤のカルパッチョ 大葉とカルボネールのソース】

(鰤のカルパッチョ 大葉とカルボネールのソース)
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 ブリの刺身に大葉と「カルボネール(スペインのオリーブオイル)」のソースが添えられた前菜です。

 ミョウガ、すりおろした山芋、アクセントとして八朔が添えられていました。


【ほうれん草とオレンジポテトのトルティージャ】

 続いて、冷たい前菜として「ほうれん草とオレンジポテトのトルティージャ」をいただきました。

(ほうれん草とオレンジポテトのトルティージャ(バルサミコ・ほうれん草のピューレ))
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 「トルティージャ」は、日本では「スペイン風オムレツ」として親しまれている、スペインの具だくさんオムレツ(卵料理)です。

 バルサミコ・ほうれん草のピューレ、ミニトマト、カダイフ、粉チーズ、ゲランド塩(フランス)が添えられていました。

(ほうれん草とオレンジポテトのトルティージャ)
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 写真手前がほうれん草のトルティージャ、奥がオレンジポテトのトルティージャです。

 「揚げ春雨」のような細い麺状のものが「カダイフ」です。


【県北産ささゆり豚のロースト ピカーダソース】

 続いて、温かい前菜として「県北産ささゆり豚のロースト ピカーダソース」をいただきました。

(県北産ささゆり豚のロースト ピカーダソース)
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 ほんのりピンク色にローストした「ささゆり豚」に、ピカーダソースとベビーリーフが盛り付けられていました。

(ピカーダソース)
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 「ピカーダソース」は、ニンニク、ナッツ、ハーブなどを叩きつぶし(すりつぶし)、オリーブオイルを加えた、カタルーニャ地方のソースです。

 ニンニクとナッツ(アーモンド、松の実、ピスタチオなど)をオリーブオイルで軽く炒めたソースで、ローストポークにナッツのコクと香ばしさが加わりました。


【天使の海老と魚介、サフランのスパゲッティ パエリア風】

 続いて、「天使の海老と魚介、サフランのスパゲッティ パエリア風」をいただきました。

(天使の海老と魚介、サフランのスパゲッティ パエリア風)
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 パスタはイタリア料理ですが、それを魚介のパエリア風に仕上げることで、スペイン料理らしさが演出されていました。

(オリーブオイル)
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 別添えのオリーブオイルをかけていただきました。

 海老、イカ、アサリ、ムール貝、ズッキーニなどパエリアの食材が使われ、サフランで濃いオレンジ色のパスタに仕上げられていました。

 パエリアそっくりのスペイン風パスタでした。


【鰹のサルタート フルーツトマトソース】

 魚介料理として、「鰹のサルタート フルーツトマトソース」をいただきました。

(鰹のサルタート フルーツトマトソース)
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 「サルタート」はイタリア語で「ソテー(焼く・炒める)」を意味する調理法です。

 カタルーニャ地方の名物料理に「カルソッソ」と呼ばれる焼きネギ料理がありますが、今回のプレートにも焼きネギが添えられていました。

 フルーツトマトの甘いソースとともに、鰹のソテーをいただきました。

 鰹のソテーには、緑色の青唐辛子とマスタードで作られたピリ辛ソースも添えられており、アクセントになっていました。


【和牛フィレ肉のサルタート フリカンドソース】

 肉料理として、「和牛フィレ肉のサルタート フリカンドソース」をいただきました。

(和牛フィレ肉のサルタート フリカンドソース)
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 さすが和牛だけあって、フィレ肉とは言え、霜降りのジューシーな肉でした。

(フリカンドソース)
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 「フリカンド」は、カタルーニャ地方に伝わる「薄切り牛肉の煮込み料理」です。

 牛肉にきのこやナッツを入れて煮込んだ料理ですが、今回の料理は和牛フィレ肉のソテーに玉ねぎ、アーモンド、フライドガーリックなどをフォンドヴォーで煮詰めた「フリカンドソース」がかけられ、きのこ(マッシュルーム)が添えられていました。


【カタラーナ オレンジのソース】

 デザートに「カタラーナ オレンジのソース」をいただきました。

(カタラーナ オレンジのソース)
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 「カタラーナ」は、正式名称を「クレマ・カタラーナ」と言い、「カタルーニャ地方(カタラーナ)」の「クリーム(クレマ)」という意味を持つお菓子です。

 濃厚なカスタードクリームの表面に砂糖をまぶし、その砂糖をバーナーで焦がして表面をパリパリにしたお菓子です。

 今回のカタラーナには、オレンジソース、ミント、そして「アリッサム」という白いエディブルフラワー(食用花)が添えられていました。

 濃厚でアイスのように冷たいカスタードと、ほろ苦くパリパリのカラメルが織りなすハーモニーが楽しめました。


 ダリの作品を鑑賞した後で、ダリの故郷にまつわる料理・お菓子をいただき、ダリへの理解が深まりました。


サルバドール・ダリとチュッパチャプスのロゴマーク

 「チュッパチャプス」は世界160カ国を超える国々で、150種類以上のフレーバーが発売されてきた、世界で最も有名な棒付きキャンディです。

(チュッパチャプス(キャンディ・グミ))
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 「キャンディ(コーラ・グレープ・パイナップル)」と「サワーベルト グミ(ミックスフルーツ味)」です。

(チュッパチャプス(コーラ味のキャンディとミックスフルーツ味のグミ))
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 手前がコーラ味のキャンディ、奥がミックスフルーツ味のグミです。

 こうした「チュッパチャプス」の商品に使われている「Chupa Chups」というロゴマークは、1969年にダリがレストランで描いたスケッチが採用されたものです。

(チュッパチャプスのロゴマークについて)
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 (ウェブサイト「チュッパチャプス」から一部引用)

 絵心のない私だと、どういうデザインにするか悩んダリ、考え込んダリすることでしょうが、天才肌のダリは「ひらめき」で描いたようです。

 チュッパチャプスのロゴマークは、ある意味、世界で最もよく知られたダリの作品です。

<関連サイト>
 「広島県立美術館」(広島市中区上幟町2-22)
 「チュッパチャプス」(クラシエ)

<関連記事>
 「リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展と食 -ラクレット・カスクノーフル-
 「美術館とカフェ・レストランの魅力1 -ジャルダンプレート・ピスタチオのムース・黒ねこクッキー・白磁彩菓・トンバイ有田-
 「美術館とカフェ・レストランの魅力7 -「おいしいボタニカル・アート」おいしいコラボレーション・ホテルグランヴィア広島「サブール」-
 「美術館とカフェ・レストランの魅力8 -おいしいボタニカル・アート記念講演会「おいしい植物」と人間の歴史・展示会特別メニュー-

<参考文献>
 池上英洋監修「マンガでわかる「西洋絵画」の見かた」誠文堂新光社
 広島県立美術館ワークシート「のぞいてみよう さがしてみよう ダリの不思議な世界」

2025年6月 8日 (日)

兵庫の食文化探訪2 -加古川市のご当地グルメ・ソウルフード「かつめし」(加古川市役所食堂・コーヒーハウス ロッキー・いろは食堂(ビストロ))-

加古川市のご当地グルメ・加古川市民のソウルフード「かつめし」

 私にとって兵庫県加古川市と言えば、「JRの新快速(電車)が停車する駅」程度のイメージしかなかったのですが、「かつめし」というご当地グルメがあることを知りました。

 「かつめし」は、「ごはんの上に叩いて平たくしたビフカツをのせ、デミグラスソース系のたれをかけたものを洋皿に盛り、箸で食べる」料理です。

(WE LOVE かつめし(加古川じゃらん))
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 (「加古川じゃらん(かつめし編)」表紙の一部を引用)

 「かつめし」を味わえるお店は、加古川市を中心に100店舗以上あると言われています。

 さらに、家庭でも作れるよう「かつめし」専用のたれが販売され、学校給食のメニューにも取り入れられており、「加古川市民のソウルフード」の1つとなっています。

 そんな魅力にあふれる「かつめし」を求めて、加古川市を訪問しました。

(加古川駅・新快速)
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 姫路駅から新快速を利用し、加古川駅に着きました。

(かこのちゃん)
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 加古川駅構内で、加古川市まちの魅力発信キャラクター「かこのちゃん」が歓迎してくれました。

 「かつめし」巡りのスタートです。


加古川市役所食堂の「かつめし」

 加古川駅から約1.4km歩き、加古川市役所を訪問しました。

(加古川市役所庁舎)
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 広い敷地に大きな庁舎がそびえ立っていました。

(加古川市役所玄関)
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 10階建ての新館の正面玄関から入り、庁舎内の食堂を目指しました。

 案内を見ると、食堂は隣の本館にあることがわかり、連絡通路を歩いて本館の食堂へ向かいました。

(加古川市役所食堂)
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 入口には、本日の日替わり定食(2種類)が展示されていました。

 「かつめし」はあるだろうかと、食券券売機に近づいてみると…

(食券券売機)
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 「かつめし」、「かつめしコーヒー(コーヒー付)」というボタンがありました。

 「かつめし」を選び、食券を厨房へ持って行き、注文しました。

 すると、お店の方が厨房に向けて「かつでーす」と注文を伝えられ、私に「少々お時間かかりますのでお呼びしますね」とお話がありました。

 メニューには「かつ丼」や「カツカレー」もあるにもかかわらず、「かつめし」を「かつ」と呼ばれていることや、職員食堂で「少々時間がかかる」メニューであることに、特別感がありました。

 「一般市民客も多く利用されているな」と思いながらテーブル席で待っていると、「かつめし」が出来上がりました。

(かつめしとサラダ(加古川市役所食堂))
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 木製の皿に、かつめしとサラダが盛られ、ドレッシングが添えられています。

(かつめし(加古川市役所食堂))
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 ごはんの上にカツがのせられ、その上からデミグラスソースがたっぷりとかけられています。

 カツをじっくり見てみましょう。

(かつめしのカツとデミグラスソース(加古川市役所食堂))
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 牛肉を叩いて薄くのばし、パン粉をつけて揚げたビーフカツです。

 箸で食べられるよう、カツは一口サイズにカットされています。

 深くコクのあるデミグラスソースとサクサクのビーフカツは、ごはんとの相性が抜群でした。 

 ビーフカツをごはんにのせて一緒に食べるなら、薄いカツの方が一体感があることがわかりました。


コーヒーハウス ロッキーの「ビーフカツメシ」

 加古川市役所食堂で「かつめし」を堪能した後、次なるお店へ向かいました。

 加古川駅構内にある「加古川観光案内所」で、「加古川駅から少々遠くてもいいので、地元の人々に人気のお店を教えてください」と伺って御紹介いただいたお店「コーヒーハウスロッキー」です。

 加古川市役所から歩いて「コーヒーハウス ロッキー」を目指しました。

 加古川市役所から「ロッキー」まで約4.5kmと少し距離がありましたが、頑張って歩きました。

 途中、清涼飲料水の自動販売機を多く見かけましたが、100円のドリンク、さらには50円、80円で販売されているドリンクまであり、加古川市は激安自動販売機が多い地域でもあることを知りました。

 歩き疲れた頃、ようやくお店にたどり着きました。

(コーヒーハウス ロッキー)
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 車で来店される地元のお客さんが中心のお店です。

 お昼時だったこともあり、多くの車と大勢のお客さんで賑わっていました。

 メニューを見ると、ビーフカツメシのほか、ポークカツメシや牛ヘレカツメシもありました。

 私は「ビーフカツメシ」を注文しました。

 すると店員さんから厨房へ「ビーフ、ワンです」と注文がなされました。

 しばらくして、テーブル席にビーフカツメシが運ばれてきました。

(ビーフカツメシ(コーヒーハウス ロッキー 味噌汁・漬物セット))
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 味噌汁と漬物がセットになっています。

(ビーフカツメシ(コーヒーハウス ロッキー))
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 ごはんの上にビーフカツがのせられ、茹でキャベツが添えられています。

(ビーフカツメシのカツとデミグラスソース(コーヒーハウス ロッキー))
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 大きめのカツを一口サイズにカットし、デミグラスソースがたっぷりとかけられています。

 デミグラスソースは甘酸っぱいソースに仕上げられていました。

 茹でキャベツは、クミンの香りが効いていました。

 こちらのお店は「コーヒーハウス」なので、食後にコーヒーもいただきました。

(アメリカンコーヒー(コーヒーハウス ロッキー))
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 少し濃いめのコーヒーで苦味は少なく、ストレートでも美味しくいただけました。


いろは食堂(ビストロ)の「牛かつめし」

 続いて「いろは食堂(ビストロ)」を目指しました。

 「かつめし」発祥の店「いろは食堂」の屋号と味を37年ぶりに復活させたお店です。

 バスを使って移動することもできたのですが、かつめしを続けて食べていることもあり、運動を兼ねて歩いて行くことにしました。

 「ロッキー」から「いろは食堂(ビストロ)」までは約1.3kmです。

 加古川駅までかなり戻ったところで、「いろは食堂(ビストロ)」の建物が見えてきました。

(いろは食堂(ビストロ))
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 店名は和風ですが、建物は洋風で、まさに「かつめし」のようなお店です。

 1947年創業の「いろは食堂」を引き継いだお店です。

 ランチタイムにギリギリ間に合い、カウンター席に案内していただきました。

 「かつめし」のメニューを見ると、牛肉のかつめしと豚肉のかつめしが用意されていたので、私は「牛かつめし」を注文しました。

(牛かつめし(いろは食堂 味噌汁セット))
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 熱々の味噌汁(写真右上)が用意され、ほどなく「牛かつめし」も運ばれてきました。

(牛かつめし(いろは食堂))
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 ボリュームのあるビーフカツに、デミグラスソースがたっぷりかけられています。

 茹でキャベツも添えられています。

(牛かつめしのカツとデミグラスソース(いろは食堂))
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 デミグラスソースは、ハンバーグソースのような深みのあるソースで、1947年創業の味を引き継いだ秘伝のタレが使われています。 

 洋食のビーフカツを、そのままライスに盛り付けたような「かつめし」でした。

 ランチタイムだったので、一口デザートもありました。

(一口デザート・プリン(いろは食堂))
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 一口ではないサイズのプリンです(笑)

 ほどよいかたさで、ほろ苦いカラメルがアクセントとなった美味しいプリンでした。

 会計を済ませ、お店の方に御承諾いただいた上で、店内の「かつめし博物館」を見学させていただきました。

(かつめし博物館)
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 「かつめし」の資料や、お店の歴史・代々の店主さんなどが展示・紹介されています。

(いろは食堂物語・加古川じゃらん(かつめし編))
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 「いろは食堂物語」というお店の歴史が紹介された冊子や、加古川の「かつめし」を特集した「加古川じゃらん(かつめし編)」も展示されていました。

 ちなみに、冒頭で御紹介した「WE LOVE かつめし(加古川じゃらん)」の「かつめし」は、こちら「いろは食堂(ビストロ)」の「かつめし」です。

(いろは食堂開業時の写真)
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 いろは食堂開業時(昭和22年)の写真も展示されていました。

 「かつめし」が、ご当地グルメというだけでなく、地元のソウルフードとして長年愛され続けていることがわかりました。


まとめ

 ランチタイムに「かつめし」を(1皿でもボリューム満点なのに)続けて3皿もいただき、お腹いっぱいの状態で、約0.8kmの道のりを歩いて加古川駅まで戻りました。

 胃の中がパンパンになり、体が重くなったことを実感できるレベルでした(笑)

 JR加古川駅前商店街(ベルデモール)に、かつめしキャラクター「かっつん」と「デミーちゃん」の石像モニュメントが設置されています。

(かつめしキャラクター「かっつん」と「デミーちゃん」)
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 顔がごはんでできていて、その上に(帽子のような感じで)カツとデミグラスソースと茹でキャベツがのせられています。

 モニュメントの隣に「かつめし」の紹介文がありました。

(愛する加古川の名物 かつめし)
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・かつめしは、戦後間もない頃に、この加古川駅前通商店街にあった「いろは食堂」で考案されました。

・洋皿にご飯を盛り、牛カツをのせ、独特のたれをかけ、箸で食べるスタイルは、気軽に食べられる洋食として親しまれました。

・今では、加古川市やその周辺の100店舗以上で食べることができます。

・また、スーパーでは専用のたれが販売され、家庭にも普及し、学校給食のメニューにも取り入れられています。

・まさに愛する加古川の名物となった「かつめし」を、ぜひ食べてみてください!


 「かつめし」をよく食べ(3食)、そのために加古川市内をよく歩きました(約9km)。

 今回、加古川市内の3店舗で「かつめし」をいただきましたが、それはほんの一部で、まだまだいろんな「かつめし」があるので、また機会があれば「かつめし」の食べ歩きをしたいと思います。

 加古川市の「かつめし」、皆さんも機会があれば御賞味ください。


<関連サイト>
 「名物かつめし特集」(加古川観光協会)
 「コーヒーハウス ロッキー」(兵庫県加古川市野口町水足22-2)
 「いろは食堂(インスタグラム)」(兵庫県加古川市加古川町溝の口73-1)
 「うまいでぇ!かつめしの会」(兵庫県加古川市寺家町45 JAビル3階)

<参考文献>
 「名物かつめし特集」(加古川観光協会)
 「加古川じゃらん(かつめし編)」加古川市

2025年6月 1日 (日)

こども食堂について理解を深める -「夕焼けぽっぽ食堂」(広島市中区)での食事体験-

 「こども食堂」については、最近よく話題になっており、街中で見かけることも多くなりましたが、実際にどんな思いで、どんな活動をされているかについては、「こども食堂」の運営者・参加者でないとわかりづらい状況にあるように思います。

 そこで今回は、実際に提供された「こども食堂」の食事から、皆さんと一緒に「こども食堂」の理解・認識を深めていけたらと思います。


最初で最後の「夕焼けぽっぽ食堂」

 2025年5月30日、広島市中区猫屋町の「本川公園集会所」で最後の「夕焼けぽっぽ食堂」が開催されました。

 「夕焼けぽっぽ食堂」は、本川公園集会所で毎週金曜日に「こども食堂」を開催されてきました。

 その「夕焼けぽっぽ食堂」代表者・レイコさん(初谷禮子さん)が今回で御勇退されることとなったのです。

 私はこの話を「モアニクラブ」(「こども食堂」を支援するボランティアグループ)のメンバーの方から教えていただきました。

 当日はモアニクラブの皆さんも応援に行かれるとのことでした。

 これも何かの御縁であり、「こども食堂」を知る良い機会だと思い、私も最後の「夕焼けぽっぽ食堂」に参加させていただくことにしました。


「夕焼けぽっぽ食堂」訪問

 開催当日の夕方、仕事を終えて、会場の本川公園集会所へ急いで向かいました。

 開設時間が16時から19時と、こどもの生活リズム(下校時間など)に合わせた設定となっているからです。

 途中、原爆ドーム近くの相生(あいおい)橋を走って渡り、本川公園集会所を目指しました。

(相生橋から眺めた原爆ドームと元安川)
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 本川公園集会所は、広島平和記念公園の近くにある本川公園内の集会所です。

 広島市立本川小学校や本川児童館と隣接しており、本川公園では大勢のこどもたちが遊んでいました。

(夕焼けぽっぽ食堂(本川公園集会所))
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 本川公園集会所に着くと、中に入りきれないぐらい大勢のこどもで賑わっていました。

 公園で遊び回っていたこどもや、保育園・幼稚園・学校帰りのこども・親子連れが中心でした。

(本川公園集会所(玄関))
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 玄関に靴の置き場がないほどの盛況でした。

 ひっくり返ったままの靴や、大量のゴミが中の様子を物語っています(笑)

 「こども食堂」初訪問で、中に入るのを少しためらっていたところ、そんな私を見つけ、中へと誘導してくださったのがモアニクラブの皆さんでした。


「夕焼けぽっぽ食堂」での食事体験

 「夕焼けぽっぽ食堂」最終日ということもあって、会場内はとても混雑していました。

 混雑しているにもかかわらず、こどもたちはキャッキャッと走り回って遊んでいました。

 一方で、運営側のボランティアの方々は、食事を提供するため、声を掛けるのもはばかられるほど忙しく働いておられました。

 受付簿に名前を記入し、手作りの集金箱に食事代(こどもは無料・大人は300円)を入れたら受付完了です。

 配膳スペースへ行くと、テーブルの上におかずやデザートが用意されていました。

(配膳スペースの様子)
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 配膳される食べ物(おにぎり、おかず、デザート)や食器類(箸・スプーン・フォーク)が、あらかじめプラスチック(保存)容器やステンレスボウル、紙箱に入れて用意されていました。

 お子様ランチプレート(ワンプレート)で提供したり、紙箱に入ったケーキをセルフサービスで提供したりと、食事後の洗い物を少なくするための工夫もみられました。

 ボランティアの方に料理とデザートを盛り付けていただき、最後に自分で好みのケーキをプレートに盛り付けたら完成です。

(夕焼けぽっぽ食堂の食事(2025年5月30日))
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 麦茶と味噌汁は別に用意していただきました。

 おむすび、味噌汁(水菜の豚汁)、ハンバーグ、大根の煮物、茹で野菜(ブロッコリー、人参、アスパラガス、スナップエンドウ)とコーンのサラダ、バナナ、カットフルーツ、ケーキ(ロールケーキ又はチョコレートケーキ)、お菓子(チョコレート)、そして麦茶と、様々な料理や飲み物、お菓子を提供していただきました。

 私を含めた大人へは木製の皿で提供していただきましたが、こどもたちへはお子様ランチプレートで提供されていました。

 いずれのプレートにも「夕焼けぽっぽ食堂」のランチ旗が飾られていました。

(夕焼けぽっぽ食堂のランチ旗)
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 「たくさんの笑顔とごちそうさま!をありがとうございました。」とのメッセージ付きです。

(スパムむすび)
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 おむすびはスパム(ランチョンミート)が入った「スパムむすび」で、協力されたモアニクラブさんらしさ(ハワイらしさ)が感じられました。

(ケーキとフルーツ)
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 ケーキやフルーツなど、甘いものの割合が多いのも、こども向けの食事ならではの特徴です。

 食後にデザート(ケーキ・フルーツ)をいただいていると、「追加の差し入れです」と「わかめおにぎり」をいただき、食事モードに逆戻りしました(笑)

(わかめおにぎり・お茶)
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 出来たて、ホカホカのおにぎりをいただきました。

 私の隣や向かいの席に座り、何ら抵抗なく無邪気に食べているこどもたちを眺めると、「共食(きょうしょく):みんなと一緒に食べること」の原点を見ているような感じがしました。

 一般的な飲食店のような、どのメニューを注文しようか悩んだり、配席に気遣ったり、料理の味やコストパフォーマンスを評価したり、スマートフォンやカメラで写真や動画を撮影したりといった世界とは全く異なりました。

 1つ1つの料理やデザートがどうだったか、実はゆっくり味わえる余裕がなかったのですが、「みんなと一緒に美味しく食べられて、(大人である私も)幸せな気持ちになった」ことは確かです。

 「こどもたちを幸せにするために大人としてできることは何か」についても、深く考えさせられました。

 その後、モアニクラブの方から、これまで運営されてきた「夕焼けぽっぽ食堂」へのお礼メッセージ(寄せ書き)を依頼されました。

 突然の依頼で、何を書けばよいか戸惑いましたが、用意された鉛筆でメッセージを書きました。

(夕焼けぽっぽ食堂へお礼メッセージ)
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 「最初で最後になりましたが、とても貴重な経験ができました。ありがとうございました。お疲れ様でした。」

 本当は「夕焼けぽっぽ食堂」代表者のレイコさんに直接お礼申し上げたかったのですが、最後ということで、多くの方がレイコさんとお話をされていました。

 そこで、私はその雰囲気を邪魔しないよう、メッセージだけ提供させていただきました。

 この日は参加者にお土産まで用意されていました。

(お土産(おもちゃ・お菓子))
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 手作りのおもちゃや提供されたお菓子のお土産です。

 「夕焼けぽっぽ食堂」が、こどもたちや地域の人々の憩いの場・交流の場になっていたことがよくわかりました。

 関係者の皆さんにお礼を申し上げ、夕焼け空の公園で遊ぶこどもたちを眺めながら、会場をあとにしました。


まとめ

 今回「こども食堂」について学んだこと・理解できたことをまとめておきます。

・「こども食堂」の開設時間は、こどもの生活リズム(下校時間など)に合わせ、夕方早い時間に設定される
(大人の夕食タイムとはズレがある)
・大人だけでなく、児童・生徒・学生もボランティアメンバー(運営者・協力者)として活躍している
・開始時刻までにあらかじめ食事を作っておく(用意しておく)必要がある
・あらかじめ1人分の分量に分けておく、セルフサービスで提供する、種類別のゴミ箱(袋)を用意するなど、会場内でできるだけ手間をかけない工夫をされている
・野菜はできるだけ加熱したものを提供されている
・大人とこどもで配膳される分量に差がない(こども向けの分量で提供される)
・大人は親子連れでの参加が中心
・こどもが好むフルーツやお菓子(デザート)の割合が高い
・食材は主に個人・事業者からの寄付(金)やフードバンクからの提供で確保されている
・フードバンクとは、「食品を取り扱う事業者や各家庭から、まだ食べられる余っている食品を引き取り、必要としている団体や施設などに提供する団体・活動」のこと
・フードドライブとは、「事業者や各家庭から提供された食品が、フードバンクを通じて、必要としている団体や施設などに提供される活動の総称」のこと

 今回の食事体験をもとにしたお話なので、現状と少し異なる話があるかも知れませんが、今後、少しずつブラッシュアップさせていきたいと思います。


<関連サイト>
 「NPO法人広島こども食堂支援センター
 「イクちゃん子ども食堂ネットワーク」(公益財団法人ひろしまこども夢財団)

<関連記事>
 「こども食堂について理解を深める -こども食堂関連イベント「モアニカフェ」・「ひろしまこども食堂フェア2025」に参加して-

2025年5月25日 (日)

イギリス料理の特徴と主な料理6 -ベイクウェルプディング・マーマレードケーキ・キャロットケーキ・イートンメス・ミンスパイ・クロテッドクリーム・スコーン-

 広島市内のデパート・福屋 八丁堀本店で「英国展」(2025年5月8日~13日)が開催されました。

 会場でイギリスのお菓子が販売されていたので、いくつか購入しました。

 今回はこの「英国展」で購入したお菓子を中心に、イギリスのお菓子について理解を深めたいと思います。


ベイクウェルプディング

 「ベイクウェルプディング(Bakewell Pudding)」は、イングランド北部のピークディストリクト国立公園にある小さな村・ベイクウェルで生まれた地方菓子です。

 日本で「プリン(プディング)」と言えば、卵・牛乳・砂糖などを蒸して冷やし固めた「カスタードプリン」が一般的ですが、イギリスの「プディング」はもっと広い意味で使われます。

 イギリスの「プディング」は、「小麦粉・パン・米などに卵・牛乳などを混ぜて蒸したり焼いたりしたやわらかい食べ物」といった意味で使われているのです。

 「ベイクウェルプディング」は、パイ生地の一種「パフ・ペイストリー(Paff Pastry)」にジャムをのせ、さらにアーモンドフィリング(アーモンドクリームの生地)を流し込んで焼き上げたお菓子です。

 このお菓子は、「小麦粉を使ってふわふわに焼き上げている」ことから「プディング」と呼ばれています。

(ベイクウェルプディング)
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 外側がふわふわのペイストリー、中心がしっとりとしたアーモンドフィリングとなっています。

(ベイクウェルプディング(中身))
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 底に赤いラズベリージャムが入っています。

 パフ・ペイストリーはパイ生地の一種ですが、小麦粉生地とバターを何層にも折り重ねたサクサクのパイではなく、シュークリームの皮に似たやわらかい(フニャフニャした)練り粉のパイです。

 その食感は、ローストビーフに添えられる「ヨークシャープディング(Yorkshire Pudding)」にも似ています。

 対照的に、中のアーモンドフィリングはアーモンド風味のしっとりした生地に仕上げられていました。

 甘酸っぱいラズベリージャムがアクセントとなったお菓子でした。


マーマレードケーキ

 「マーマレード(Marmalade)」はイギリスで人気の果皮入りジャムです。

 オレンジのマーマレードが使われた「マーマレードケーキ(Marmalade Cake)」をいただきました。

(マーマレードケーキ)
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 焼き上げられたケーキの上にオレンジマーマレードがたっぷりかけられています。

(マーマレードケーキ(オレンジピール))
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 しっとりとしたケーキで、中にオレンジピールがザクザク入っていました。

 オレンジマーマレードとオレンジピールが使われた、オレンジの風味を存分に楽しめるケーキでした。


キャロットケーキ

 「キャロットケーキ(Carrot Cake)」は、生地にすりおろした人参を使ったケーキです。

 砂糖が高価だった中世に、砂糖の代わりに人参の甘さを利用して考案されたケーキです。

 日本で販売されているキャロットケーキには、ケーキの上にクリームチーズのフロスティングがのせられたものも多く見かけます。

(キャロットケーキ)
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 ケーキ生地に粗く刻んだ人参とクルミがたっぷり入っていました。

 人参の甘みとスパイス(シナモン、ナツメグ、オールスパイスなど)の風味がよく効いた素朴なケーキでした。


イートンメス

 「イートンメス(Eton Mess)」は、生クリームにメレンゲやいちごを加えた、イギリスの夏を代表するお菓子です。

 イギリスのパブリックスクール「イートン校」発祥の、「ごちゃ混ぜの・乱雑な(mess)」という意味をもつお菓子です。

 この発想・呼び方は、同じイギリスのお菓子「トライフル(Trifle:つまらないもの)」とよく似ています。

(イートンメス)
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 生クリームにメレンゲといちごがのせられています。

(イートンメス(中身))
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 生クリームの中にもメレンゲといちごが混ぜ込まれていました。

 上にのせられたメレンゲはサクサク、生クリームに混ぜられたメレンゲはしっとり柔らかくなっていて、異なる食感を一度に味わうことができました。

 生クリームに甘いメレンゲと甘酸っぱいいちごが加わった、シンプルで美味しいお菓子です。


ミンスパイ

 「ミンスパイ(Mince Pie)」は、洋酒(ブランデー・ラム酒など)にドライフルーツやナッツ、スパイス(シナモン・クローブなど)を漬け込んだ「ミンスミート」と呼ばれるフィリングが詰められたパイ菓子です。

 「ミンス」は日本で言う「ミンチ」のことで、細かく刻んだ肉(ミンチ)を詰めた肉入りのパイがミンスパイの起源とされています。

 その名残で、現代でもフィリングに牛脂(ミンスミート)を加えて作る製法があるようです。

 クリスマスプディングと同様に、クリスマスシーズンに人気の伝統菓子です。

(ミンスパイ)
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 丸いパイ生地の中にミンスミートが詰められ、上に星形のパイがのせられています。

 初期のミンスパイは、キリスト降誕の言い伝えにならい、飼い葉桶(かいばおけ)の形をしたパイにミンスミートが詰められ、その上に小さな人形のパイがのせられましたが、清教徒(ピューリタン)革命以後、これが「偶像崇拝」にあたるとされ、現在のような丸い形のパイになりました。

(ミンスパイ(中身))
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 ミンスミートは干しぶどう・りんご・アーモンドが使われており、甘くねっとりとして、ラム酒の風味もよく効いていました。


クロテッドクリーム・スコーン

 「クロテッドクリーム(Clotted cream)」は、生乳を低脂肪乳と生クリームに分離させ、その生クリームを低温で加熱して作られるクリームです。

(ロダス・コーニッシュ クロテッドクリーム(包装))
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 こちらは「ロダス(Roddas)」の「コーニッシュ クロテッドクリーム」です。

(クロテッドクリーム)
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 ロダスのクロテッドクリームは、低温オーブンで蒸し焼きして作られるため、表面に黄色い膜(クラスト)ができています。

 試しにクロテッドクリームだけで食べてみましたが、濃厚でクセのない(塩気もない)クリームでした。

 スコーンに塗っていただくのが一番とされるので、スコーンとジャム(いちごジャム)も用意しました。

(スコーン・クロテッドクリーム・いちごジャム)
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 スコーンをパカッと横に割りました。

 「はい、大きく口を開けてー」と歯医者さんになった気分です。

(スコーンを横に割った様子)
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 割ったスコーンに、クロテッドクリームを塗り、さらにいちごジャムを塗りました。

(スコーンにクロテッドクリームといちごジャムを塗った様子)
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 スコーンだけでも十分美味しいのに、さらにクロテッドクリームといちごジャムを添えていただくとは、何とも贅沢な食べ方です。

 今回、紅茶と一緒にこのスコーンをいただいたのですが、クロテッドクリームやいちごジャムは紅茶との相性も良く、スコーン(クロテッドクリーム・ジャム)と紅茶のセットが「クリームティー(Cream Tea)」と呼ばれる理由も理解できました。


「イギリストースト」と「ふらいすこーん」

 おまけとして、イギリスの食文化を踏まえ、日本人向けにアレンジされた創作パン・創作菓子を御紹介します。

 スコーンにクロテッドクリームといちごジャムを添えていただいた際、ふと頭に浮かんだのが、日本でロングセラー商品となっている、食パンにマーガリンといちごジャムを塗った菓子パン(ジャム&マーガリン)です。

(イギリストースト・ジャムストライプ)
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 特に「工藤パン」(青森市)の「イギリストースト」シリーズの「ジャムストライプ」は、スコーンがイギリスパン、クロテッドクリームがマーガリンになっただけで、よく似ています。


 もう1つ、広島の和菓子店「青柳屋」で販売されている「ふらいすこーん・つぶあんバター(折生地スコーン)」を御紹介します。

(ふらいすこーん・つぶあんバター(折生地スコーン))
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 スコーンを油で揚げ、あんこ(つぶあん)とバターをサンドした創作菓子です。

 揚げたスコーンはザクッとしたクッキーのような食感で、あんドーナツ・小倉トースト・あんバターサンド・かりんとう饅頭といった様々な要素が取り入れられた創作菓子です。


 日本でも様々な形でイギリス菓子が取り入れられ、独自のアレンジもなされていることがよくわかります。


<関連サイト>
 「ブリティッシュプディング」(大阪市住之江区西住之江2-7-9)
 「ジェリーズ・パイ」(京都市右京区嵯峨天龍寺瀬戸川町6-7)
 「ロダス」(銀座三越店 東京都中央区銀座4-6-16ほか)
 「フォートナム・アンド・メイソン」(三越広島店 広島市中区胡町5-1ほか)
 「イギリストースト」(工藤パン 青森市金沢三丁目22-1)
 「青柳屋(インスタグラム)」(広島市中区幟町5-8)

<関連記事>
 今回のイギリス料理を含む世界の料理は、「食文化関連記事一覧表・索引」の「各国料理の特徴と主な料理」を御覧ください。

<参考文献>
 21世紀研究会編「食の世界地図」文春新書
 地球の歩き方編集室「世界のお菓子図鑑」Gakken

2025年5月18日 (日)

こども食堂について理解を深める -こども食堂関連イベント「モアニカフェ」・「ひろしまこども食堂フェア2025」に参加して-

 2025年5月に、「こども食堂」運営者による各種イベントが開催されました。

 「こども食堂」については、最近よく話題になっており、街中で見かけることも多くなりましたが、実際にどんな思いで、どんな活動をされているかについては、「こども食堂」の運営者・参加者でないとわかりづらい状況にあるように思います。

 そこで今回は、「こども食堂」関連イベントの紹介を通じて、皆さんと一緒に「こども食堂」の理解・認識を深めていけたらと思います。


モアニカフェ(初日)

 2025年5月3日から5日の3日間、広島市中区大手町の「大手街倶楽部」で「モアニカフェ」が開催されました。

(モアニカフェ(チラシ))
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 「こども(地域)食堂」を支援するボランティアグループ「モアニクラブ」の皆さんによる、食べて支援できる募金イベントです。

 ちなみに、「モアニ」とはハワイの言葉で「そよ風、穏やかな風」という意味があります。

 モアニクラブのメンバーの方からお誘いいただき、興味を持ってオープン初日に参加しました。

(大手街倶楽部とモアニカフェ)
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 「大手街倶楽部」は、広島平和記念公園の近くにあります。

 建物1階入口がポップコーンなどの販売コーナー、2階がカフェとなっていました。

 少し緊張しながら2階のカフェに入ると、お誘いいただいた方が受付をしておられ、メンバーの皆さんが温かく迎え入れてくださいました。

 モアニカレー、そしてデザートとしてコーヒーとバナナケーキを注文しました。

 テーブル席に座り、しばらく待っていると、モアニカレー…ではなく、コーヒーとバナナケーキが先に運ばれてきました(笑)

(コーヒーとバナナケーキ)
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 レストランで注文する感覚で、一度に会計を済ませた方が良いだろうという気持ちもあり、まとめて注文したのですが、これは私の思い込みだったことに気付きました。

 ほどなくして、別のスタッフの方からモアニカレーも運ばれてきました。

(モアニカレー(初日))
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 一度にそろって、贅沢な気分になりました。

 最初にモアニカレーからいただきました。

 モアニカレーは、ほうれん草と鶏肉のオリジナルカレーです。

 ほうれん草のカレー(パラクカレー・サグカレー)は、インドでも人気の定番カレーです。

 モアニカレーライスの頂上には半熟の温泉卵がのせられ、周りにサラダとキャロットラぺが添えられていました。

 カレーにコクと旨みが増すよう、牛脂も加えられたそうです。

 鶏の挽き肉と細かく刻んだほうれん草を使った、やさしい味のカレーライスでした。

 ちなみに、ほうれん草は農家の方から、お米(「あきさかり」)は農事組合法人「清流の郷 泉」(広島県三原市)からそれぞれ御支援いただいたものです。

 モアニカレーをいただいた後、コーヒーとバナナケーキをいただきました。

 コーヒーを飲み始めた時、「先にコーヒーをお出しして冷めてしまったので、お詫びに…」と、コーヒーをもう一杯御用意いただきました。

 「いえいえ、別にいいんですよ。お気になさらず」とお伝えしましたが、最後は御厚意を受け止め、御用意いただいたコーヒーをいただきました。

 代わりに冷めてしまったコーヒーを取り下げようとされていたので、貧乏性の私はあわてて、「せっかくなのでこちらもいただきます。もったいないですから」とお伝えしました。

(コーヒー2杯とバナナケーキ)
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 本当に美味しいコーヒーは冷めても美味しく、熱い時とは違った味わいが楽しめるのですが、今回のコーヒーはまさにそうでした。

 一杯ずつ丁寧に淹れられた、すっきりとした味わいのコーヒーでした。

 バナナケーキも、バナナの風味がしっかりと感じられる、手作り感あふれるケーキでした。

 2杯のコーヒーをいただきながら、カフェでゆったりと過ごしました。

 追加のコーヒー代をお支払いする気持ちも込めて、わずかながら募金をし、お礼を申し上げて、カフェを後にしました。


モアニカフェ(3日目)

 モアニカフェオープン3日目、大手街倶楽部のモアニカフェを再訪しました。

 モアニクラブの皆さんに「また来ていただいたのですね」と歓迎していただきました。

(モアニカフェ(窓の装飾))
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 今回はピザを注文するつもりでしたが、受付で「モアニカレー、スパイスを増やしてみたんですよ」というお話を伺い、それならと再度モアニカレーを注文しました。

 テーブル席で待つ間、レモンを入れた「お冷や」をいただきましたが、このレモンは広島県大崎上島町のレモン農家さんから御支援いただいたものでした。

 しばらくして、モアニカレーが運ばれてきました。

(モアニカレー(3日目))
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 違いがはっきりとわかるレベルです(笑)

 カレー粉(またはカレールウ)を大幅に足されたようです。

 カレーの具にパプリカが、トッピングにパセリが加えられていました。

(モアニカレー(3日目・半熟卵))
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 半熟の温泉卵の黄身をつぶし、カレーにまぶしながらいただきました。

 馴染み深いカレーの味で、美味しくいただきました。

 食べ終えてから再び受付へ行き、コーヒーとチュロスを注文しました。

 「チュロスは少しお時間をいただきますが…」というお話でしたが、その分、期待が膨らみました。

 わずかながら募金をし、米粉クッキーも購入しました。

(コーヒーと米粉クッキー詰め合わせ)
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 クッキーは飴野 歩さんの商品です。

 グルテンフリー・ヴィーガン対応(小麦粉・白砂糖・添加物不使用)のやさしい味のクッキーでした。

 チュロスが出来上がるのを待っていると、音楽ライブが始まりました。

(音楽ライブ・yu-ko&宮田大)
Yuko

 yu-koさんと宮田大さんによる音楽ライブで、カフェのスタッフ・お客さんも含めて、みんなで盛り上がりました。

 ほどなくして、チュロスを御用意いただきました。

(チュロス)
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 シナモンがたっぷりまぶされた、アツアツのチュロスです。

 表面はパリッと、中はしっとりとした食感の美味しいチュロスでした。

 音楽を楽しみながら、カフェでのんびり過ごしました。

 明るく生き生きと活動されるモアニクラブの皆さんともお話ができ、楽しいひとときでした。


ひろしまこども食堂フェア2025

 モアニカフェで「ひろしまこども食堂フェア2025」を紹介していただきました。

(ひろしまこども食堂フェア2025(チラシ))
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 広島県内の「こども食堂」の活動をより多くの人に知ってもらうためのイベントで、初開催です。

 2025年5月10日には、こども食堂のお食事体験コーナーも設けられるとのことだったので、この日に会場の「ひろしまゲートパーク」を訪問しました。

(ひろしまゲートパーク)
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 「ひろしまゲートパーク」は、広島市中心部・旧広島市民球場跡地に作られたイベント広場です。

 イベントをしている雰囲気がなく、少し不安になりながら園内を歩き回ってみると、「大屋根ひろば」で開催されていました。

(ひろしまこども食堂フェア2025会場)
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 会場内には、広島県内の「こども食堂」の紹介コーナーがありました。

(広島県内こども食堂マップ)
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 広島県内では、約130の「こども食堂」が運営されているようです。

 都市部に多いのは、それだけニーズが高いということなのでしょう。

(広島県内こども食堂の様子(写真展示))
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 「こども食堂」の写真を拝見すると、こどもだけでなく、提供者・運営者をはじめとする大人も生き生きと楽しみながら取り組んでおられる様子が伝わってきました。

 お食事コーナーで飲食品も購入しました。

 訪問したのが15時過ぎで、終盤に差し掛かっていたのですが、何とか滑り込みセーフで買うことが出来ました。

(えびピラフ・やきとり・みかんジュース)
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 「笑愛家(にこや)」(広島市佐伯区)の「えびピラフ」と「やきとり」、そして「夕焼けぽっぽ食堂」(広島市中区)の「みかんジュース」です。

 「えびピラフ」は、海老と細かく刻んだ人参・ピーマン・マッシュルームなどを具にした洋風ピラフです。

 「やきとり」は、鶏肉(モモ・皮)を使った甘辛い醤油だれの焼き鳥です。

 スーパーマーケットなどで売られている市販の焼き鳥とよく似ていたのですが、後日伺った話では、(冷凍)総菜を食品メーカーさんから「こども食堂」へ提供していただくことも多く、その実例として販売されたのではないかということでした。

 「みかんジュース」は、広島みかん100%(ストレート)のジュースで、トッピングに大崎上島の薄切りレモンをのせていただきました。


まとめ

 後日、モアニクラブのメンバーの方から「こども食堂」についてお話を伺いました。

 「こども食堂」と聞くと、こどもだけを対象にしているイメージがありますが、対外的に便宜上「こども」という名称を使っているだけで、本当は大人も含めた地域の交流・憩いの場とすることを目指しておられるそうです。

(こども食堂は「みんなの居場所」)
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 (ひろしまこども食堂フェア2025(チラシ)を一部引用)

 「ひろしまこども食堂フェア2025」のチラシにも、
「「こども食堂」は、こどもだけでなく、赤ちゃんからお年寄りまで、誰もが気軽に集える「みんなの居場所」です。そして、単なる食事提供の名ではありません。誰もがほっとできる居場所、人のつながりを紡ぐ場を地域でつくりだすために存在しています。」
と紹介されています。

(こども食堂の願い)
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 (ひろしまこども食堂フェア2025(チラシ)を一部引用)

 さらに、
「社会に孤立・無関心が広がる中、私たちは「こども食堂」を通じて、地域で暮らす人々の間に、あたたかい声かけとあたたかい眼差しが広がることを願い、活動しています。」
とも紹介されています。

 これまで私が抱いていた「こども食堂」のイメージとは少し異なることがわかりました。

 こども食堂を運営する際の課題として、
 ・こどもだけでなく、大人にも来てほしいこと
 (こどもは無料、大人は有料としているケースが多いが、お金を得られるとそれを運営費に回せるため)
 ・タンパク質が不足していること
 (農家からの野菜の支援は多いが、冷凍保存できる肉や魚の支援は少ない)
 ・オーガニック、無添加などにこだわると経費がかさむこと
 ・こども食堂をかけもちで運営されているケースもあり、運営者側の負担も大きいこと
 ・こどもの貧困、孤食、ネグレクトにも向き合う必要があること
などがあることがわかりました。

 これからもイベントなどがあれば参加し、少しずつ「こども食堂」への理解を深めていけたらと思います。

2025年5月11日 (日)

平松洋子さんの名作「パセリカレー」を作る -パセリカレーライス・パセリカレー麺-

パセリカレーの材料

 広島市内のデパートの野菜売場で、花束ぐらいの大きさ・量のパセリ(徳島県産)が1袋100円(税込み108円)で販売されていました。

 購入した大量のパセリを目の前に、パッとひらめいたのが平松洋子さんが考案された「パセリカレー」です。

 美味しいと評判のパセリカレーですが、「パセリで本当に美味しいカレーが作れるのか?」と半信半疑だった私は、「今こそチャンス!」と思い、パセリカレーを作ってみることにしました。

(パセリ・合挽き肉・にんにく・生姜)
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 パセリカレーの材料となるパセリ(大・7~8本)、牛肉と豚肉の合挽き肉(約300グラム)、にんにく(1片)、生姜(にんにくと同量)です。

 このほか、トマトピューレ(濃縮トマト)、カレー粉、塩、こしょう、唐辛子(パウダー)を用意しました。

 シンプルで用意しやすい材料ばかりです。

 カレーに欠かせない玉ねぎがないのも驚きです。

 材料の揃えやすさも、パセリカレーが多くの人から支持される理由の1つと言えそうです。


パセリカレーを作る

 カレーを作る際、面倒なのが玉ねぎ・にんにく・生姜などのみじん切りです。

 今回のパセリカレーは、パセリさえ細かく刻めば、挽き肉はそのまま使えるし、にんにくと生姜はすりおろせば済むので、比較的楽にカレーが作れるだろうと思っていました。

 しかし、いざパセリを刻んでみると、茎の部分と葉の部分を分けて刻んだり、大量の葉をできるだけ細かく刻んだりと、意外と時間がかかりました。

(みじん切りにしたパセリ)
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 手前が細かく刻んだ茎、奥(上側)が細かく刻んだ葉です。

 もう二度とやりたくないと思ったほど(笑)、大量のパセリを刻みました。

 にんにくと生姜もすりおろしておきます。

(すりおろしにんにく・生姜)
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 どうせ鍋の中で混ざってしまうのだからと、両方同じすりおろし器ですりおろしました。

 ちなみに、にんにくの後で生姜をすりおろせば(刻めば)、にんにくの臭いが手に残るのを軽減させることができます。

 これで料理の下ごしらえが済みました。

 鍋を加熱し、合挽き肉とカレー粉を入れて炒めます。

 油は合挽き肉から大量の油脂が出るので不要です。

 生の挽き肉にカレー粉を加え、カレー粉を挽き肉に馴染ませるよう炒めるのがコツです。

 挽き肉を炒めてからカレー粉を加えると、挽き肉が脂でコーティングされた状態でカレー粉を加えることになり、カレー風味がよく浸み込まないのだそうです。

(挽き肉とカレー粉)
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 カレー粉を別に炒めたり、ルウを作る必要がないので楽です。

 このように挽き肉にカレー粉を馴染ませながら炒めると…

(挽き肉を炒めた様子)
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 挽き肉、特に豚肉の挽き肉を炒めると、大量の油脂が出てきます。

 挽き肉に焼き色が付き、カレー粉と馴染んだところで、細かく刻んだパセリを同じ鍋にドサッと加えます。

(炒めた挽き肉にパセリを加えた様子)
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 挽き肉とパセリが馴染むよう、数回に分けて入れるのがコツです。

 こうすることにより、パセリの水分も飛びやすくなります。

 挽き肉とパセリが馴染んだところで、トマトピューレ、ニンニクとショウガのすりおろしを加えます。

(トマトピューレとにんにく・生姜のすりおろしを加えた様子)
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 水を加えるとスープのようなカレーになってしまうので、私はあえて水は加えませんでした。

 平松洋子さんのレシピでは少量の水を加えるようになっていますが、水よりもトマトピューレの割合が多く、その後によく煮込む(水分を飛ばす)よう説明されています。

 カレーにトマト(ピューレ)を加えることにより、とろみがつき、甘みとコクが出て、さらにカレーの黄色(ターメリックの色)の発色が良くなる効果があります。

 約15分、時々混ぜ返しながら煮込み、最後に塩で調味してパセリカレーの完成です。

(パセリカレーの完成)
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 大量に入れたパセリが、加熱されたことにより凝縮し、挽き肉と一体化してキーマカレーかドライカレーのような感じに仕上がりました。

 平松洋子さんのレシピには、挽き肉の分量が6人分で500グラムとなっています。

 私は当初、「この分量では挽き肉の量が多いのでは」と思ったのですが、出来上がったパセリカレーを見て、挽き肉をたくさん使う理由が理解できました。

 パセリが熱で凝縮し、具が挽き肉主体のカレーになるからです。

(パセリカレーライス)
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 皿にごはんとパセリカレーを盛り付け、パセリカレーライスにしました。

 どんな味に仕上がっているか、ドキドキしながらいただきました。

 「パセリの香りが強いのでは」と想像していたのですが、パセリをじっくり炒めたことにより、パセリが「さわやかな香りのスパイス」に変化していました。

 玉ねぎやセロリなどの「香味野菜」としての役割をパセリが担っているのです。

 カレーを作る際、よく炒めた玉ねぎを使うことが多いですが、その玉ねぎの役割をパセリが担い、玉ねぎよりも香り高い香味野菜としての効果を発揮していました。

 美味しくてあっという間になくなるので、パセリと挽き肉はたくさん使うことをおすすめします。


パセリカレー麺

 ラーメン用の生麺を使って「パセリカレー麺」も作ってみました。

 パセリカレーがスパゲッティのミートソースに似ていることからの発想です。

(パセリカレー麺)
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 生麺を茹で、ザルでお湯を切って皿にのせ、その上にパセリカレーを盛り付けました。

 一口食べてみて、少し一体感がないように感じたので、汁なし担々麵のようにかき混ぜ、「まぜ麺」にしてみました。

(パセリカレー麺(まぜ麺))
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 汁なし担々麵に似た、パセリと挽き肉たっぷりのカレー麺になりました。

 パセリカレーは、今回のようなラーメンのほか、うどんやパスタにも合いそうです。

 半熟の温泉卵を添え、黄身を崩しながら食べても美味しいでしょう。


まとめ

 パセリカレーを実際に作ってみて思ったこと、学んだことをメモしておきます。

 ・挽き肉は、炒めた際に出る油脂の量を考慮すると、牛と豚の合挽きミンチが最適(鍋に油をひく必要がない)

 ・玉ねぎをみじん切りにする手間がない分、大量のパセリをみじん切りにする手間がかかる

 ・パセリは炒めるとカサが減り、トマトの汁気も飛ばすので、挽き肉の量が仕上がるカレーの量に直結する

 ・汁気のあるカレーを作る感覚で塩を加えると、塩辛くなってしまう

 ・パセリを炒めると、パセリ特有の香りは抑えられ、香味野菜とスパイス両方の効果を発揮する


 大量のパセリを刻むのに少し手間がかかりますが、シンプルな調理法で美味しく仕上がるカレーなので、御興味を持たれた方はぜひお試しください。


<関連サイト>
 「平松洋子さんの名作「パセリカレー」のレシピを公開!」(「dancyu」)

<関連記事>
 「産直市・産直野菜コーナーの魅力3 -広島の伝統野菜「祇園パセリ」の特徴とパセリ料理-

<参考文献>
 「平松洋子さんのパセリBOOK(dancyu 2022年12月号)」(プレジデント社)

«台湾の食文化の特徴と主な料理2 -「和風×台味 台湾鉄路の食文化 図録」と「駅弁ひとり旅」から台湾の駅弁を理解する・魯肉飯(滷肉飯)と台湾の駅弁「排骨便當」を作る-

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