メイラード反応
先日,八丁味噌を使っていて,ふと,「この香りはチョコレートとよく似ている。」と思いました。
チョコレートの原料「カカオニブ」や中華食材の「豆鼓」も引っ張り出して口に含んで香りを比べてみましたが,やっぱりよく似ているのです。(ついでに中華調味料の「甜麺醤」の香りも確かめましたが,これはよく考えると,豆鼓が原料だと思います。甜麺醤は,甜(甘い),麺(中国語で小麦),醤(味噌)ですが,要は甘味噌にした豆鼓のことでしょう。)
写真:左から八丁味噌,豆鼓,カカオニブ
共通点と言えば,豆が原料であること(八丁味噌は大豆,豆鼓は黒大豆,カカオニブはカカオ豆),発酵の過程があること,褐色であることが思いつきます。
ここで,ふと頭をよぎったのは,かつて何かの本で読んだ「メイラード反応」です。
化学的に説明すれば難しいのでしょうが,要は,照焼,豚肉生姜焼,煎餅,いか焼き,カラメルのような,糖分や醤油を加熱した時に発する香ばしい香りや味を生み出す反応と理解しています。
メイラード反応を改めて調べてみると,
○糖とアミノ酸(たんぱく質)が相互に作用して褐色に変化し,特有の香気成分を生じさせる反応で,褐変反応とも呼ばれている。
○醤油や味噌のほかにも,おこげ,焼肉,飴色に炒めた玉ねぎ,コーヒー豆・黒ビール・チョコレートの色素形成などが該当する。
とあり,香りについては,
○アミノ酸の種類により,香気成分が異なり,焦げ臭,カラメル臭,ナッツ臭などがある。
とありますが,その様々な香気の種類の中で,ひときわ目立って数多くあったのが,何とチョコレートの香りでした。
発酵条件など,カカオ豆を生産する中南米を中心とした赤道周辺地域と,八丁味噌や豆鼓を生産する日本や中国など東アジア地域では気候など異なることも多いと思いますが,逆に,豆が発酵して褐色に変化する際に,何かしら同じ菌や発酵の要素が関わっており,それがあの独特なチョコレートの香り,苦味,渋み,褐色変化をもたらしているのではないかと思います。
カレーの隠し味にチョコレートを入れるのも,このメイラード反応の効果を発揮させるためであり,科学的にも根拠があると言えそうです。
香りの研究はまだまだ未知なことが多いようなので,これからの研究成果に期待したいところです。
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こんにちわ^^ メイラード反応教えてくださりありがとう。
身近な所でいろんなメイラード反応が紛れていそう。
1年以上前に、酒粕で粕床つくって、途中で酒粕やみりんを足してお手入れをしたりして今に至ります。
常温保存でだんだんとアメ色になっています。
八丁みそと似てるのかな?
きっとこの反応も糖とアミノ酸が、酵母となんか色々反応してるのかな〜って。
お肉やお魚を漬けて焼くと、おいしくて最高です♪
投稿: ここは | 2017年2月17日 (金) 15時13分
ここは 様
こんにちは。
コメントいただき,ありがとうございます。
メイラード反応の記事までお読みくださり,ありがとうございました。
おっしゃるとおり,いろんな食品でメイラード反応が見られ,活用されていると思います。
そう言えば,酒粕で粕床を作っておられましたね。
奈良漬けのような感じのアメ色に変化しているのでしょうか。
これも糖とアミノ酸によるメイラード反応で間違いないでしょう。
八丁味噌は,大豆を蒸す(加熱する)ことにより,赤褐色に変化します。
これに「麹菌」を加えると味噌になるわけです。
一方,粕床は加熱まではさせないと思いますが,やはり酒粕に含まれる糖分とアミノ酸が反応して徐々にアメ色(褐色)に変化していくのだと思います。
酒粕以前の日本酒を作る工程でも,米に含まれるデンプンを「麹菌」により糖に変え,その糖が酵母と一緒になってアルコールができるわけですから,糖が果たす役割は大きいと言えるでしょう。
ちなみに,加熱してもメイラード反応(カラメル化)しにくいのがトレハロースなどの甘味料で,お菓子などに応用されています。
肉や魚を粕床に漬けておくと,酒粕の糖分による甘味,アミノ酸による旨味,そしてメイラード反応によって香りやコク,深みが増すので,より美味しくなるのでしょうね。
そしてなにより,ここはさんの愛情が,美味しくて最高の料理に仕上げているのですよ!
これだけは胸を張って言えます(笑)
投稿: コウジ菌 | 2017年2月18日 (土) 01時33分