インドネシア料理の特徴と主な料理
インドネシアは,大小多数の島々からなる多民族国家です。そのため,公用語であるインドネシア語は,様々な人々に理解しやすい共通語となるように,基本となる単語を理解しておけば,それらの単語の組み合わせで話すことができるようになっています。
例えば,あいさつで,「スラマッ」という語があいさつを示し,その後に,朝を示す「パギ」をつけて「スラマッ・パギ」で「おはようございます」,同様に昼を示す「シアン」をつけて「スラマッ・シアン」で「こんにちは」,夜を示す「ソレ」をつけて「スラマッ・ソレ」で「こんばんは」という意味になります。
料理で言えば,「ナシ」=ご飯,「ミー」=麺,「ダギン」=肉,「アヤム」=鶏,「イカン」=魚,「ウダン」=海老,「ゴレン」=炒める・揚げる,「ソト」=スープといった単語を覚えておけば,メニューが読めて,料理のイメージができるようになります。
インドネシア料理の特徴ですが,
○東南アジア料理に共通してみられるインド,中国の影響を受けている
○香辛料(唐辛子,にんにくなど)やココナッツオイルを多用する
○イスラム教徒の間では豚肉の代わりに鶏肉や羊肉が用いられる
○揚げ物が多い
といったことが挙げられます。
主食は米です。また,大豆の産地でもあり,菌を発酵させて作る「テンペ」という日本の納豆に似た食品や,「タフ」と呼ばれる豆腐,そのタフから作られる厚揚げ豆腐「タフ・ゴレン」,大豆を発酵させて作る甘い醤油「ケチャップ・マニス」など,日本人に馴染み深い食材も多くあります。
それでは,代表的なインドネシア料理を見てみましょう。
「サンバル」
塩,唐辛子,トマト,にんにく,玉ねぎなどを石臼ですりつぶしてペーストにしたものです。様々な料理の薬味として,インドネシア料理には欠かせません。店のテーブルに常備されていました。
「テンペスティック(テンペ・ゴレン)」
インドネシアの納豆「テンペ」を平たく固め,スティック状に切って揚げたシンプルな料理です。テンペ自体にはさほど味はないので,ソースなどをつけて食べます。日本の納豆のように糸をひいたり,独特のにおいはないものの,発酵しているので豆がとてもやわらかくなっており,食感に限れば,日本の納豆を油で揚げて食べている感じでした。国内で,ヒンドゥー教や仏教の影響を強く受けた地域では,テンペや豆腐のような大豆や野菜を使った料理が発達しています。
「鶏肉の串焼き(サテ・アヤム)」
「サテ」は肉の串焼きを表します。中近東料理「ケバブ」の影響を受けた料理です。たれは,ピーナッツベースのソースと,ケチャップ・マニスだと思います。ケチャップ・マニスは,甘く濃度のある醤油のような風味で,日本の焼き鳥のたれとよく似ており,サテにぴったりだと思います。イタリア料理にバルサミコ酢が使われるようなイメージにも近いように思います。
「温野菜のサラダ(ガドガド)」
「ガドガド」は,寄せ集めやごちゃまぜという意味です。かつて私がインドネシアを訪問した際,食べた料理の中で一番強く印象に残ったのがこのガドガドでした。茹でたキャベツやブロッコリー,トマト,ゆで卵などに甘辛いピーナッツソースをかけたサラダで,その名前や,ピーナッツソースで味わうサラダの新鮮さが印象的でした。今回,予習した上で注文して,はっと気付いたのですが,厚揚げ豆腐(タフ・ゴレン)も入っていました。これもピーナッツソースとよく合います。
「牛肉のココナッツ煮込み(ルンダン)」
インドネシア料理の中でも,美味しいと評判のパダン料理の代表料理です。牛肉をココナッツミルクと香辛料で時間をかけてひたすら煮込んだ料理です。地元,西スマトラ州では,野外で大鍋で豪快に作られる家庭料理のようです。よく煮込まれた肉じゃがの肉を食べているような感じがしました。この店では,牛肉のほかにも,春雨,ナス,パプリカなどが入っていました。
「焼きめし(ナシゴレン)」
最近は日本でもメジャーな料理になっています。ケチャップマニスなどで味付けした焼きめしです。「クルプック」と呼ばれる海老せんべいと目玉焼きなどが添えられます。好みで,薬味の「サンバル」をつけて食べます。バンドンのドライブインで初めて食べた時は,これは食べやすくて美味しいと感動したものですが,添えられていた目玉焼きの黄身の色が日本人が見慣れた濃い黄色ではなく,緑色に近い薄い黄色で,「この玉子,大丈夫かな?」と思いながら食べた思い出があります。
「焼そば(ミーゴレン)」
これもナシゴレンとならんで,日本でよく見かけるメニューになりました。中華焼きそばに近いと思います。味付けはナシゴレンとよく似ています。中華麺やチンゲン菜など用いられており,ナシゴレンと並んで,中国の影響を受けた料理だと思います。
今回訪問したインドネシア料理店のメニュー表は,日本人が料理のイメージをしやすいように,「温野菜のサラダ」や「牛肉のココナッツ煮込み」などと書かれており,横にインドネシア語が併記されていましたが,注文する時は,インドネシア語で「ガドガド」,「ルンダン」と言った方が,早くて便利に思いました。そして,イスラム教が中心の国だけあって,やはり豚肉料理は1つもありませんでした。ただ,さすがに酒はありました。
インドネシア料理は,激辛とか独特のにおいがするといった個性の強すぎる料理はあまりなく,外国人でも食べやすい料理が多いように思いますが,これは,インドネシアが,地理的にマラッカ海峡など,太平洋とインド洋とを結ぶ海上交通の要衝となっており,外国との交流が盛んなことが1つの理由ではないかと思います。
店にはインドネシアなど様々な国のお客さんが来ておられ,ガムラン音楽が流れており,エキゾチックな雰囲気を味わえました。欲張ってたくさん注文しましたが,どれも美味しいので,すんなり胃袋に収まりました。
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