タイ料理の特徴と主な料理1
東南アジアは,歴史的・地理的にインドと中国の影響を受けてきたことから,料理においても,インドの食文化の影響を受けて,スパイスやハーブを石臼と石杵ですりつぶして用いられたり,中国の食文化の影響を受けて,中華鍋や中国式の包丁が用いられ,豆腐や麺類,粥などが食べられたりしています。
こうしたインド,中国の影響を受けながらも,辛味,酸味,甘味の調和した独特の風味豊かな料理を発展させてきたのがタイ料理です。
タイ国政府観光庁のホームページでは,タイ料理は,一言で言うと「複雑」で,5つの味覚,「辛味」(唐辛子,胡椒),「酸味」(ライム,タマリンド),「甘味」(ココナッツミルク,パームシュガー),「塩味」(ナンプラー,塩),「旨味」(エビ味噌,ナンプラー)と「香り」(レモングラス,コブミカン,パクチー)で作られるとあります。
「ナムプリック」と呼ばれる,唐辛子(プリック),大蒜,赤玉ねぎ(ホームデーン)にエビ味噌(カピ)や魚醤(ナンプラー)を加えすりつぶしたペースト状の調味料が料理のベースとなります。
タイ料理は,中国料理と同じく,その名称によって,素材・調味・調理法を知ることができます。
例) 中国料理…「青椒肉絲(チンジャオロース)」=ピーマン/肉の細切り
タイ料理…「トムヤムクン」=茹でる・煮る/混ぜる/海老
ほかに,「カオ」=ご飯,「パット」=炒める,「ゲーン」=汁物,などを覚えておくと食事の際便利です。
(自宅にあるタイのスパイスなど)
左から,コリアンダー(粉末),コリアンダー(ホール),ナンプラー,レモングラス(ホール),レモングラス(粉末),カフェライムリーフ(コブミカンの葉,バイマックルー),手前がココナッツの胚乳です。
コリアンダー(パクチー,香菜)は独特の香りを持つ植物で,中近東やアジアを中心に幅広く用いられているスパイスです。
ナンプラーはベトナムのニョクマムと並ぶ有名な魚醤で,原材料はカタクチイワシと塩,砂糖となっています。
レモングラスとカフェライムリーフはタイ料理の香りを特徴づける葉っぱで,名前のとおり,レモンやみかんの香りがします。
ココナッツの胚乳は,ココナッツミルクやヤシ油となります。
今回訪問したタイ料理店では,代表的なタイ料理を味わうことができました。
「生春巻き(ポピアソット)」と「春雨サラダ(ヤムウンセン)」
生春巻きはベトナムが本場ですが,タイでも人気があるようです。スイートチリソースとよく合います。
春雨サラダは韓国の「チャプチェ」の辛い版といった感じでした。中国料理の影響を受けた料理だと思います。
いずれも,米粉を使った料理であり,米は主食としてのみならず,おかずとしても幅広く用いられていることがわかります。
「鶏唐揚げ(ガイトート)」
これも中国料理の影響を受けた料理だと思いますが,スイートチリソースで食べるところが,タイの食べ方ですね。
「豚ひき肉入り卵焼き(カイチャオムーサップ)」
卵フライのような感じで,調理現場を見た訳ではないですが,恐らく,この料理も中国料理の影響を受けて,中華鍋にたっぷりの油で調理されているのだと思います。コリアンダーがのせてあり,チリソースで食べるところにタイ料理らしさが出ています。
「トムヤムクン」
中国のフカヒレスープ,フランスのブイヤベースとともに世界三大スープの1つです。この店では,食べやすいよう,マイルドな味付けにされていましたが,このスープこそ,前述の「5つの味覚」と「香り」が合わさった,複雑な味の代表と言えるでしょう。
「タイグリーンカレー(ゲーンキョワーン)」
トムヤムクンと並び,タイ料理の代表格です。インドカレーはターメリックの黄色やクミンの香りで特徴付けられますが,タイのグリーンカレーはココナッツミルクをベースに,コリアンダー,カフェライムリーフ(コブミカンの葉,バイマックルー),青唐辛子などによる緑色,レモングラス,ナンプラーによる香りや味付けで構成されています。私の自宅にあるスパイスは,まさにこのゲーンキョワーンを作る時に購入したものです。鶏肉,海老,たけのこ,ナス,パプリカなどが入ります。
「もち米とロンガンのココナッツミルク(カオニャオピヤッ)」
(リュウガン:店のタイ食材の本をお借りしました。)
カオニャオはもち米,ピヤッは煮込みといった意味だと思います。ロンガン(リュウガン)という果実は,ライチとほぼ同じ食感・風味です。和菓子と共通した,もち米で作られたスイーツであることに興味を持ちました。ココナッツミルクで煮込んだ甘いもち米の粥で,トルコのデザート「ストラッチ(米のプディング)」ともよく似ています。私はてっきり冷たいデザートだと思っていたのですが,実際は温かいデザートでした。よく考えると,もち米を冷やしたら,固くなってしまいます。タピオカと同様,温かい状態で,もちもちとしたもち米の食感をココナッツミルクと共に楽しむためのデザートなのだと,後になって理解できました。
タイ料理は,身近な米を中心に,気取らず,美味しいものをお腹一杯食べて幸せを感じさせてくれる料理だと思います。
「タイ料理の特徴と主な料理2」に続きます。
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