土用の丑の日 -土用・うなぎの蒲焼・土用餅-
(土用)
土用は,立春・立夏・立秋・立冬の前,約18日間をさします。春夏秋冬各季節の変わり目とも言えます。これは古代中国の「陰陽五行説」という,この世の全てのものを陰と陽2種類の「気」と,「五元素」の作用「五行」の相互作用によって説明しようという考えに基づいています。
○「五行配当表」(一部) [「色彩の世界地図」21世紀研究会編から抜粋,一部加工]
季節は,一般的に春夏秋冬の「四季」で表されますが,これを五行説で表すと,「五行配当表」の中心の「土」の箇所に「土用」という時期が設定されていることがわかります。「東西南北」の「中央」と同様,私には多少無理して5つにしているようにも思いますが(笑),この表でイメージはつかめるかと思います。
なお,「十二支」の辰・未・戌・丑はそれぞれ旧暦の3月・6月・9月・12月のことで,各季節の最後の月であることから,「土用」を含む月となっています。
この「土用」の時期の「丑」の日にあたる日が「土用の丑の日」となります。
(うなぎの蒲焼)
うなぎは縄文時代から食べられており,万葉集の大伴家持の歌にも「武奈伎(むなぎ)」として登場します。
「蒲焼」の呼び名は,
○うなぎを丸ごと(又はぶつ切りにして)長い串にさして焼いたのが,水辺に生える蒲(がま)の穂に似ているから
○樺(かば)色に焼けるから「樺焼き」
○匂いがよく香りが早く感ぜられることから「香はや(疾)き」
など諸説があります。
土用の丑の日にうなぎを食べることを奨励し,宣伝したのは平賀源内とされています。「里のをだまき評」という本の中でうなぎが体によいことが紹介され,その後,急にうなぎが売れるようになったと言われています。平賀源内は砂糖の普及にも一役買っており(「あずきの研究5-和菓子と砂糖の歴史-」参照),食文化に大きな影響を与えたコピーライターとしての一面も伺えます。
土用の丑の日になると,夏バテ防止のためにうなぎを食べようというイメージが定着していますが,乱獲の影響もあり,ヨーロッパウナギがワシントン条約で輸出が禁止されたり,最近では,ニホンウナギがレッドリストの絶滅危惧種に指定されるなど,世界に流通するうなぎの7~8割を消費している日本にとっては厳しい話もあります。
うなぎはもはや贅沢品となっていますが,これは私達の自業自得でもあるため,今のところは少し我慢して,たまの贅沢品として食べるにとどめ,また資源が回復して,気軽に食べられる日がくればと思います。
それにしても…。土用の丑の日にうなぎを食べるようになったのは,うなぎがさっぱり売れなくて困っていたうなぎ屋が平賀源内に相談したことが発端だとすれば,過剰にうなぎを求め,希少な資源となった現在の状況は,何とも皮肉な出来事です。
(土用餅)
和菓子屋さんで土用餅のポスターを見つけ,購入しました。土用に食べるあんころ餅です。餅で力をつけ,小豆で厄除けして,暑さを乗り切るという意味があります。餅も小豆も,様々な行事食に登場しますが,この土用餅も,その行事食の流れで定着した食べ物だと思います。
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