韓国・朝鮮料理の特徴と主な料理2 -秋夕(チュソク)の松餅(ソンピョン)-
「秋夕(チュソク)」は,朝鮮半島において旧暦の8月15日を示す言葉で,収穫を祝い,先祖に感謝するとても大切な日とされています。
その秋夕に欠かせない食べ物が「松餅(ソンピョン)」です。
松餅は,米粉を餅にし,中にゴマの餡などを入れて,松の葉で蒸して作られます。
松の葉が使われるのは,香りづけのほかに,殺菌効果(日持ちをよくする効果)や尖った松の葉に魔除けの意味も込められているようです。
この松餅なる食べ物。一体どんな味,香りがするのか,興味を持ち,一度食べてみたいと思うようになりました。
秋夕は,日本では十五夜のお月見の時期です。この時期なら,韓国食材店や飲食店で売られているのではないかと,5~6軒,電話で問い合わせたり,店を訪ねたりしましたが,見つけることができませんでした。
しかしながら,どうしてもあきらめきれず,ならば自分で作ってみようと思いました。松の香りがする餅を食べることが目的なので,餅は市販の月見団子(串団子)で代用し,松の葉は山で採ってくることとしました。
松葉を採りに,車で山へ出掛けてみようと自宅の外に出た時,何と自宅アパートの庭に松の木が植えられているのを発見しました。ラッキーでした。この松葉を少しだけいただくこととしました。これぞまさしく,正真正銘「地産地消」です!
そして,いよいよ実験開始です。
脚付きのゴム製蒸し目皿を水を張った鍋にセットし,その蒸し目皿の上によく洗った松葉を敷き,松葉の上に1つづつ団子を並べ,蒸すことにしました。
(蒸す前の様子)
約15分間蒸しました。蒸し上がった時の様子です。
(蒸し上がりの様子)
蒸したので,団子がとても艶やかになっています。松葉の蒸されてすっかり変色しています。肝心の香りですが,期待したほどの松の香りはありませんでした。
皿の上に生の松葉を敷き,その上に蒸した団子をのせて松餅風団子の出来上がりです。
(松餅風団子)
実際に食べてみると,かすかに松の香りがしました。ただ,私の調理法に問題があるのか,期待が大きすぎたのか,想像していたほどの香りは付いていませんでした。
もしかすると,松葉を使う大きな理由は,蒸す際に餅がくっつかないためや,日持ちをよくするためで,香り付けは副産物のようなものかもしれないとも思いました。
また,ゴマの風味も大切だと思い,団子の一部は,ストックしている練りゴマをつけて食べてみましたが,ここまでくると,松の香りは全くせず,中国のゴマ団子「芝麻球」そっくりの風味になってしまいました。
(練りゴマ)
せっかくなので,よく洗った松葉と,蒸し上がった松葉も少し食べてみました。生葉も蒸した葉も,噛むと少し酸味を感じますが,特徴的な味はありませんでした。レモングラスと同様,繊維質が多く,噛みきることができないので,そのまま食べるのは少し無理があると思いました。
韓国・朝鮮料理では,粥などで松の実もよく利用されますが,それだけ松は身近な植物であり,食べ物なのでしょう。
日本で松と言えば,お城の松をイメージする方も多いと思いますが,お城に松が植えられたのは,景観のためだけでなく,いざという時,葉や皮が非常食となるという理由もあったようです。
松を調理に利用したり,食用にするのは,まさに先人の知恵の結晶です。
李氏朝鮮以降,儒教を尊ぶ朝鮮半島の人々にとって,秋夕に松餅を作り,食べることの意義は,こうした先祖の残してくれた素晴らしい知恵を学び,改めて先祖に感謝し,後世にその知恵を引き継ぐことにあるのではないかと思います。
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