唐菓子(からくだもの) -清浄歓喜団と餢飳(ぶと)-
「七夕の行事食」の記事で,七夕の行事食は「そうめん」であること,そして,「そうめん」は,「唐菓子(からくだもの)」の「索餅」という菓子に由来することを御紹介しました。
奈良時代から平安時代にかけて遣唐使によって唐から伝来した唐菓子は,米粉や小麦粉を捏ねていろいろな形に作り,油で揚げたり,焼いたものを言います。
日本の菓子の歴史は,この唐菓子に始まり,団子,そうめん,うどん,せんべい,かりんとうなど,その後の日本の粉食文化に大きな影響を与えることとなりました。
「いろいろな唐菓子」(岡田哲「食文化入門-百問百答-」から抜粋)
今回,その唐菓子を製造・販売されている京都・祇園の京菓子店「亀屋清永」さんを訪問し,2種類の唐菓子を購入しました。
「清浄歓喜団」
「歓喜団」=「団喜」=「団子(団粉)」を表します。団子はもともと,唐伝来の小麦粉を練って作られる食べ物でした。(「団」は集めるという意味があり,「粉」を集めて作られることから団粉(団子)という呼び名になりました。)
清浄歓喜団は,米粉や小麦粉で作った生地で金袋型に包み,胡麻油で揚げたものです。こしあんには「清め」の意味を持つ7種類のお香(丁字,肉桂など)が練り込まれており,8つの結びは蓮華を表わしているそうです。
「清浄歓喜団の由来(亀屋清永)」
蓮華からも推測されるとおり,この清浄歓喜団は,神社や神棚へのお供え物(「神饌」)ではなく,天台宗や真言宗など仏教(密教)のお供え物(「供物」)とされたようです。
「餢飳(ぶと)」
餢飳は,米粉や小麦粉で作った生地で兜(かぶと)に似た形を作り,胡麻油で揚げたものです。清浄歓喜団と同様,中にこしあんが入っています。
名前の由来は,兜の「ぶと」とか,うさぎの伏した形を示す「ぶと=伏菟(伏兎)」だと言われています。春日大社などで神饌とされています。
「餢飳(ぶと)の由来(亀屋清永)」
餢飳と清浄歓喜団を切り分けて中を確認しました。胡麻油で20分かけてじっくりと揚げられているため,皮がとても固く,切るのに苦労しました。
「唐菓子の中身(餢飳と清浄歓喜団)」
実際の風味ですが,胡麻油の胡麻と八ッ橋と胃薬を合わせたような,お香のような雅な香りがします。カリカリに揚げられた皮の固い「かりんとう饅頭」に近いと思いました。
後日,実際にかりんとう饅頭も食べてみると,買ってきたものは米油で揚げられていたり,食べやすいよう程よい皮の固さに仕上げられているものの,見た目と言い,米粉と小麦粉で作った生地と言い,唐菓子そっくりです。そもそも,かりんとうのルーツは,冒頭にもあるとおり,唐菓子ですので,当たり前と言えば当たり前の話ですが。
「かりんとう饅頭」
(まとめ)
唐菓子は,日本の神道の世界でも仏教の世界でも,お供え物とされるほど,当時の日本人にとっては,貴重な食べ物だったことが理解出来ます。
現代においても,非常に限られた和菓子店でしか製造・販売されていないという意味で貴重なお菓子となっていますが,こうした唐菓子をいただくことで,当時の文化に思いを馳せ,日本のお菓子の原点を振り返ることが出来るのは,ありがたいことだと思います。
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