フィリピン料理の特徴と主な料理1 -概要と調味料-
フィリピンは約7,000の島からなる多島国家です。
海岸線の長さがアメリカの2倍近くあるため,魚が重要な副食物となっており,食事の基本は主食の米と魚のおかずとなっています。
16世紀のはじめにスペイン人がやってきた当時は,様々な生活様式(狩猟採集,焼畑耕作,水田稲作等)や多数の言語,宗教が存在したため,統一された国家はなく,他国のように王朝の宮廷料理に影響を受けた食文化は形成されていませんでした。
そのため,現在のフィリピンの代表的料理の多くは,スペイン統治時代(16世紀~19世紀末)に成立しています。また,スペインにより,キリスト教(カトリック)の布教も行われたため,他の東南アジア諸国に比べて食事制限はゆるやかで,豚肉の料理も数多く見られます。
併せて,中国からの華僑の影響で,麺類や春巻きなど中国料理も多く取り入れられています。
さらに,1898年(米西戦争のパリ条約)以降,第二次世界大戦に至るまでは,統治権がスペインからアメリカに移り,その影響でハンバーガーやフライドチキンなどのファストフードやコーラに代表されるソフトドリンクも普及しています。
東南アジアの料理は,中国のほかにインドの食文化の影響を受けて,スパイスやハーブを多用するのが特徴ですが,フィリピンにおいては,インドから遠く離れた島国という地理的条件もあってか,あまり香辛料は用いられないことも大きな特徴です。
調味料としては,パティス(魚醤),バゴーン(小海老などの塩辛),醤油といった発酵調味料や,酢(ヤシやサトウキビが原料),カラマンシ(すだちに似た果物),タマリンドなどの酸味系,ココナッツ(オイル)などが多用されています。甘味,塩味,酸味が味のベースとなっています。
「各種調味料」
「シュガーケインビネガー(サトウキビ酢)」
「アドボ」と呼ばれる煮込み料理やつけだれなどで使われる酢です。日本では米酢が中心ですが,フィリピンではヤシやサトウキビを原料に酢が作られます。
(シュガーケインビネガー)
「バナナケチャップ」
フィリピンと言えばバナナですが,ケチャップの材料にもなっています。当初は,トマトの代用としてバナナが使われたようですが,今ではトマトケチャップより人気があるようです。トマトは全く使われておらず,シロップ,バナナ,パプリカ,玉ねぎ,香辛料などで赤いケチャップに仕上げてあります。
(バナナケチャップ)
「マン・トーマス(サルサソース)」
酢,香辛料,豚レバーなどで作られた万能サルサソースです。フィリピンの代表的料理「レチョン(子豚の丸焼き)」のほか,揚げ物などにつけて食べます。
(マン・トーマス)
「バゴーン(塩辛ペースト)」
魚や小エビから作る発酵食品(魚醤油・塩辛等)は,味噌や醤油と並んで,東アジアや東南アジアの食を特徴付ける,重要な万能調味料と言えます。フィリピンでは,こうした塩辛のペーストをバゴーンと呼びます。野菜や料理の調味料として使われます。
(バゴーン)
これらの調味料は,フィリピン料理の店で実際に使われているものを出していただいたものなので,幅広く頻繁に利用されている調味料だと思います。
魚をよく食べ,香辛料をあまり用いないなど,日本の食事とよく似たところがあるのは,両国がいずれもアジアの東に位置する島国であるという地理的条件も関係しているように思います。
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