京都の和菓子作り体験 -上生菓子(菊と柿)-
京都で和菓子作りを体験しました
和菓子店の前を通る時には,必ず陳列されている上生菓子を確認するようにしています。その時の季節や行事が和菓子にどう表現されているか,興味があるからです。
ただ,それがどうやって作られているのか,実際に見たことはありませんでした。そこで,和菓子の本場,京都で,和菓子作りを体験してみることにしました。
お店の2階に案内され,手を洗い,腰で巻く白い前掛けをお借りして,準備完了です。和菓子職人の方から説明があり,今回は菊と柿を作るとのことでした。御用意いただいた材料は次のとおりです。
(和菓子作り体験の材料[練り切り])
「練り切り」とは,手亡豆や白小豆で作られた白あんに求肥や小麦粉,つくね芋などを混ぜて,細工や着色をしやすいように作られた上生菓子の素材を言います。この練り切りを巧みに使い,季節や行事を表現するわけです。
ただ,この材料の段階では,どう仕上がるのか想像するのは難しく,新たな上生菓子を作る際には,まずは完成したものを思い浮かべたり,絵に描いたりして,それを仕上げるためには,どういう色の練り切りがどれくらい必要となるのか,きちんと把握しておく必要があると思いました。
まずは,外側の菊の花や柿の皮となる練り切り(桃色と橙色の玉)をつぶして丸くのばし,中の餡となる練り切り(菊(桃色)には黒色の練り切り,柿(橙色)には白色の練り切り)を,そののばした練り切りの上に乗せ,手のひらで,回しながら徐々に中の餡を包み込んでいきます。これを包餡(ほうあん)と呼びます
次に練り切り上部に「ぼかし」と呼ばれる色の変化を持たせます。
まず柿については,橙色の練り切りの上部に,少量の黄色い練り切りを平たく伸ばして覆い被せ,橙色の練り切りに擦り込ませて,黄色から橙色に変化する「ぼかし」を作ります。
菊についても,柿と同じ要領で,桃色の練り切りの上部に白色の練り切りを擦り込ませて,白色から桃色に変化する「ぼかし」を作ります。
(包餡し,ぼかしを入れた練り切り)
練り切りは乾燥しやすく,乾燥するとパサパサになって,成形できなくなるため,仕上げるごとに,シートで覆ったり,蓋をするなどして乾燥を防ぐようにします。実際に,細工に時間がかかればかかるほど,乾燥していくのがわかり,手早く美しく仕上げることが大切なことが理解出来ました。
そしていよいよ飾り付けです。
柿については,丸い練り切りを上下から軽く押しつぶし,四隅に小指でくぼみをつけます。そして,小さな緑色の練り切りを平たく伸ばして柿の葉を作り,その上に小豆色の練り切りを木の枝の形にしたものを乗せて完成です。
菊については,丸い練り切りを上下から軽く押しつぶした後,更に切り込みを入れて花びらを作ります。細長い三角柱の形をした木の棒(「三角べら」)の尖った部分を練り切りに押し当て,上から下,下から上と練り切りを少しずつ回転させながら花びらとなる切れ目を入れていきます。これは「返し菊」と呼ばれる技法です。最後に頂点に黄色の練り切りを乗せ,木製のスタンプで花芯を作って完成です。
(三角べらと返し菊)
今回教えていただいた講師の方が私の仕上がりを御覧になって,「菊の花びらが細かいですね。」との感想をいただきました。菊の花だからと何度も三角べらを上下に動かして時間をかけて作りましたが,後でよく考えてみると,商品にするには,短時間できれいに多く作ることが求められるので,確かに細かければいいというものでもないと思いました。
それでも,仕上げた作品をケースに入れ,更に菓子箱に詰めると,和菓子らしき見栄えになりました。
(自作上生菓子)
柿と菊を2個ずつ作りました。柿は同じような仕上がりですが,菊は最初に作った菊(写真右奥)と後で作った菊(写真左手前)では,「返し菊」に慣れた分,後で作った菊の方がましな仕上がりになっています。
今回の和菓子作り体験で勉強になったのは,上生菓子は「見た目の良さ」が一番に求められる一方で,それを素早く作る必要があるということです。練り切りは想像以上に乾燥するスピードが早く,もたもたしていると細工ができなくなるのです。これが出来るかどうかが,プロと素人の違いになるでしょう。
あと,講師の方が,柿のへたの部分に使った薄茶色の練り切りの色を「しょうず(小豆)色」とおっしゃっていたのも印象的でした。「あずきの研究2 -小さい豆と書いて「あずき」と読む理由-」にも「小豆」を「しょうず」と呼ぶことについて触れていますが,やはり「しょうず」の方が呼び易かったり,聴き取り易かったりするのではないかと思います。
当初用意されていた団子状の練り切りと,完成させた「柿」や「菊」の上生菓子は,細工したかどうかだけの違いであり,味までは(理論上)変化させていません。ですが,包み込んだり,伸ばしたり,切ったりと手を加えることによって,上生菓子という商品,更には芸術作品にまで高めているのです。
「フランス料理は鼻で味わい,中国料理は舌で味わい,日本料理は目で味わう」と言われますが,今回の和菓子1つを見ても,日本の食文化が,いかに素材と見た目を重視しているかを理解することが出来ます。
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