干し柿 -渋柿の特徴と種の繁栄方法-
実家から自家製の干し柿をわけてもらいました。
適度な半熟となっており,作り手の干し柿への思い入れまで感じさせる完成度の高い干し柿でした。よほど暇があったものと思われます(笑)。
(干し柿)
甘柿より渋柿の方が干すと甘味が強くなるため,干し柿は,渋柿から作られることが多いようです。
柿の自然分布は東アジアに限られ,中国から渡来した品種はほとんどが渋柿でした。柿は渋柿が一般的で,甘柿は柿の中ではむしろまれな品種に該当します。
普通に考えると,果実は,自らを甘くすることで種ごと動物に食べてもらい,その種を別の場所にまいてもらって繁栄させているので,動物が避ける渋みを持つ渋柿は,一見不利ではないかと思えます。
ところが,渋柿はそうした考えからさらに上をいく果実でした。渋柿は,中の種が未成熟なうちは,動物に食べられないように渋みを持たせ,中の種が成熟して発芽出来る状態になってはじめて,渋みが消える(熟柿となる)しくみを持っているのです。つまり,最終的には甘くなって,他の果実と同様に繁栄させるしくみを持っていることになります。
柿の渋みは,ポリフェノールの一種であるタンニンです。このタンニンが水に溶けると渋みを感じ,逆に固まって水に溶けなくなると(舌に渋みを感じないので)甘いと感じられるようになります。
つまり,柿の渋抜きとは,熟柿を促す作業であり,この水溶性タンニンを不溶性に変える人為的な作業だと言うことができるでしょう。
干し柿は,日本の旧来(唐菓子以前)の菓子であり,鑑真が砂糖をもたらすまで,飴,甘葛と並ぶ数少ない甘味料でもありました。
こうした歴史もあってか,和菓子の世界では,干し柿の甘さが1つの基準とされることがあります。干し柿の甘味以上の甘味だと,下品な甘味になるというのがその理由のようです。
そのままでは渋くて食べられない柿を品種改良して甘柿にしたり,干すなどして渋を抜き,更に保存性を高めるなど,干し柿1つをとっても,先人の知恵と工夫をたくさん見出すことが出来ます。
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