しょうゆの研究2 -古代の醤(ひしお)はどんな食べ物だったのか-
奈良を訪問した際,醤油店で古代の醤(ひしお)を復元した「古代ひしお」が販売されており,興味深かったので購入しました。
(古代ひしお外観)
奈良県の食文化を研究する『なら食』研究会,奈良県醤油工業協同組合,奈良県工業技術センターが協力し,試行錯誤の末に再現された食品です。
醤油のルーツを知り,古代の味を味わうことが出来る,貴重な商品だと思います。
(古代ひしお)
食品表示を見ると,名称は「ひしお(発酵調味料)」,原材料は「黒大豆,大麦,食塩,こうりゃん」となっています。
こうりゃん(もろこし)が中国から日本に伝来したのは室町時代あたりとされているので,奈良時代より後の話となります。疑問に思ったので,『なら食』研究会のウェブページを拝読しました。
ウェブページによると,この「古代ひしお」は中国の世界最古の農業技術書「斉民要術」の「作醤法」をもとにして再現された醤であり,日本ではこの醤の食文化を模倣・摂取する中で取捨選択しながら,日本独自の穀醤を作り上げ,今日の醤油につながったという考えに基づいて再現されているようです。
どんな味がするのか,興味津々で実際に食べてみました。奈良漬けのようなフルーティな発酵臭がします。味は酒粕と醤油を合わせたような感じがしました。市販の味噌ほどは塩辛くないので,そのままご飯にのせて食べたり,酒のつまみにもなると思います。黒大豆の形が若干残っており,味噌(豆味噌に近い)とも醤油ともひと味違う,独自の発酵食品となっています。
開封してしばらく置くと,ひしおから醤油のような液汁がにじみ出てきますが,これは,説明書きにあった発酵が続いているという証拠なのかも知れません。
どこか奈良漬けの香りも感じられる古代ひしお。奈良漬けは酒粕から作られるので,原材料は異なりますが,同じ奈良の地で同時期頃から作られ,発酵してメイラード反応(褐変反応)が起こって出来上がるなどいくつかの共通点も見い出せ,何か不思議なつながりがあるように感じます。
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