葉玉ねぎとジャイナ教の食文化
葉玉ねぎについて
スーパーに地元の葉玉ねぎがたくさん売られていました。春先の今が旬のようです。
無知な私は,葉玉ねぎという品種があるものだと思い,どんな味がするのか興味を持って購入しました。
(葉玉ねぎ)
購入後,調べてみると,葉玉ねぎは,早い時期に収穫した葉付きの玉ねぎで,玉ねぎに成長する前に収穫されるので,葉もやわらかく,葉の美味しさも味わえると説明がありました。
(葉玉ねぎの玉の部分)
葉玉ねぎの玉の部分を切った様子ですが,(当然ながら)玉ねぎと変わりはありません。
葉の部分を生で食べてみたところ,長ねぎとほぼ同じですが,若干玉ねぎ独特の刺激臭(硫化アリル)が強いように感じました。成長中でとれたてだったからかも知れません。
葉玉ねぎのスープ
葉玉ねぎのスープを作って,葉玉ねぎを味わってみることにしました。
玉ねぎなので,シンプルな洋風スープが合うと思い,茅乃舎の「野菜だし」に塩・こしょうで簡単なスープを作ってみました。
(葉玉ねぎのスープ)
煮込むと,玉ねぎの刺激が甘みに変わり,生とは違った美味しさとなりました。
たくさん食べることができ,まさに旬をいただいている感じがしました。今回は葉玉ねぎ本来の味を純粋に味わうために葉玉ねぎだけのスープにしましたが,ほかの具材と一緒に煮込むと,さらに美味しくいただけると思います。
特にすき焼きやポトフに合いそうです。
ジャイナ教について
数あるインドの宗教の1つに「ジャイナ教」があります。
ジャイナ教は,戒律が厳しいことで知られています。その柱となるのが5つの戒律(不殺生,不妄語,不盗,不淫,無所有)であり,その中でもとりわけ不殺生(アヒンサー)の戒律が厳格となっています。
僧侶は口にマスクをしたり,ほうきを持って歩きますが,これは虫を飲み込んだり,踏み殺したりしないためです。
不殺生の戒律は食事にも反映されており,断食が最良とされ,理想的な死は断食を続行して死に至ることとなっています。
ジャイナ教徒が葉玉ねぎを食べる場合
そんなジャイナ教の信者は葉玉ねぎにどう対応するでしょうか。
菜食主義ですので,食べることには問題ないと思いますが,厳格な信者は,恐らく,玉ねぎの部分は畑に残し,葉の部分だけを切り取って食べるでしょう。なぜなら,葉の部分は日が経てば再生可能ですが,玉ねぎまで食べてしまうと,葉玉ねぎ全てを殺してしまうことになるからです。
殺すことなく,植物の一部を分けてもらうことが可能なものを食べるという思想なのです。
宗教の戒律という「文化」によって,人間の「食べられるもの」と「食べるもの」が一致しない1つの事例と言えるでしょう。
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