クワスの研究 -ライ麦パンからクワスを作る(後編)-
「クワスの研究 -ライ麦パンからクワスを作る(前編)-」では,クワスの材料の仕込みから,約12時間後までの様子をまとめました。後編では,約20時間経過した段階の様子からをまとめてみます。
(20時間後の容器内の様子)
(20時間後の液体の様子)
これぐらい経てば,もう少し褐色になるかと期待していましたが,途中で少し水を加えたこともあってか,むしろ澄んだ黄色になりました。口あたりが更によくなり,炭酸も液体に溶け込んで馴染んでおり,クワスらしくなってきました。
(1日後の容器内の様子)
(1日後の液体の様子)
褐色になる様子もなく,むしろ濁ってきて,これ以上発酵させると,アルコール分が強くなるばかりではないかと思い,ここで終了としました。
パンをすくい上げてみると,ふにゃふにゃ,ぼろぼろになっています。このクワスの「もろみ」を金ざるで漉して,液体を絞り出しました。
(金ざるでもろみを漉す様子)
完成した絞りたてのクワスです。
(自家製クワス[絞りたて])
クワスの状態で容器に入れ,冷蔵庫で寝かせると,液体の中の澱(おり,クワスを絞った白色の残りかす)が底に溜まり,透明度が増してきました。
(36時間後のクワスと沈殿して底に溜まった澱)
絞ってから1日寝かせ,透明度の高いクワスが完成しました。
(自家製クワス[冷蔵庫で1日寝かせた後])
日本ユーラシア協会広島支部で売られていたクワスが褐色だったので,今回もトーストしたライ麦パンの色のような褐色の液体になることを予想していたのですが,若干のとろみと炭酸のある黄色っぽい液体に仕上がりました。
果たしてこれが本場のクワスに近いのかどうか,よくわかりませんが,クワスが作られる大まかな流れは理解出来たように思います。
ロシアの人々は,今回のレーズンを加えた「パンクワス」のほかにも,柑橘類を加えた「酸味クワス」,紅茶を加えた「紅茶クワス」など,様々なクワスを作って楽しんでいるようです。
ビールは「飲むパン」
小麦や大麦をパンに加工する技術は,古代エジプトで発達しました。大麦の麦芽で作られたパンがビールの発酵のために利用され,そのビールの酵母がパン種として利用されたのです。このことから,ビールが「飲むパン」と呼ばれるようになりました。
実際,中世の頃のビールは,今のビールよりもずっと濃い,ドロドロとした麦の発酵汁のようなものだったようで,栄養価も高く,あたかもパンを食べるかのようにビールが飲まれたということです。
クワスこそ「飲むパン」
現在のビールは,主に麦芽の煎じ汁に,ホップやビール酵母を加えて発酵させて作られており,わざわざパンを作ってビールを発酵させることは行われていないようです。
それに対し,今回のクワスは,ライ麦パンを用いて発酵させて作りましたので,この飲料こそ,「飲むパン」と言えるのではないでしょうか。
再びパンに…
魚柄仁之助氏のアイデア料理に,「パン粉パン」というのがあります。パンの耳を乾燥させてパン粉にし,そのパン粉にスキムミルクを加えて平たく固めたものをフライパンで焼くとクッキー風のパンになるという料理ですが,今回,もろみを金ざるで濾してクワスを絞り出した後の「クワス粕」を焼けば,「パン粉パン」のように再びパンのような食べ物になるのではないかと妙なことを思いつきました。
クワス粕は,ライ麦パン,レーズン,りんごが原料なので,発酵してどろどろになっているとは言え,焼けばフルーツパンらしく再生するのではないかと期待しながらフライパンで焼いてみました。
(クワス粕を焼いたもの)
形にはなったものの,半生のガレットのような仕上がりになりました。
見た目はそんなに悪くはないのですが,イーストや果物による発酵臭や酸味が強くなっており,味もそのままで食べるより随分痛んだ味になっていました。中まで十分焼けば,それでも食べられないことはありませんでしたが,半生だとさすがの私もギブアップしてしまいました。
ましてや…これを人に「クワス」勇気などありません。
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