アーミッシュの特徴と食文化2 -アーミッシュの食文化-
アーミッシュの食生活
アーミッシュの食事は,ヨーロッパとアメリカの食材・文化を融合した料理や自然でシンプルな料理が多いことに特徴があります。
そして何と言っても,食事そのものをとても大切にしていることが大きな特徴だと言えます。
あえて手間のかかる旧来の方法で農作業や家事(馬力と人力による農作業,搾乳,鶏の卵集め,洗濯(手動式),キルト作り,保存食作り)などを行うため,相当な重労働になり,そのこともあって,たくさんの量を食べることも特徴の1つです。
食事の禁忌(タブー)と制約
アーミッシュには,飲食の禁忌(タブー)や制約はほとんどありません。
私は,当初,独特な生活を送るアーミッシュこそ宗教的な食のタブーや制約があるに違いないと思い,調べてみたのですが,よく考えると,アーミッシュはキリスト教の一派であり,キリスト教には基本的に食べ物のタブーがありません。
したがって,アーミッシュの食文化を食の禁忌(タブー)や制約という観点から特徴を見出すことはできないと考えた方がよいと思います。
アーミッシュの主な料理・菓子
アーミッシュの人々がよく食べられる料理や菓子として,次のような例があげられます。
(1)パイの種類が豊富
アーミッシュで作られるパイは,「ペンシルベニアダッチパイ」と呼ばれています。中でも,シューフライパイと呼ばれる,糖蜜とブラウンシュガーで作るとても甘いパイが有名です。あまりの甘さに,群がる蠅を追い払う(シューフライ)必要があったのが,名前の由来とも言われています。
このほか,ハーフムーンパイ(干しりんご),ハックルベリーパイ,ルバーブパイなど,果物や野菜を入れたパイが豊富に作られています。
(ルバーブパイ)
広島県廿日市市で採れたルバーブと市販のパイシートで作ってみました。
例えるなら,酸味の強い梅ジャムのパイです。
(2)ヌードル(麺)好き
アーミッシュの本を読んでみると,食事の際,頻繁にヌードルが登場します。様々な形のヌードルを牛や鶏,野菜などとともに食べられているようです。
(3)ハーブティー
家の庭に生えているミントなどのハーブをお茶にして飲まれているようです。自給自足に近い生活を送るための知恵とも思えます。
(4)様々な保存食
収穫した様々な果物をシロップと一緒に瓶詰にし,長期に保存できる状態にしておきます。このシロップ漬けは,取り出してそのまま食べたり,パイの具になったりします。このほか,ジャム,ピクルス,バター,サルサなども家庭や工場で作られており,1年を通じて安定的に食料を確保するための工夫がなされています。
(5)節約型の料理
スクラップル(余り肉を成形したパテ),ヘッドチーズ(豚や牛の頭・タンなどをゼラチンで固めたソーセージ)など食材を余すところなく利用する節約型の料理も多く見られます。
(6)りんごを多用
アップルソースやアップルバターなどりんごを使った料理や菓子が多くみられます。
(りんごジャム)
私の手作りです。
アーミッシュのディナー
アーミッシュはコミュニティを大切にするので,家族揃って食べることが原則です。
アーミッシュの1日の食事で最も大切なのは昼食で,昼食のことをディナーと呼んでいます。
そもそもディナー(正餐)は,古代ローマ時代からヨーロッパの中世にかけて,1日のうちで最も重要な食事を言い,昼に家族揃って,質量ともに一番充実した食事内容となっていました。
しかしながら,産業革命以降,家の主人が外に働きに出るようになったり,夜遅くまで人々が活動するように生活様式が変化したため,主人が帰宅し,皆が揃う夜にディナーがずれていった経緯があります。
こうして,一般的に昼の食事はランチ(労働者の仕事の合間の休憩の意味)と呼ばれるようになり,それまで,サパーと呼ばれていた夜の軽食がディナーと名を変え,最も重要な食事をとる時間となりました。
この経緯を踏まえると,アーミッシュの「ディナー」は旧来のしきたりを忠実に守り伝えているとも言えるでしょう。
手間暇かければおいしいけれど…
今回は,ルバーブパイとりんごジャムを実際に作ってみました。
いずれも,簡単なお菓子ではあるのですが,ルバーブやりんごの皮をむいたり,砂糖でしばらく煮たり,パイシートに乗せて焼いたりと,手間暇かかることは確かでした。ただ,この作業を通じて,冒頭にもお話ししたように,アーミッシュの「あえて手間暇かかる家事をして,重労働になり,結果としてたくさん食べるようになる(笑)」という生活パターンを少しは理解できたような気もしました。
(メモ)
ダッチアップル(クランブル)パイ
上にクランブルをのせたアップルパイのことをダッチアップル(クランブル)パイと呼ぶが,個人的には,その「ダッチ」はオランダという意味ではなく,アーミッシュの「ペンシルベニアダッチ(パイ)」に由来する表現ではないかと思われる。
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