アーミッシュの特徴と食文化4 -アーミッシュとクエーカー(後編)-
アーミッシュとクエーカーの食文化の共通点を探る
アーミッシュとクエーカーは,いずれも宗教改革以降に生まれたキリスト教プロテスタントの宗派ですが,アメリカでクエーカーがアーミッシュを受け入れたことに伴って,多少なりとも食文化にも影響はあったのではないでしょうか。少し検証してみたいと思います。
クエーカーとココア・チョコレート
今のような食べるチョコレートは,1847年にイギリス・ブリストルのジョーゼフ・フライ(フライ家)によって作り出されました。
同時期,バーミンガムではキャドバリー家が,ヨークではロウントリー家が,それぞれ良質のココアを作り出し,この3家がイギリスを代表するココア・チョコレートメーカーとなりました。
その背景には,この3家は,いずれも熱心なクエーカー教徒だったという共通項が見出せます。クエーカー同士,そして同業者同士として,互いに協力し合い,ココア・チョコレート産業が発展していったのです。
そうして生まれたのが,ロウントリー社の「キットカット」で,イギリスを代表するチョコレート菓子となりました。(「イギリス料理の特徴と主な料理 -キットカット-」参照)
(キットカット(ミニ))
日本ではネスレ社から販売されています。
(キットカット外箱)
チョコパイ
イギリスのクエーカー教徒によって生み出されたチョコレートと,アーミッシュで作られるパイのノウハウによってチョコパイが生まれたのではと仮説を立ててみました。
しかしながら,有効な接点が見つからず,ウィキペディアに「アメリカ・テネシー州のグラハム・クラッカーにマシュマロを挟んだムーンパイが元祖であり,アメリカ南部ではポピュラーな菓子である」と説明がある程度でした。
ただ,キットカットとチョコパイには共通点があります。
それは,いずれも当初は労働者向けに作られた食べ物だったということです。
労働の合間に,手軽にカロリーを補給し,血糖値を上げて次の労働につなげることができることから,これらのチョコレート菓子が支持され,やがて広く人気を得るようになったのです。
(エンゼルパイ)
森永製菓のチョコパイ「エンゼルパイ」です。
アメリカでマシュマロのことを「エンゼルフード」と呼ばれていたことにちなんだネーミングとなっています。
森永製菓は,ロウントリー社のココアを日本に輸入するとともに,日本ではじめて本格的にチョコレート製造に取り組んだ会社でもあります。
チョコパイは,直接的なつながりはないにせよ,イギリス発祥のチョコレートの製法と,アーミッシュをはじめとするアメリカのパイの食文化の土台があったからこそ生まれたお菓子だと言えるのではないでしょうか。
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