アーミッシュの特徴と食文化3 -アーミッシュとクエーカー(前編)-
アーミッシュとクエーカーのつながり
アーミッシュは,16世紀宗教改革の時代にスイスを中心としたヨーロッパで生まれ,後にドイツに移住したキリスト教の一派ですが,そのヨーロッパでは,アーミッシュの独自の思想が受け入れられず,迫害を受ける結果となり,北アメリカへ移住することとなりました。
その主な移住先がアメリカ・ペンシルバニア州でした。
ペンシルバニア州はウイリアム・ペンがキリスト教の一派「クェーカー教徒」を率いて入植した地ですが,ウイリアム・ペンは,広く信仰の自由を認めており,アーミッシュとは「平和主義」や「新教徒」という共通点もありました。
さらに,アーミッシュの優れた農業技術をペンシルバニアの開拓につなげることも期待できると判断しました。
こうしたの理由から,ウイリアム・ペンは,アーミッシュを積極的に受け入れることとしました。
(メノナイトとアーミッシュの移住)
(井上順孝『図解雑学 宗教』から引用。一部加工)
同じアナバプテスト(再洗礼派)であるメノナイトも,アーミッシュと同様の理由でアメリカ・ペンシルバニア州をはじめとする北アメリカやカナダに移住しています。
クエーカーとは
クエーカーは,17世紀中頃にイギリス発祥したプロテスタントの一宗派です。
キリスト友会,フレンド会などとも呼ばれています。
創始者はジョージ・フォックスで,「内なる光(聖霊)」の導きに従うことを主張する「聖霊主義」や,万人は霊的に平等であるという「平等主義」がとられています。
クエーカー(Quaker)の名は,その単語の示すとおり,霊的交わりの中で生じる肉体の振動(震え)によって信仰を表現したことに由来しています。
イギリスでは,イギリス国教会に属さない「非国教徒」として迫害を受けてきましたが,その分,クエーカー同士の結束力は強まり,その強力なネットワークと節約を旨とする禁欲的な特性から,商工業を中心に数多くの成功をおさめ,資本主義の発展に大きく貢献してきました。
日本人では,新渡戸稲造がメリーランド州ボルチモア市のジョンズ・ホプキンス大学に留学した際に,クエーカーと出会い,クエーカー信仰者となったとともに,その集会で出会ったメアリーという女性と結婚したことがよく知られています。
(メモ)
ペンシルバニアの地名の由来
ペンシルバニアはウイリアム・ペンの名前にちなんだ地名で,「ペンの森林」という意味。
フィラデルフィアの地名の由来
ペンシルバニア州の州都フィラデルフィアは,クェーカーの教義が「兄弟愛」であることから,ギリシャ語のフィル(愛)とアデルフィ(兄弟)にラテン語の地名接尾辞イア(-ia)を付けてできた地名で,「兄弟愛の地」という意味。
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