イギリス料理の特徴と主な料理2 -クリスマスプディングの謎に迫る(前編)-
日本では馴染みのないクリスマスプディング
イギリスでは,クリスマスに「クリスマスプディング」というお菓子が食べられます。
日本ではあまり馴染みのないお菓子ですが,イギリスでは,クリスマスに備え,何か月も前から仕込んで作られる伝統的なクリスマス菓子です。
プディングと聞けば,日本ではカスタードプリン,いわゆる「プリン」を想像しますが,現物はプリンとはとても似つかぬお菓子です。
プディングの定義と種類
プディングは様々な料理やお菓子に用いられている言葉であるため,そもそもプディング自体の定義が難しいのですが,イメージとしては,「いろんな材料を混ぜて,味付けをしたものを,煮たり,蒸したり,焼いたり,冷やし固めたりして作られる,ふわふわ,ふるふるした仕上がりになる料理やお菓子」と言えるでしょう。
例えば,「カスタードプリン」や「ババロア」などは蒸した後に冷やし固めることで作られますし,イタリアの「パンナコッタ」やトルコのライスプディング「ストラッチ」などは,煮た後に冷やし(固める)ことで作られ,フランスの「カヌレ」やイギリスのローストビーフの付合せ「ヨークシャープディング」などは生地をオーブンで焼くことによって作られます。
今回御紹介するクリスマスプディングは,蒸して作られるプディングとなります。
本格的なクリスマスプディングとは
本格的なクリスマスプディングとは,「粉と脂肪,干しブドウやナッツなどを混ぜてふきんで包んだまま,温度の低い場所に1か月もつるす。それを型に詰め,何時間もかけて蒸し煮する。バターソースをかけ,最後にブランデーをかけて火をつける」というものです。
(『食の世界地図』(21世紀研究会編)を要約して引用)
かつてイギリスの家庭では,クリスマスに向けて,固くなってしまったパンに,冬の保存食であるドライフルーツやナッツを加え,さらに保存性を高めるために牛脂(ケンネ脂,スエット)や洋酒,そして当時贅沢品だった砂糖を混ぜたお菓子が作られました。
これがクリスマスプディングの原点です。
まさに自家製クリスマスケーキであり,クリスマスにしか食べられないとても贅沢なお菓子だったことでしょう。
ありあわせの材料で作られるお菓子という意味では,同じイギリス菓子の「トライフル」やイタリア菓子の「ズッパイングレーゼ」とも共通しているように思います。(「ズッパイングレーゼの名前の由来について -スープの由来とイギリス風の意味-」参照)
まさかのクリスマスプディングとの出会い
近所のイギリスパン専門店がデパートに出店し,そのイベント会場でクリスマスプディングが売られていました。
これは珍しいと思い,お店の方にこのクリスマスプディングについて,いろいろとお話を伺いました。
(クリスマスプディング(箱入り))
(質問)
出来上がるまでにどのくらいの期間が必要ですか。
(回答)
(クリスマスの)2か月前の10月から仕込みます。
(質問)
容器はクリスマスプディング用なのですか。
(回答)
器については,イギリスでは蒸すのに適しているため,陶器が使われます。本当は陶器を使いたいのですが,その分高価になってしまうため,お客さんが購入しやすいよう,プラスチックの容器にしています。
(質問)
それでも1個1,700円(税抜)は結構いい値段だと思うのですが…。
(回答)
手間暇がかかってますので…。逆に安い(価格設定)と思うぐらいです。
(質問)
バターではなく牛脂を入れるのですか。
(回答)
イギリスでは当初肉が入れられていましたが,肉は高価なため,肉に代わって牛脂(ミンスミート)のみが入れられるようになり,香りだけ肉の面影を残すようになりました。
(質問)
日持ちすると聞いたのですが。
(回答)
賞味期限は約3か月としていますが,実際にはもっと日持ちがします。
手間暇がかかり,牛脂やドライフルーツが使われているので日持ちがする食べ物だということがわかりました。
お店の方にお礼申し上げ,購入して帰りました。
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