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2016年3月 7日 (月)

歴食JAPANサミット -発掘土器クッキー修復体験-

 歴食JAPANサミットで開場セレモニーの後,「発掘土器クッキー修復体験」を申し込み,参加しました。

 「大内氏の宴」などで使われた食器は,使い捨ての土師器だったというお話をしました( 「歴食JAPANサミット -山口に誕生した「歴食」という新たな食の世界-」参照)。

 発掘調査で出土した土師器などは,整理された後,元の形に戻す修復作業が行われるのですが,この作業を土師器に見立てたクッキーで体験してみようというのが今回のワークショップです。

 山口市歴史民俗資料館の学芸員さんから指導・説明を受けながら,順番に体験させていただきました。


土師器クッキー

(配付された土師器クッキー)
Photo

 御用意いただいた土師器クッキーは,卵黄,砂糖,ココア,片栗粉,油を混ぜ合わせ,学校給食で使われたアルマイト食器で型をとって,オーブンで焼かれたお菓子だと説明書きにありました。

 大きさは大小様々でしたが,私は欲張って大きい皿で挑戦することにしました。
(これが後に面倒な結果となるのですが…。)


土器を割る


 はじめに,「ビニール袋の中で4分割ぐらいに割ってください」とお話だったので,土師器クッキーを割りました。

 土師器クッキーをわざわざ一旦壊して,それを修復する体験なのです。

 子供たちは正直に縦横十字に4分割していましたが,素直でない大人の私は,もう少し壊してもよかろうと,更に割りました。(これが後に面倒な結果となるのですが…。)

(クッキーを割った様子)
Photo_2


土器を元の形に置き直す

 割ったクッキーの破片を紙の上に並べ,元通りの皿の形に直すこととなりました。

 子供たちは数分で原形に直していましたが,細かく割った私は直すのにとても苦労しました。

 「これはもう直らないかも」とも思いましたが,学芸員さんから「ビニール袋の中で壊したものだから,必ず元の形になるはずです。」と励まされ,頑張りました。

 更には,「本当は数枚の皿を混ぜた上で,割って修復した方が現実に近いのですが。」とも…。

 私が「ああでもない,こうでもない」と皿を修復する様子を,テレビカメラマンもアップで撮影していましたが,あまりに遅いので,そのうち別の場所へ移動されました(笑)。

 冬場に汗をかきながら,何とか元通りの形に直せました。

(元の形に置き直した様子)
Photo_10

 改めて割った様子を眺めると,単純な割り方なのに,なぜ時間がかかったのだろうと思うのですが,逆に修復がとても大変な作業であることが身に染みてよく理解できました。
 私にセンスがなかっただけかも知れませんが…。


資料情報のマーキング

 次に発掘した場所などの資料情報を土器に記入する作業を体験しました。

 「皿の裏側の目立たない箇所にチョコペンで「out94-11 BN039-04」(outは大内(遺跡),BNは発掘場所)とマーキングしましょう」とお話がありました。

 周りのよい子は皆,正直に教えられたネーミングをマーキングしていましたが,私はせっかくだからと,「kojikin」(コウジ菌)とマーキングしてみました。

(資料情報のマーキング)
Photo_4

 チョコペンをお湯の中で温めては使うという作業を繰り返したため,チョコが水状になり,少しシミになりました。


土器の接着

 次に,形を固定させるための接着です。

 通常はセメダインが使われます。

 これは,間違えて接着しても,アセトンという溶剤で接着剤を落とすことができるからで,やり直しがきくことも重要なことなのだそうです。

 今回は食べ物なので,セメダインの代わりに砂糖で作った液体の飴を使ってクッキーを接着しました。

(土器の接着)
Photo_5

 写真のように,接合部分に接着剤(飴)を付けて接着させるのですが,私は大きくて厚みのある皿を選んだので,なかなか接着しづらく,苦労することになりました。

 「それなら皿の表面にも接着剤(飴)をつけて補強すればいいじゃないか」と思い,先の尖った金属串で表面に飴を塗っていると,講師の方から「待った」がかかりました。

(土器の接着と飴)
Photo_6

 講師の方から,「実際の修復作業では,接着剤をつけていることが表面から見てわかるようなやり方はしないので。」と教えていただきました。

 体験中のこうしたお話はとてもよく理解できます。


土器の破片を補う

 最後に石膏で不足している破片を補うのですが,今回は石膏の代わりにアイシング(砂糖がけ)を塗りました。

 価値のある萩焼を修復するかのように,見た目をリアルに仕上げようと思いました。

(土器の補強)
Photo_7

 写真右上はアイシングの液体です。
 実際,この土師器クッキーは厚みがあるので,これぐらい補強しなければ固定しませんでした。

 これで無事体験終了です。


土師器クッキーの実食

 土師器クッキーを御用意いただいた袋に詰め,お土産としていただきました。

(土師器クッキー)
Photo_8

 自宅に戻り,土師器クッキーをいただいてみました。

 近くに寄って見れば見るほど,本当に土から作った土器のようですが,実際に割ってみても,土と同じようにパラパラと崩れます。

 食感もバターなどの油脂がほとんど入ってない分,口の中でさらっと溶けていくような感じです。

 砂糖と玉子が中心のシンプルな味で,食感も含め,たまごボーロに似ていると思いました。

 小麦粉の代わりに片栗粉が使われていることもその理由の1つだと思います。

 ココアの色付けも含め,土器としてのリアリティーを出すために,色々と工夫された様子が伺えました。


まとめ

 今回のワークショップにより,歴史や考古学の世界を身近に感じ,興味を持つようになりました。

 終了後,お世話になった講師の方々に,「私も子供のころにこんな体験をしていれば,もっと歴史や考古学に興味を持ったと思います。今回のような歴史の体験型学習は大切ですね。」とお話しました。

 準備が大変だったようで,開催前日も夜遅くまで土師器クッキーなどを用意されていたとのこと。そのおかげで楽しく学べたことを思うと,頭の下がる思いでした。

 お礼を言って会場を後にしましたが,最後につい「今回の修復体験,土器だけにドキドキしました。」と言ってしまいました。

 ゴメンナサイ。どうしても言いたかったのです(笑)。

(土器片形クッキー「ドッキー」)
Photo_9

 土器とクッキーを合わせたマスコット「ドッキー」です。

 私の「ドキドキ」と同じ発想だと思うのですが…。

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コメント

うわー楽しそう
やってみたいなぁ~
参加者の比率は、どうだったんでしょうか?
子供たちに混じって、大人がポツポツでしょうか?
どれくらいの時間の作業なんでしょう・・・
うまく復元できるもんですねぇ~お見事

私なら、途中でちょっとつまんじゃったりして、
復元できないかも

食いしん坊倶楽部・海 様

午前の部の参加者はほとんどが母と子の親子連れ又は女性で,気合入れて取り組んでいる大人の男は私1人でした(笑)。
作業時間は約1時間でした。
元の形に戻す作業と,アイシングが固まるのに時間がかかったように思います。
修復は,私の目の前でカメラが回り続け,子供達の方が早くできていたので,かなり焦りました。
かけらに特徴がなく,どれも同じに見えるため,意外と難しいんですよ。
無理やり合わせようとせず,自然にピタッとはまるのを探り当てることがコツだと理解しましたが,実際の土器の修復も同じことが言えるのかも知れませんね。
皿の表面に接着剤をつけようとしただけでも注意されたのに,つまみ食いなどして元に戻せないとなったら,大目玉ですよ(笑)。

なるほど、『つまみ食い』したら、
つまみ出されちゃうんですね~

ドッキーん。お見事!
上には上が…。
つまみはそういうことです。

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